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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1242658
審判番号 不服2010-11435  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-28 
確定日 2011-08-31 
事件の表示 特願2007-187046「ゲームシステム,ゲームプログラム,およびゲームカード読取装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月11日出願公開,特開2007-260451〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成13年11月29日に出願された特願2001-365389号の一部を,平成18年2月17日に分割して新たな特許出願とした特願2006-40184号の一部を,さらに平成19年7月18日に分割して新たな特許出願としたものであって,平成22年3月2日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年5月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同時に提出された手続補正書により特許請求の範囲及び明細書の補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。
その後,平成23年2月23日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,同年3月31日に回答書が提出されたものである。

2.本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲を,補正前の
「【請求項1】
ゲームデータおよびゲーム識別データが記録または記憶されたゲームカード,および,当該ゲームカードを使用可能なゲーム装置を含むゲームシステムであって,
前記ゲーム装置は,ゲームプログラムおよびゲーム識別データが記憶された記憶媒体を着脱自在に装着可能であり,
前記ゲームプログラムは,前記ゲーム装置のプロセッサを,
読取手段を介して,前記ゲームカードから前記ゲームデータおよび前記ゲーム識別データを読み取るゲームカード読取制御手段,
前記ゲームカード読取制御手段によって読み取られた前記ゲーム識別データに基づいて,当該ゲーム識別データが現在装着中の前記記憶媒体に記憶されたゲーム識別データと所定の関係にあることを判断する第1の判断手段,および
前記第1の判断手段によって前記所定の関係にあると判断されたときに,前記ゲームデータを使用してゲーム処理を行うゲーム処理手段として機能させるゲームシステム。
【請求項2】
前記ゲームカードに記録または記憶されるゲームデータはカードの識別情報を含み,
前記ゲームプログラムは,前記第1の判断手段により前記所定の関係にあると判断されたときに,前記ゲーム装置のプロセッサを,さらに,
前記識別情報毎の使用回数データを記憶手段に記憶する使用回数記憶制御手段,
前記ゲームカード読取制御手段によって前記ゲームカードが読み取られたときに,読み取られた前記識別情報についての前記記憶手段の使用回数データが所定回数以下であるか否かを判断する第2の判断手段,および
前記ゲーム処理手段によって前記ゲームデータが使用されるときに,読み取られた前記識別情報についての前記記憶手段の使用回数データを増やす使用回数増加手段として機能させ,
前記ゲーム処理手段は,前記第2の判断手段によって所定回数以下であると判断されたときに,読み取られた前記ゲームデータを使用してゲーム処理を行う,請求項1に記載のゲームシステム。
【請求項3】
前記ゲームカードに記録または記憶されるゲームデータはカードの識別情報を含み,
前記ゲームカードは,さらに,使用可能回数データを記録または記憶し,
前記ゲームカード読取制御手段は,前記使用可能回数データをさらに読み取り,
前記ゲームプログラムは,前記第1の判断手段により前記所定の関係にあると判断されたときに,前記ゲーム装置のプロセッサを,さらに,
前記識別情報毎の使用可能回数データを記憶手段に記憶する使用可能回数記憶制御手段,
