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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 C08F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 C08F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 C08F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C08F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C08F
管理番号 1242628
審判番号 不服2008-22391  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-01 
確定日 2011-09-20 
事件の表示 特願2002-561524「混合触媒組成物による重合法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年8月8日国際公開、WO2002/60957、平成16年8月5日国内公表、特表2004-523618、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成13年11月16日(パリ条約に基づく優先権主張 平成13年1月16日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成16年11月15日に手続補正書が提出され、平成19年10月24日付けで拒絶理由が通知され、平成20年2月18日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月23日付けで拒絶すべき旨の査定がなされ、これに対し、同年9月1日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同年9月1日に手続補正書が提出され、さらに、同年9月30日に手続補正書が提出され、同年11月20日に審判請求書の手続補正書(方式)が提出された後、同年12月25日付けで前置報告がなされ、当審において平成23年5月6日付けで審尋がなされ、同年8月1日に回答書が提出されたものである。

第2.平成20年9月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年9月30日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正
平成20年9月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、同年9月1日付けの手続補正書により適法に補正された明細書の特許請求の範囲である、
「【請求項1】
(a)非配位性アニオン前駆体と少なくとも2の異なる触媒(触媒A及び触媒B)を含む混合触媒組成物を提供する工程、
(b)(i)第1のモノマーを供給する工程
(ii)第1のモノマーに前記混合触媒組成物を接触させる工程
(iii)第1ポリマーを含む混合触媒組成生成物の存在下で第1の重合を行う工程であって、触媒Aは重合の際に前記非配位性アニオン前駆体により活性化され、触媒Bは重合の際に前記非配位性アニオン前駆体により活性化されない、工程
を含む、第1重合工程、
(c)(i)更なるモノマーを供給する工程
(ii)更なるモノマーを混合触媒組成物に接触させる工程
(iii)混合触媒組成物の存在下、更なる重合を行なうことにより、ポリマーを含む生成物を与える工程であって、ここで触媒Bが重合の際に、アルモキサンまたは有機アルミニウムアルキル化合物と非配位性アニオン前駆体との混合物の添加により活性化されて活性である当該工程、
を含む、更なる重合工程、及び
(d)ポリマー生成物を回収する工程
を含み、
触媒Aが、ジメチルシランジイルビス(2-メチル-インデニル)ZrMe_(2),ジメチルシランジイルビス(2-メチル-4-フェニル-1-インデニル)ZrMe_(2),ジメチルシランジイルビス(2-メチル-4-(1-ナフチル)-1-インデニル)ZrMe_(2)からなる群から選択され、
触媒Bがμ-Me_(2)Si(インデニル)_(2)HfMe_(2),μ-(CH_(3))_(2)Si(インデニル)_(2)HfCl_(2),μ-(CH_(3))_(2)Si[テトラメチルシクロペンタジエニル][アダマンチルアミド]TiCl_(2)又はμ-(C_(6)H_(5))_(2)Si[シクロペンタジエニル][フルオレニル]HfCl_(2)から選択される群から選択され、
前記NCA前駆体がN,N-ジメチルアニリニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート,トリプロピルアンモニウム テトラキス(o,p-ジメチルフェニル)ボラート,トリブチルアンモニウム テトラキス(m,m-ジメチルフェニル)ボラート,トリブチルアンモニウム テトラキス(p-トリフルオロメチルフェニル)ボラート,トリブチルアンモニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートからなる群より選択され、
前記アルモキサンがメチルアルモキサンであり、
前記有機アルミニウムアルキル化合物がトリイソブチル アルミニウムまたはアルキルアルモキサンである、
重合方法。
【請求項2】
多孔質担持物質に触媒A、触媒B、及び非配位性アニオン前駆体を担持することにより混合触媒組成物をさらに提供する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
(a)第1のモノマーが少なくとも80重量%のプロピレンを含み、その残余がC_(2)-C_(10)のα-オレフィンであり、
(b)更なるモノマーが30-60重量%のプロピレン及び30-60重量%のC_(2)-C_(10)のα-オレフィンを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
(a)第1のモノマーが液相に存在する間に、第1番目の重合は行なわれ、
(b)更なるモノマーが液相に存在する間、その後の重合が行なわれる、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
第1、第2、及び更なるモノマー中のC_(2)-C_(10)のα-オレフィンがエチレンである、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記多孔質担持物質がシリカである、請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記触媒Bがメチルアルモキサンで活性化される、
請求項1または2記載の方法。」を、
「【請求項1】
(a)非配位性アニオン前駆体と少なくとも2の異なる触媒(触媒A及び触媒B)を含む
混合触媒組成物を提供する工程、
(b)(i)第1のモノマーを供給する工程
(ii)第1のモノマーに前記混合触媒組成物を接触させる工程
(iii)第1ポリマーを含む混合触媒組成生成物の存在下で第1の重合を行う工程であって、触媒Aは重合の際に前記非配位性アニオン前駆体により活性化され、触媒Bは重合の際に前記非配位性アニオン前駆体により活性化されない、工程
を含む、第1重合工程、
(c)(i)更なるモノマーを供給する工程
(ii)更なるモノマーを混合触媒組成物に接触させる工程
(iii)混合触媒組成物の存在下、更なる重合を行なうことにより、ポリマーを含む生成物を与える工程であって、ここで触媒Bが重合の際に、アルモキサンまたは有機アルミニウムアルキル化合物と非配位性アニオン前駆体との混合物の添加により活性化されて活性である当該工程、
を含む、更なる重合工程、及び
(d)ポリマー生成物を回収する工程
を含み、
触媒Aが、ジメチルシランジイルビス(2-メチル-インデニル)ZrMe_(2),ジメチルシランジイルビス(2-メチル-4-フェニル-1-インデニル)ZrMe_(2),ジメチルシランジイルビス(2-メチル-4-(1-ナフチル)-1-インデニル)ZrMe_(2)からなる群から選択され、
触媒Bがμ-Me_(2)Si(インデニル)_(2)HfMe_(2),μ-(CH_(3))_(2)Si(インデニル)_(2)HfCl_(2),μ-(CH_(3))_(2)Si[テトラメチルシクロペンタジエニル][アダマンチルアミド]TiCl_(2),(Me_(4)Cp)SiMe_(2)(N-t-Bu)TiCl_(2)又はμ-(C_(6)H_(5))_(2)Si[シクロペンタジエニル][フルオレニル]HfCl_(2)から選択される群から選択され、
前記非配位性アニオン前駆体がN,N-ジメチルアニリニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート,トリプロピルアンモニウム テトラキス(o,p-ジメチルフェニル)ボラート,トリブチルアンモニウム テトラキス(m,m-ジメチルフェニル)ボラート,トリブチルアンモニウム テトラキス(p-トリフルオロメチルフェニル)ボラート,トリブチルアンモニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートからなる群より選択され、
前記アルモキサンがメチルアルモキサンであり、
前記有機アルミニウムアルキル化合物がトリイソブチル
アルミニウムまたはアルキルアルモキサンである、
重合方法。
【請求項2】
多孔質担持物質に触媒A、触媒B、及び非配位性アニオン前駆体を担持することにより混合触媒組成物をさらに提供する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
(a)第1のモノマーが少なくとも80重量%のプロピレンを含み、その残余がC_(2)-C_(10)のα-オレフィンであり、
(b)更なるモノマーが30-60重量%のプロピレン及び30-60重量%のC_(2)-C_(10)のα-オレフィンを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
(a)第1のモノマーが液相に存在する間に、第1番目の重合は行なわれ、
(b)更なるモノマーが液相に存在する間、その後の重合が行なわれる、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
第1、第2、及び更なるモノマー中のC_(2)-C_(10)のα-オレフィンがエチレンである、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記多孔質担持物質がシリカである、請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記触媒Aがジメチルシランジイルビス(2-メチル-4-フェニル-1-インデニル)ZrMe_(2)であり、
前記触媒Bが(Me_(4)Cp)SiMe_(2)(N-t-Bu)TiCl_(2)であり、
前記非配位性アニオン前駆体がN,N-ジメチルアニリニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートであり、
前記アルモキサンがメチルアルモキサンであり、
前記有機アルミニウムアルキル化合物がトリイソブチル アルミニウムまたはメチルアルモキサンである、
請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
前記触媒Bがメチルアルモキサンで活性化される、 請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
前記触媒Aがジメチルシランジイルビス(2-メチル-4-フェニル-1-インデニル)ZrMe_(2)であり、
前記触媒Bが(Me_(4)Cp)SiMe_(2)(N-t-Bu)TiCl_(2)であり、
前記非配位性アニオン前駆体がN,N-ジメチルアニリニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートであり、
前記触媒Bがメチルアルモキサンで活性化される、 請求項1または2記載の方法。」と補正するものである。

