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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1242369
審判番号 不服2010-12239  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-07 
確定日 2011-08-25 
事件の表示 特願2004-297882号「アースジョイントコネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月27日出願公開、特開2006-114245号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年10月12日の出願であって、平成22年4月13日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年4月20日)、これに対し、同年6月7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成22年6月7日付け手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成22年6月7日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本件補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前(平成21年10月6日付け手続補正書)に、
「【請求項1】
相手側のコネクタと嵌合可能なコネクタハウジングには平板状の端子金具が装着され、この端子金具は、相手側との接続がとられる複数のタブを突出させた接続部と、前記コネクタハウジングの外部に突出した状態で接地部に固着される取付部と、前記取付部と前記接続部との間に位置して前記コネクタハウジングの内部に埋設される装着部とを備え、
前記取付部には二枚の板を折り重ねた二重板構造部が形成され、この二重板構造部は、前記コネクタハウジングの外部に臨み、かつ一部が前記コネクタハウジングの内部に埋め込まれており、
前記接続部、前記装着部、及び前記取付部は、それぞれ前記相手側のコネクタとの嵌合方向に並んで配置され、
前記複数のタブは、それぞれ前記嵌合方向と直交する方向に並んで配置され、
前記二重板構造部は、前記装着部に連なる基板部と、前記基板部の側縁から嵌合方向と直交する方向に張り出す部分を内側へ折り返すことで前記基板部に重ね合わされる折り返し部とで構成されることを特徴とするアースジョイントコネクタ。」
とあったものを、

「【請求項1】
相手側のコネクタと嵌合可能なコネクタハウジングには平板状の端子金具が装着され、この端子金具は、相手側との接続がとられる複数のタブを突出させた接続部と、前記コネクタハウジングの外部に突出した状態で接地部に固着される取付部と、前記取付部と前記接続部との間に位置して前記コネクタハウジングの内部に埋設される装着部とを備え、
前記取付部には二枚の板を折り重ねた二重板構造部が形成され、この二重板構造部は、前記コネクタハウジングの外部に臨み、かつ一部が前記コネクタハウジングの内部に埋め込まれており、
前記接続部、前記装着部、及び前記取付部は、それぞれ前記相手側のコネクタとの嵌合方向に並んで配置され、
前記複数のタブは、それぞれ前記嵌合方向と直交する方向に並んで配置され、
前記二重板構造部は、
前記装着部に連なり、ボルト通し孔が貫通して形成された基板部と、
前記基板部の両側縁から嵌合方向と直交する方向に張り出す部分を内側へ折り返して互いの自由端同士を向かい合わせた形態とされ、その自由端に、前記ボルト通し孔と整合して、前記ボルト通し孔に挿入されたボルトの頭部で締め付けられる一対の切り欠きが形成された折り返し部とで構成されることを特徴とするアースジョイントコネクタ。」
と補正(下線は補正箇所を示す。)するものである。

上記補正は、願書に最初に添付した明細書の段落【0018】及び段落【0020】並びに図3ないし7を根拠として、基板部について「ボルト通し孔が貫通して形成された」と限定し、折り返し部について「折り返すことで前記基板部に重ね合わされる」を「折り返して互いの自由端同士を向かい合わせた形態とされ、その自由端に、前記ボルト通し孔と整合して、前記ボルト通し孔に挿入されたボルトの頭部で締め付けられる一対の切り欠きが形成された」と限定すると共に、「側縁」を「両側縁」としたものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2 刊行物
(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2004-192991号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア 段落【0010】
「【0010】
アースジョイントコネクタ10は、同じく合成樹脂からなるコネクタハウジング11を備えている。このコネクタハウジング11は扁平なブロック状をなし、互いに反対側の面に相手コネクタとの嵌合面12,13を設定している。
一方の嵌合面12には、図2に示すように、第1コネクタ30Aを嵌合可能な1個の第1嵌合凹部15Aが形成されている。第1嵌合凹部15Aの天井面には、第1コネクタ30Aのハウジング31に設けられたロックアーム36が挿入可能な溝16、及び保護壁37、リブ38が挿入可能な溝17がそれぞれ形成され、ロックアーム36が挿入される溝16には、図5に参照して示すようにロックアーム36に形成されたロック孔36Aに嵌まるロック突部18が形成されている。」

