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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1242373
審判番号 不服2010-15389  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-09 
確定日 2011-08-25 
事件の表示 特願2004- 11225「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 8月 4日出願公開、特開2005-204680〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年1月19日の出願であって、平成22年4月9日付け(発送日:4月13日)で拒絶査定がされ、これに対し、同年7月9日に拒絶査定不服審判が請求され、同日付けで手続補正がなされたものである。


2.平成22年7月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年7月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成22年7月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
発射された遊技球が遊技者からみて左側から入球される遊技領域が形成された遊技盤と、
前記遊技領域における遊技球の流路を遊技者からみて左側流路と右側流路に分岐させるように配置された飾り部品と、
抽選の結果を示すための複数列の図柄の組み合わせからなる装飾図柄が変動表示される図柄表示領域と、
前記装飾図柄とは異なる態様で前記抽選の結果を示すための特別図柄が変動表示される特別図柄表示部と、
前記遊技領域における前記飾り部品の下方に設けられた始動入賞口と、
前記遊技領域における前記右側流路に設けられた第1の大入賞口と、
前記遊技領域において少なくとも前記左側流路を流れる遊技球が入球可能な位置であって前記第1の大入賞口よりも左側に設けられた第2の大入賞口と、
当該遊技機の全体的な動作および遊技の基本動作を主に制御する第1のCPUを含むメイン制御部と、
当該遊技機の演出的動作を主に制御する第2のCPUを含むサブ制御部と、
を備え、
前記メイン制御部と前記サブ制御部との間の通信が、前記メイン制御部から前記サブ制御部への一方向通信となるように構成され、
前記遊技領域の中央領域に前記装飾図柄が変動表示される一方、前記特別図柄が前記装飾図柄とは異なる位置で変動表示され、
前記メイン制御部は、
遊技球の前記始動入賞口への落入を示す始動入賞情報を取得する始動入賞処理部と、
前記始動入賞情報の取得を契機として前記抽選を実行し、その抽選の結果が大当たり又は外れのいずれであるか、さらに大当たりである場合には次に大当たりとなる確率が通常よりも高い状態である確率変動状態へ移行する確率変動付き大当たり又は通常の大当たりのいずれであるかを判定する当否決定部と、前記抽選の結果に応じて前記特別図柄の停止図柄を決定する特別図柄決定部と、前記特別図柄の変動時間を規定する前記特別図柄の表示パターンを決定する特別図柄パターン決定部とを有する抽選実行部と、
前記特別図柄パターン決定部により決定された表示パターンにしたがって前記特別図柄を変動表示させるとともに、前記特別図柄決定部により決定された停止図柄を停止表示させる特別図柄表示処理部と、
前記抽選の結果が大当たりであったときに前記第1の大入賞口または前記第2の大入賞口を選択的に開放する開閉制御部と、
を含み、前記抽選実行部により決定された情報をサブ制御部に送り、
前記特別図柄表示処理部は、前記特別図柄の変動開始時に前記サブ制御部に変動開始指示を送る一方、前記特別図柄の変動停止時に前記サブ制御部に変動停止指示を送り、
前記サブ制御部は、
前記メイン制御部から受信した前記抽選の結果に基づき、前記抽選による当否結果および前記特別図柄の停止図柄に予め対応づけられた前記装飾図柄の停止図柄として決定する装飾図柄決定部と、
前記特別図柄の表示パターンに予め対応づけられた前記装飾図柄の表示パターンを決定する装飾図柄パターン決定部と、
前記装飾図柄パターン決定部により決定された表示パターンにしたがって前記装飾図柄を変動表示させるとともに、前記装飾図柄決定部により決定された停止図柄を停止表示させる装飾図柄表示処理部とを含み、
前記装飾図柄決定部は、前記確率変動付き大当たり、前記通常の大当たり、および外れのそれぞれの結果について、前記装飾図柄の停止図柄を構成する複数列の図柄の組み合わせを複数種類選択対象として保持し、前記メイン制御部から受信された前記抽選の結果および前記特別図柄の停止図柄を示す情報に基づき、前記装飾図柄の停止図柄を構成する複数種類の図柄の組み合わせから一つを選択し、
前記装飾図柄表示処理部は、前記メイン制御部から前記変動開始指示を受信したときに前記装飾図柄の変動表示を開始し、前記メイン制御部から前記変動停止指示を受信したときに前記装飾図柄の停止図柄を表示させることで、1回の抽選の結果を示す表示処理を終了し、
前記開閉制御部は、前記確率変動付き大当たりである場合には、前記第1の大入賞口を開放することを特徴とする弾球遊技機。
【請求項2】
前記図柄表示領域内に前記特別図柄および前記装飾図柄の双方が変動表示されるとともに、前記特別図柄が前記装飾図柄の表示領域よりも隅の領域で変動表示されることを特徴とする請求項1に記載の弾球遊技機。」
に補正された。

