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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1242397
審判番号 不服2008-18007  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-14 
確定日 2011-08-24 
事件の表示 特願2005-206121「撮像素子駆動制御とメモリ読み取り制御を用いたハンドシェイク補正方法および撮影装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月 2日出願公開、特開2006- 33850〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1】経緯

[1]手続

本願は、平成17年7月14日(パリ条約による優先権主張平成16年7月19日、韓国)の出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成19年10月24日(起案日)
意見書 :平成20年 1月30日
手続補正(特許請求の範囲の補正)
:平成20年 1月30日
拒絶査定 :平成20年 4月10日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成20年 7月14日
手続補正(特許請求の範囲の補正)
:平成20年 7月14日
前置審査報告 :平成20年11月25日
審尋 :平成22年 4月 8日(起案日)

[2]査定
原査定の理由は、概略、以下のとおりである。

〈査定の理由〉
本願の請求項1から請求項20までに係る各発明は、下記の引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
記(引用例)
引用例1:特開2001-346096号公報
引用例2:特開2000-138864号公報
引用例3:特開2000-69352号公報
引用例4:特開2001-358999号公報

【第2】補正の却下の決定

平成20年7月14日付けの補正(以下「本件補正」という。)について次のとおり決定する。

《結論》
平成20年7月14日付けの補正を却下する。

《理由》

【第2-1】本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲について以下の補正をするものである。(下線部は補正箇所)。

請求項16?20までを削除し、請求項1,2,11,12の記載についてのみ記載を変更補正するものであって、

請求項1について、
「有効画素領域および該有効画素領域の外部に所定のサイズで備えられた予備画素領域からなっている光学面に結像した被写体の光学像を撮影し映像信号を生成する撮像素子と、
前記有効画素領域より大きい画素領域内に生成された映像信号が出力されるように前記撮像素子を駆動させる撮像素子駆動部と、
前記撮像素子で出力された前記映像信号について所定の信号処理を行う信号処理部と、
信号処理された前記映像信号がフィールド単位に格納されるメモリと、
前記メモリに格納された前記映像信号を用いて、前記有効画素領域と同サイズのハンドシェイク補正された領域を算出するハンドシェイク補正部とを含むことを特徴とする撮影装置。」(補正前)を、

「有効画素領域および該有効画素領域の外部に所定のサイズで備えられた予備画素領域からなっている光学面に結像した被写体の光学像を撮影し映像信号を生成する撮像素子と、
前記有効画素領域より大きい画素領域内に生成された映像信号が出力されるように前記撮像素子を駆動させる撮像素子駆動部と、
前記撮像素子で出力された前記映像信号について所定の信号処理を行う信号処理部と、
信号処理された前記映像信号がフィールド単位に格納されるメモリと、
前記映像信号を、前記メモリにフィールド単位で格納するメモリ制御部と、(段落番号0039) 前記メモリに格納された前記映像信号を用いて、前記有効画素領域と同サイズのハンドシェイク補正された領域を算出するハンドシェイク補正部とを含み、 前記ハンドシェイク補正部は、前記メモリに格納されている前記映像信号に対して、フィールド別に比較し、ハンドシェイク量とハンドシェイク方向を検出し、更に、検出されたハンドシェイク量とハンドシェイク方向に基づいて有効画素領域と同じサイズの「ハンドシェイク補正された領域」を算出し、算出された「ハンドシェイク補正された領域」の情報を前記メモリ制御部に印加し、 前記メモリ制御部は、前記ハンドシェイク補正部で算出された前記ハンドシェイク補正された領域に該当する映像信号を前記メモリから読み取ることを特徴とする撮影装置。」(補正後)とし、

請求項2について
「前記ハンドシェイク補正部で算出された前記ハンドシェイク補正された領域に当該する映像信号を前記メモリから読み取るメモリ制御部と、
前記メモリ制御部から読み取った前記映像信号が再生されるディスプレー部とを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。」(補正前)を、

「前記メモリ制御部から読み取った前記映像信号が再生されるディスプレー部とを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の撮影装置。」(補正後)とし、

請求項11について
「有効画素領域および該有効画素領域の外部に所定のサイズで備えられた予備画素領域から成っている光学面に結像した被写体の光学像を撮影し映像信号を生成する撮像素子を備える撮影装置のハンドシェイク補正方法であって、
(a)前記有効画素領域よりも大きい画素領域内に生成された映像信号が出力されるように前記撮像素子を駆動させるステップと、
(b)前記撮像素子で出力された前記映像信号について所定の信号処理を行うステップと、
(c)信号処理された前記映像信号をフィールド単位に格納するステップと、
(d)格納された前記映像信号を用いて、前記有効画素領域と同サイズのハンドシェイク補正された領域を算出するステップとを含むことを特徴とするハンドシェイク補正方法。」(補正前)を、

「有効画素領域および該有効画素領域の外部に所定のサイズで備えられた予備画素領域から成っている光学面に結像した被写体の光学像を撮影し映像信号を生成する撮像素子を備える撮影装置のハンドシェイク補正方法であって、
(a)前記有効画素領域よりも大きい画素領域内に生成された映像信号が出力されるように前記撮像素子を駆動させるステップと、
(b)前記撮像素子で出力された前記映像信号について所定の信号処理を行うステップと、
(c)前記映像信号をフィールド単位でメモリに格納するメモリ制御部による、信号処理された前記映像信号をフィールド単位に格納するステップと、
(d)格納された前記映像信号を用いて、前記有効画素領域と同サイズのハンドシェイク補正された領域を算出するステップと、
(e)前記格納するステップによりメモリに格納されている前記映像信号に対して、フィールド別に比較し、ハンドシェイク量とハンドシェイク方向を検出するステップと、
(f)検出されたハンドシェイク量とハンドシェイク方向に基づいて有効画素領域と同じサイズの「ハンドシェイク補正された領域」を算出し、算出された「ハンドシェイク補正された領域」の情報を、前記メモリ制御部に印加するステップと、
前記メモリ制御部による、前記算出された前記「ハンドシェイク補正された領域」に該当する映像信号を前記メモリから読み取るステップとを含むことを特徴とするハンドシェイク補正方法。」(補正後)とし、

請求項12について
「算出された前記ハンドシェイク補正された領域に当該する映像信号を読み取るステップと、
読み取った前記映像信号が再生されるステップとを更に含むことを特徴とする請求項11に記載のハンドシェイク補正方法。」(補正前)を、
「読み取った前記映像信号が再生されるステップとを更に含むことを特徴とする請求項11に記載のハンドシェイク補正方法。」(補正後)
とする補正。

かかる本件補正は、まとめれば、以下の補正事項からなる手続補正である。
(i)補正前請求項1(独立項)に上記下線部の特定事項を付加して補正後請求項1とする補正
(ii)補正前請求項2(請求項1の従属項)における特定事項の一部で、上記請求項1に付加した下線部の特定事項との重複部分である「前記ハンドシェイク補正部で算出された前記ハンドシェイク補正された領域に当該する映像信号を前記メモリから読み取るメモリ制御部」を削除する補正
(iii)補正前請求項11(独立項)に上記下線部の特定事項を付加して補正後請求項11とする補正
(iv)補正前請求項12(請求項1の従属項)における特定事項の一部で、上記請求項11に付加した下線部の特定事項との重複部分である「算出された前記ハンドシェイク補正された領域に当該する映像信号を読み取るステップ」を削除する補正
(v)請求項16から20までを削除する補正

【第2-2】本件補正の適合性1 補正の範囲(第17条の2第3項)
上記(i)及び(iii)の、付加される下線部の特定事項は、いずれも、本件出願の願書に最初に添付した明細書の段落【0039】から【0043】までに記載されている事項であることが認められる。
したがって本件補正は、同明細書に記載した事項の範囲内においてする補正である。

【第2-3】本件補正の適合性2 補正の目的(第17条の2第4項)
上記(i)の、付加される下線部の特定事項は、
a)「前記映像信号を、前記メモリにフィールド単位で格納するメモリ制御部と、」
b)「前記ハンドシェイク補正部は、前記メモリに格納されている前記映像信号に対して、フィールド別に比較し、ハンドシェイク量とハンドシェイク方向を検出し、更に、検出されたハンドシェイク量とハンドシェイク方向に基づいて有効画素領域と同じサイズの『ハンドシェイク補正された領域』を算出し、」
c)「算出された『ハンドシェイク補正された領域』の情報を前記メモリ制御部に印加し、前記メモリ制御部は、前記ハンドシェイク補正部で算出された前記ハンドシェイク補正された領域に該当する映像信号を前記メモリから読み取る」
とからなるところ、
上記a)の特定事項項は、補正前請求項1に記載のないメモリ制御部についての特定事項ではあるが、補正前請求項1記載の「前記映像信号がフィールド単位に格納されるメモリ」が本来備えているメモリ制御部を明示的に限定したものとみることができ、
上記b)の特定事項は、補正前請求項1に記載された「前記メモリに格納された前記映像信号を用いて、前記有効画素領域と同サイズのハンドシェイク補正された領域を算出するハンドシェイク補正部」につき、その「ハンドシェイク補正された領域」の算出手法を限定するものといえる。
上記c)の特定事項は、上記「ハンドシェイク補正された領域」の算出結果に基づいてハンドシェイク補正された映像信号を得るための処理を特定したものといえるところ、補正前請求項1には当該処理については文言上記載がなく(補正前請求項1には、上記ハンドシェイク補正された領域を算出するところまでしか記載されていない)、したがって、上記c)の特定事項は、外形的には旧請求項1に記載された事項を限定するものではない。
しかしながら、補正前請求項1の記載事項は、その全体からみると、撮像素子とその出力映像信号を格納するメモリとハンドシェイク補正部とを含む撮影装置を特定するものであって、当該撮影装置が、その出力映像を得るための処理として、上記ハンドシェイク補正部によるハンドシェイク補正(手振れ補正)された映像信号を得るための処理を含むことは、補正前請求項1の記載において特に明示がなくとも当然に予定されている事項というべきところ、上記c)の特定事項は、そのようなハンドシェイク補正された映像信号を得るための処理を具体的に特定して限定したものといえる。
そうすると、結局、補正前請求項1に付加された上記特定事項{a)?c)}は、実質的に補正前請求項1に記載された事項を限定するものとみることができる。
また、補正前請求項1とその記載事項を限定補正した補正後請求項1に係る各発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、上記補正事項(i)は、特許法第17条の2第4項2号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

同じ理由により、その従属請求項2についてする上記(ii)の補正事項も特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、上記(iii)(iv)の実質的内容は、上記(i)(ii)と同様であるから、上記(iii)(iv)の補正事項も特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号で規定する請求項の削除、及び同条同項第2号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

【第2-4】本件補正の適合性3 独立特許要件(第17条の2第5項)
そこで、独立特許要件について検討するに、補正後の請求項1に記載される発明は特許出願の際独立して特許を受けることができない。

本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

本件補正後の請求項1に記載される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由の詳細は、以下のとおりである。

《理由:独立特許要件に適合しない理由の詳細》

[1]補正後発明

本件補正後の請求項1から請求項15までに係る発明のうち請求項1に記載された発明(以下「補正後発明」という。)は、前記【第2-1】の請求項1(補正後)のとおりであると認められる。

