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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1242335
審判番号 不服2009-4150  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-26 
確定日 2011-08-25 
事件の表示 特願2002-286217「固体電解コンデンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月22日出願公開,特開2004-127997〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成14年9月30日の出願であって,平成21年1月20日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年2月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に,重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成し,このコンデンサ素子を有底筒状のケースに収納し,封ロゴムで封止してなる固体電解コンデンサにおいて,
前記封ロゴムのゴム厚と前記ケースの長さの比を0.28以下としたことを特徴とする固体電解コンデンサ。」

第3 刊行物に記載された発明
1 刊行物1:特開平10-335184号公報
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1には,「固体電解コンデンサ」(発明の名称)に関して,以下の事項が記載されている。(なお,下線は,引用箇所のうち特に強調する部分に付加した。以下,同様。)
「【請求項4】 化成皮膜を形成した陽極箔と対向陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子内に導電性ポリマー層を形成し,該コンデンサ素子を有底筒状の金属製ケースに収納し,該ケースの開口部に封口部材を装着した固体電解コンデンサにおいて,
前記封口部材は,貫通孔を有するゴム製の厚板からなり,
前記コンデンサ素子のリード線を前記封口部材の貫通孔に挿入すると共に該封口部材を前記ケースの開口部に押し込み,
前記ケースの開口部付近に絞り加工及びカール加工を施したことを特徴とする固体電解コンデンサ。」
「【0012】この固体電解コンデンサの製法をさらに詳述すると,まず,粗面化のためのエッチング処理及び誘電体皮膜形成のための化成処理を施したアルミニウム箔を陽極箔とし,該陽極箔と対向陰極箔とをセパレータ紙を介して円筒状に巻き取ったコンデンサ素子を準備する。一方で,3,4-エチレンジオキシチオフェンの単量体と酸化剤としてのパラトルエンスルホン酸鉄(III)とを適量ずつ混合した化学重合液を準備する。そして,前記コンデンサ素子を前記化学重合液に浸漬した後,100℃よりやや高めの温度で熱処理することにより,前記コンデンサ素子の両極間に3,4-エチレンジオキシチオフェンのポリマー層を形成する。」
以上から,刊行物1には,
「陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子内に導電性ポリマー層を形成し,該コンデンサ素子を有底筒状の金属製ケースに収納し,ゴム製の厚板からなる封口部材を該ケースの開口部に装着した固体電解コンデンサ。」(以下「引用発明」という。)が記載されている。

2 刊行物2:特開2000-30988号公報
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物2には,「電解コンデンサ」(発明の名称)に関して,以下の事項が記載されている。
「【0004】また,この問題を解決するため,弾性封口体を成形するときにその表面に段を設けたものが使用されているが,樹脂板を設けた弾性封口体と同じ厚みのものでは,樹脂板による補強がないため,電解コンデンサ内部の圧力が高くなったときに,弾性封口体が内部の圧力により外側に膨らみ,防爆機能が作動する前に封口体が飛び出し,防爆機能が働かないという問題があった。また,強度を増すためには,弾性封口体の厚みを厚くする必要があり,ケースに収納可能な素子の寸法を小さくしてしまう欠点があった。」
「【0010】〔実施例1〕図1(イ)は本発明の実施例による,弾性封口体の樹脂板4表面側に弾性体による凸部5を施した電解コンデンサの平面図であり,(ロ)は(イ)のA-A’線による断面図である。コンデンサ素子1より導出した引出しリード8を,樹脂板4を配置してなる弾性封口体2に設けたリード挿通孔に挿通させ,上記コンデンサ素子1を円筒状金属ケース3に収納し,金属ケース3を上締め封止する。ここで樹脂板4を配置した弾性封口体2は,直径19mm,凸部の厚みを除いた厚み5.5mm,成形時に弾性体を押し出すための貫通孔は直径0.8mm,孔数8個,樹脂板の厚みは1mmであり,樹脂板表面に成形された凸部は高さ1.1mmの三日月形である。この封口体を使用して,外径20mm,長さ40mmで定格10V-22000μFのアルミニウム電解コンデンサを20個作製した。」
「【0013】〔従来例2〕図4(イ)は他の従来例による,弾性封口体2に凸部5を形成した電解コンデンサの平面図であり,(ロ)は(イ)のA-A’線による断面図である。弾性封口体2は,樹脂板が配置されておらず,実施例1と同形状,同寸法である。この封口体を使用して,実施例1と同様の仕様,方法で電解コンデンサを作製した。」

第4 本願発明と引用発明との対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ゴム製の厚板からなる封口部材」は,本願発明の「封口ゴム」に相当する。
引用発明の「ケース開口部に装着した」は,本願発明の「封止してなる」に相当する。
導電性ポリマーを,重合性モノマーと酸化剤の化学酸化重合により形成し,固体電解質とすることは,引用例1の【0012】にも開示されるように,周知の技術であるから,引用発明の「導電性ポリマー層を形成し,」は,本願発明の「重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成し,」に相当するのは明らかである。
ゆえに,両者は
「陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に,重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成し,このコンデンサ素子を有底筒状のケースに収納し,封ロゴムで封止してなる固体電解コンデンサ。」である点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1]本願発明は,「前記封ロゴムのゴム厚と前記ケースの長さの比を0.28以下と」するという構成を備えているのに対し,引用発明はそのような構成が明示されていない点。

そこで,上記相違点について検討する。
[相違点1について]
固体電解コンデンサにおいて,大容量化と等価直列抵抗の低減を図ることは,当然の技術課題であり,この課題解決のために,ケース内のスペースを大きくしてコンデンサ素子の箔面積を拡大させることは,必然的な技術的要請であるといえる。
そして,引用例2の段落【0004】に記載されるように,封口ゴムの厚さが厚すぎると,素子の寸法が小さくなってしまうことが公知であるから,必要長さの素子寸法を得るため,封口ゴムの厚さを比較的薄くし,ケースの長さを長くすると,封口ゴムのゴム厚/ケースの長さの値は小さくなるのが自明である。
また,引用例2の従来例2には,封口ゴムのゴム厚/ケースの長さを5.5mm/40mm≒0.138すなわち0.28以下とすることが記載され公知であり,封口ゴムのゴム厚/ケースの長さを0.28以下とすることは,通常とり得る値である。
なお,引用例2は電解液を用いた電解コンデンサであるから,内部圧力が高くなったときに封口ゴムの飛び出しが起こるとしても,この値を導電性ポリマーを固体電解質として用いた固体電解コンデンサに適用した場合,本願発明のように,封口ゴムの飛び出しは起こらないのであるから,この値を選択することは,当業者にとって,容易なことである。
さらに,引用発明の図3において,封口ゴムのゴム厚/ケースの長さの値は,0.28より十分小さいものとなっていることが見てとれるから,引用発明が厚い封口ゴムを想定していないことは明らかである。
したがって,引用発明において,本願発明のように,「前記封ロゴムのゴム厚と前記ケースの長さの比を0.28以下と」するのは,当業者が容易になし得た事項である。

したがって,本願発明は,刊行物1?2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1?2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-24 
結審通知日 2011-06-28 
審決日 2011-07-11 
出願番号 特願2002-286217(P2002-286217)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 弘亘岸本 泰広  
特許庁審判長 齋藤 恭一
特許庁審判官 大澤 孝次
小野田 誠
発明の名称 固体電解コンデンサ  
代理人 木内 光春  
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