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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
管理番号 1242313
審判番号 不服2007-28026  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-11 
確定日 2011-08-25 
事件の表示 平成10年特許願第211499号「光記録再生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月18日出願公開、特開2000- 48409〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判の請求に係る特許出願(以下、「本願」という。)は、平成10年7月27日の出願であって、平成19年9月6日付けで拒絶の査定がされ、これに対し、同年10月11日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年11月12日付けで手続補正がなされた。
その後、当審から平成22年12月21日付けで拒絶理由が通知され、平成23年2月14日付けで手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成23年2月14日付けで手続補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】 情報信号を示すピットが記録トラックに沿って形成された光記録媒体に対して、光を照射して、プッシュプル法又は差動プッシュプル法によりトラッキングサーボを行い、記録及び/又は再生を行う光記録再生装置であって、
記録及び/又は再生の対象となる光記録媒体に形成されたピットの幅PwとトラックピッチTpとの比Pw/Tpが、0.44?0.55の範囲内にあり、
上記光記録媒体の再生信号のジッター値が7.5%以下となされている光記録再生装置。」

3.引用発明
(1)当審の拒絶の理由に引用された特開平10-21565号公報(平成10年1月23日公開。以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア.「【請求項1】記録ピット列上に照射する0次回折ビームと、往路光学系中に設けた回折格子により発生した複数の高次回折ビームとを有し、前記0次回折ビームと前記複数の高次回折ビームとを対物レンズにより前記記録ピット列上に収束照射させ前記記録ピット列からの反射戻り光量から光ディスクの情報を読み出す光ピックアップ装置において、前記0次回折ビームの反射戻り光量を前記記録ピット列と略平行に少なくとも2分割された領域で受光し前記反射戻り光の出力の差分をとる第1の信号検出部と、前記複数の高次回折ビームの反射戻り光量をそれぞれ前記記録ピット列と略平行に少なくとも2分割された領域で受光しそれぞれの前記反射戻り光の出力の差分をとる第2の信号検出部と、前記第1の信号検出部及び前記第2の信号検出部の信号の和からトラッキングエラー信号を得る第3の信号検出部とを具備することを特徴とする光ピックアップ装置。」

イ.「【0002】
【従来の技術】従来、光ディスクに記録された記録ピットに情報を読み出すレーザビームスポットを追従させるためにトラッキングサーボを行っている。トラッキングサーボを行うためのトラッキングエラー信号の検出方法としては、プッシュプル法、3ビーム法、3ビーム差動プッシュプル法が用いられている。」

ウ.「【0006】
【発明が解決しようとする課題】近年、光ディスクは、一層の高密度化が図られている。従来の光ディスクに対して記録ピット幅を狭めて、記録ピット列と記録ピット列との間の間隔(トラックピッチ)を狭め、また、最短の記録ピット長を短くした高密度光ディスクの実用化が検討されている。高密度光ディスクのように、記録ピット幅またはトラックピッチを狭くした記録ピット列にレーザビームスポットを追従させるためには、高精度に制御可能なトラッキングサーボが必要である。」