[2]引用刊行物の記載の摘示

刊行物1:特開2003-78808号公報
本件出願の優先権主張日前に日本国内で頒布された刊行物(前置審査報告書で引用する刊行物、以下「刊行物1」という)である特開2003-78808号公報には、図面(図1,図2等)と共に次に掲げる事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば手振れによる動きベクトルを検出する動きベクトル検出装置および方法、手振れ補正装置および方法、並びに撮像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】カメラ一体型撮像装置により被写体を撮影する時に、手振れによって撮像画像が揺れる問題があり、これを補正するために、動きベクトルを検出し、撮像画像の揺れを補正する手振れ補正が行なわれている。動きベクトルは、前のフィールド(またはフレーム)と現在のフィールド(またはフレーム)間の相関を検出することで求められる。手振れ補正による動きは、画面全体の動きであり、画面全体の動きベクトルが検出される。
【0003】従来の動きベクトル検出装置は、前フィールドに設定された代表点と現フィールドにおける画素の輝度レベルの相関を演算することで動きベクトルを検出していた。すなわち、代表点の記憶周期は、1フィールドであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、カメラ一体型撮像装置において、暗い被写体を撮影するために、撮像素子の露光時間を1フィールドより長い時間とする場合がある。この場合では、映像信号が欠落したフィールドが発生する。そこでは、比較元の代表点のデータが記憶できないために、動きベクトルの検出が不可能となる問題があった。
【0005】したがって、この発明の目的は、かかる問題を解決し、代表点を露光時間に応じた周期で記憶することによって、1フィールドより長い露光時間においても動きベクトルの検出と手振れ補正とを可能とする動きベクトル検出装置および方法、手振れ補正装置および方法、並びに撮像装置を提供することにある。」

「【0010】
【発明の実施の形態】以下、この発明の一実施形態について図面を参照して説明する。この発明の理解を容易とするために、手振れ補正装置の一例を説明する。図1は、かかる手振れ補正装置を示し、参照符号1は、手振れ補正の対象となるディジタル映像信号の入力端子である。入力映像信号は、撮像装置により撮像されたものである。入力映像信号が動きベクトル検出装置2およびフィールドメモリ4に供給される。動きベクトル検出装置2が動きベクトルを検出し、検出した動きベクトルの信頼性を判断し、信頼性の高い動きベクトルから画面全体の動きベクトルを検出する。動きベクトル検出装置2で検出された動きベクトルが補正制御部3に供給される。
【0011】補正制御部3は、検出された動きベクトルに基づいた手振れ補正を行う。補正制御部3からの動きベクトルがフィールドメモリ4に供給される。フィールドメモリ4には、撮像部からの入力映像信号(ディジタル)が蓄積されている。例えば撮像部は、出力画像領域より大きな領域とされ、それによって生じた余剰エリアを使用して手振れ補正を行うようにされている。フィールドメモリ4には、かかる余剰エリアを含む画像が蓄積され、動きベクトルに基づいて出力画像領域として切り出す位置を変更することによって手振れを補正している。フィールドメモリ4は、手振れ補正の内で、整数画素単位の補正を行う。すなわち、手振れと逆の方向に画像をシフトする処理がなさる。このシフトの処理を行う時に、余剰エリアを利用することによって画像の欠落を生じないようになされる。」
【0012】略
「【0013】・・・(前略)また、映像信号は、インターレース信号およびノンインターレース信号の何れでも良い。さらに、この発明は、カラー映像信号の手振れ補正に対しても適用できる。但し、動きベクトルは、輝度信号を使用して検出され、手振れ補正が輝度信号およびカラーコンポーネント信号の両者に施される。
【0014】動きベクトル検出装置2では、代表点マッチング法によって動きベクトルを検出する。代表点マッチング法は、前フィールドに代表点を設定し、現フィールドのサーチ範囲の画素の輝度レベルと前フィールドの代表点の輝度レベルとを比較し、サーチ範囲の画素のうち代表点の画素に最も近い画素から動きベクトルを検出する方法である。
【0015】図2は、代表点マッチング法による動きベクトル検出方法を示すものである。現フィールドに複数の画素からなるサーチ範囲SRnが設定される。サーチ範囲SRnと同一位置で、同一の大きさの前フィールドの領域SRn-1 の例えば中心位置の画素の値が代表点St-1(Xk,Yk)とされる。代表点St-1(Xk,Yk)と 、サーチ範囲SRn内の複数の画素との輝度レベルの差の絶対値が演算される。サーチ範囲で発生した差の絶対値が相関値である。1フィールド内には、複数のサーチ範囲が設定され、各サーチ範囲で求められた相関値が1フィールドにわたって積分されることによって、相関値の積分値が形成される。この積分値から動きベクトルが検出される。」
【0016】このように、輝度レベルの相関を表す相関値は、代表点の輝度レベルとサーチ範囲SRnの各画素の輝度レベルの差の絶対値である。相関値としては、差の自乗を使用しても良い。相関値が積分された積分値から動きベクトルが検出される。サーチ範囲SRnを相関値の積分値とした場合、積分値が最小の位置aが検出される。代表点の位置と検出された位置aとの偏移から動きベクトルMvが検出される。
【0017】撮影時の手振れにより発生する画像の揺れは、画面全体の揺れであり、手振れ補正は、フィールドメモリ4を使用して画面全体を手振れで発生した動きベクトルと逆の方向にシフトする処理である。画面全体の動きベクトルを求める方法の一例についてより具体的に説明する。」

[3]刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明1」という)

(1)引用発明1認定の対象
刊行物1には、従来の技術-従来のカメラ一体型撮像装置、すなわち、
被写体を撮影する時に、手振れにより撮像画像が揺れることを補正するために、画面全体の動きベクトル{動きベクトルは、前のフィールド(またはフレーム)と現在のフィールド(またはフレーム)間の相関を検出することで求められる}を検出して手振れ補正するカメラ一体型撮像装置、
を“前提”に、
1フィールドより長い露光時間とする場合において映像信号が欠落したフィールドが発生し動きベクトルの検出が不可能となる課題を解決して手振れ補正を可能とするもの
が記載されているところ、
その“前提”となる技術に着目し、その前提となる技術から引用発明1を認定する。
その“前提”となる技術であるカメラ一体型撮像装置は、図1?図9、段落【0001】、【0002】、【0010】?【0031】において説明されている{その一部を上記[2]に前掲摘示している。}。
なお、その課題を解決するものは、「上述した動きベクトル検出装置においては、前フィールドで設定された代表点と、現フィールドの画素との比較を行なっているので、時間的に連続する2フィールドの中で、1フィールドが欠落すると、動きベクトルを検出することが不可能となる問題が生じる。この問題について、図10を参照して説明する。」(段落【0032】)とされ、段落【0032】以降、図11以降、及び、特許請求の範囲、発明が解決しようとする課題【0004】【0005】、課題を解決するための手段【0006】?【0009】で説明されている。

(2)カメラ一体型撮像装置(上記“前提”となる技術)の構成
図1,図2、段落【0010】、【0011】、【0013】【0014】?【0017】によれば、
引用発明1として、画面全体の動きベクトルを検出して手振れ補正するカメラ一体型撮像装置を認定することができ、
その「カメラ一体型撮像装置」は、「撮像部」、「フィールドメモリ4」、「動きベクトル検出装置2」、「補正制御部3」を備えていて、手振れ補正、動きベクトル検出は以下の様になされる。

〈手振れ補正〉
・「撮像部は、出力画像領域より大きな領域とされ、それによって生じた余剰エリアを使用して手振れ補正を行うようにされている」(段落【0011】)もので、
・「撮像部からのディジタル入力映像信号」が「動きベクトル検出装置2およびフィールドメモリ4に供給され」、(段落【0010】)「フィールドメモリ4」に蓄積され、
・「動きベクトル検出装置2」は、輝度信号を使用して(段落【0013】)「画面全体の動きベクトルを検出」し、検出した動きベクトルが「補正制御部3」に供給され(段落【0010】)、
・「補正制御部3は、検出された動きベクトルに基づいた手振れ補正を行う」(段落【0011】)ものであって、
・「フィールドメモリ4には、かかる余剰エリアを含む画像が蓄積され、動きベクトルに基づいて出力画像領域として切り出す位置を変更することによって手振れを補正」するものであり、その際「手振れと逆の方向に画像をシフトする処理がなされ、このシフトの処理を行う時に、余剰エリアを利用することによって画像の欠落を生じないようになされる」(段落【0011】)もので、
「撮影時の手振れにより発生する画像の揺れは、画面全体の揺れであり」、画像全体の揺れは、手振れ補正-「フィールドメモリ4を使用して画面全体を手振れで発生した動きベクトルと逆の方向にシフトする処理」(段落【0016】)-により補正される。

上記「撮像部」についてみるに、
一般に、「カメラ一体型撮像装置」の「撮像部」が、光学面(光電変換面)に結像した被写体の光学像を光電変換して画像を生成する撮像素子を有していることは技術常識である。
また、上記「出力画像領域」についてみるに、上記の特に下線部によれば、上記“余剰エリア”とは、撮影時に手振れが生ずると、被写体の光学像が光学面上でシフトしその周縁の一部領域が光学面から外れて当該領域の画像(画素)が欠落してしまうところ、手振れによる被写体光学像のシフトが生じても「余剰エリアを利用することによって」、フィールドメモリ4から切り出して出力する「出力画像領域」である手振れ補正出力映像の画素領域に欠落が生じない、すなわち、手振れ補正出力映像として常に所要の画素サイズの画素領域を有する映像が得られるようにしているものであることは明らかであり、
したがって、上記「出力画像領域」は、『所要の画素サイズの画素領域を有する手振れ補正出力映像を得るための、当該所要の画素サイズの画素領域』といい得るものである。

〈動きベクトル検出〉
「動きベクトル検出装置2」は、上記のとおり「輝度信号を使用して画面全体の動きベクトルを検出」するところ、
「代表点マッチング法」-「前フィールドに代表点を設定し、現フィールドのサーチ範囲の画素の輝度レベルと前フィールドの代表点の輝度レベルとを比較し、サーチ範囲の画素のうち代表点の画素に最も近い画素から動きベクトルを検出する方法」-によって、「動きベクトルMv」(図2)を検出する(段落【0014】?【0016】)ものである。

(3)引用発明1
以上によれば、補正後発明と対比する引用発明1として、下記の発明を認定することができる。

記(引用発明1)
(a)画面全体の動きベクトルを検出して手振れ補正するカメラ一体型撮像装置であって、
撮像部、フィールドメモリ4、動きベクトル検出装置2、補正制御部3を備えていて、手振れ補正、動きベクトル検出は以下の様になされる、装置であって、
(b)撮像部は、『所要の画素サイズの画素領域を有する手振れ補正出力映像を得るための、当該所要の画素サイズの画素領域』より大きな領域とされ、それによって生じた余剰エリアを使用して手振れ補正を行うようにされているもので、
光学面(光電変換面)に結像した被写体の光学像を光電変換して出力画像を生成する撮像素子であって、光電変換される光学面が、その画素領域として、前記『所要の画素サイズの画素領域』と、その外側を囲む余剰エリア(手振れ量を見込んだ所定サイズの余剰画素領域)からなる撮像素子を有しており、
以下の様に、手振れ補正、動きベクトル検出をする装置。
(c)手振れ補正
撮像部からのディジタル入力映像信号が動きベクトル検出装置2およびフィールドメモリ4に供給され、フィールドメモリ4に蓄積され、
動きベクトル検出装置2は、輝度信号を使用して画面全体の動きベクトルMv(図2)を検出し、検出した動きベクトルMvが補正制御部3に供給され、
補正制御部3は、検出された動きベクトルMvに基づいた手振れ補正を行うものであって、
撮像部の余剰エリアを含む画像が蓄積されているフィールドメモリ4から、前記『所要の画素サイズの画素領域』として切り出す位置を動きベクトルMvに基づいて変更することによって手振れ補正するものであり、その際、手振れと逆の方向に画像をシフトする処理がなされ、このシフトの処理を行う時に、余剰エリアを利用することによって画像の欠落を生じないようになされるもので、
撮影時の手振れにより発生する画像の揺れは、画面全体の揺れであり、画像全体の揺れは、手振れ補正-フィールドメモリ4を使用して画面全体を手振れで発生した動きベクトルMvと逆の方向にシフトする処理-により補正される。
(d)動きベクトル検出
動きベクトル検出装置2は、代表点マッチング法-前フィールドに代表点を設定し、現フィールドのサーチ範囲の画素の輝度レベルと前フィールドの代表点の輝度レベルとを比較し、サーチ範囲の画素のうち代表点の画素に最も近い画素から動きベクトルを検出する方法-によって、動きベクトルMv(図2)を検出する。