イ 段落【0012】?段落【0014】
「【0012】
コネクタハウジング11内には、アース端子20が装着されている。アース端子20は、細長いバスバー21がクランク状に3段に折り曲げ形成され、下段のバスバー21については、図6の手前側の端縁から複数本のタブ23が並んで突設され、中段と上段のバスバー21では、両端縁からタブ23が突設されている。また、下段のバスバー21の自由端側には、取付孔26が開口された幅広のアース板25が、一段下がった状態で一体に形成されている。
【0013】
このアース端子20は、インサート成形によってコネクタハウジング11内に装着されている。具体的には、一連に繋がった3段のバスバー21が中間壁14に埋設され、アース板25はコネクタハウジング11の一側面のうちの一方の嵌合面12側に寄った位置の下部から外方に向けて突出している。
またタブ23は、第1嵌合凹部15A側では、その奥面から2段に分かれて第1嵌合凹部15A内に突出している。反対側では、第2及び第4嵌合凹部15B,15Dについては奥面から3段に分かれ、第3嵌合凹部15Cでは奥面から2段に分かれて突出している。
【0014】
本実施形態に係るアースジョイントコネクタ10の使用方法の一例は、以下のようである。
まず、第1嵌合凹部15Aに対して第1コネクタ30Aが嵌合され、ロックアーム36のロック孔36Aにロック突部18が嵌まることでロックされる。第1コネクタ30Aに収容された雌端子41は、第1嵌合凹部15Aの奥面から突出した対応するタブ23と嵌合接続される。
また、反対側の嵌合面13の3個の第2ないし第4嵌合凹部15B?15Dに対して、第2ないし第4コネクタ30B?30Dが順次に嵌合され、それぞれ同様にロックされる。それに伴い、各コネクタ30B?30Dに収容された雌端子41は、嵌合凹部15B?15Dの奥面から突出した対応するタブ23と嵌合接続される。
最後に、アース端子20のアース板25を車両のボディ等のアース用部材にボルト45(図1参照)で締め付けて固定する。
これによって、各相手コネクタ30A?30Dに収容された雌端子41、ひいてはそれに接続されたアース用電線40が、アース端子20を介してアースに落とされる。」

ウ 図1ないし4及び6には、アース板25がバスバー21に連なること、アース板25にはボルト45が貫通する取付孔26が設けられた板状の部分があり、当該板状の部分の周縁の一部が上方へわずかに屈曲すること、アース板25がコネクタハウジング11の外部に臨み、コネクタハウジング11との境界において、前記屈曲した部分の一部がコネクタハウジング11の内部に埋め込まれることが開示されている。

エ 図3ないし6には、複数のタブ23及びバスバー21は、それぞれ相手側のコネクタとの嵌合方向に並んで配置され、アース板25は前記嵌合方向に直交して配置されることが開示されている。

オ 図1には、アース板25の取付孔26に挿入されたボルト45の頭部がアース板25の板状の部分に係止されることが開示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合し、本件補正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1に記載された発明」という。)が記載されている。

「相手側のコネクタと嵌合可能なコネクタハウジング11にはアース端子20が装着され、このアース端子20は、相手側との接続がとられる複数のタブ23を突出させ、前記コネクタハウジング11の外部に突出した状態でアース用部材に固着されるアース板25と、前記アース板25と前記複数のタブ23との間に位置して前記コネクタハウジング11の内部に埋設されるバスバー21とを備え、
前記アース板25の板状の部分の周縁の一部が上方へわずかに屈曲し、アース板25はコネクタハウジング11の外部に臨み、かつ屈曲した部分の一部がコネクタハウジング11の内部に埋め込まれ、
前記複数のタブ23、前記バスバー21は、それぞれ前記相手側のコネクタとの嵌合方向に並んで配置され、前記アース板25は前記嵌合方向に直交して配置され、
前記複数のタブ23は、それぞれ前記嵌合方向と直交する方向に並んで配置され、
前記アース板25は、
前記バスバー21に連なり、ボルト45が係止する取付孔26が貫通して形成された板状の部分と、
前記板状の部分の周縁の一部が上方へわずかに屈曲した部分とで構成されるアースジョイントコネクタ10。」

