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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1242359
審判番号 不服2010-4986  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-08 
確定日 2011-08-25 
事件の表示 特願2004- 16950「プルリング付きキャップ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 8月 4日出願公開、特開2005-206222〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年1月26日の出願であって、平成21年12月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月8日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に、特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正がなされたものである。
そして、当審において、平成23年3月31日付けで拒絶理由が通知され、それに対して、平成23年6月6日に特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成23年6月6日の手続補正により補正された請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「天面と該天面の外周縁から下方に延び容器の口部外周に嵌着されるスカートと天面の内面から下方に延び容器の口部内周に嵌着されるインナーリングとを有する合成樹脂製のキャップ本体と、該キャップ本体を被嵌する天板と該天板の外周縁から下方に延びる側壁を有する外蓋とからなるキャップであって、
前記キャップ本体の天面には破断可能な薄肉部によって区画された注出口形成部と、該注出口形成部より外側でインナーリングの上方位置には切欠き部を有する内容物注出壁が形成されているとともに、前記切欠き部側の前記注出口形成部の外周位置に基端部を有する支柱が形成され、該支柱は上方先端にプルリングが形成され、該基端部から該上方先端にむかって径方向外方かつ斜め上方に傾斜して立設され、前記プルリングは、前記内容物注出壁より上方に位置してなるとともに、前記プルリングの内径は、前記内容物注出壁内径とほぼ同程度またはそれ以上にされ、かつ、前記注出口形成部の内径以上に形成されており、前記外蓋の天板内面には、該天板内面から垂下し、前記内容物注出壁の外方で前記キャップ本体の天面に圧接する環状のコンタクトリングが形成されている、
ことを特徴とするプルリング付きキャップ。」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)


3.刊行物及び刊行物に記載された発明

〔刊行物1とその記載事項〕
当審の拒絶理由において引用された本願出願日前に頒布された刊行物である実願昭63-111310号(実開平02-031867号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(a)「この実施例はプルリング付き容器キャップに適用したものであり、この容器キャップは容器の口筒部31に嵌着する中栓Aと外キャップBとからなっている。
中栓Aは天蓋部5の周囲に容器の口筒部31に内嵌すべき栓筒5aを有しているもので、天蓋部5はその中央部を弱め線6で包囲してあり、この弱め線6で包囲した部分が除去可能部7となっている。この除去可能部7からはポール8が立設されており、このポール8の先端にはプルリング9が設けられている。また、除去可能部7の周囲には注ぎ口10が立設されている。
また、前記外キャップBは前記栓筒5aの周囲を囲うとともに容器の口筒部31に外嵌する外嵌筒4を有し、この外嵌筒4の上側縁には反転ヒンジ11を介して中栓Aの上面を開閉するキャップ12が取り付けられている。 前記中栓Aを構成する栓筒5a、天蓋部5、除去可能部7、ポール8、プルリング9、及び注ぎ口10は軟質合成樹脂であるポリエチレンで形成され、一方、外キャップBを構成する外嵌筒4、反転ヒンジ11及びキャップ12は比較的硬質のポリプロピレンで形成されている。」(第6頁第19行?第8頁第1行)

要するに、上記摘示記載(a)には、特に第1図乃至第3図を参照すれば、以下の事項が記載されていると解することができる。
(あ)容器の口筒部31には外嵌筒4が外嵌し、栓筒5aが内嵌する。
(い)天蓋部5の外周縁から外嵌筒4が下方に延びている。
(う)天蓋部5、外嵌筒4、栓筒5aは合成樹脂製である。
そして、第1図によれば、プルリング9は、注ぎ口10より上方に位置していること、また、第1図及び第3図から、注ぎ口10は切欠き部を有することが見て取れる。