本件補正は、補正前(平成22年2月17日付け手続補正は却下されたため、平成21年7月31日付け手続補正による補正)の請求項1において、
「左側」を「遊技者からみて左側」と変更し、
「左側流路」を「遊技者からみて左側流路」と変更し、
「抽選の結果を示すための図柄」を「抽選の結果を示すための複数の図柄の組み合わせからなる装飾図柄」と変更し、
「メイン制御部」を「第1のCPUを含むメイン制御部」と変更し、
「サブ制御部」を「第1のCPUを含むサブ制御部」と変更し、
そして、「前記装飾図柄とは異なる態様で前記抽選の結果を示すための特別図柄が変動表示される特別図柄表示部」および「前記遊技領域の中央領域に前記装飾図柄が変動表示される一方、前記特別図柄が前記装飾図柄とは異なる位置で変動表示され」という事項を付加し、
メイン制御部について「当否決定部と、前記抽選の結果に応じて前記特別図柄の停止図柄を決定する特別図柄決定部と、前記特別図柄の変動時間を規定する前記特別図柄の表示パターンを決定する特別図柄パターン決定部とを有する抽選実行部と、前記特別図柄パターン決定部により決定された表示パターンにしたがって前記特別図柄を変動表示させるとともに、前記特別図柄決定部により決定された停止図柄を停止表示させる特別図柄表示処理部」という事項、および「前記特別図柄表示処理部は、前記特別図柄の変動開始時に前記サブ制御部に変動開始指示を送る一方、前記特別図柄の変動停止時に前記サブ制御部に変動停止指示を送り」という事項を付加し、
さらに、サブ制御部における「前記メイン制御部から受信した前記抽選の結果に基づき、前記図柄の停止図柄として前記確率変動付き大当たりであることを示す停止図柄、前記通常の当たりであることを示す停止図柄、又は前記外れであることを示す停止図柄のいずれかを決定する図柄決定部と、前記抽選実行部により決定された変動時間を有するように、前記図柄の変動表示過程を示す表示パターンを決定するパターン決定部と、前記パターン決定部により決定された表示パターンにしたがって前記図柄を変動表示させるとともに、前記図柄決定部により決定された停止図柄を停止表示させる表示処理部と、を含み」という事項を「前記メイン制御部から受信した前記抽選の結果に基づき、前記抽選による当否結果および前記特別図柄の停止図柄に予め対応づけられた前記装飾図柄の停止図柄として決定する装飾図柄決定部と、前記特別図柄の表示パターンに予め対応づけられた前記装飾図柄の表示パターンを決定する装飾図柄パターン決定部と、前記装飾図柄パターン決定部により決定された表示パターンにしたがって前記装飾図柄を変動表示させるとともに、前記装飾図柄決定部により決定された停止図柄を停止表示させる装飾図柄表示処理部とを含み、前記装飾図柄決定部は、前記確率変動付き大当たり、前記通常の大当たり、および外れのそれぞれの結果について、前記装飾図柄の停止図柄を構成する複数列の図柄の組み合わせを複数種類選択対象として保持し、前記メイン制御部から受信された前記抽選の結果および前記特別図柄の停止図柄を示す情報に基づき、前記装飾図柄の停止図柄を構成する複数種類の図柄の組み合わせから一つを選択し、前記装飾図柄表示処理部は、前記メイン制御部から前記変動開始指示を受信したときに前記装飾図柄の変動表示を開始し、前記メイン制御部から前記変動停止指示を受信したときに前記装飾図柄の停止図柄を表示させることで、1回の抽選の結果を示す表示処理を終了し」と変更し、
そして、請求項2を削除し、
請求項3を請求項2に変更して、引用請求項を変更したものであって、補正全体をみれば、本件補正は請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とした補正に該当すると認めることができる。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反しない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、この発明を「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下検討する。