(2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2000-150038号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア 段落【0001】?段落【0003】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インサート成形コネクタに用いられる端子金具に関する。
【0002】
【従来の技術】インサート成形コネクタの一例として、特開平10-12319号公報に記載されたものが知られている。このものは、図14に示すように、導電性の金属板4の両側縁5を合わせるように折り重ねてなる二重構造の細長いタブ2を設けた雄側端子金具1を備えていて、この雄側端子金具1を金型内にセットしてキャビティに合成樹脂材を注入することにより、各タブ2の根元部分3を区画壁8で埋設したフード付きのハウジング7が形成されている。なお区画壁8の両側には、あとから別の合成樹脂材を充填して防水性を確保している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで雄側端子金具1のタブ2は、相手のコネクタと嵌合された場合に雌側端子金具に差し込まれて接続されるものであるから、所定の強度が必要であり、そのため上記のように、金属板4の両側縁5を合わせるように折り重ねてなる二重構造とされている。しかるに従来のものでは、特に区画壁8を形成する部分でタブ2の合わせ目6の回りに合成樹脂材が注入されるようになっているため、合わせ目6を通って合成樹脂材が先端側まで侵入して、タブ2の露出した先端側に合成樹脂材が付着した状態となるおそれがあった。そうすると、付着した合成樹脂材が汚れとなって外観が悪くなるばかりか、相手の雌側端子金具との間で接触不良を招くおそれもあった。本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、端子金具の合わせ目に樹脂が侵入するのを防ぐことを目的とするものである。」

イ 図14において、相手のコネクタとの嵌合方向が紙面上左右方向であることが明らかであり、タブ2が金属板4を折り重ねて二重構造となっているから、同図には、二重構造が、下側の金属板4と、前記下側の金属板4の側縁から嵌合方向と直交する方向に張り出す部分を内側へ折り返すことで前記下側の金属板4に重ね合わされる上側の金属板4とで構成されることが開示されている。

これらの記載事項及び図14からみて、刊行物2には、次の発明(以下「刊行物2に記載された発明」という。)が記載されている。

「タブ2には、上下二枚の金属板4を折り重ねた二重構造が形成され、
この二重構造は、ハウジング7の外部に臨み、かつタブ2の根元部分3がハウジング7の区画壁8内に埋設しており、
前記二重構造は、下側の金属板4と、前記下側の金属板4の両側縁から嵌合方向と直交する方向に張り出す部分を内側へ折り返すことで前記下側の金属板4に重ね合わされる上側の金属板4とで構成されるインサート成形用端子金具。」

(3)刊行物3
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2003-123865号公報(以下「刊行物3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア 段落【0008】前半
「【0008】本アース端子11は、導電性金属材料からなる1枚の板状体を所定形状に打ち抜いた後、曲げ加工を施して成形される。本アース端子11は、ボルト締結部12と、その後部に該ボルト締結部12と一体に形成された電線接続部13を有する。ボルト締結部12にはボルト貫通穴14が形成されている。」

この記載事項及び図1及び2からみて、刊行物3には、次の発明(以下「刊行物3に記載された発明」という。)が記載されている。

アース端子11のボルト締結部12は二枚の板を折り重ねた構造であって、二枚の板にはボルト貫通穴14が整合するように設けられたアース端子11。

(4)刊行物4
本願の出願前に頒布された特開平8-293333号公報(以下「刊行物4」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア 段落【0051】前半
「【0051】尚、導電部とモールド部との2層構造にする他、図10に示すオスターミナル72のように、導電材料によって、板状の主部73と該主部73の側縁に連続し主部73の略半分の幅の補助部74、74とを一体に形成し、該補助部74、74を主部73の上に折り重ねるようにしても良い。75は抜け止め用の係合孔である。」

イ 図10には、主部73に孔が貫通して形成されること、主部73の両側縁から張り出す部分を内側へ折り返して互いの端部同士を向かい合わせた形態とされた補助部74が、端部に主部73に貫通して形成された孔と整合して、一対の半月状の切り欠きを形成することが開示されている。

これらの記載事項及び図10からみて、刊行物4には、次の発明(以下「刊行物4に記載された発明」という。)が記載されている。

「主部73に、該主部73の側縁に連続し主部73の略半分の幅の補助部74を主部73の上に折り重ねる構造は、
孔が貫通して形成された主部73と、
前記主部73の両側縁から張り出す部分を内側へ折り返して互いの端部同士を向かい合わせた形態とし、その端部に、前記孔と整合して、一対の切り欠きが形成された補助部74とで構成されるオスターミナル。」

3 対比
本件補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「コネクタハウジング11」は本件補正発明の「コネクタハウジング」に相当し、以下同様に、「アース端子20」は「端子金具」に、「タブ23」は「タブ」に、「複数のタブ23」は、全体としてみると、バスバー21から突出し相手側のコネクタと嵌合接続するから、「接続部」に、「アース用部材」は「接地部」に、「アース板25」は「取付部」に、アース板25の「板状の部分」は「基板部」に、「バスバー21」は「装着部」に、「ボルト45」は「ボルト」に、「取付孔26」は「ボルト通し孔」に、「アースジョイントコネクタ10」は「アースジョイントコネクタ」にそれぞれ相当する。