以上のことから、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「天蓋部5と該天蓋部5の外周縁から下方に延び容器の口筒部31外周に外嵌する外嵌筒4と天蓋部5の内面から下方に延び容器の口筒部31に内嵌する栓筒5aとを有する合成樹脂製の中栓A及び外嵌筒4と、該中栓A及び外嵌筒4を被嵌する天板と該天板の外周縁から下方に延びる側壁を有する外キャップBとからなる容器キャップであって、前記中栓Aの天蓋部5には破断可能な弱め線6で包囲された除去可能部7と、該除去可能部7の周囲には切欠き部を有する注ぎ口10が形成されているとともに、前記切欠き部側の前記除去可能部7の外周位置に基端部を有するポール8が立設され、該ポール8は上方先端にプルリング9が形成され、前記プルリング9は、前記注ぎ口10より上方に位置してなるプルリング付き容器キャップ。」

〔刊行物2の1とその記載事項〕
当審の拒絶理由において引用された本願出願日前に頒布された刊行物である特開平6-144456号公報(以下、「刊行物2の1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(b)「【0013】図3および図4が示す第2実施例のプルリング付きキャップは、注出筒5が囲む頂壁部分の中央部から、連結片10を頂壁2の上面に沿ってキャップ本体前方へ延出し、かつその前端から上前方へ傾斜させて該傾斜部分にプルリング11を付設している。」
そして、図3からも、プルリング11を付設している連結片10は、傾斜していることが見て取れる。
〔刊行物2の2とその記載事項〕
当審の拒絶理由において引用された本願出願日前に頒布された刊行物である特開平9-226806号公報(以下、「刊行物2の2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(c)「【0015】また、この切り取り蓋10を切断除去するために、切り取り蓋10上面より指掛け部11を一体に突設する。指掛け部11として、図示例の如く、切り取り蓋10後部中央より起立させた棒状突起12の上端に後端部を一体に連結して注出筒6内上部に水平状に延設したプルリング13を設けている。」
そして、図1、図5からも、上端にプルリング13を設けている棒状突起12は、傾斜していることが見て取れる。

〔刊行物3とその記載事項〕
当審の拒絶理由において引用された本願出願日前に頒布された刊行物である実願昭62-036316号(実開昭63-144465号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(d)「【実用新案登録請求の範囲】キヤツプ状であつて、頂壁1上面から筒状の注ぎ出し口2を立設し、この注ぎ出し口2内側の頂壁1部に破断線3により破断帯4を形成し、この破断帯4の一部から上方にプルリング5を起立し、前記破断帯4裏面に、容器体6の口頸部7に嵌着したときこの口頸部7開口を封止する不透化性の高い合成樹脂材のバリヤーフイルム8を接着した合成樹脂製口栓。」
(e)「14は口頸部7外面に螺着するキャップで、頂部裏面から口栓の上面周縁を押える垂下周壁15、また注ぎ出し口2に内嵌する環栓16を垂下している。」(第5頁第3行?第6行)


4.対比・判断
引用発明における「天蓋部5」は、本願発明における「天面」に相当し、以下同様に、「口筒部31」は「口部」に、「外嵌筒4」は「スカート」に、「栓筒5a」は「インナーリング」に、「中栓A」は「キャップ本体」に、「外キャップB」は「外蓋」に、「容器キャップ」は「キャップ」に、「弱め線6」は「薄肉部」に、「除去可能部7」は「注出口形成部」に、「注ぎ口10」は「内容物注出壁」に、「ポール8」は「支柱」に、「プルリング付き容器キャップ」は「プルリング付きキャップ」にそれぞれ相当している。

そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、

(一致点)
「天面と該天面の外周縁から下方に延び容器の口部外周に嵌着されるスカートと天面の内面から下方に延び容器の口部内周に嵌着されるインナーリングとを有する合成樹脂製のキャップ本体と、該キャップ本体を被嵌する天板と該天板の外周縁から下方に延びる側壁を有する外蓋とからなるキャップであって、前記キャップ本体の天面には破断可能な薄肉部によって区画された注出口形成部と、該注出口形成部より外側には切欠き部を有する内容物注出壁が形成されているとともに、前記切欠き部側の前記注出口形成部の外周位置に基端部を有する支柱が立設され、該支柱は上方先端にプルリングが形成され、前記プルリングは、前記内容物注出壁より上方に位置してなるプルリング付きキャップ。」