(2)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された特開2003-245420号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、遊技者に有利な開状態と不利な閉状態とに変換可能な可変入賞手段25L,25Rと、始動手段24が遊技球を検出することを条件に遊技図柄を変動表示する図柄表示手段30と、該図柄表示手段30の変動後の停止図柄が予め定められた大当たり態様となることに基づいて、前記可変入賞手段25L,25Rを閉状態から開状態に変化させる利益状態を1又は複数回発生させる利益状態発生手段59とを備えた弾球遊技機において、複数の前記可変入賞手段25L,25Rを備え、前記1又は複数回の利益状態における前記複数の可変入賞手段25L,25Rの開放パターンを決定する開放パターン決定手段58を備えたものである。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳述する。図1?図7は本発明をパチンコ機として具現化した第1の実施形態を例示している。図1及び図2において、1は遊技機本体で、矩形状の外枠2と、この外枠2の前側に開閉自在に枢着された前枠3とを備えている。4はガラス扉、5は前面板で、これらは前枠3の窓孔6に対応して上下に配置され、前枠3に開閉自在に枢支されている。
【0008】7は発射用の遊技球を貯留する上皿で、前面板5の前側に装着され、上皿カバー8により覆われている。また、9は余剰球等を貯留する下皿、10は灰皿で、これらは前面板5の下側で前枠3の前側に左右に配置され、下皿カバー11により覆われている。12は遊技盤で、前枠3の窓孔6に対応するように、前枠3の裏側に着脱自在に装着されている。
【0009】 13は発射手段で、下皿9の一側で前枠3の前側に設けられた発射ハンドル14と、前面板5の後方に配置された発射レール15と、前枠3の裏側に配置された発射モータ16及び打撃槌17等を備え、発射ハンドル14を操作したときに、発射モータ16により打撃槌17が作動して、前面板5の裏側に装着された図外の球送り手段により上皿7から発射レール15上に1個ずつ供給される遊技球を遊技盤12側に発射させるようになっている。
【0010】遊技盤12の前面側には、図2に示すように、発射手段13により発射された遊技球を案内するガイドレール21が略環状に装着されると共に、そのガイドレール21の内側の遊技領域22内には、センター手段23、第2図柄始動手段24、複数(ここでは2つ)の可変入賞手段25L,25R、第1図柄始動手段26、普通入賞手段27等の各種遊技部品が配置されている。
【0011】センター手段23は、遊技領域22内の左右方向中央の上部側に配置され、その略中央部分に液晶式等の可変表示手段28を、上部に普通入賞手段27と第1図柄表示手段29とを夫々備えている。可変表示手段28は、第2図柄表示手段30を構成している。」
(イ)「【0015】第2図柄始動手段24は、開閉自在な左右一対の開閉爪32を備えた電動チューリップ等の開閉入賞手段により構成され、例えばセンター手段23の下側に配置されており、第1図柄表示手段29の変動後の停止図柄が予め定められた当たり態様を表示することを条件に発生する第1利益状態のときに開閉爪32が所定時間開放するようになっている。
【0016】第2図柄表示手段30は、1個又は複数個、例えば左右方向に3個の第2図柄(遊技図柄)を可変表示手段28の例えば上下方向略中央部分に変動表示可能となっている。各第2図柄は、第2図柄始動手段24が遊技球を検出することを条件に上下方向又は左右方向にスクロールする等、所定の変動パターンで変動して、所定の大当たり態様又は外れ態様となるように左、右、中等の所定の順序で停止する。
【0017】第2図柄には、数字図柄、アルファベット図柄、キャラクター図柄、その他の図柄を使用可能であり、本実施形態では「0」?「9」までの10種類の数字図柄が使用されている。本実施形態では、3つの第2図柄が同一となる図柄態様、即ち「0・0・0」「1・1・1」…「9・9・9」の10種類を大当たり態様とする。
【0018】更に、大当たり態様には特別大当たり態様とそれ以外の通常大当たり態様とがあり、本実施形態では、10種類の大当たり態様のうち、「1・1・1」「7・7・7」等、奇数図柄よりなる5種類の大当たり態様を特別大当たり態様、「2・2・2」「8・8・8」等、偶数図柄よりなる5種類の大当たり態様を通常大当たり態様とする。
【0019】第2図柄の変動パターンには、例えばリーチ状態を経由しないで外れ態様となるリーチなし外れ変動パターン、リーチ状態を経由して外れ態様となるリーチ外れ変動パターン、リーチ状態を経由して大当たり態様となるリーチ大当たり変動パターンなど、多種類のものが用意されている。」
(ウ)「【0021】可変入賞手段25L,25Rは、いわゆるアタッカーを構成するもので、夫々例えば下部側の横軸廻りに開閉自在な開閉板33を備え、遊技者に有利な開状態と不利な閉状態とに変換可能に構成されている。
【0022】これら2つの可変入賞手段25L,25Rは、例えば遊技領域22の下部側に左右に配置されており、図示しない遊技釘の配置等により、遊技領域22の左側に打ち込まれた遊技球は左側の可変入賞手段25Lに、遊技領域22の右側に打ち込まれた遊技球は右側の可変入賞手段25Rに、夫々高い確率で誘導されるようになっている。」
(エ)「【0024】可変入賞手段25L,25Rは、第2図柄表示手段30の変動後の停止図柄が予め定められた所定の大当たり態様を表示することを条件に、その何れか一方の開閉板33が、所定の上限開放時間が経過するか又はその上限開放時間内に所定の上限入賞個数の遊技球が入賞するまで開放され(第2利益状態)、その開放中に入賞した遊技球1個につき所定の払い出し個数分の賞球が払い出されるようになっている。」
(オ)「【0028】第2利益状態の各ラウンドにおいて夫々可変入賞手段25L,25Rのどちらを開放するかを規定する開放パターンは、例えば図3に示すように予め複数種類用意されており、可変入賞手段25L,25Rは、それら複数種類の開放パターンA?H等のうちの何れかに従って開閉制御されるようになっている。
【0029】例えば、図3に示す開放パターンAは第2利益状態の第1ラウンドから第16ラウンドまで可変入賞手段25L側から始まって左右交互に開放され、同様に開放パターンBは可変入賞手段25Rから始まって左右交互に開放され、開放パターンCは可変入賞手段25Lから始まって2ラウンドずつ左右交互に開放され、開放パターンEは前半の第1ラウンドから第8ラウンドまでは可変入賞手段25Lが、後半の第9ラウンドから第16ラウンドまでは可変入賞手段25Rが夫々開放され、開放パターンHは全てのラウンドにおいて可変入賞手段25Rが開放されるように設定されている。」
(カ)「【0032】図4は制御用のブロック図である。図4において、41は主制御基板、42は音声ランプ制御基板、43は図柄制御基板で、それら各制御基板41,42,43は、夫々遊技領域22に装着されたセンター手段23、その他の複数個の遊技部品を裏側から一括して覆う裏カバーの裏側等、前枠3及び遊技盤12を含む遊技機本体1の裏側の適宜箇所に着脱自在に装着された基板ケースに収納されている。
【0033】なお、主制御基板41から音声ランプ制御基板42に対しては一方向通信可能であり、音声ランプ制御基板42と図柄制御基板43間では双方向通信可能となっている。これにより、主制御基板41から図柄制御基板43へのコマンドは音声ランプ制御基板42を経由して送信される。