[4]補正後発明と引用発明1との対比(対応関係)

(1)補正後発明(構成要件の分説)

補正後発明は、以下のように要件に分説することができる。

補正後発明(分説)
A:有効画素領域および該有効画素領域の外部に所定のサイズで備えられた予備画素領域からなっている光学面に結像した被写体の光学像を撮影し映像信号を生成する撮像素子と、前記有効画素領域より大きい画素領域内に生成された映像信号が出力されるように前記撮像素子を駆動させる撮像素子駆動部と、
B:前記撮像素子で出力された前記映像信号について所定の信号処理を行う信号処理部と、信号処理された前記映像信号がフィールド単位に格納されるメモリと、
C:前記映像信号を、前記メモリにフィールド単位で格納するメモリ制御部と、(段落番号0039)
D:前記メモリに格納された前記映像信号を用いて、前記有効画素領域と同サイズのハンドシェイク補正された領域を算出するハンドシェイク補正部とを含み、
D2:前記ハンドシェイク補正部は、前記メモリに格納されている前記映像信号に対して、フィールド別に比較し、ハンドシェイク量とハンドシェイク方向を検出し、更に、検出されたハンドシェイク量とハンドシェイク方向に基づいて有効画素領域と同じサイズの「ハンドシェイク補正された領域」を算出し、算出された「ハンドシェイク補正された領域」の情報を前記メモリ制御部に印加し、
C2:前記メモリ制御部は、前記ハンドシェイク補正部で算出された前記ハンドシェク補正された領域に該当する映像信号を前記メモリから読み取ることを特徴とする
E:撮影装置。

(2)対応関係

ア 要件E:「撮影装置」について
引用発明1は、「カメラ一体型撮像装置」であるから、「撮影装置」ともいえるものである。

イ 要件Aについて

イ-1 要件Aの前半「有効画素領域および該有効画素領域の外部に所定のサイズで備えられた予備画素領域からなっている光学面に結像した被写体の光学像を撮影し映像信号を生成する撮像素子と、」について

引用発明1の(b)撮像部は、『所要の画素サイズの画素領域を有する手振れ補正出力映像を得るための、当該所要の画素サイズの画素領域』より大きな領域とされ、それによって生じた余剰エリアを使用して手振れ補正を行うようにされているもので、
光学面(光電変換面)に結像した被写体の光学像を光電変換して出力画像を生成する撮像素子であって、光電変換される光学面が、その画素領域として、前記『所要の画素サイズの画素領域』と、その外側を囲む余剰エリア(手振れ量を見込んだ所定サイズの余剰画素領域)からなる撮像素子」を有しているところ、
その「余剰画素エリア(手振れ量を見込んだ所定サイズの余剰画素領域)」は、補正後発明でいう上記「予備画素領域」といえるものであるが、
引用発明1の上記『所要の画素サイズの画素領域を有する手振れ補正出力映像を得るための、当該所要の画素サイズの画素領域』は、「有効画素領域」とはしておらず、この点、相違が認められる。

しかしながら、その点を一応措くと、
補正後発明での上記「有効画素領域」も、
D2「有効画素領域と同じサイズの「ハンドシェイク補正された領域」を算出し、算出された「ハンドシェイク補正された領域」の情報を前記メモリ制御部に印加し、」、
C2「前記メモリ制御部は、前記ハンドシェイク補正部で算出された前記ハンドシェク補正された領域に該当する映像信号を前記メモリから読み取る」とされていることから、
『所要の画素サイズの画素領域を有する手振れ補正出力映像を得るための、当該所要の画素サイズの画素領域』といい得るものである。(「ハンドシェイク補正」は「手振れ補正」と同義であることは明らかである。)
そうすると、引用発明1と補正後発明とは、いずれも、「『所要の画素サイズの画素領域を有する手振れ補正出力映像を得るための、当該所要の画素サイズの画素領域』および該『所要の画素サイズの画素領域』の外部に所定のサイズで備えられた予備画素領域からなっている光学面に結像した被写体の光学像を撮影し映像信号を生成する撮像素子」を有しているといえ、この点両者は相違しない。
もっとも、引用発明1は、前記『所要の画素サイズの画素領域』が「有効画素領域」とはしておらず、この点、補正後発明との相違が認められる。(→相違点1)

以下の対比においては、この相違をひとまず措き、補正後発明の「有効画素領域」を『所要の画素サイズの画素領域を有する手振れ補正出力映像を得るための、当該所要の画素サイズの画素領域』(以下、これを単に『所要の画素サイズの画素領域』ともいう)として引用発明1と対比する。

イ-2 要件Aの後半「前記『所要の画素サイズの画素領域』(有効画素領域)より大きい画素領域内に生成された映像信号が出力されるように前記撮像素子を駆動させる撮像素子駆動部」について
引用発明1では、撮像部(その撮像素子)からのディジタル入力映像信号をフィールドメモリ4に蓄積しており〔(c)〕、その際、上記余剰エリアを含む画像(つまり上記光学面の全画素領域の画像)が蓄積されるようにしている〔(c)〕ところ、
そのようにする上で、上記撮像素子の駆動部として、引用発明1でも、補正後発明と同様、「前記『所要の画素サイズの画素領域』より大きい画素領域内に生成された映像信号が出力されるように前記撮像素子を駆動させる撮像素子駆動部」が設けられているといえることは、特に明示がなくとも明らかである。
したがって、上記要件Aの後半において、補正後発明と引用発明1とは相違しない。

ウ 要件B・Cについて

ウ-1 要件Bの前半「前記撮像素子で出力された前記映像信号について所定の信号処理を行う信号処理部と、」について
引用発明1が上記信号処理部を有するものである点については、刊行物1には特に記載がない。
しかしながら、一般に、撮像素子で出力された(映像)信号はアナログの生画素信号であって、これに、適宜の信号処理{例えば、(4-1-1等の)所定形式のデジタルの映像信号とするための信号処理}をしてからフィールドメモリに格納するのが普通であり{必要があれば特開2001-358999号公報(図1とその説明、前処理部2、信号処理部3等)、特開2000-138864号公報(図1とその説明、CDS/AGC2,ADC3等)参照}、
引用発明1でも、ディジタルの入力映像信号をフィールドメモリ4に蓄積するとすることから、少なくとも、撮像素子で出力されたアナログの生画素信号をA/D変換してからフィールドメモリ4に蓄積しているといえ、
引用発明1も、撮像部の上記「撮像素子で出力された前記映像信号について所定の信号処理を行う信号処理部」を有していることは、特に明示がなくとも明らかであり、この点、補正後発明と相違するものではない。

ウ-2 要件Bの後半「信号処理された前記映像信号がフィールド単位に格納されるメモリ」および要件C「前記映像信号を、前記メモリにフィールド単位で格納するメモリ制御部」について
引用発明1も、上記のフィールドメモリ4を有しており、当該フィールドメモリ4は、補正後発明での上記メモリと同様、“信号処理された前記撮像素子で出力された前記映像信号がフィールド単位で格納されるメモリ”といえるものである。
また、一般に、メモリへのデータの格納及びメモリからのデータの読出しをするのに、その格納及び読出しを制御・実行する「メモリ制御部」の存在も明らかであるから、
引用発明1も、補正後発明と同じく「前記映像信号を、前記メモリ(フィールドメモリ4)にフィールド単位で格納するメモリ制御部」を有しているといえることも明らかである。

ウ-3 まとめ(要件B・C)
以上によれば、要件B・Cについて、補正後発明と引用発明1とは相違しない。

エ 要件D・D2・C2について

エ-1 「有効画素領域」
上記の通り、補正後発明の「有効画素領域」を『所要の画素サイズの画素領域を有する手振れ補正出力映像を得るための、当該所要の画素サイズの画素領域』として引用発明1と対比する。
このとき、要件D・D2・C2は以下の通りである。
D「前記メモリに格納された前記映像信号を用いて、前記『所要の画素サイズの画素領域』と同サイズのハンドシェイク補正された領域を算出するハンドシェイク補正部とを含み、」
D2「前記ハンドシェイク補正部は、前記メモリに格納されている前記映像信号に対して、フィールド別に比較し、ハンドシェイク量とハンドシェイク方向を検出し、更に、検出されたハンドシェイク量とハンドシェイク方向に基づいて『所要の画素サイズの画素領域』と同じサイズの「ハンドシェイク補正された領域」を算出し、算出された「ハンドシェイク補正された領域」の情報を前記メモリ制御部に印加し、」
C2「前記メモリ制御部は、前記ハンドシェイク補正部で算出された前記ハンドシェク補正された領域に該当する映像信号を前記メモリから読み取ることを特徴とする」

エ-2 補正後発明の要件D・D2・C2
要件D・D2が要求する特定事項は次の通りである。
「ハンドシェイク補正部」が、
(i)「前記『所要の画素サイズの画素領域を有する手振れ補正出力映像を得るための、当該所要の画素サイズの画素領域』と同サイズのハンドシェイク補正された領域を算出する」もので、
その算出の処理は、
(i-1)「フィールド別に比較し、」
(i-2)「ハンドシェイク量とハンドシェイク方向を検出し、」
(i-3)「更に、検出されたハンドシェイク量とハンドシェイク方向に基づいて『所要の画素サイズの画素領域』と同じサイズの「ハンドシェイク補正された領域」を算出し」
とする処理であること、
(ii)上記(i)の算出は、「前記メモリに格納された前記映像信号を用いて」、「前記メモリに格納されている前記映像信号に対して」行う処理であること、
(iii)「算出された「ハンドシェイク補正された領域」の情報を前記メモリ制御部に印加し、」とすること。

要件C2は、「前記メモリ制御部」について、
(iv)「前記メモリ制御部は、前記ハンドシェイク補正部で算出された前記ハンドシェク補正された領域に該当する映像信号を前記メモリから読み取る」ことを特定する。

エ-3 引用発明1と上記(i)(i-1)(i-2)(i-3)(ii)
補正後発明の「ハンドシェイク補正部」と「メモリ制御部」で行う処理は、引用発明1の「動きベクトル検出装置2」と「補正制御部3」で行う処理と対応させることができる。