エ.「【0017】図2は、本発明の光ピックアップ装置における一実施例のトラッキングエラー信号検出を示す模式図である。(a)は、光ディスク面への回折ビームの照射状態を示し、(b)は、トラッキングエラー信号の検出状態を示す。図2(a)において、光ディスクは、記録ピット201が列をなして形成され、その記録ピット列202が、光ディスクの内周から外周方向に螺旋上に形成されている。本実施例では、トラックピッチ203が、記録ピット幅204の略2倍とする。また、情報の読み取り、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号の一部の検出には、0次回折ビーム205のビームスポットを用い、トラッキングエラー信号の検出には、高次回折ビームの+1次回折ビーム206a及び-1次回折ビーム206bのビームスポットを用いる。
【0018】図2(b)において、光検出器207は、0次回折ビーム205用の4分割ダイオード208と、+1次回折ビーム206a用及び-1次回折ビーム206b用の2個の2分割ダイオード209、210で構成されている。4分割ダイオード208は、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号の一部及び光ディスクに記録されたデータの信号成分を検出するものである。4分割ダイオード208は、光ディスクの記録ピット列の長さ方向及び前記長さ方向と直行する方向に4分割され、0次回折ビーム205が集光される。
【0019】2分割ダイオード209、210は、トラッキングエラー信号を検出するものである。2分割ダイオード209、210は、光ディスクの記録ピット列の長さ方向と略平行に2分割されており、+1次回折ビーム206a、-1次回折ビーム206bが集光される。
【0020】0次回折ビーム205は、信号を読み取る記録ピット列202a上に収束されている。+1次回折ビーム206aは、0次回折ビーム205が収束している記録ピット列202aより、光ディスクの外周側に隣接した記録ピット列202b上に収束している。-1次回折ビーム206bは、0次回折ビーム205が収束している記録ピット列202aより、光ディスクの内周側に隣接した記録ピット列202c上に収束している。
【0021】(省略)
【0022】0次回折ビーム205、+1次回折ビーム206a及び-1次回折ビーム206bは、記録ピット201により回折の影響を受け、光ディスクの反射膜によって反射し、反射戻り光として各光学素子を通り、光検出器207上に集光している。
【0023】4分割ダイオード208上には、0次回折ビーム205が集光している。4分割ダイオード208の受光素子208a、208b、208c、208dの出力の和をとり、光ディスクに記録されたデータの信号成分を検出する。また、受光素子208aと208cの和と受光素子208bと208dの和をとり、その和の差分をとりフォーカスエラー信号を検出する。さらに、受光素子208aと208bの和と受光素子208cと208dの和をとり、その和の差分をとり記録ピット列202aにおけるトラッキングエラー信号を検出する。このトラッキングエラー信号は、プッシュプル法による記録ピット列202aのトラッキングエラー信号である。
【0024】2分割ダイオード209上には+1次回折ビーム206aが集光し、2分割ダイオード210上には-1次回折ビーム206bが集光している。2分割ダイオード209において、受光素子209aと209bの差をとり記録ピット列202bにおけるトラッキングエラー信号を検出する。このトラッキングエラー信号は、プッシュプル法による記録ピット列202bのトラッキングエラー信号である。2分割ダイオード210において、受光素子210aと210bの差をとり記録ピット列202cにおけるトラッキングエラー信号を検出する。このトラッキングエラー信号は、プッシュプル法による記録ピット列202cのトラッキングエラー信号である。
【0025】4分割ダイオード208で検出したトラッキングエラー信号と2個の2分割ダイオード209、210で検出したトラッキングエラー信号の和をとることにより、SN比の高いトラッキングエラー信号を得ることができる。つまり、4分割ダイオード、2個の2分割ダイオードで検出したそれぞれのトラッキングエラー信号は、プッシュプル法によるそれぞれの回折ビームが照射した記録ピット列のトラッキングエラー信号である。
【0026】記録ピット列に照射したレーザビームが記録ピット上に照射されると記録ピットにより回折され、反射戻り光として光検出器に照射する。記録ピットに対して回折ビームのビームスポットが最適な大きさよりも大きい場合、記録ピットによるレーザビームの回折が少ないため、全反射戻り光量に対する記録ピットの回折による反射戻り光量が少なく、すなわちトラッキングエラー信号の振幅が小さくなる。それぞれ別々の記録ピット列から得たトラッキングエラー信号を加算することにより、振幅の大きい、すなわちSN比の高いトラッキングエラー信号を得ることができる。」

上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「記録ピット列上に照射する0次回折ビームと、往路光学系中に設けた回折格子により発生した複数の高次回折ビームとを有し、前記0次回折ビームと前記複数の高次回折ビームとを対物レンズにより前記記録ピット列上に収束照射させ前記記録ピット列からの反射戻り光量から光ディスクの情報を読み出す装置において、前記0次回折ビームの反射戻り光量を前記記録ピット列と略平行に少なくとも2分割された領域で受光し前記反射戻り光の出力の差分をとる第1の信号検出部と、前記複数の高次回折ビームの反射戻り光量をそれぞれ前記記録ピット列と略平行に少なくとも2分割された領域で受光しそれぞれの前記反射戻り光の出力の差分をとる第2の信号検出部と、前記第1の信号検出部及び前記第2の信号検出部の信号の和からトラッキングエラー信号を得る第3の信号検出部とを具備し、
前記光ディスクは、記録ピットが列をなして形成され、その記録ピット列が、光ディスクの内周から外周方向に螺旋上に形成され、トラックピッチが、記録ピット幅の略2倍である
装置。」

(2)当審の拒絶の理由に引用された特開平9-204681号公報(平成9年8月5日公開。以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

オ.「【0113】例えば、図27に示すように、CDを再生する場合において、ノーマライズドディテクタサイズを変化させると、ジッタが変化する。」

カ.「【0117】ジッタが8%より大きくなると、実質的にデータを再生することが困難になるので、ジッタを8%以下にすることが好ましい。そこで、例えば、ジッタを8%以下に抑えるようにするには、ノーマライズドディテクタサイズは、約16μm以下にするとともに、約1.8μm以上にする必要がある。
【0118】さらに、ジッタの値を7%以下に抑制するには、ノーマライズドディテクタサイズを約14μm以下、かつ、約2μm以上とするのが好ましい。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「記録ピット」は、「記録ピット列からの反射戻り光量から光ディスクの情報を読み出す」からみて、本願発明の「情報信号を示すピット」に相当する。

(2)引用発明の「記録ピット列」は、「記録ピットが列をなして形成され、その記録ピット列が、光ディスクの内周から外周方向に螺旋上に形成され」からみて、本願発明の「記録トラック」に相当する。

(3)引用発明の「光ディスク」は、「前記光ディスクは、記録ピットが列をなして形成され、その記録ピット列が、光ディスクの内周から外周方向に螺旋上に形成され」からみて、本願発明の「情報信号を示すピットが記録トラックに沿って形成された光記録媒体」に相当する。