2.補正の適否の判断
そこで、上記補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項に掲げる事項を目的とするものであるか否かについて検討する。
(1)平成18年改正前特許法17条の2第4項は、拒絶査定不服審判請求に伴って行われる場合における特許請求の範囲についてする補正は、同項1号ないし4号に掲げる事項を目的とするものに限る旨規定している。
そして、同項2号は、「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」と規定しており、同号の規定は、請求項の発明特定事項を限定して、これを減縮補正することによって、当該請求項がそのままその補正後の請求項として維持されるという態様による補正を定めたものとみるのが相当であって、請求項を追加する補正(増項による補正)は、補正後の各請求項の記載により特定された発明が、全体として、補正前の請求項の記載により特定される発明よりも限定されたものとなっているとしても、補正前後の請求項に係る発明が一対一の対応関係にあることを必要とするものであり、このような対応関係がない限り、同号にいう「特許請求の範囲の減縮」には該当しないことになる。
もっとも、
ア 多数項引用形式で記載された一つの請求項を、引用請求項を減少させて独立形式の請求項とする場合や、
イ 構成要件が択一的なものとして記載された一つの請求項を、その択一的な構成要件をそれぞれ限定して複数の請求項とする場合
のように、補正前の請求項が実質的に複数の請求項を含むものであるときに、補正に際し、これを独立の請求項とすることにより、請求項の数が増加することになるとしても、それは、実質的に新たな請求項を追加するものとはいえず、実質的には、補正前の請求項と補正後の請求項とが対応したものとなっているということができるから、このような補正についてまで否定されるものではない。(知財高裁 平成17年(行ケ)第10192号判決参照)