(ア)上記(i-1)、(i-2)について
引用発明1の「動きベクトル検出装置2」は、入力映像信号の輝度信号を使用して、代表点マッチング法によって、画面全体の動きベクトルMv(図2)を検出し、
「補正制御部3」は、検出された動きベクトルMvに基づいた手振れ補正を行うところ、
・上記「手振れ補正」は、補正後発明でいう「ハンドシェイク補正」(明細書の段落【0002】では「手の振れを補正する」とも記載されている)と同義であり、
・上記「画面全体の動きベクトルMv(図2)」は、画面全体の揺れ、すなわち「手振れ」を示すベクトルであって、「手振れ方向情報」と「手振れ量情報」とからなるベクトル量といえ、それぞれ補正後発明でいう「ハンドシェイク方向」と「ハンドシェイク量」に相当するものである。
したがって、引用発明1の「動きベクトル検出装置2」は、補正後発明でいう上記(i-2):「ハンドシェイク量とハンドシェイク方向を検出し」ているということができる。
また、動きベクトルMv(図2)は、「代表点マッチング法-前フィールドに代表点を設定し、現フィールドのサーチ範囲の画素の輝度レベルと前フィールドの代表点の輝度レベルとを比較し、サーチ範囲の画素のうち代表点の画素に最も近い画素から動きベクトルを検出する方法」によって検出するのであるから、
現フィールドと前フィールドを比較することによる検出であるといえるところ、
要件D2の「フィールド別に比較し、ハンドシェイク量とハンドシェイク方向を検出し」の「フィールド別に比較し」とは、明細書にもそれ以上の説明はなく、その文言からみて、現フィールドと前フィールドを比較することを含んでいうものと認められることから、
引用発明1も、上記(i-1):「フィールド別に比較し、」て検出するものということができ、この点、相違するものとはいえない。(この点については、後記[7]でも後述する。)

(イ)上記(i)、(i-3)
-「前記『所要の画素サイズの画素領域を有する手振れ補正出力映像を得るための、当該所要の画素サイズの画素領域』と同サイズのハンドシェイク補正された領域を算出する」もので、
その算出の処理は、(i-3)「更に、検出されたハンドシェイク量とハンドシェイク方向に基づいて『所要の画素サイズの画素領域』と同じサイズの「ハンドシェイク補正された領域」を算出し」とする処理-について
上記「補正制御部3」による「動きベクトルMvに基づいた手振れ補正」は、
「余剰エリアを含む画像が蓄積されているフィールドメモリ4から、『所要の画素サイズの画素領域』として切り出す位置を動きベクトルMvに基づいて変更することによって手振れ補正するものであり、その際、手振れと逆の方向に画像をシフトする処理がなされ、このシフトの処理を行う時に、余剰エリアを利用することによって画像の欠落を生じないようになされるもので、
撮影時の手振れにより発生する画像の揺れは、画面全体の揺れであり、画像全体の揺れは、手振れ補正-フィールドメモリ4を使用して画面全体を手振れで発生した動きベクトルMvと逆の方向にシフトする処理」
であるところ、
上記「シフト処理」された『所要の画素サイズの画素領域を有する手振れ補正出力映像を得るための、当該所要の画素サイズの画素領域』が、補正後発明での『所要の画素サイズの画素領域を有する手振れ補正出力映像を得るための、当該所要の画素サイズの画素領域』と同サイズの「ハンドシェイク補正された領域」といえ、
同領域の画像を上記のようにフィールドメモリ4に蓄積した余剰エリアを含む画像から切り出す上で、切り出し領域の特定のために、上記「補正制御部3」でも、「検出された動きベクトルMv(ハンドシェイク量とハンドシェイク方向)に基づいて「ハンドシェイク補正された領域を算出」しているといえることが明らかであるから、
上記(i):「前記『所要の画素サイズの画素領域』と同サイズのハンドシェイク補正された領域を算出する」もので、
その算出の処理は、
上記(i-3):「更に、検出されたハンドシェイク量とハンドシェイク方向に基づいて『所要の画素サイズの画素領域』と同じサイズの「ハンドシェイク補正された領域」を算出し」とする処理である、ということができる。

(ウ)上記(ii)について
引用発明1では、「撮像部からのディジタル入力映像信号が動きベクトル検出装置2およびフィールドメモリ4に供給され」ること、及び上記ウでの検討結果を踏まえれば、
上記動きベクトルMvの検出に用いる映像信号は、「フィールドメモリ4」に入力する(ディジタル)「入力映像信号」であるから、
引用発明1もするといえる上記「ハンドシェイク補正された領域」を算出し」とする処理は、
上記(ii)の「前記メモリ(これが、「フィールドメモリ」であることは明らかである)に格納された前記映像信号を用いて」「前記メモリに格納されている前記映像信号に対して」行う処理ではなく、
「前記メモリ(フィールドメモリ4)入力する(ディジタル)入力映像信号」に対して行う処理であり、この点相違が認められる。
すなわち、算出処理を、一旦「前記メモリ」に格納した映像信号に対して行うか、格納前の映像信号に対して行うかの違いがある。(→相違点2)
しかしながら、引用発明1の、動きベクトルMvの検出に用いる「フィールドメモリ4」に入力する(ディジタル)「入力映像信号」も、補正後発明の「前記メモリに格納された前記映像信号」も、
いずれも、「『所要の画素サイズの画素領域を有する手振れ補正出力映像を得るための、当該所要の画素サイズの画素領域』より大きい画素領域内に生成された映像信号」であって「ハンドシェイク補正された領域の算出に用いられる映像信号」といい得るものであるから、
引用発明1もするといえる上記「ハンドシェイク補正された領域」を算出し」とする処理は、
上記(ii)「『所要の画素サイズの画素領域』より大きい画素領域内に生成された映像信号(ハンドシェイク補正された領域の算出に用いられる映像信号)を用いて、」『所要の画素サイズの画素領域』より大きい画素領域内に生成された映像信号に対して」行う処理であるということができる。

(エ)まとめ等{上記(i)(i-1)(i-2)(i-3)(ii)}
以上によれば、引用発明1(の「動きベクトル検出装置2」、「補正制御部3」)も、
『所要の画素サイズの画素領域』より大きい画素領域内に生成された映像信号を用いて、『所要の画素サイズの画素領域』と同サイズのハンドシェイク補正された領域であって、
『所要の画素サイズの画素領域』より大きい画素領域内に生成された映像信号に対して、フィールド別に比較し、ハンドシェイク量とハンドシェイク方向を検出し、更に、検出されたハンドシェイク量とハンドシェイク方向に基づいて『所要の画素サイズの画素領域』と同じサイズの「ハンドシェイク補正された領域」を算出し、
とするものといえ、この点では補正後発明と相違しない。
また、そのような算出処理をする部分を「ハンドシェイク補正部」と称しても支障はないから、引用発明1は、上記の「ハンドシェイク補正された領域」を算出する「ハンドシェイク補正部」を含むともいえ、この点でも補正後発明と相違しない。

エー4 引用発明1と上記(iii)(iv)
-(iii)「算出された「ハンドシェイク補正された領域」の情報を前記メモリ制御部に印加し、」、(iv)「前記メモリ制御部は、前記ハンドシェイク補正部で算出された前記ハンドシェク補正された領域に該当する映像信号を前記メモリから読み取る」-について
引用発明1の「補正制御部3」による「動きベクトルMvに基づいた手振れ補正」は、
「余剰エリアを含む画像が蓄積されているフィールドメモリ4から、『出力画像領域』として切り出す位置を動きベクトルMvに基づいて変更することによって手振れ補正するものであり、その際、手振れと逆の方向に画像をシフトする処理がなされ、このシフトの処理を行う時に、余剰エリアを利用することによって画像の欠落を生じないようになされるもので、
撮影時の手振れにより発生する画像の揺れは、画面全体の揺れであり、画像全体の揺れは、手振れ補正-フィールドメモリ4を使用して画面全体を手振れで発生した動きベクトルMvと逆の方向にシフトする処理」であるところ、
引用発明1も、それが含むといい得る上記「ハンドシェイク補正部」で算出された前記「ハンドシェク補正された領域」に該当する映像信号を前記メモリ(フィールドメモリ4)から読み取る」ことがなされていることは明らかであり、
そのような読出し(読み取り)の制御・実行は、前記ウ-2で引用発明1も備えると認定した前記「メモリ制御部」(フィールドメモリ4の「メモリ制御部」)により行われるものと認めることができ、当該「メモリ制御部」は、その読出し制御・実行に必要な、算出された「ハンドシェク補正された領域」の情報を、上記「ハンドシェイク補正部」から得ていると言えることも明らかである。
以上によれば、引用発明1も、(フィールド)メモリ4からの読み取りをするための「メモリ制御部」を備えていて、上記「ハンドシェイク補正部」が「算出された「ハンドシェイク補正された領域」の情報を前記メモリ制御部に印加」することで、「前記「ハンドシェク補正された領域」に該当する映像信号を前記メモリから読み取る」ことがなされる、ということができる。
したがって、上記(iii)(iv)において、補正後発明と引用発明1は相違しない。

[5]一致点、相違点
以上の対比結果によれば、補正後発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりであることが認められる。

[一致点]
A’:『所要の画素サイズの画素領域を有する手振れ補正出力映像を得るための、当該所要の画素サイズの画素領域』および該『所要の画素サイズの画素領域』の外部に所定のサイズで備えられた予備画素領域からなっている光学面に結像した被写体の光学像を撮影し映像信号を生成する撮像素子と、前記『所要の画素サイズの画素領域』より大きい画素領域内に生成された映像信号が出力されるように前記撮像素子を駆動させる撮像素子駆動部と、
B:前記撮像素子で出力された前記映像信号について所定の信号処理を行う信号処理部と、信号処理された前記映像信号がフィールド単位に格納されるメモリと、
C:前記映像信号を、前記メモリにフィールド単位で格納するメモリ制御部と、
D’:前記『所要の画素サイズの画素領域』より大きい画素領域内に生成された映像信号を用いて、前記『所要の画素サイズの画素領域』と同サイズのハンドシェイク補正された領域を算出するハンドシェイク補正部とを含み、
D2’:前記ハンドシェイク補正部は、前記『所要の画素サイズの画素領域』より大きい画素領域内に生成された映像信号に対して、フィールド別に比較し、ハンドシェイク量とハンドシェイク方向を検出し、更に、検出されたハンドシェイク量とハンドシェイク方向に基づいて『所要の画素サイズの画素領域』と同じサイズの「ハンドシェイク補正された領域」を算出し、算出された「ハンドシェイク補正された領域」の情報を前記メモリ制御部に印加し、
C2:前記メモリ制御部は、前記ハンドシェイク補正部で算出された前記ハンドシェク補正された領域に該当する映像信号を前記メモリから読み取ることを特徴とする
E:撮影装置。

[相違点]

[相違点1]
上記『所要の画素サイズの画素領域を有する手振れ補正出力映像を得るための、当該所要の画素サイズの画素領域』を、
補正後発明では、「有効画素領域」としているのに対し、
引用発明1では、「有効画素領域」とはしていない点。

[相違点2]
「を用いてハンドシェイク補正された領域を算出する、」、「に対して、フィールド別に比較し、ハンドシェイク量とハンドシェイク方向を検出し」とする「前記『所要の画素サイズの画素領域』より大きい画素領域内に生成された映像信号」が、
補正後発明では、「前記メモリに格納されている映像信号」であるのに対し、
引用発明1では、「前記メモリに入力する入力映像信号」である点。

[6]相違点等の判断(容易想到性の判断)

(1)相違点の克服

[相違点1の克服]
引用発明1の「出力画像領域」(『所要の画素サイズの画素領域を有する手振れ補正出力映像を得るための、当該所要の画素サイズの画素領域』)を「有効画素領域」とすることで、[相違点1]は克服される。

[相違点2の克服]
引用発明の、
「を用いてハンドシェイク補正された領域を算出する、」、「に対して、フィールド別に比較し、ハンドシェイク量とハンドシェイク方向を検出し」とする「前記「『所要の画素サイズの画素領域』より大きい画素領域内に生成された映像信号」である「前記メモリに入力する入力映像信号」を、
「前記メモリに格納されている映像信号」とすることで、[相違点2]は克服される。
すなわち、フィールドメモリ4に入力する映像信号「を用いて・・・算出する」、「に対して、フィールド別に比較し、ハンドシェイク量とハンドシェイク方向(動きベクトルMv)を検出し」とする代わりに、
フィールドメモリ4に格納された映像信号「を用いて・・・算出する」、「に対して、フィールド別に比較し、ハンドシェイク量とハンドシェイク方向を検出し」とするとすることで、[相違点2]は克服される。