【0034】主制御基板41は、主として遊技盤12側の遊技動作等の制御を行うためのもので、第1抽選手段51、第1判定手段52、第1利益状態発生手段53、第2抽選手段54、第2判定手段55、停止図柄態様選択手段56、変動パターン選択手段57、開放パターン決定手段58、第2利益状態発生手段59、特別遊技状態発生手段60、制御コマンド送信手段61等を備え、CPU、ROM、RAM等の電子部品により構成されている。」
(キ)「【0039】第2判定手段55は、第2抽選手段54での抽選乱数値に基づいて変動後の第2図柄を大当たり態様とするか否か、即ち可変入賞手段25L,25Rを開状態にする第2利益状態を発生させるか否かを判定するためのもので、第2抽選手段54で抽選された乱数値が所定の大当たり態様判定値と一致するか否かを判定し、一致する場合には大当たり態様の判定結果を出力するようになっている。
【0040】停止図柄態様選択手段56は、第2判定手段55の判定結果に基づいて、第2図柄表示手段30の変動後の停止図柄態様を選択するためのもので、第2判定手段55の判定結果が大当たり態様判定のときに複数種類の大当たり態様の中から1つを、外れ態様判定のときに複数種類の外れ態様の中から1つを、夫々乱数抽選により選択するようになっている。なお、外れ態様のときには、3つの第2図柄のうち、少なくとも1個が異なる図柄となる。
【0041】変動パターン選択手段57は、第2判定手段55の判定結果と、停止図柄態様選択手段56との少なくとも一方に基づいて、複数種類の変動パターンの中から1つを乱数抽選により択一的に選択するためのもので、例えば、第2判定手段55の判定結果が大当たり態様判定のときに、変動後の第2図柄が大当たり態様となる可能性のある複数種類のリーチ大当たり変動パターンの何れかを、外れ態様判定のときに、変動後の第2図柄が外れ態様となるリーチなし外れ変動パターン、リーチ外れ変動パターン等の何れかを、夫々乱数抽選により選択するようになっている。」
(ク)「【0046】第2利益状態発生手段59は、第2判定手段55の判定結果が大当たり態様判定となり、第2図柄表示手段30の変動後の停止図柄が大当たり態様となったとき、開放パターン決定手段58で決定された開放パターンA?Hの何れかに基づいて可変入賞手段25L,25Rを開放して、遊技者に有利な第2利益状態を発生させるようになっている。
【0047】可変入賞手段25L,25Rは、第2利益状態中に開放パターンA?Hに従ってその何れか一方のみが開放され、所定の上限開放時間が経過するか又はその上限開放時間内に所定の上限入賞個数の遊技球が入賞したときに閉鎖されて、入賞した遊技球1個につき所定の払い出し個数分の賞球が払い出される。
【0048】また、第2利益状態発生手段59は、第2利益状態中に所定条件が成立することに基づいて次の利益状態を発生させる利益状態継続手段64を備えており、第2利益状態中にその開放中の可変入賞手段25L又は25Rに入賞した遊技球が内部の特定領域34を通過すれば、その第2利益状態が所定の上限ラウンド数(例えば16ラウンド)を限度として継続されるようになっている。
【0049】特別遊技状態発生手段60は、第2利益状態の終了後に、通常遊技状態とは異なる遊技者に有利な特別遊技状態を発生させるためのもので、確率変化手段65により構成されている。確率変化手段65は、第2判定手段55の判定結果が大当たり態様判定となり、停止図柄態様選択手段56が複数種類(10種類)の大当たり態様のうちの特別大当たり態様を選択して、変動後の第2図柄が特別大当たり態様(例えば「7・7・7」)となることを条件に、第2利益状態の終了後に、第2図柄が大当たり態様となる確率を通常確率(例えば1/300の低確率)から高確率(例えば1/60程度)へと変化させるためのものである。
【0050】なお、確率変化手段65は、高確率状態のときに第2判定手段55の大当たり態様判定値の数を増やして、その大当たり態様の発生確率を高くするようになっている。」
(ケ)「【0052】制御コマンド送信手段61は、所定の制御コマンドを一方向通信により音声ランプ制御基板42,図柄制御基板43等の副制御基板側へと送信するためのもので、第1図柄始動手段26が遊技球を検出したときに、第1判定手段52の判定結果に基づいて第1図柄の変動制御コマンドを図柄制御基板43側に送信する機能、第2図柄始動手段24が遊技球を検出したときに、停止図柄態様選択手段56で選択された停止図柄態様、変動パターン選択手段57で選択された変動パターン等に基づいて第2図柄の変動制御コマンドを図柄制御基板43側に送信する機能、第2利益状態発生手段59の作動に基づいて第2利益状態の開始コマンドを音声ランプ制御基板42側に送信する機能、開放パターン決定手段58で決定された開放パターン等に基づいて可変入賞手段25L,25Rの開放報知コマンドを音声ランプ制御基板42側に送信する機能等を有している。」
(コ)「【0058】図柄制御基板43は、第1図柄表示手段29及び第2図柄表示手段30の表示制御を行うためのもので、第1図柄制御手段73、第2図柄制御手段74等を備え、CPU、ROM、RAM等の電子部品により構成されている。」
(サ)「【0060】第2図柄制御手段74は、第2図柄表示手段30の表示制御を行うもので、第2図柄始動手段24が遊技球を検出することを条件に、変動パターン選択手段57で選択された変動パターンに従って第2図柄表示手段30の第2図柄を所定時間変動させて、停止図柄態様選択手段56で選択された停止図柄態様で停止させるようになっている。」
(シ)「【0068】図柄制御基板43側では、制御コマンド送信手段61から変動制御コマンドを受信すると、第2図柄制御手段74が第2図柄表示手段30の第2図柄を変動パターン選択手段57で選択された変動パターンに従って所定時間変動させた後、停止図柄態様選択手段56で選択された大当たり態様又は外れ態様で停止させる。
【0069】そして、第2図柄表示手段30の変動後の停止図柄が大当たり態様で確定すると、第2利益状態の開始コマンドが音声ランプ制御基板42側に送信されると共に、第2利益状態発生手段59が、開放パターン選択手段63で選択された開放パターンA?Hの何れかに従って第2利益状態を発生させる。
【0070】即ち、まず開放パターンの1ラウンド目に指定されている側の可変入賞手段25L又は25Rが開放される。そして、開放された可変入賞手段25L又は25Rは、その開放から所定の上限開放時間が経過するか又はその上限開放時間内に所定の上限入賞個数の遊技球が入賞したときに閉鎖され、入賞した遊技球1個につき所定の払い出し個数分の賞球が払い出される。
【0071】そして、その開放中(第2利益状態中)に可変入賞手段25L又は25Rに入賞した遊技球が内部の特定領域34を通過した場合には、続いて開放パターンの2ラウンド目に指定されている側の可変入賞手段25L又は25Rが開放される。この第2利益状態は所定の上限ラウンド数(例えば16ラウンド)を限度として繰り返される。」
(ス)「【0090】第2図柄表示手段30の変動後の停止図柄が大当たり態様のうちの特別大当たり態様となった場合には、第2利益状態の終了後、特別遊技状態発生手段60の確率変化手段65が作動して特別遊技状態が発生し、大当たり態様の発生確率を通常確率から高確率へと変化させる。その後は、第2判定手段55が高確率状態で大当たり態様とするか否かを判定するため、変動後の第2図柄が再度大当たり態様となる可能性が非常に高くなり、遊技者は有利な状態でゲームを行える。
【0091】この特別遊技状態は、変動後の第2図柄が通常大当たり態様となって次の第2利益状態が発生するか、それまでに第2図柄が予め定められた所定回数変動した場合に終了し、大当たり態様の発生確率が高確率から通常確率へと復帰する。」