である点で一致し、次の点で相違している。

(相違点1)
本願発明においては、インナーリングの上方位置に内容物注出壁が形成されているのに対して、引用発明においては、栓筒5aと注ぎ口10がそのような位置関係にはなっていない点。
(相違点2)
本願発明においては、支柱は基端部から上方先端にむかって径方向外方かつ斜め上方に傾斜して立設されており、そして、プルリングの内径は、内容物注出壁内径とほぼ同程度またはそれ以上で、かつ、注出口形成部の内径以上に形成されているのに対して、引用発明においては、ポール8は上記のように立設されているか否かが明確ではなく、そして、プルリング9の内径は、注ぎ口10内径とほぼ同程度またはそれ以上で、かつ、除去可能部7の内径以上に形成されているのか否かも明確ではない点。
(相違点3)
本願発明においては、外蓋の天板内面には、該天板内面から垂下し、内容物注出壁の外方でキャップ本体の天面に圧接する環状のコンタクトリングが形成されているのに対して、引用発明においては、該構成を備えていない点。

そこで、上記相違点について検討する。

(相違点1)について
プルリング付きキャップにおいて、インナーリングの上方位置に内容物注出壁が形成されているものは、本願出願前周知のもの(例えば、上記の刊行物2の1、刊行物2の2を参照)であるから、引用発明において、栓筒5aの上方位置に注ぎ口10が形成されているものとすることは、当業者が容易になし得ることと認められる。
(相違点2)について
上記「3.刊行物及び刊行物に記載された発明」における「〔刊行物2の1とその記載事項〕 」及び「〔刊行物2の2とその記載事項〕 」に記載したように、プルリング付きキャップにおいて、支柱が基端部から上方先端にむかって径方向外方かつ斜め上方に傾斜して立設されているものは、本願出願前周知のものであるから、引用発明において、ポール8をそのような形状にすることは、当業者が適宜なし得たものにすぎず、また、引用発明において、ポール8を基端部から上方先端にむかって径方向外方かつ斜め上方に傾斜して立設させることによって、プルリング9の内径を、注ぎ口10内径とほぼ同程度またはそれ以上にし、かつ、除去可能部7の内径以上に形成することは当業者が適宜行える事項にすぎない。
(相違点3)について
上記「3.刊行物及び刊行物に記載された発明」における「〔刊行物3とその記載事項〕」の摘示事項(d)(e)によれば、刊行物3に記載された発明は、プルリング5を起立した合成樹脂製口栓は、キャップ14の頂部裏面に、注ぎ出し口2に内嵌する環栓16を垂下させて、密封性を確保しているが、前記環栓16は、注ぎ出し口2に内嵌するものでなくても、要するに、破断線3で囲まれた破断帯4よりも外側に設ければ密封性を確保することができるものであるから、引用発明において、密封性を確保するために、外キャップBの天板内面に、該天板内面から垂下し、注ぎ口10の外方で中栓Aの天蓋部5に圧接する環状のコンタクトリングを形成することは、当業者が適宜行えることであると認められる。

そして、本願発明を全体構成でみても、本願発明が奏する効果は、引用発明及び刊行物2、3に記載された発明から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。

したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2、3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願日前に頒布された刊行物1乃至3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-23 
結審通知日 2011-06-28 
審決日 2011-07-11 
出願番号 特願2004-16950(P2004-16950)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山村 秀政  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 佐野 健治
豊島 ひろみ
発明の名称 プルリング付きキャップ  
代理人 庄子 幸男  

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