そして、引用発明1を出発点として、上記[相違点1の克服]と[相違点2の克服]を共にすることで、補正後発明に到達する。

(2)[相違点の克服]の容易想到性

[相違点1の克服]

《技術常識・周知事項》
手振れ補正出力に限らず、一般のカメラのような映像信号を生成し/形成し/出力する一般の装置では、
その出力映像は、
通常の有効画素サイズの映像信号を受け入れ、その通常の有効画素サイズの映像が表示できるようになっている一般の表示装置へ入力することが予定されている映像であり、また、そこで略有効画素サイズの映像表示がなされることが予定されて映像であることから、
その出力映像の画素サイズを通常の映像信号の有効画素サイズと設定することは当業者の常であり、また技術常識であり、ごく普通の周知のことである。

《容易想到性》
上記《技術常識・周知事項》からすれば、
引用発明1の「出力画像領域」(『所要の画素サイズの画素領域を有する手振れ補正出力映像を得るための、当該所要の画素サイズの画素領域』)を、通常の映像信号の「有効画素領域」とすることは、当業者が容易に想到し得ることであり、上記[相違点1の克服]は当業者が容易に想到し得ることである。

《周知技術》
また、ビデオカメラ等の撮像装置において、手振れ補正のために、撮像素子の撮像面の画素領域を、『所要の画素サイズの画素領域を有する手振れ補正出力映像を得るための、当該所要の画素サイズの画素領域』とその外側を囲む余剰画素領域とからなる画素領域とする場合、当該『所要の画素サイズの画素領域』を有効画素領域(あるいは有効画面領域)とすることは周知の技術でもある。(これには、例えば、下記の刊行物等が参照される。)
この周知技術からみても、上記[相違点1の克服]は、当業者の容易想到である。

してみれば、引用発明1の上記『所要の画素サイズの画素領域を有する手振れ補正出力画像を得るための、当該所要の画素サイズの画素領域』を「有効画素領域」とすることは当業者が容易になし得たことである。

記(周知例)
特開平3-254286号公報(請求項1、第1,2図とその説明等参照)
特開平3-270384号公報(第1図,第2図とその説明等参照)、
刊行物3:特開2001-346096号公報
{「一般にPAL方式の有効画素数はNTSC方式に比べて水平、垂直ともに約20%大きいので、その画素余裕を利用して画質劣化なしに手ぶれ補正が行える。」(段落【0038】)は、画素余裕が、「光電変換領域A1」と「信号出力領域A2」間の領域であることからすれば、PAL方式の有効画素数の撮像素子を用い、その有効画素数の領域を「光電変換領域A1」とし、これより水平、垂直ともに約20%小さいNTSC方式の有効画素数領域を「信号出力領域A2」とすることをいうものと理解される。}

[相違点2の克服]
上記相違点2は、要は、
フィールド別比較・動きハンドシェイク量とハンドシェイク方向(動きベクトルMv)検出を、
一旦、(フィールド)メモリ
-手振れ補正後の映像信号(要件C2の「前記ハンドシェイク補正部で算出された前記ハンドシェク補正された領域に該当する映像信号」)を読出して出力する(フィールド)メモリ-
に格納した映像信号に対して行う(補正後発明)か、
当該メモリに入力する映像信号に対して行う(引用発明1)か、
の相違であるが、

前者の映像信号(格納した映像信号)も後者の映像信号(引用発明1)も映像信号としては同じものであるから、当業者はその何れをも適宜に採用し得るものといえるところ、
刊行物3:特開2001-346069号公報(前記査定での引用例1、後記【第3】の刊行物3)には、
前者の映像信号(格納した映像信号)に対して動きベクトル検出を行う構成が示されており{段落【0062】,【0063】、図5、(詳細については後記「【第3】[3]刊行物3に記載された発明」参照)}、
引用発明1において、後者の映像信号(引用発明1)に対して行う代わりに、かかる刊行物3の構成-前者の映像信号に対して動きベクトル検出を行う構成を採ることは当業者が容易に想到し得ることというべきである。

すなわち、上記[相違点2の克服]も当業者が容易に想到し得ることである。

(3)まとめ{相違点等の判断(容易想到性の判断)}
以上にように、[相違点1の克服]も[相違点2の克服]も、当業者が容易になし得ることであるところ、引用発明を出発点として、これらを合わせて克服することも、当業者が容易になし得ることである。
補正後発明1は、上記刊行物1、刊行物3に記載された発明及び周知事項等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)要件D2の「フィールド別に比較し、」についての解釈等について

要件D2の「フィールド別に比較し、ハンドシェイク量とハンドシェイク方向を検出し」の「フィールド別に比較し」とは、
現フィールドと前フィールドを比較することを含んでいうものと認められることは、上記[4](2)対応関係、エ-3(ア)の通りであるが、
仮に、映像信号のフィールドが、通常、奇数フィールドと偶数フィールドよりなるものであることを前提に、奇数フィールドは奇数フィールドと、偶数フィールドは偶数フィールドと比較して、言い換えると、例えば現フィールドとその2フィールド前のフィールドとを比較して検出することをいうものに限ると限定解釈できたとした場合についても、
念のため、以下に検討を加えておくが、
仮にそのように解釈し得たとしても、「フィールド別に比較し」(奇数フィールドは奇数フィールドと、偶数フィールドは偶数フィールドと比較し)とすることは、当業者が容易に想到し得ることであり、
補正後発明は特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない、との上記判断は変わることはない。

《上記のように限定解釈できたとした場合の検討》

上記のように限定解釈できたとした場合においても、補正後発明(フィールド別に比較し、)と引用発明1(現フィールドと前フィールドの比較)における手振れ検出のためのフィールド比較は、いずれもフィールド単位での比較を行うものである点では同じであるから、
上記一致点D2’は、次のD2”となり、補正後発明と引用発明1との相違点として、上記相違点のほか、次の[追加の相違点]が存在することとなる。

[一致点]
D2”:前記ハンドシェイク補正部は、手振れ補正出力として必要な出力画像領域より大きい画素領域内に生成された映像信号に対して、フィールド単位で比較し、ハンドシェイク量とハンドシェイク方向を検出し、更に、検出されたハンドシェイク量とハンドシェイク方向に基づいて手振れ補正出力として必要な出力画像領域と同じサイズの「ハンドシェイク補正された領域」を算出し、算出された「ハンドシェイク補正された領域」の情報を前記メモリ制御部に印加し、

[追加の相違点]
上記「フィールド単位で比較し、」が、
補正後発明は、
「フィールド別に比較し」、すなわち奇数フィールドは奇数フィールドと、偶数フィールドは偶数フィールドと比較する(例えば現フィールドと2フィールド前のフィールドとを比較する)とするものであるのに対し、
引用発明1は、
現フィールドと前フィールドとを比較する(現フィールドとその1フィールド前のフィールドとを比較する)点。

[追加の相違点]の判断
《普通の技術》
ビデオカメラにおける手振れ補正(画面の揺れ補正)において、フィールド単位で比較して動きベクトルを検出するのに、
現フィールド(その分割ブロックの画素データ)と2フィールド前のフィールド(その代表点の画素データ)との差に基づいて動きベクトルを検出することは、本願出願前、普通のことであると認められる。
これには、特開平4-255178号公報(以下、刊行物2という。下記に記載事項を摘示する。特に下線部分に注目)が参照される。
引用発明1の、現フィールドと前フィールドとの比較に代えて、「フィールド別に比較し」(奇数フィールドは奇数フィールドと、偶数フィールドは偶数フィールドと比較し)とすることは、刊行物2を参照して当業者が容易になし得たことと言うべきである。

[独立特許要件不適合]
以上によれば、仮に、要件D2の「フィールド別に比較し、」が上記のように限定解釈できたとしても、
補正後の請求項1に記載される発明は、上記刊行物1、刊行物2及び刊行物3に記載された発明及び周知事項等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

記(刊行物2:特開平4-255178号公報)
図面(図1?図3等)と共に次に掲げる事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ハンディタイプのビデオカメラの撮影出力等のビデオデータに含まれる手振れの方向および量を検出するための手振れ検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ハンディタイプのビデオカメラを使用して撮影を行う時に、手振れで再生画面が揺れる問題がある。この問題を解決するのに、動きベクトルを検出し、この動きベクトルに基づいて、画像メモリに貯えられているビデオデータを補正するものが提案されている(例えば特開昭63-166370号公報)。動きベクトルの検出は、例えばブロックマッチングでなさる。すなわち、画面を多数の領域(ブロックと称する)に分割し、各ブロックの中心に位置する前フレームの代表点と現フレームのブロック内の画素データとのフレーム差の絶対値を演算し、このフレーム差の絶対値を1画面に関して積算し、積算フレーム差データの最小値の位置から動きベクトルを検出している。」
「【0006】
【実施例】以下、この発明の一実施例について図面を参照して説明する。この発明は、手振れがビデオカメラの動きであるため、画面全体が動き、一方、対象物の動きは、画面のある部分が動くこと、すなわち、画面中に静止している部分があることに着目して、両者の区別を行うものである。図1において、1がディジタルビデオデータの入力端子である。このビデオデータは、例えばビデオカメラのCCDで撮影されたもので、インターレス走査の順序の系列である。
【0007】入力ビデオデータがフィールドメモリ2および代表点メモリ3に供給される。フィールドメモリ2の出力には、後述の補正信号により手振れ補正されたデータが読み出される。1フレーム毎に処理を行う時には、フィールドメモリ2に代えてフレームメモリが使用される。代表点メモリ3の出力が減算回路4および代表点メモリ5に供給される。代表点メモリ5の出力が減算回路6に供給される。減算回路4および6には、入力ビデオデータが供給される。代表点メモリ3は、1フィールド前の代表点のデータを記憶し、代表点メモリ5が2フィールド(すなわち、1フレーム)前の代表点のデータを記憶する。【0008】図2に示すように、1フィールドの画面がm画素×nラインのブロックに細分化され、各ブロックの中心の画素が代表点とされる。代表点は、画面上で、均一にばらまかれている。減算回路4は、現フィールドのあるブロックのm×nの画素データのそれぞれと前フィールドの同一位置のブロックの代表点のデータとのそれぞれの差(すなわち、フィールド間差)を検出する。このフィールド間差が絶対値積分回路7に供給される。
同様に、減算回路6が現フィールドのブロックと2フィールド前の代表点とのフレーム差を検出する。フレーム差が絶対値積分回路8および度数表作成回路9に供給される。
【0009】動きベクトルの検出は、絶対値積分回路8でフレーム差を使用してなされる。フィールド間差から絶対値積分回路7で得られたフィールド間の動きは、補助手段として使用される。つまり、フィールド間の差は、時間の精度が良いが、位置の精度が悪い特徴があり、フレーム間の差は、時間の精度が悪いが、位置の精度が良い特徴がある。従って、フレーム差から動きベクトルを検出する時に、フィールド間差も利用することで、検出精度を向上できる。」

[7]まとめ(理由:独立特許要件不適合)
以上によれば、補正後の請求項1に記載される発明は、上記刊行物1、刊行物2及び刊行物3に記載された発明及び周知事項等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

【第3】査定の当否(当審の判断)

[1]本願発明
平成20年7月14日付けの補正は上記のとおり却下する。
本願の請求項1から請求項20までに係る発明は、本願特許請求の範囲(平成20年1月30日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲)、明細書及び図面の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1から請求項20までに記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、下記のとおりであると認められる。