上記(ア)ないし(ス)の記載、および図面を総合すると、引用例1には、以下の発明が開示されていると認めることができる。

「A.遊技盤12の遊技領域22の中央部には、第2図柄表示手段30を備えたセンター手段23が設けられている。そしてセンター部材23の下方には第2図柄始動手段24が設けられ、センター手段23により左右に分けられた遊技球の通路においてセンター手段23の下方右側通路中に可変入賞手段25Rが、下方左側通路中に可変入賞装置25Lが設けられている。(第2図参照)
B.遊技機の制御手段として、主として遊技動作等の制御を行う主制御基板41と、該主制御基板41からの制御コマンドを一方向通信により受信して第2図柄表示手段の表示制御を行う図柄制御基板43を備えており、主制御基板41および図柄制御基板43は、それぞれCPU,ROM,RAM等で構成されている。(図4参照)
C.主制御基板41は、第2図柄始動手段24が遊技球を検出すると、第2抽選手段54により抽選された乱数値に基づいて、第2判定手段55が変動後の第2図柄を大当たり態様にするか、外れ態様にするか、あるいは大当たり態様のうち特別大当たり態様(確率変動状態)にするかを決定し、そして、第2判定手段55の判定結果に基づいて、停止図柄態様選択手段56が第2図柄始動手段24の停止図柄を選択し、さらに、変動パターン選択手段57が変動パターンを選択する。
D.主制御基板41で選択された変動パターン、停止図柄態様等(変動制御コマンド)を一方向通信により図柄制御基板43に送信し、図柄制御基板43は、前記コマンドに対応する変動パターンで第2図柄表示手段30の表示図柄を変動させ、そして対応する停止図柄態様で停止させる。
E.主制御基板41の第2判定手段が変動後の第2図柄を大当たり態様にすることを決定し、第2図柄表示手段30に大当たりに対応する特定の図柄が停止表示された場合、複数の開放パターンの中から可変入賞手段25Rと25L可変入賞手段の開放パターンが抽選により選択され、25Rあるいは25Lのいずれかが選択的に開放するように制御される。
F.前記複数の開放パターンの中には、可変入賞手段25Rあるいは可変入賞手段25Lのみが開放される態様を含んでいる。」
(以下、この発明を「引用発明1」という。)

また、原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用された特開2004-472号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(セ)「【0072】
図12は、第2実施例におけるパチンコ機100の遊技盤1の正面図である。このパチンコ機100は、第1実施例のパチンコ機Pに対し、始動口4の下方に設けられた大入賞口101が上下方向に幅広に形成されると共に、その大入賞口101を開閉させる大入賞口開閉板102,103が1枚余計に設けられることにより、2枚の大入賞口開閉板102,103が上下に並んで配設されている。この2枚の大入賞口開閉板102,103は、付与される大当たりの種類に応じていずれか一方の大入賞口開閉板102,103が選択的に開放されるように構成されている。
【0073】
具体的には、パチンコ機100において遊技者に付与され得る大当たりには、普通大当たりと、確率変動大当たりとの2種が定められており、普通大当たりの発生時には、下側の大入賞口開閉板(第2大入賞口開閉板)103が開閉して特別遊技状態による遊技価値が付与される。この普通大当たりが発生すると、特別遊技状態の終了後、通常の遊技状態に遷移する。この普通大当たりは、当否演出としてLCD3による変動表示演出が実行される場合に変動後の表示結果として普通変動図柄(偶数の数字で表示される図柄)が3つ並んで停止したときに発生し、又、当否演出として大入賞口演出が実行される場合には、第2大入賞口開閉板103が振動した後に開放して静止した場合に発生する。
【0074】
一方、確率変動大当たりが発生する場合には、上側の大入賞口開閉板(第1大入賞口開閉板)102が開閉して特別遊技状態による遊技価値が付与される。この確率変動大当たりが発生すると、特別遊技状態の終了後、大当たりの発生確率が通常時の5倍とされる確率変動状態に遷移する。この確率変動大当たりは、当否演出としてLCD3による変動表示演出が実行される場合に変動後の表示結果として確率変動図柄(本実施例では、奇数の数字で表示される図柄)が3つ並んで停止したときに発生し、又、当否演出として大入賞口演出が実行される場合には第1大入賞口開閉板102が振動した後に開放して静止した場合に発生する。」