(4)引用発明の
「前記0次回折ビームの反射戻り光量を前記記録ピット列と略平行に少なくとも2分割された領域で受光し前記反射戻り光の出力の差分をとる第1の信号検出部と、前記複数の高次回折ビームの反射戻り光量をそれぞれ前記記録ピット列と略平行に少なくとも2分割された領域で受光しそれぞれの前記反射戻り光の出力の差分をとる第2の信号検出部と、前記第1の信号検出部及び前記第2の信号検出部の信号の和からトラッキングエラー信号を得る第3の信号検出部」
は、引用例1の段落【0023】?【0025】も参照すると、第1の信号検出部及び第2の信号検出部がそれぞれプッシュプル法によるトラッキングエラー信号を検出するものであり、第3の信号検出部がその和をとるものであるから、本願発明の「プッシュプル法」を備えている。

(5)引用発明の
「記録ピット列上に照射する0次回折ビームと、往路光学系中に設けた回折格子により発生した複数の高次回折ビームとを有し、前記0次回折ビームと前記複数の高次回折ビームとを対物レンズにより前記記録ピット列上に収束照射させ前記記録ピット列からの反射戻り光量から光ディスクの情報を読み出す装置」
は、
「前記0次回折ビームの反射戻り光量を前記記録ピット列と略平行に少なくとも2分割された領域で受光し前記反射戻り光の出力の差分をとる第1の信号検出部と、前記複数の高次回折ビームの反射戻り光量をそれぞれ前記記録ピット列と略平行に少なくとも2分割された領域で受光しそれぞれの前記反射戻り光の出力の差分をとる第2の信号検出部と、前記第1の信号検出部及び前記第2の信号検出部の信号の和からトラッキングエラー信号を得る第3の信号検出部」
を具備すること、及び、引用例1の段落【0002】、【0006】からみて、本願発明の「情報信号を示すピットが記録トラックに沿って形成された光記録媒体に対して、光を照射して、プッシュプル法」「によりトラッキングサーボを行い」「再生を行う光記録再生装置」に相当する。

(6)引用発明の「トラックピッチが、記録ピット幅の略2倍である」は、記録ピット幅とトラックピッチとの比が約0.5であるから、本願発明の「再生の対象となる光記録媒体に形成されたピットの幅PwとトラックピッチTpとの比Pw/Tpが、0.44?0.55の範囲内にあり」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明との<一致点>は、次のとおりである。

<一致点>
「情報信号を示すピットが記録トラックに沿って形成された光記録媒体に対して、光を照射して、プッシュプル法によりトラッキングサーボを行い、再生を行う光記録再生装置であって、
再生の対象となる光記録媒体に形成されたピットの幅PwとトラックピッチTpとの比Pw/Tpが、0.44?0.55の範囲内にあ(る)光記録再生装置。」

択一的な特定事項については、いずれかの選択肢と一致すれば十分であって、その他の選択肢について相違点とする必要がないから、<相違点>は、次のとおりである。

<相違点>
本願発明が「上記光記録媒体の再生信号のジッター値が7.5%以下となされている」との特定を有するのに対し、引用発明が、そのような特定を有しない点。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。
引用例2には、CDを再生する場合において、ジッタが8%より大きくなると、実質的にデータを再生することが困難になること、及び、ジッタの値を7%以下に抑制することが記載されている。
一方、引用発明と、引用例2に記載された発明とは、光ディスクの再生という同一の技術分野に属する。
また、技術常識を参酌するに、引用発明においても、再生信号にジッタが生じること、及び、データの再生が困難とならないようにすべきことは当然である。
加えて、本願の明細書又は図面には、ジッタ-値が7%より大きく、7.5%以下において格別な効果を示すデータは記載されていない。
してみれば、引用発明において、再生信号のジッタによって再生が困難とならないように、引用例2に記載された発明の、ジッタの値を(余裕を持たせて)7%以下に抑制する点を採用し、本願発明の「上記光記録媒体の再生信号のジッター値が7.5%以下となされている」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

なお、審判請求人は、平成23年2月14日付けの意見書において、「文献(2)には、光記録媒体のPw/Tpとジッター値との因果関係を示す示唆はありません。」、「文献(1)と文献(2)とを組み合わせて本願発明を実現するための動機付けとなる記載は見当たらず」などと主張している。
しかしながら、本願発明は、光記録媒体についてPw/Tpを特定し、当該特定とは別に、光記録再生装置について再生信号のジッター値を特定しているにすぎないのであって、「光記録媒体のPw/Tpとジッター値との因果関係」なるものは、請求項に記載が無く、したがって、前記の請求人の主張は、請求項の記載に基づくものではない。また、上記のとおり、引用発明に対して引用例2に記載された発明を適用する十分な動機があるというべきである。
したがって、審判請求人の上記主張は採用できない。

また、本願発明の効果は、引用例1及び2に記載された発明から当業者が十分に予測可能なものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

したがって、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-15 
結審通知日 2011-06-21 
審決日 2011-07-07 
出願番号 特願平10-211499
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中野 和彦  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 石川 正二
早川 学
発明の名称 光記録再生装置  
代理人 伊賀 誠司  
代理人 小池 晃  

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