記(本願発明)
有効画素領域および該有効画素領域の外部に所定のサイズで備えられた予備画素領域からなっている光学面に結像した被写体の光学像を撮影し映像信号を生成する撮像素子と、
前記有効画素領域より大きい画素領域内に生成された映像信号が出力されるように前記撮像素子を駆動させる撮像素子駆動部と、
前記撮像素子で出力された前記映像信号について所定の信号処理を行う信号処理部と、
信号処理された前記映像信号がフィールド単位に格納されるメモリと、
前記メモリに格納された前記映像信号を用いて、前記有効画素領域と同サイズのハンドシェイク補正された領域を算出するハンドシェイク補正部とを含むことを特徴とする撮影装置。

[2]引用刊行物の記載の摘示

刊行物3:特開2001-346096号公報
原査定の理由に引用された刊行物である特開2001-346096号公報(以下「刊行物3」という)には、図面(図1,2,5,6等)と共に次に掲げる事項が記載されている。

〈特許請求の範囲〉
「【請求項1】 長時間露光信号と短時間露光信号とを通常の倍以上の駆動周波数で面順次に出力する光電変換手段と、前記光電変換手段から出力される長時間露光信号を一時記憶し通常の駆動周波数で読み出しを行う第1の記憶手段と、前記光電変換手段から出力される短時間露光信号を一時記憶し通常の駆動周波数で読み出しを行う第2の記憶手段と、前記第1の記憶手段から読み出される時間伸長された長時間露光信号と前記第2の記憶手段から読み出される時間伸長された短時間露光信号とを同期をとって合成し合成映像信号を出力する信号合成手段とを備えていることを特徴とするダイナミックレンジ拡大カメラ。
【請求項6】 前記光電変換手段として通常の映像信号表示画素以上の画素数を有するCMOSセンサを採用し、さらに、前記第1の記憶手段から前記信号合成手段に転送される時間伸長された長時間露光信号から動きベクトルを検出する動きベクトル検出手段を設け、検出した動きベクトルに基づいて生成された補正信号に基づいて前記第1の記憶手段および第2の記憶手段をフィードバック制御して所定の画素数領域の切り出しを行って手ぶれ補正するように構成してあることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のダイナミックレンジ拡大カメラ。
【請求項7】 前記光電変換手段として通常の映像信号表示画素以上の画素数を有するCMOSセンサを採用し、さらに、水平方向または垂直方向あるいは水平垂直両方向で所定の画素数のみ切り出すことで手ぶれ補正を行うように構成してあることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載のダイナミックレンジ拡大カメラ。」

〈発明の属する技術分野〉
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ダイナミックレンジ拡大の機能を有するビデオカメラなどのダイナミックレンジ拡大カメラにかかわり、特には、小型化および画質改善についての有効な技術に関する。」

〈実施の形態の総括的な説明〉
「【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を総括的に説明する。
・・・(中略)・・・
《第6の発明》
「【0036】本願第6の発明のダイナミックレンジ拡大カメラは、上記の第1?第4の発明において、前記光電変換手段として通常の映像信号表示画素以上の画素数を有するCMOSセンサを採用し、さらに、前記第1の記憶手段から前記信号合成手段に転送される時間伸長された長時間露光信号から動きベクトルを検出する動きベクトル検出手段を設け、検出した動きベクトルに基づいて生成された補正信号に基づいて前記第1の記憶手段および第2の記憶手段をフィードバック制御して所定の画素数領域の切り出しを行って手ぶれ補正するように構成してあるというものである。
【0037】この第6の発明によると、簡単な構成の通常タイプの光電変換手段を用いてのダイナミックレンジ拡大を行いながら、時間伸長された長時間露光信号の高速応答性をもつ動きベクトルに基づいて確実な手ぶれ補正をも可能となしてある。」
《第7の発明》
「【0038】本願第7の発明のダイナミックレンジ拡大カメラは、上記の第1?第6の発明において、前記光電変換手段として通常の映像信号表示画素以上の画素数を有するCMOSセンサを採用し、さらに、水平方向または垂直方向あるいは水平垂直両方向で所定の画素数のみ切り出すことで手ぶれ補正を行うように構成してあるというものである。
【0039】この第7の発明によると、簡単な構成の通常タイプの光電変換手段を用いてのダイナミックレンジ拡大を行いながら、画素余裕を利用して手ぶれ補正を確実なものとなしてある。なお、一般にPAL方式の有効画素数はNTSC方式に比べて水平、垂直ともに約20%大きいので、その画素余裕を利用して画質劣化なしに手ぶれ補正が行える。」

〈実施の形態1〉
「【0041】(実施の形態1)図1は本発明の実施の形態1におけるダイナミックレンジ拡大カメラの概略的構成を示すブロック図である。図1において、符号の10は被写体などからの光束を入射して光電変換により光信号を電気信号に変換するのであるが、露光形態として長時間露光と短時間露光との2方式を交互に繰り返し、それぞれ長時間露光信号21と短時間露光信号22を通常の倍以上の駆動周波数で面順次に出力するように構成されている通常タイプの光電変換手段である。この光電変換手段10が従来の技術の特殊な光電変換手段40と違って、通常タイプのものであるという点に留意する必要がある。11は光電変換手段10から出力された通常の倍以上のレートの長時間露光信号21を一時記憶するとともに読み出しは通常の駆動周波数で行う第1の記憶手段、12は光電変換手段10から出力された通常の倍以上のレートの短時間露光信号22を一時記憶するとともに読み出しは通常の駆動周波数で行う第2の記憶手段、13は第1の記憶手段11から通常の駆動周波数で読み出された時間伸長された長時間露光信号23と第2の記憶手段12から通常の駆動周波数で読み出された時間伸長された短時間露光信号24とを同期をとった(同時化した)状態で合成し、ダイナミックレンジ拡大された1系統の合成映像信号25として出力する信号合成手段である。
【0042】図2は上記のように構成された本実施の形態1におけるダイナミックレンジ拡大カメラの動作を説明するタイミングチャートである。図2(A)は映像信号の垂直同期信号を示す。1Vは垂直周期を表す。
【0043】図2(B)は、光電変換手段10における露光の状態を示すもので、長時間露光と短時間露光とがそれぞれ垂直周期(1V)内に1回ずつ行われる。これは、露光量の累積を三角形で示している。長時間露光の勾配と短時間露光の勾配とは互いに等しくなっている。長時間露光の方は露光時間が長いため、三角形の高さも大きくなっている。」
「【0062】(実施の形態4)CMOSセンサにおける手ぶれ補正をも考慮したより高次のダイナミックレンジ拡大カメラについての別の形態が本実施の形態4である。ここでは、動きベクトルの検出をもって第1および第2の記憶手段を制御することを通じて、手ぶれ補正を行うように構成してある。」
〈実施の形態4〉
【0063】図5は本発明の実施の形態4のダイナミックレンジ拡大カメラの構成を示すブロック図である。符号の10?13については既述のとおりであるので説明を省略するが、新たな要素として、符号の14は上記の実施の形態3と同様の第1の記憶手段11から読み出される通常時間軸に伸長された長時間露光信号23を入力して、動きベクトルを検出する動きベクトル検出回路である。この動きベクトル検出回路14は、検出した動きベクトルに基づいて補正信号Scを生成し、この補正信号Scを第1の記憶手段11と第2の記憶手段12とに共通に与えることにより、各記憶手段11,12の読み出しアドレスの制御を行って手ぶれ補正を行うように構成してある。すなわち、検出した動きベクトルを打ち消すようなネガティブフィードバック制御を行うことにより、手ぶれ補正を行うこととしている。
【0064】もちろん、実施の形態1の場合と同様に、従来技術のような特殊な光電変換手段を使用せずに、良好な信号出力特性を有する状態でダイナミックレンジを拡大することができるという効果も発揮する。」
〈実施の形態5〉
【0065】(実施の形態5)実施の形態5は、CMOSセンサの画素余裕を利用して手ぶれ補正を行うように構成したものである。
【0066】光電変換手段10として水平方向または垂直方向あるいは水平垂直両方向において通常の映像信号表示画素以上の画素数を有するCMOSセンサを使用し、水平画素または垂直画素あるいは水平垂直双方の所定の画素数のみ切り出して出力されるように構成するとよい。
【0067】図6(A)は、光電変換手段10として垂直方向に画素余裕を有するCMOSセンサを使用した場合の光電変換領域A1と信号出力領域A2を示す。光電変換領域A1は信号出力領域A2よりも上下方向でサイズが大きくなっており、その分、画素余裕がある。その画素余裕の範囲内でウインドウを上下方向に動かして手ぶれ補正を行う。
【0068】図6(B)は、光電変換手段10として水平垂直両方向に画素余裕を有するCMOSセンサを使用した場合の光電変換領域A1と信号出力領域A2を示す。光電変換領域A1は信号出力領域A2よりも上下方向および左右方向でサイズが大きくなっており、その分、画素余裕がある。その画素余裕の範囲内でウインドウを上下左右方向に動かして手ぶれ補正を行う。」

[3]刊行物3に記載された発明(以下、「引用発明3」という)

(1)引用発明3認定の対象
刊行物3には、「小型化および画質改善についての有効な技術」を採用した「ダイナミックレンジ拡大の機能を有するビデオカメラなどのダイナミックレンジ拡大カメラ」(段落【0001】)が記載されていて、
特に、
・請求項1を引用する請求項6をさらに引用する請求項7、
・これに対応する「第6の発明」において「前記光電変換手段として通常の映像信号表示画素以上の画素数を有するCMOSセンサを採用し、さらに、水平方向または垂直方向あるいは水平垂直両方向で所定の画素数のみ切り出すことで手ぶれ補正を行うように構成」した「第7の発明」(段落【0038】)、
・同じく、これに対応する、
請求項1対応の「実施の形態」(特に段落【0041】?【0043】、図2)、
請求項6対応の「実施の形態4」(段落【0062】?【0064】、図5)、
請求項7対応の「実施の形態5」(段落【0065】?【0068】、図5、図6(B))
に記載された技術から引用発明を認定する。

(2)引用発明3の認定

引用発明3として、以下の(a)?(e2)のものを認定することができる。{その根拠については()内に、(b2)(e2)については別途《根拠》に示した。}

上記(1)のとおり、
(a)小型化および画質改善についての有効な技術を採用したダイナミックレンジ拡大カメラ」であって(段落【0001】)、

〈概要〉
そのカメラは、概要、請求項1を引用する請求項6をさらに引用する請求項7に記載されるものである。すなわち、
(b1)長時間露光信号と短時間露光信号とを通常の倍以上の駆動周波数面順次に出力する光電変換手段であって(請求項7)、
(b2)光電変換手段10として水平垂直両方向において通常の映像信号表示画素以上の画素数を有するCMOSセンサであって、水平垂直両方向において通常の映像信号表示画素以上の画素数の光電変換領域A1と信号出力領域A2を有し、水平垂直両方向に画素余裕(光電変換領域A1は信号出力領域A2よりも上下方向および左右方向でサイズが大きく、そのA1領域とA2領域の間の領域)を有するCMOSセンサを採用した光電変換手段と(段落【0066】,【0068】,図6(B))、
(c)前記光電変換手段から出力される長時間露光信号を一時記憶し通常の駆動周波数で読み出しを行う第1の記憶手段と、前記光電変換手段から出力される短時間露光信号を一時記憶し通常の駆動周波数で読み出しを行う第2の記憶手段と(請求項1)、
(d1)前記第1の記憶手段から読み出される時間伸長された長時間露光信号と前記第2の記憶手段から読み出される時間伸長された短時間露光信号とを同期をとって合成し合成映像信号を出力する信号合成手段と(請求項1)、
(e1)前記第1の記憶手段から前記信号合成手段に転送される時間伸長された長時間露光信号から動きベクトルを検出する動きベクトル検出手段を設け(請求項6)、
検出した動きベクトルに基づいて生成された補正信号に基づいて前記第1の記憶手段および第2の記憶手段をフィードバック制御して、水平垂直両方向で所定の画素数領域のみ切り出すことで手ぶれ補正を行うように構成した(請求項6,7)、
(a)カメラである。