上記(セ)の記載、および図面を総合すると、引用例2には、
「A.大当たり時に開放される大入賞口101は、上下方向に別々に設けられた上側の大入賞口開閉板102および下側の大入賞口開閉板103を備えている。
B.普通大当たりの発生時には、下側の大入賞口開閉板103が開閉して特別遊技状態による遊技価値が付与され、また確率変動大当たりが発生する場合には、上側の大入賞口開閉板102が開閉して特別遊技状態による遊技価値が付与される。」
の発明が開示されていると認めることができる。
(以下、この発明を「引用発明2」という。)

(3)対比
引用発明1の「センター手段23」、「第2図柄始動手段24」、「可変入賞手段25R」、「可変入賞手段25L」は、それぞれ本件補正発明の「飾り部品」、「始動入賞口」、「第1の大入賞口」、「第2の大入賞口」に相当する。
引用発明1の「第2図柄表示手段30」およびその「表示図柄」は、抽選により決定された大当たり態様ないし外れ態様を示すための変動表示部および表示図柄であるから、それぞれ本件補正発明の「抽選の結果を示すための特別図柄が変動表示される特別図柄表示部」および「特別図柄」に相当する。
したがって、引用発明1は、「発射された遊技球が遊技者からみて左側から入球される遊技領域が形成された遊技盤と、前記遊技領域における遊技球の流路を遊技者からみて左側流路と右側流路に分岐させるように配置された飾り部品と、抽選の結果を示すための特別図柄が変動表示される特別図柄表示部と、前記遊技領域における前記飾り部品の下方に設けられた始動入賞口と、前記遊技領域における前記右側流路に設けられた第1の大入賞口と、前記遊技領域において少なくとも前記左側流路を流れる遊技球が入球可能な位置であって前記第1の大入賞口よりも左側に設けられた第2の大入賞口」を備えている点で本件補正発明と一致している。
引用発明1の主制御基板41および図柄制御基板43は、それぞれ別のCPUを備えており、主制御基板41では、第2図柄始動手段24が遊技球を検出すると、抽選された乱数値に基づいて大当たり、外れあるいは確率変動大当たりを決定し、停止図柄態様選択手段56が第2図柄始動手段24の停止図柄を選択し、変動パターン選択手段57が変動パターンを選択し、当該変動パターンおよび停止図柄は、一方向通信により図柄制御基板43に送信され、第2図柄表示手段30で図柄の変動表示ないし停止表示がなされる。
したがって、引用発明1は、「当該遊技機の全体的な動作および遊技の基本動作を主に制御する第1のCPUを含むメイン制御部と、当該遊技機の演出的動作を主に制御する第2のCPUを含むサブ制御部と、を備え、前記メイン制御部と前記サブ制御部との間の通信が、前記メイン制御部から前記サブ制御部への一方向通信となるように構成され、前記特別図柄が変動表示され、前記メイン制御部は、遊技球の前記始動入賞口への落入を示す始動入賞情報を取得する始動入賞処理部と、前記始動入賞情報の取得を契機として前記抽選を実行し、その抽選の結果が大当たり又は外れのいずれであるか、さらに大当たりである場合には次に大当たりとなる確率が通常よりも高い状態である確率変動状態へ移行する確率変動付き大当たり又は通常の大当たりのいずれであるかを判定する当否決定部と、前記抽選の結果に応じて前記特別図柄の停止図柄を決定する特別図柄決定部と、前記特別図柄の変動時間を規定する前記特別図柄の表示パターンを決定する特別図柄パターン決定部とを有する抽選実行部と、前記特別図柄パターン決定部により決定された表示パターンにしたがって前記特別図柄を変動表示させるとともに、前記特別図柄決定部により決定された停止図柄を停止表示させる特別図柄表示処理部」を備えている点で、本件補正発明と共通している。
そして、引用発明1は、第2判定手段55により大当たりと判定された場合は、可変入賞手段25Rと可変入賞手段25Lのいずれかが選択的に開放するように制御され、また可変入賞手段25Rのみが開放される開放態様もあるので、引用発明1は、「前記抽選の結果が大当たりであったときに前記第1の大入賞口または前記第2の大入賞口を選択的に開放する開閉制御部」を備え、「前記開閉制御部は、大当たりである場合には、第1の大入賞口を開放する」点で、本件補正発明と共通している。