そして、本件補正発明の「二重板構造部」が、取付部において二枚の板を折り重ねて形成したものであるから、刊行物1に記載された発明の「アース板25」と本件補正発明の「二重板構造部」とは、取付部という限りで共通する。
また、刊行物1に記載された発明の「板状の部分の周縁の一部が上方へわずかに屈曲した部分」と本件補正発明の「折り返し部」とは、基板部の側縁の屈曲部という限りで共通する。

したがって、両者は、
「相手側のコネクタと嵌合可能なコネクタハウジングには端子金具が装着され、この端子金具は、相手側との接続がとられる複数のタブを突出させた接続部と、前記コネクタハウジングの外部に突出した状態で接地部に固着される取付部と、前記取付部と前記接続部との間に位置して前記コネクタハウジングの内部に埋設される装着部とを備え、
前記複数のタブは、それぞれ前記嵌合方向と直交する方向に並んで配置され、
前記取付部は、
前記装着部に連なり、ボルト通し孔が貫通して形成された基板部と、
前記基板部の側縁の屈曲部とで構成されるアースジョイントコネクタ。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本件補正発明は、「平板状の」端子金具であって、「前記接続部、前記装着部、及び前記取付部は、それぞれ前記相手側のコネクタとの嵌合方向に並んで配置され」るのに対し、
刊行物1に記載された発明は、接触部及び装着部は、相手側のコネクタとの嵌合方向に並んで配置され、取付部は前記嵌合方向に直交して配置される点。

〔相違点2〕
本件補正発明は、「前記取付部には二枚の板を折り重ねた二重板構造部が形成され、この二重板構造部は、前記コネクタハウジングの外部に臨み、かつ一部が前記コネクタハウジングの内部に埋め込まれており」、「前記二重板構造部は」、基板部と「前記基板部の両側縁から嵌合方向と直交する方向に張り出す部分を内側へ折り返し」た「折り返し部」とで構成されるのに対し、
刊行物1に記載された発明は、取付部の基板部の周縁の一部が上方へわずかに屈曲し、取付部はコネクタハウジングの外部に臨み、かつ屈曲した部分の一部がコネクタハウジングの内部に埋め込まれており、取付部は基板部と前記基板部の周縁の一部が上方へわずかに屈曲した部分とで構成される点。

〔相違点3〕
本件補正発明は、折り返し部が「互いの自由端同士を向かい合わせた形態とされ、その自由端に、前記ボルト通し孔と整合して、前記ボルト通し孔に挿入されたボルトの頭部で締め付けられる一対の切り欠きが形成され」るのに対し、
刊行物1に記載された発明は、かかる構成を備えていない点。

4 当審の判断
そこで、各相違点について検討する。
(1)相違点1
本願の出願前に、平板状のアース用の端子金具において、接続部、装着部、及び取付部をそれぞれ相手側のコネクタとの嵌合方向に並んで配置することは、周知(例えば、実願昭62-104032号(実開昭64-9366号)のマイクロフィルムの第4図、特開平10-261456号公報の図11参照。)である。

そうしてみると、刊行物1に記載された発明の接触部、装着部及び取付部を、前記周知の技術事項に基づいて、相違点1に係る本件補正発明の特定事項となるよう変更することは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2
本件補正発明と刊行物2に記載された発明とを対比すると、刊行物2に記載された発明の「タブ2」は本件補正発明の「タブ」に相当し、以下同様に、「上下二枚の金属板4」は「二枚の板」に、「上下二枚の金属板4を折り重ねた二重構造」は「二枚の板を折り重ねた二重板構造部」に、「ハウジング7」は「コネクタハウジング」に、「タブ2の根元部分3」は「一部」に、「ハウジング7の区画壁8内」は「コネクタハウジングの内部」に、「下側の金属板4」は「基板部」に、「上側の金属板4」は「折り返し部」に、「インサート成形用端子金具」は「端子金具」に、それぞれ相当する。

そうすると、刊行物2に記載された発明は、「タブには、二枚の板を折り重ねた二重板構造部が形成され、この二重板構造部は、コネクタハウジングの外部に臨み、かつ一部がコネクタハウジングの内部に埋め込まれ、前記二重板構造部は、基板部と、前記基板部の両側縁から嵌合方向と直交する方向に張り出す部分を内側へ折り返すことで前記基板部に重ね合わされる折り返し部とで構成される端子金具。」と言い換えることができる。