そして、その露光、各露光信号の一時記憶と読み出し及び合成、手振れ補正の詳細は、以下の様になされるカメラ。

〈詳細〉
(f)露光
露光は、被写体などからの光束を入射して光電変換により光信号を電気信号に変換する光電変換手段10により、長時間露光と短時間露光との2方式を交互に繰り返し、長時間露光と短時間露光とがそれぞれ垂直周期(1V)内に1回ずつ行われ、それぞれ長時間露光信号21と短時間露光信号22を通常の倍以上の駆動周波数で面順次に出力する(段落【0041】【0043】、図2(B))。

(d2)各露光信号の一時記憶と読み出し及び合成
各露光信号の一時記憶と読み出し及び合成は、長時間露光信号21を一時記憶するとともに読み出しは通常の駆動周波数で行う第1の記憶手段と、短時間露光信号22を一時記憶するとともに読み出しは通常の駆動周波数で行う第2の記憶手段とから、それぞれ、通常の駆動周波数で読み出された時間伸張された長時間露光信号23と短時間露光信号24とを同期をとった(同時化した)状態で合成するようにされ、
これによりダイナミミックレンジ拡大された1系統の合成映像信号25として出力する(段落【0041】)。

手振れ補正 (e2)手振れ補正は、
動きベクトル検出回路14が、第1の記憶手段11から読み出される通常時間軸に伸長された長時間露光信号23を入力して、動きベクトルを検出し、検出した動きベクトルに基づいて補正信号Scを生成し、
この補正信号Scを第1の記憶手段11と第2の記憶手段12とに共通に与えることにより(段落【0063】)、
画素余裕の範囲内でウインドウを上下左右方向に動かし、水平垂直双方の所定の画素数のみ切り出して出力されるようにするようして行われる(段落【0068】)、
すなわち、各記憶手段11,12の読み出しアドレスの制御を行って、各記憶手段11,12に記憶した(信号出力領域A2を含む)光電変換領域A1内の各画素信号(前記長時間露光信号21と短時間露光信号22)から切り出す信号出力領域A2を、検出した動きベクトル基づいて生成した補正信号Scに応じて移動させるようにして、信号出力領域A2内の各画素出力を切り出して出力することで、
行われるように構成される。

《根拠(上記(b2)、特に下線部の根拠)》
「光電変換手段10として水平方向または垂直方向あるいは水平垂直両方向において通常の映像信号表示画素以上の画素数を有するCMOSセンサを使用し、水平画素または垂直画素あるいは水平垂直双方の所定の画素数のみ切り出して出力されるように構成するとよい。」(段落【0066】)、
「図6(B)は、光電変換手段10として水平垂直両方向に画素余裕を有するCMOSセンサを使用した場合の光電変換領域A1と信号出力領域A2を示す。光電変換領域A1は信号出力領域A2よりも上下方向および左右方向でサイズが大きくなっており、その分、画素余裕がある。その画素余裕の範囲内でウインドウを上下左右方向に動かして手ぶれ補正を行う。」(段落【0068】)
によれば、「光電変換領域A1」として、「水平垂直両方向において通常の映像信号表示画素以上の画素数」の領域であるものを認めることができることは明らかである。
また、光電変換領域A1は信号出力領域A2よりも上下方向および左右方向でサイズが大きく、そのA1領域とA2領域の間の領域が、水平垂直両方向の「画素余裕」といえることは明らかである。

《根拠(上記(e2)、特に下線部の根拠)》
手振れ補正が、上記(e2)(特に下線部)のようにして行われるといえるのは、以下の理由による。
手振れ補正は、段落【0063】、【0065】,【0066】【0068】,図5,図6(B)に記載されるように、すなわち、
「14は、・・・第1の記憶手段11から読み出される通常時間軸に伸長された長時間露光信号23を入力して、動きベクトルを検出する動きベクトル検出回路である。この動きベクトル検出回路14は、検出した動きベクトルに基づいて補正信号Scを生成し、この補正信号Scを第1の記憶手段11と第2の記憶手段12とに共通に与えることにより、各記憶手段11,12の読み出しアドレスの制御を行って手ぶれ補正を行うように構成してある。すなわち、検出した動きベクトルを打ち消すようなネガティブフィードバック制御を行うことにより、手ぶれ補正を行うこととしている。」(段落【0063】)、
「(実施の形態5)実施の形態5は、CMOSセンサの画素余裕を利用して手ぶれ補正を行うように構成したものである。
光電変換手段10として水平方向または垂直方向あるいは水平垂直両方向において通常の映像信号表示画素以上の画素数を有するCMOSセンサを使用し、水平画素または垂直画素あるいは水平垂直双方の所定の画素数のみ切り出して出力されるように構成する」(段落【0065】【0066】)、
「図6(B)は、光電変換手段10として水平垂直両方向に画素余裕を有するCMOSセンサを使用した場合の光電変換領域A1と信号出力領域A2を示す。光電変換領域A1は信号出力領域A2よりも上下方向および左右方向でサイズが大きくなっており、その分、画素余裕がある。その画素余裕の範囲内でウインドウを上下左右方向に動かして手ぶれ補正を行う。」(段落【0068】)
ようにして行われるところ、
上記「通常の映像信号表示画素以上の画素数を有するCMOSセンサを使用し、水平画素または垂直画素あるいは水平垂直双方の所定の画素数のみ切り出して出力されるようにする。」(段落【0066】)とは、
上記図6(B)のCMOSセンサの場合、その光電変換領域A1中の信号出力領域A2内の各画素のみから画素出力が得られるようにする切り出しを行うというものであることが明らかであり、
また、この「切り出し」は、上記手ぶれ補正が、検出した動きベクトル(手ぶれ)に基づいて生成された補正信号Scにより記憶手段11,12の読み出しアドレスを制御することによりなされるものであることに照らせば、
上記記憶手段11,12に記憶した、信号出力領域A2を含む光電変換領域A1内の各画素出力(前記長時間露光信号21と短時間露光信号22)から、(上記読み出しアドレス制御によって)上記信号出力領域A2内の各画素出力を切り出して出力するというものと認めることができるからであり、 また、「画素余裕の範囲内でウインドウを上下左右方向に動かして手ぶれ補正を行う。」とは、
上記「切り出し」との関連でみると、記憶手段11,12から上記のように信号出力領域A2内の各画素出力を切り出すに際し、上記「ウインドウ」すなわち上記画素出力の切り出しがなされる信号出力領域A2を、検出した動きベクトル基づいて生成した補正信号Scに応じて移動させるようにして、移動させた信号出力領域A2内の各画素出力を切り出して出力することにより手ぶれ補正を行うようにしたというものと解されるからである。


[4]本願発明と引用発明3との対比

(1)本願発明(構成要件の分説)
本願発明は、以下のように要件A?Dに分説することができる。

本願発明(分説)
A:有効画素領域および該有効画素領域の外部に所定のサイズで備えられた予備画素領域からなっている光学面に結像した被写体の光学像を撮影し映像信号を生成する撮像素子と、
B:前記有効画素領域より大きい画素領域内に生成された映像信号が出力されるように前記撮像素子を駆動させる撮像素子駆動部と、
C:前記撮像素子で出力された前記映像信号について所定の信号処理を行う信号処理部と、
D:信号処理された前記映像信号がフィールド単位に格納されるメモリと、
E:前記メモリに格納された前記映像信号を用いて、前記有効画素領域と同サイズのハンドシェイク補正された領域を算出するハンドシェイク補正部とを含むことを特徴とする
F:撮影装置。

(2)対応関係
ア 要件E:「撮影装置」について
引用発明3は、(a)「カメラ」であるから、「撮影装置」ともいえるものである。

イ 要件A:「有効画素領域および該有効画素領域の外部に所定のサイズで備えられた予備画素領域からなっている光学面に結像した被写体の光学像を撮影し映像信号を生成する撮像素子と、」について

引用発明3の(b2)の「光電変換手段10として・・・CMOSセンサ」も「撮像素子」といえるもので、その光学面に結像した被写体の光学像を撮影し映像信号を生成するものといえる。
引用発明3の(b2)「水平垂直両方向において通常の映像信号表示画素以上の画素数を有するCMOSセンサであって、水平垂直両方向において通常の映像信号表示画素以上の画素数の光電変換領域A1と信号出力領域A2を有し、水平垂直両方向に画素余裕(光電変換領域A1は信号出力領域A2よりも上下方向および左右方向でサイズが大きく、そのA1領域とA2領域の間の領域)を有するCMOSセンサ」の画素余裕の領域は、
本願発明でいう「予備画素領域」といえるものであるが、上記「信号出力領域」については、引用発明では、「有効画素領域」とはしておらず、この点、相違が認められる。

しかしながら、その点を一応措くと、以下にみるように、
本願発明の上記「有効画素領域」も、引用発明3の「信号出力領域A2」も、いずれも、『手振れ補正出力映像の画素サイズを決定する画素領域』といえ、また、『手振れ補正出力する映像の所要水平垂直画素数領域』ともいい得るものである。
すなわち、
本願発明では、E「前記メモリに格納された前記映像信号を用いて、前記有効画素領域と同サイズのハンドシェイク補正された領域を算出するハンドシェイク補正部」とされており、また、同算出された水平垂直画素数の領域の画像がハンドシェイク補正された出力画像、すなわち、手振れ補正出力する画像となっていることは、明細書の記載に照らし明らかである(「ハンドシェイク補正」は「手振れ補正」と同義である)から、
本願発明の上記「有効画素領域」により、手振れ補正出力する映像の水平垂直画素数(画素サイズ)が決まるものである、
つまり、当該「有効画素領域」は、『手振れ補正出力映像の画素サイズを決定する画素領域』といい得るものであり、また、『手振れ補正出力する映像の所要水平垂直画素数領域』ともいい得るものであるところ、
引用発明3の「信号出力領域A2」についてみるに、
(e2)の「手振れ補正は、・・・共通に与えることにより、画素余裕の範囲内でウインドウを上下左右方向に動かし、水平垂直双方の所定の画素数のみ切り出して出力されるようにするようして行われる、
すなわち、・・・信号出力領域A2内の各画素出力を切り出して出力する」からすれば、
(その範囲内でウインドウを上下左右方向に動かす、とする画素余裕の存在により、切り出す位置・ウインドウは上下左右方向に動いても、手振れ補正出力であるウインドウの水平垂直画素数分の画像-信号出力領域A2の水平垂直画素数分内の各画素領域の画像-は欠けることなく出力されるようになっていることは明らかであり、)
上記「信号出力領域A2」により、手振れ補正出力する映像の水平垂直画素数(画素サイズ)が決まるものであって、当該「信号出力領域A2」も、本願発明の「有効画素領域」と同様、『手振れ補正出力映像の画素サイズを決定する画素領域』といい得るものであり、また、『手振れ補正出力する映像の所要水平垂直画素数領域』ともいい得るものである。

そうすると、本願発明と引用発明3とは、いずれも、『手振れ補正出力映像の画素サイズを決定する画素領域』(『手振れ補正出力する映像の所要水平垂直画素数領域』)および該『領域』の外部に所定のサイズで備えられた予備画素領域からなっている光学面に結像した被写体の光学像を撮影し映像信号を生成する撮像素子」を有しているといえ、この点両者は相違しない。
もっとも、引用発明3は、「信号出力領域A2」が「有効画素領域」とはしておらず、この点、補正後発明との相違が認められる。(→相違点)