以上のことから、本件補正発明と引用発明1とは、
<一致点>
「発射された遊技球が遊技者からみて左側から入球される遊技領域が形成された遊技盤と、
前記遊技領域における遊技球の流路を遊技者からみて左側流路と右側流路に分岐させるように配置された飾り部品と、
前記抽選の結果を示すための特別図柄が変動表示される特別図柄表示部と、
前記遊技領域における前記飾り部品の下方に設けられた始動入賞口と、
前記遊技領域における前記右側流路に設けられた第1の大入賞口と、
前記遊技領域において少なくとも前記左側流路を流れる遊技球が入球可能な位置であって前記第1の大入賞口よりも左側に設けられた第2の大入賞口と、
当該遊技機の全体的な動作および遊技の基本動作を主に制御する第1のCPUを含むメイン制御部と、
当該遊技機の演出的動作を主に制御する第2のCPUを含むサブ制御部と、
を備え、
前記メイン制御部と前記サブ制御部との間の通信が、前記メイン制御部から前記サブ制御部への一方向通信となるように構成され、
前記特別図柄が変動表示され、
前記メイン制御部は、
遊技球の前記始動入賞口への落入を示す始動入賞情報を取得する始動入賞処理部と、
前記始動入賞情報の取得を契機として前記抽選を実行し、その抽選の結果が大当たり又は外れのいずれであるか、さらに大当たりである場合には次に大当たりとなる確率が通常よりも高い状態である確率変動状態へ移行する確率変動付き大当たり又は通常の大当たりのいずれであるかを判定する当否決定部と、前記抽選の結果に応じて前記特別図柄の停止図柄を決定する特別図柄決定部と、前記特別図柄の変動時間を規定する前記特別図柄の表示パターンを決定する特別図柄パターン決定部とを有する抽選実行部と、
前記特別図柄パターン決定部により決定された表示パターンにしたがって前記特別図柄を変動表示させるとともに、前記特別図柄決定部により決定された停止図柄を停止表示させる特別図柄表示処理部と、
前記抽選の結果が大当たりであったときに前記第1の大入賞口または前記第2の大入賞口を選択的に開放する開閉制御部と、
を含み、
前記開閉制御部は、大当たりである場合には、前記第1の大入賞口を開放することを特徴とする弾球遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本件補正発明は、「遊技領域の中央領域に装飾図柄が変動表示される図柄表示領域」を備えており、「特別図柄表示部」は「装飾図柄とは異なる位置(つまりは遊技領域の中央部ではない位置)」に表示されるものであり、そして前記図柄表示領域において「(特別図柄とは異なる態様で)抽選の結果を示すための複数列の図柄の組み合わせからなる装飾図柄が変動表示される」ものであるのに対し、
引用発明1は、遊技領域の中央領域に特別図柄が変動表示する特別図柄表示部を備えたものであって、上記構成を備えていない点。

<相違点2>
本件補正発明は、「メイン制御部は、抽選実行部により決定された情報をサブ制御部へ送り、(メイン制御部の)特別図柄表示制御部は、特別図柄の変動開始時にサブ制御部に(装飾図柄の)変動開始指示を送る一方、特別図柄の変動停止時にサブ制御部に(装飾図柄の)変動停止指示を送り」そして「(サブ制御部の)装飾図柄表示処理部は、メイン制御部から変動開始指示を受信したときに装飾図柄の変動表示を開始し、メイン制御部から変動停止指示を受信したときに装飾図柄の停止図柄を表示させることで、1回の抽選の結果を示す表示処理を終了」するものであるのに対し、
引用発明1は、上記構成を備えていない点。

<相違点3>
本件補正発明は、「サブ制御部は、メイン制御部から受信した抽選の結果に基づき、抽選による当否結果および特別図柄の停止図柄に予め対応づけられた装飾図柄の停止図柄として決定する装飾図柄決定部と、特別図柄の表示パターンに予め対応づけられた装飾図柄の表示パターンを決定する装飾図柄パターン決定部と、装飾図柄パターン決定部により決定された表示パターンにしたがって装飾図柄を変動表示させるとともに、装飾図柄決定部により決定された停止図柄を停止表示させる装飾図柄表示処理部とを含み、装飾図柄決定部は、確率変動付き大当たり、通常の大当たり、および外れのそれぞれの結果について、装飾図柄の停止図柄を構成する複数列の図柄の組み合わせを複数種類選択対象として保持し、メイン制御部から受信された抽選の結果および特別図柄の停止図柄を示す情報に基づき、装飾図柄の停止図柄を構成する複数種類の図柄の組み合わせから一つを選択」するものであるのに対し、
引用発明1は、上記構成を備えていない点。

<相違点4>
本件補正発明は、「確率変動付き大当たりである場合には、第1の大入賞口を開放する」(この事項の意味を「・・・場合には、第1の大入賞口を選択的に開放する」と解釈する。)ものであるのに対し、
引用発明1は、大当たりである場合に、第1の大入賞口を開放する場合があるものの、「確率変動付き大当たりである場合」に第1の大入賞口を選択的に開放するものではない点。

(4)判断
<相違点4>について
事案に鑑み、まず相違点4から検討する。
引用発明1は、本件補正発明のように確変大当たりになった場合に第1の大入賞口を選択的に開放するようなものではない。
しかしながら、引用発明2には、上下に大入賞口(上側の大入賞口開閉板102および下側の大入賞口開閉板103)が設けられたものにおいて、確率変動付き大当たりになった場合に開放する大入賞口を選択的に決定する(具体的には、上方の大入賞口を開放する)ものが開示されており、引用発明2から、複数の大入賞口を備えたものにおいて、確率変動付き大当たりになった場合に開放する大入賞口を選択的に決定するという技術思想を読み取ることができる。
してみると、引用発明1において、確率変動付き大当たりになった場合に可変入賞手段25R(第1の大入賞口)を選択的に開放する程度のことは、引用発明2から当業者が容易に想到できたと認められる。

<相違点1>について
抽選により決定された大当たりや外れを示すための特別図柄表示部に加えて、特別図柄の停止表示結果に関連した修飾図柄(演出図柄とも呼ばれる)を表示する修飾図柄表示部を設けること、そして、この修飾図柄表示部の方を遊技領域の中央部に設けて遊技演出を目立つように行い、そして本来遊技結果を報知する手段であった特別図柄表示部を遊技領域の他の部分に設けて、その部分で特別図柄による報知を行うことは、例えば、特開平9-140878号公報(審尋において示された引用文献2である。特に、段落【0021】?【0025】、【0050】、【0053】?【0058】、および図1参照のこと。)に記載されているように周知な技術であるから、相違点1に係る事項は周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たと認められる。