前記ゲームカード読取制御手段によって読み取られた前記識別情報が初めて読み取られたデータである場合は,読み取られた前記使用可能回数データを前記記憶手段に設定する使用可能回数設定手段,
前記ゲームカード読取制御手段によって前記ゲームカードが読み取られたときに,読み取られた前記識別情報についての前記記憶手段の使用可能回数データが0でないか否かを判断する第3の判断手段,
および
前記ゲーム処理手段によって前記ゲームデータが使用されるときに,読み取られた前記識別情報についての前記記憶手段の使用可能回数データを減らす使用可能回数減少手段として機能させ,
前記ゲーム処理手段は,前記第3の判断手段によって0でないと判断された場合に,読み取られた前記ゲームデータを使用してゲーム処理を行う,請求項1に記載のゲームシステム。
【請求項4】
<略>
【請求項5】
<略>」
から
「【請求項1】
ゲームデータおよびゲーム識別データが記録または記憶されたゲームカード,および,当該ゲームカードを使用可能なゲーム装置を含むゲームシステムであって,
前記ゲーム装置は,ゲームプログラムおよびゲーム識別データが記憶された記憶媒体を着脱自在に装着可能であり,
前記ゲームプログラムは,前記ゲーム装置のプロセッサを,
読取手段を介して,前記ゲームカードから前記ゲームデータおよび前記ゲーム識別データを読み取るゲームカード読取制御手段,
前記ゲームカード読取制御手段によって読み取られた前記ゲーム識別データに基づいて,当該ゲーム識別データが現在装着中の前記記憶媒体に記憶されたゲーム識別データと所定の関係にあることを判断する第1の判断手段,および
前記第1の判断手段によって前記所定の関係にあると判断されたときに,前記ゲームデータを使用してゲーム処理を行うゲーム処理手段として機能させ,
前記ゲームカードに記録または記憶されるゲームデータはカードの識別情報を含み,
前記ゲームプログラムは,前記第1の判断手段により前記所定の関係にあると判断されたときに,前記ゲーム装置のプロセッサを,さらに,
前記識別情報毎の使用回数データを現在装着中の前記記憶媒体内の記憶手段に記憶する使用回数記憶制御手段,
前記ゲームカード読取制御手段によって前記ゲームカードが読み取られたときに,読み取られた前記識別情報についての現在装着中の前記記憶媒体内の記憶手段の使用回数データが所定回数以下であるか否かを判断する第2の判断手段,および
前記ゲーム処理手段によって前記ゲームデータが使用されるときに,読み取られた前記識別情報についての現在装着中の前記記憶媒体内の記憶手段の使用回数データを増やす使用回数増加手段として機能させ,
前記ゲーム処理手段は,前記第2の判断手段によって所定回数以下であると判断されたときに,読み取られた前記ゲームデータを使用してゲーム処理を行う,ゲームシステム。
【請求項2】
前記ゲームカードに記録または記憶されるゲームデータはカードの識別情報を含み,
前記ゲームカードは,さらに,使用可能回数データを記録または記憶し,
前記ゲームカード読取制御手段は,前記使用可能回数データをさらに読み取り,
前記ゲームプログラムは,前記第1の判断手段により前記所定の関係にあると判断されたときに,前記ゲーム装置のプロセッサを,さらに,
前記識別情報毎の使用可能回数データを現在装着中の前記記憶媒体内の記憶手段に記憶する使用可能回数記憶制御手段,
前記ゲームカード読取制御手段によって読み取られた前記識別情報が初めて読み取られたデータである場合は,読み取られた前記使用可能回数データを現在装着中の前記記憶媒体内の記憶手段に設定する使用可能回数設定手段,
前記ゲームカード読取制御手段によって前記ゲームカードが読み取られたときに,読み取られた前記識別情報についての現在装着中の前記記憶媒体内の記憶手段の使用可能回数データが0でないか否かを判断する第3の判断手段,および
前記ゲーム処理手段によって前記ゲームデータが使用されるときに,読み取られた前記識別情報についての現在装着中の前記記憶媒体内の記憶手段の使用可能回数データを減らす使用可能回数減少手段として機能させ,
前記ゲーム処理手段は,前記第3の判断手段によって0でないと判断された場合に,読み取られた前記ゲームデータを使用してゲーム処理を行う,請求項1に記載のゲームシステム。
【請求項3】
<略>」
へと補正しようとするものである(下線は,本件補正による補正前の請求項2及び3と実質的に相違する箇所に当審にて付与)。