以下の対比においては、この相違をひとまず措き、本願発明の「有効画素領域」を、『手振れ補正出力映像の画素サイズを決定する画素領域』(『手振れ補正出力する映像の所要水平垂直画素数領域』)として引用発明1と対比する。
また、以下、かかる領域を、単に『所要水平垂直画素領域』とも略して言うこととする。

ウ 要件B:「前記『所要水平垂直画素領域』(有効画素領域)より大きい画素領域内に生成された映像信号が出力されるように前記撮像素子を駆動させる撮像素子駆動部と、」について

引用発明3の「撮像素子」-(b2)の「光電変換手段10として水平垂直両方向において通常の映像信号表示画素以上の画素数を有するCMOSセンサであって、水平垂直両方向において通常の映像信号表示画素以上の画素数の光電変換領域A1と信号出力領域A2を有し、水平垂直両方向に画素余裕(・・・)を有するCMOSセンサ」-から、出力される長時間露光信号及び短時間露光信号は、光電変換領域A1内の画素信号であって、前記信号出力領域A2、すなわち、上記『所要水平垂直画素領域』より大きい画素領域内に生成された映像信号」であるところ{(e2)下線}、
そのような映像信号を出力する上で、上記撮像素子の駆動部として、引用発明3でも、本願発明と同様、「前記『所要水平垂直画素領域』より大きい画素領域内に生成された映像信号が出力されるように前記撮像素子を駆動させる撮像素子駆動部」が設けられているといえることは、特に明示がなくとも明らかである。
したがって、上記要件Bにおいて、本願発明と引用発明3とは相違しない。

エ 要件C:「前記撮像素子で出力された前記映像信号について所定の信号処理を行う信号処理部と、」について

引用発明3が上記信号処理部を有するものである点については、刊行物3には特に記載がない。
しかしながら、一般に、撮像素子で出力された(映像)信号はアナログの生画素信号であって、これに、適宜の信号処理{例えば、A/D変換や、(4-1-1等の)所定形式のデジタルの映像信号とするための信号処理等}をしてからメモリに格納するのが普通であり{必要があれば特開2001-358999号公報(図1とその説明、前処理部2、信号処理部3等)、特開2000-138864号公報(図1とその説明、CDS/AGC2,ADC3等)参照}、
引用発明3でも、撮像素子(CMOSセンサ)からの長時間露光信号及び短時間露光信号を第1・第2の記憶手段に記憶するとすることから、少なくとも、撮像素子で出力されたアナログの生画素信号をA/D変換してから第1・第2の記憶手段に記憶しているといえ、
引用発明3も、撮像部の上記「撮像素子で出力された前記映像信号について所定の信号処理を行う信号処理部」を有していることは、特に明示がなくとも明らかであり、この点、本願発明と相違するものではない。
したがって、上記要件Cにおいて、本願発明と引用発明3とは相違しない。

オ 要件D:「信号処理された前記映像信号がフィールド単位に格納されるメモリと、」について

引用発明3でも、メモリ(第1・第2の記憶手段11,12)に記憶(格納)されるのが「信号処理された前記映像信号」といえることは、上記エの通りである。
また、引用発明3では、上記(f)「長時間露光と短時間露光とがそれぞれ垂直周期(1V)内に1回ずつ行われ、それぞれ長時間露光信号21と短時間露光信号22を通常の倍以上の駆動周波数で面順次に出力」し、これらの露光信号が第1・第2の記憶手段(11,12)に記憶される{(c)}のであるから、
当該第1・第2の記憶手段は、本願発明の「映像信号がフィールド単位に格納されるメモリ」といえるものである。
したがって、上記要件Dにおいて、本願発明と引用発明3とは相違しない。

カ 要件E:「前記メモリに格納された前記映像信号を用いて、前記『所要水平垂直画素領域』と同サイズのハンドシェイク補正された領域を算出するハンドシェイク補正部とを含むことを特徴とする」について

引用発明3では、上記(e2)「手振れ補正は、
動きベクトル検出回路14が、第1の記憶手段11から読み出される通常時間軸に伸長された長時間露光信号23を入力して、動きベクトルを検出し、検出した動きベクトルに基づいて補正信号Scを生成し、
この補正信号Scを第1の記憶手段11と第2の記憶手段12とに共通に与えることにより、
画素余裕の範囲内でウインドウを上下左右方向に動かし、水平垂直双方の所定の画素数のみ切り出して出力されるようにするようして行われる、
すなわち、各記憶手段11,12の読み出しアドレスの制御を行って、各記憶手段11,12に記憶した(信号出力領域A2を含む)光電変換領域A1内の各画素信号(前記長時間露光信号21と短時間露光信号22)から切り出す信号出力領域A2を、検出した動きベクトル基づいて生成した補正信号Scに応じて移動させるようにして、信号出力領域A2内の各画素出力を切り出して出力することで、
行われるように構成される。」ところ、
本願発明の「前記メモリ」と言い得る「第1の記憶手段11」に格納された、本願発明の「前記映像信号」と言い得る「長時間露光信号23」を用いてハンドシェイク補正(これが、「手振れ補正」と同義であることは明らかである。)しているといえ、
また、引用発明3での「検出した動きベクトルに基づいて」「移動」させた「信号出力領域A2」(『所要水平垂直画素領域』)は、本願発明における「『所要水平垂直画素領域』と同じサイズのハンドシェイク補正された領域」ともいえるものである。
さらに、「信号出力領域A2」(『所要水平垂直画素領域』)内の各画素の画素出力を上記記憶手段11,12から切り出して出力する上で、引用発明3でも、切り出す「信号出力領域A2」を特定するのに必要な同領域A2の算出がなされているといえ、また、かかる算出が、上記検出した動きベクトルに基づく算出といい得るものである。
そして、上記(e2)のように構成される「動きベクトル検出回路14」が、そのような算出をする部分を含んでいるといえ、また、当該部分を「ハンドシェイク補正部」と称しても支障はない。
以上によれば、上記要件Eにおいても、本願発明と引用発明3とは相違しない。

[5]一致点、相違点
本願発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
A’『手振れ補正出力映像の画素サイズを決定する画素領域』(『手振れ補正出力する映像の所要水平垂直画素数領域』)および該『手振れ補正出力映像の画素サイズを決定する画素領域』の外部に所定のサイズで備えられた予備画素領域からなっている光学面に結像した被写体の光学像を撮影し映像信号を生成する撮像素子と、
B:前記『手振れ補正出力映像の画素サイズを決定する画素領域』より大きい画素領域内に生成された映像信号が出力されるように前記撮像素子を駆動させる撮像素子駆動部と、
C:前記撮像素子で出力された前記映像信号について所定の信号処理を行う信号処理部と、
D:信号処理された前記映像信号がフィールド単位に格納されるメモリと、
E:前記メモリに格納された前記映像信号を用いて、前記『手振れ補正出力映像の画素サイズを決定する画素領域』と同サイズのハンドシェイク補正された領域を算出するハンドシェイク補正部とを含むことを特徴とする
F:撮影装置。

[相違点]
上記『手振れ補正出力映像の画素サイズを決定する画素領域』(『手振れ補正出力する映像の所要水平垂直画素数領域』)を、
本願発明では、「有効画素領域」としているのに対し、
引用発明3では、「信号出力領域A2」としていて、「有効画素領域」とはしていない点。

[6]相違点等の判断(容易想到性の判断)

(1)[相違点の克服]
引用発明3の「信号出力領域A2」(『手振れ補正出力映像の画素サイズを決定する画素領域』(『所要水平垂直画素数領域』))を、「有効画素領域」とすることで、[相違点]は克服され、本願発明に到達する。

(2)[相違点の克服]の容易想到性

《技術常識・周知事項》
手振れ補正出力に限らず、一般のカメラのような映像信号を生成し/形成し/出力する一般の装置では、
その出力映像は、
通常の有効画素サイズの映像信号を受け入れ、その通常の有効画素サイズの映像が表示できるようになっている一般の表示装置へ入力することが予定されている映像であり、また、そこで略有効画素サイズの映像表示がなされることが予定されて映像であることから、
その出力映像の画素サイズを通常の映像信号の有効画素サイズと設定することは当業者の常であり、また技術常識であり、ごく普通の周知のことである。

《容易想到性》
上記《技術常識・周知事項》からすれば、
引用発明3の「信号出力領域A2」(『手振れ補正出力映像の画素サイズを決定する画素領域』(『所要水平垂直画素数領域』))の画素サイズを、通常の映像信号の「有効画素領域」とすることは、は当業者が容易に想到し得ることであり、上記[相違点の克服]は当業者が容易に想到し得ることである。

また、引用発明3の光電変換手段10としてCMOSセンサが、「通常の映像信号表示画素以上の画素数の光電変換領域A1」を有しているのは、当該「光電変換領域A1」より上下方向および左右方向サイズが小さい「信号出力領域A2」を、通常の映像信号の表示画素のサイズとすることを予定してして設定しているものであると、当業者は容易に認識し得ることといえ、
このことからみても、上記[相違点の克服]は、当業者が容易に想到し得ることである。

さらに、 刊行物3の 「この第7の発明によると、簡単な構成の通常タイプの光電変換手段を用いてのダイナミックレンジ拡大を行いながら、画素余裕を利用して手ぶれ補正を確実なものとなしてある。なお、一般にPAL方式の有効画素数はNTSC方式に比べて水平、垂直ともに約20%大きいので、その画素余裕を利用して画質劣化なしに手ぶれ補正が行える。」(段落【0038】)の下線部の記載は、
画素余裕が、「光電変換領域A1」と「信号出力領域A2」間の領域であることを踏まえれば、
PAL方式の有効画素数の撮像素子を用い、その有効画素数の領域を「光電変換領域A1」とし、これより水平、垂直ともに約20%小さいNTSC方式の有効画素数領域を「信号出力領域A2」とすることをいうものと理解され、このことからみても、上記[相違点の克服]は、当業者の容易想到である。

《周知技術》
また、ビデオカメラ等の撮像装置において、手振れ補正のために、撮像素子の撮像面の画素領域を、『手振れ補正出力する映像の所要水平垂直画素数領域』とその外側を囲む余剰画素領域とからなる画素領域とする場合、当該『手振れ補正出力する映像の所要水平垂直画素数領域』を有効画素領域(あるいは有効画面領域)とすることは周知の技術でもある。(これには、例えば、下記の刊行物等が参照される。)
この周知技術からみても、上記[相違点の克服]は、当業者の容易想到である。
記(周知例)
特開平3-254286号公報(請求項1、第1,2図とその説明等参照)
特開平3-270384号公報(第1図,第2図とその説明等参照)、

以上によれば、引用発明3の「信号出力領域A2」を「有効画素領域」とすることは当業者が容易になし得たことである。

[7]まとめ(本願発明)
以上にように、上記[相違点の克服]は当業者が容易になし得ることであるから、引用発明を出発点として、上記[相違点の克服]をして本願発明に到達することは、当業者が容易に想到し得たことである。

【第4】むすび
以上、本願の請求項1に係る発明は、刊行物3に記載された発明及び技術常識、周知事項等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-24 
結審通知日 2011-03-29 
審決日 2011-04-13 
出願番号 特願2005-206121(P2005-206121)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小田 浩  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 奥村 元宏
▲徳▼田 賢二
発明の名称 撮像素子駆動制御とメモリ読み取り制御を用いたハンドシェイク補正方法および撮影装置  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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