(2) 以上の見解に基づいて、本件を検討することとする。
本件補正のうち、請求項7及び9を追加する補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項の数を増加させるものであるから、補正前後の請求項に係る発明が一対一の対応関係にないことは明らかである。そして、この増加は、
ア 多数項引用形式で記載された一つの請求項を、引用請求項を減少させて独立形式の請求項とする場合や、
イ 構成要件が択一的なものとして記載された一つの請求項を、その択一的な構成要件をそれぞれ限定して複数の請求項とする場合
には該当しない。
したがって、本件補正における請求項7及び9を追加する補正は、上記の「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。また、請求項の削除に該当しないことが明らかであるとともに、誤記の訂正であるということも、明りょうでない記載の釈明であるということも、できないから、平成18年改正前特許法17条の2第4項1号ないし4号のいずれにも該当しないといわざるを得ない。

3.審判請求人の主張について
審判請求人は、平成23年8月1日付けの回答書において 次のような主張をしている。
「(a)平成20年2月18日付け手続補正書における請求項の数は、27でした。
(b)平成20年9月1日に請求した拒絶査定不服審判と同時に提出した手続補正書における請求項の数は、7でした。
(c)拒絶査定不服審判の請求の日から30日以内である平成20年9月30日付け手続補正書における請求項の数は、9でした。
(旧)特許法第17条の2第1項第4号には、拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判請求の日から30日以内にするときは補正をできることが規定されております。すなわち、上記の(b)も(c)も当該規定による補正であって、別個の補正ではなく、後に提出した補正が、前に提出した補正に取って代わったものと解釈すべきであります。したがって、平成20年9月30日付け手続補正書における請求項の数9と、平成20年2月18日付け手続補正書における請求項の数27とを比べれなければ意味がありません。
また、請求項数を増加する補正が限定的減縮に該当しないと規定する『特許実用新案審査基準 第III部 明細書、特許請求の範囲又は図面の補正 第II節 最後の拒絶理由通知後の特許請求の範囲についての補正』におきましても、『1. 基本的考え方』には、『第17 条の2 第4 項の規定は、発明の保護を十全に図るという特許制度の基本目的を考慮しつつ、迅速・的確な権利付与を確保する審査手続を確立するために、最後の拒絶理由通知に対する補正は、既に行った審査結果を有効に活用できる範囲内で行うこととする趣旨で設けられたものである。』と記載され、既に行った審査結果を有効に活用するために設けられた規定であることが明記されております。すなわち、審査を行っていない平成20年9月1日付け手続補正書における請求項の数から、同9月30日付け手続補正書における請求項の数が増加したため限定的減縮に該当せず不適法であるとする判断は、当該規定の制定趣旨からも外れた判断であります。
以上のとおりに、平成20年9月30日付け手続補正書による補正は、請求項の数を増加する補正には該当いたしません。」

しかしながら、「ある補正が、特許法17条の2第4項及び第5項の規定に適合するか否かについての判断をする場合には、当該補正よりも前の時点での特許請求の範囲を基準にしなければならないところ、その基準となるのは、最後に適法に補正された特許請求の範囲であり、そのような補正がない場合には願書に添付された特許請求の範囲である。そして、特許請求の範囲に関するある補正について上記判断をする場合において、それ以前にされた複数の補正についてその適否がいまだ判断されていないときには、補正のされた順番に従って、補正の適否について順次判断すべきである。」(知財高裁 平成17年(行ケ)10698号判決参照)から、本件補正において、その基準となるのは、最後に適法に補正された特許請求の範囲、すなわち、平成20年9月1日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲である。
したがって、平成20年9月1日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲を基準とした、上記「2.補正の適否の判断」は、妥当なものである。
よって、上記請求人の主張は失当である。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第4項の規定に違反するので、同法159条第1項において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
以上のように平成20年9月30日付けの手続補正は却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成20年9月1日付けの手続補正書により補正された明細書からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2011-09-07 
出願番号 特願2002-561524(P2002-561524)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C08F)
P 1 8・ 572- WY (C08F)
P 1 8・ 537- WY (C08F)
P 1 8・ 536- WY (C08F)
P 1 8・ 113- WY (C08F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中川 淳子守安 智  
特許庁審判長 田口 昌浩
特許庁審判官 ▲吉▼澤 英一
松浦 新司
発明の名称 混合触媒組成物による重合法  
代理人 山崎 行造  

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