そして、刊行物2に記載された発明の「二重構造部」は、タブが相手のコネクタと嵌合する場合、所定の強度が必要であるために形成されたものである。(前記第2の2(2))

一方、刊行物1に記載された発明の取付部が「基板部の周縁の一部が上方へわずかに屈曲し」「屈曲した部分の一部がコネクタハウジングの内部に埋め込まれる」構造であるのは、取付部に所定の強度を与えるためであることが明らかである。

刊行物1に記載された発明の「取付部」と刊行物2に記載された発明の「タブ」とは、端子金具を構成する部分であって、所定の強度を得るために、基板部の側縁を屈曲させ、その一部をコネクタハウジングに埋め込む点で共通する。

また、刊行物3に記載された発明は、ボルト締結部12を二枚の板を折り重ねた構造とするアース端子11に関するものである。

そうしてみると、刊行物1に記載された発明の「取付部」に、強度を確保するために、刊行物3に記載された発明も踏まえ、刊行物2に記載された発明の「タブ」の構造を適用し、相違点2に係る本件補正発明の特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(3)相違点3
本件補正発明と刊行物4に記載された発明とを対比すると、刊行物4に記載された発明の「主部73」、「補助部74」、「端部」、「オスターミナル」は、本件補正発明の「基板部」、「折り返し部」、「自由端」、「タブ」にそれぞれ相当し、同「主部73に、該主部73の側縁に連続し主部73の略半分の幅の補助部74を主部73の上に折り重ねる構造」は同「二重板構造部」に相当する。

そうすると、刊行物4に記載された発明は、「二重板構造部は、孔が貫通して形成された基板部と、前記基板部の両側縁から張り出す部分を内側へ折り返して互いの自由端同士を向かい合わせた形態とし、その自由端に、前記孔と整合して、一対の切り欠きが形成された折り返し部とで構成されるタブ。」と言い換えることができる。

刊行物4に記載された発明と刊行物2に記載された発明とは、二重板構造部を有する端子金具のタブにおいて、二重板構造部が基板部と前記基板部の両側縁から張り出す部分を内側へ折り返した折り返し部とで構成される点で共通する。

したがって、先に述べた、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された発明を適用するにあたって、刊行物4に記載された発明の二重板構造部の構造をさらに組み合わせることに、格別の困難性はない。

その際、刊行物4に記載された発明の「孔」が「ボルト通し孔」となり、同「一対の切り欠き」が「ボルト通し孔に挿入されたボルトの頭部で締め付けられる」ことは、当業者が容易に把握し得たことである。

そうしてみると、刊行物1に記載された発明に、刊行物2ないし4に記載された発明に基づいて、相違点3に係る本件補正発明の特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

また、全体としてみても、本件補正発明の奏する効果は、刊行物1ないし4に記載された発明及び前記周知の技術事項の組み合わせによって必然に生じるものであって、格別のものでない。

したがって、本件補正発明は、刊行物1ないし4に記載された発明及び前記周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成21年10月6日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2〔理由〕1」に補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明は、前記「第2〔理由〕2」に記載したとおりである。

3 対比及び当審の判断
本願発明は、前記「第2〔理由〕」で検討した本件補正発明において、基板部についての「ボルト通し孔が貫通して形成された」との限定を省き、折り返し部についての「折り返して互いの自由端同士を向かい合わせた形態とされ、その自由端に、前記ボルト通し孔と整合して、前記ボルト通し孔に挿入されたボルトの頭部で締め付けられる一対の切り欠きが形成された」を「折り返すことで前記基板部に重ね合わされる」とし、「両側縁」を「側縁」としたものである。

そうしてみると、本願発明と刊行物1に記載された発明との間には少なくとも相違点3は存在せず、したがって、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含んだものに相当する本件補正発明が、前記「第2〔理由〕3及び4」に記載したとおり、刊行物1ないし4に記載された発明及び前記周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、刊行物1ないし3に記載された発明及び前記周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1ないし3に記載された発明及び前記周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-21 
結審通知日 2011-06-28 
審決日 2011-07-12 
出願番号 特願2004-297882(P2004-297882)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 秀行佐々木 正章  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 冨岡 和人
青木 良憲
発明の名称 アースジョイントコネクタ  
代理人 特許業務法人グランダム特許事務所  

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