(2)補正の適否の判断
本件補正により,補正後の請求項2に係る発明の「ゲームシステム」は,その「記憶媒体内の記憶手段」に「使用回数データ」及び「使用可能回数データ」の両データを記憶するとともに,その「ゲームプログラム」が「ゲーム装置のプロセッサ」を「使用可能増加手段」及び「使用可能回数減少手段」の両手段として機能させるものとなった。
しかしながら,本願の図面【図11】には,第1実施例として,ステップ154にて「使用回数データを1減らす」処理を行う実施形態が開示され,図面【図16】には,第2実施例として,ステップ154'にて「使用回数データを1増やす」処理を行う実施形態が開示されているものの,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面(以下,「当初明細書等」という。)を通じて,上記「使用回数データ」及び「使用可能回数データ」の両データを記憶し,「使用可能増加手段」及び「使用可能回数減少手段」の両手段を具備する発明は記載されておらず,また,これら両データを記憶し,両手段を具備する「ゲームシステム」が,当業者にとって自明なものとも言えない。

してみると,本件補正は新たな技術的事項を導入するものであって,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないので,平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反しており,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(3)むすび
よって,補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

3.本願発明について
(1)本願発明の認定
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?5に係る発明は,平成19年7月25日受付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,そのうち請求項1の記載を引用する請求項2に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものと認める。

「ゲームデータおよびゲーム識別データが記録または記憶されたゲームカード,および,当該ゲームカードを使用可能なゲーム装置を含むゲームシステムであって,
前記ゲーム装置は,ゲームプログラムおよびゲーム識別データが記憶された記憶媒体を着脱自在に装着可能であり,
前記ゲームプログラムは,前記ゲーム装置のプロセッサを,
読取手段を介して,前記ゲームカードから前記ゲームデータおよび前記ゲーム識別データを読み取るゲームカード読取制御手段,
前記ゲームカード読取制御手段によって読み取られた前記ゲーム識別データに基づいて,当該ゲーム識別データが現在装着中の前記記憶媒体に記憶されたゲーム識別データと所定の関係にあることを判断する第1の判断手段,および
前記第1の判断手段によって前記所定の関係にあると判断されたときに,前記ゲームデータを使用してゲーム処理を行うゲーム処理手段として機能させ,
前記ゲームカードに記録または記憶されるゲームデータはカードの識別情報を含み,
前記ゲームプログラムは,前記第1の判断手段により前記所定の関係にあると判断されたときに,前記ゲーム装置のプロセッサを,さらに,
前記識別情報毎の使用回数データを記憶手段に記憶する使用回数記憶制御手段,
前記ゲームカード読取制御手段によって前記ゲームカードが読み取られたときに,読み取られた前記識別情報についての前記記憶手段の使用回数データが所定回数以下であるか否かを判断する第2の判断手段,および
前記ゲーム処理手段によって前記ゲームデータが使用されるときに,読み取られた前記識別情報についての前記記憶手段の使用回数データを増やす使用回数増加手段として機能させ,
前記ゲーム処理手段は,前記第2の判断手段によって所定回数以下であると判断されたときに,読み取られた前記ゲームデータを使用してゲーム処理を行う,ゲームシステム。」

(2)引用例
(イ)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である
特開2000-262750号公報(以下,「引用例1」という。)
には,図面とともに次の事項が記載されている。

(1a)「【請求項2】 複数のキャラクタを記憶するキャラクタ記憶手段と,このキャラクタ記憶手段に記憶された複数のキャラクタのそれぞれに対応してそのキャラクタを表示不可能な状態に設定する表示不可設定手段と,各カード毎に前記複数のキャラクタの1つを示す情報及びそのカード使用回数が書き込まれた複数のカードと,前記カードに書き込まれたキャラクタを示す情報及びカード使用回数を読み取るカード読み取り手段と,このカード読み取り手段により読み取られたカードのキャラクタに対応して前記表示不可設定手段により設定されている表示不可能な状態を解除する表示不可解除手段と,この表示不可解除手段により表示不可能な状態が解除されたキャラクタを前記キャラクタ記憶手段から読み出して表示するキャラクタ表示手段と,前記カード読み取り手段により読み取られたカードの使用回数に応じて前記表示不可解除手段により表示不可能な状態が解除されたキャラクタに制限を加えるキャラクタ制限手段と,を備えたことを特徴とする電子装置。」