<相違点2>および<相違点3>について
相違点2および相違点3は、修飾図柄を表示制御する手段として関連していると認められるので、両者をまとめて検討する。
「<相違点1>について」で説示したように、抽選結果を報知する特別図柄表示部よりさらに目立つ報知を行う修飾図柄表示部を遊技領域の中央部に設けることは周知であるところ、当該修飾図柄表示部の表示制御をサブ制御部(引用発明1でいえば図柄制御基板)に行わせること、そして、サブ制御部がメイン制御部から抽選結果ないしは特別図柄の情報を受信し、当該情報に基づいて修飾図柄表示部に停止表示する修飾図柄や図柄の変動態様等を適宜選択して、選択した変動表示態様および停止図柄になるように修飾図柄表示部を制御することは、上に同じく特開平9-140878号公報(特に、段落【0056】?【0058】、【0137】?【0138】、【0185】?【0190】、【0231】?【0233】、【0247】?【0248】および図2、図3等参照のこと。)に記載されているように周知な技術であるから、相違点3に係る事項は当該周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たと認められる。
また、修飾図柄の変動開始および変動停止に関して、上記特開平9-140878号公報の実施例では、役物用IC21(メイン制御部)から表示制御回路40(サブ制御部)へモードデータが送られたときに変動を開始している点では本件補正発明と相違しないが、変動停止に関しては、役物用IC21から表示制御回路40へ送信されたタイマー値に基づいて役物用IC21と表示制御回路40が独自に停止タイミングを合わせており、本件補正発明のように、メイン制御部からサブ制御部に変動停止指示を送り、この指示に基づいてサブ制御部が修飾図柄の変動を停止させていない。
しかしながら、メイン制御部からサブ制御部へ変動時間(タイマー値)を送信することに加え、図柄の変動停止を指示する信号を送ることは、例えば特開2000-189636号公報(特に、段落【0066】、【0073】?【0074】参照のこと。)や、特開2000-237410号公報(特に、段落【0075】、【0096】参照のこと。)、特開2001-187206号公報(特に、段落【0176】?【0182】参照のこと。)等にあるように周知な技術である。
これらのことからみて、相違点2に係る事項は周知技術であり、当業者が容易に想到できたといわざるを得ない。
さらに、本件補正発明の作用効果等を勘案しても、本件補正発明に特段のものを認めることはできない。

以上のように、本件補正発明は、引用発明1、引用発明2および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(5)本件補正発明についてのまとめ
本件補正は、平成18年法律第55号附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本件発明について
(1)本件発明及び引用文献に記載された発明
平成22年7月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、請求項に係る発明は、平成21年7月31日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。
そして、その請求項1により特定される発明は次のとおりである。

「【請求項1】
発射された遊技球が左側から入球される遊技領域が形成された遊技盤と、
前記遊技領域における遊技球の流路を左側流路と右側流路に分岐させるように配置された飾り部品と、
抽選の結果を示すための図柄が変動表示される図柄表示領域と、
前記遊技領域における前記飾り部品の下方に設けられた始動入賞口と、
前記遊技領域における前記右側流路に設けられた第1の大入賞口と、
前記遊技領域において少なくとも前記左側流路を流れる遊技球が入球可能な位置であって前記第1の大入賞口よりも左側に設けられた第2の大入賞口と、
当該遊技機の全体的な動作および遊技の基本動作を主に制御するメイン制御部と、
当該遊技機の演出的動作を主に制御するサブ制御部と、
を備え、
前記メイン制御部と前記サブ制御部との間の通信が、前記メイン制御部から前記サブ制御部への一方向通信となるように構成され、
前記メイン制御部は、
遊技球の前記始動入賞口への落入を示す始動入賞情報を取得する始動入賞処理部と、
前記始動入賞情報の取得を契機として前記抽選を実行し、その抽選の結果が大当たり又は外れのいずれであるか、さらに大当たりである場合には次に大当たりとなる確率が通常よりも高い状態である確率変動状態へ移行する確率変動付き大当たり又は通常の大当たりのいずれであるかを判定するとともに、その抽選の結果を示す前記図柄の変動時間を決定する抽選実行部と、
前記抽選の結果が大当たりであったときに前記第1の大入賞口または前記第2の大入賞口を選択的に開放する開閉制御部と、
を含み、前記抽選実行部により決定された情報をサブ制御部に送り、
前記サブ制御部は、
前記メイン制御部から受信した前記抽選の結果に基づき、前記図柄の停止図柄として前記確率変動付き大当たりであることを示す停止図柄、前記通常の当たりであることを示す停止図柄、又は前記外れであることを示す停止図柄のいずれかを決定する図柄決定部と、
前記抽選実行部により決定された変動時間を有するように、前記図柄の変動表示過程を示す表示パターンを決定するパターン決定部と、
前記パターン決定部により決定された表示パターンにしたがって前記図柄を変動表示させるとともに、前記図柄決定部により決定された停止図柄を停止表示させる表示処理部と、
を含み、
前記開閉制御部は、前記確率変動付き大当たりである場合には、前記第1の大入賞口を開放することを特徴とする弾球遊技機。」
(この発明を「本件発明」という。)

一方、原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-245420号公報に記載された発明(引用発明1)、および特開2004-472号公報に記載された発明(引用発明2)は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本件補正発明は、前記「2.(1)」で述べたように、本件発明の構成要件を減縮し、あるいは明りょうでない記載を釈明したものである。
そうすると、本件発明の構成要件を全て含み、さらに構成要件を減縮したものに相当する本件補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明1、引用発明2および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件発明は、引用発明1、引用発明2および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2011-06-27 
結審通知日 2011-06-28 
審決日 2011-07-12 
出願番号 特願2004-11225(P2004-11225)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 恵一  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 小原 博生
澤田 真治
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 森下 賢樹  

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