(1b)「【請求項5】 さらに,前記カード読み取り手段により読み取られたカードの使用回数が所定回数以上である場合には,前記表示不可解除手段により表示不可能な状態を解除したキャラクタを再度表示不可能な状態に設定する表示不可再設定手段を備えたことを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れか1項に記載の電子装置。」

(1c)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,画像データとして記憶されたキャラクタを表示して動作する電子ゲーム装置等の電子装置に関する。」

(1d)「【0011】図1は本発明の電子装置の実施形態に係る電子ゲーム装置の外観構成を示す図であり,同図(A)はキャラクタカード挿入前の外観図,同図(B)はキャラクタカード挿入後の外観図である。」

(1e)「【0014】さらに,電子ゲーム装置の装置本体11の右側面には,カード挿入部15が設けられ,このカード挿入部15には,装置本体11内で予め画像データとして記憶された動物キャラクタの読み出し不可状態を解除するためのキャラクタカード16が挿入される。このキャラクタカード16は,例えば電子ゲーム装置の装置本体11とは別売で用意され,読み出し不可の解除対象となるキャラクタの1種類毎に1枚ずつ用意される。」

(1f)「【0016】図2は前記電子ゲーム装置の電子回路の構成を示すブロック図である。
【0017】この電子ゲーム装置の電子回路には,CPU(制御部)21が備えられる。
【0018】このCPU21は,キー部12から入力されるユーザ操作信号あるいは赤外線通信部14から入力される外部装置からの受信データ,さらにはカード挿入部15から入力されるキャラクタカード16に基づくカードデータに応じて,ROM22に予め記憶されているシステムプログラムを起動させ,RAM23をワークメモリとして回路各部の動作の制御を行なうものである。
【0019】前記CPU(制御部)21には,システム及びデータバスを介して,前記キー部12,液晶表示部13,赤外線通信部14,カード挿入部15,ROM22,RAM23がそれぞれ接続される。」

(1g)「【0020】図3は前記電子ゲーム装置の電子回路のRAM23に確保されるデータメモリの構成を示す図である。
【0021】このRAM23には,現在日時メモリ23a,キャラクタデータメモリ23b,カードデータメモリ23c,キャラクタ制限テーブル23d,バトルデータメモリ23e,その他,前記CPU(制御部)21にて入出力される種々のデータが必要に応じて記憶されるワークメモリが備えられる。」

(1h)「【0025】また,前記カードデータメモリ23cには,カード挿入部16に挿入されたキャラクタカード16から読み込まれたキャラクタの種類を示すキャラクタコード,及び当該カードの電子ゲーム装置に対する挿入使用回数を示す使用回データが記憶される。」

(1i)「【0028】そして,前記キャラクタカード16の挿入使用回数が5回以上である場合には,対応するキャラクタデータの読み出し不可の解除フラグはリセットされ,読み出し不可能なまま保持される。」

(1j)「【0031】図6は前記電子ゲーム装置の全体制御処理を示すフローチャートである。
【0032】キー部12におけるオン/オフキー12aにより電源オンの操作が為されると,RAM23内のキャラクタデータメモリ23bに記憶されている各キャラクタ毎の表示不可解除フラグ"1"の設定状態が確認され,例えば図1(A)に示すように,解除フラグ"1"が設定されているところのマンモスのキャラクタC1の表示用画像データが読み出され,液晶表示部13に表示される(ステップS1,S2,S3)。」

(1k)「【0034】ここで,例えば図1(B)に示すように,別売で購入したティラノザウルスのキャラクタカード16がカード挿入部15に挿入されると,該キャラクタカード16に記録されているキャラクタコードと挿入使用回数データが読み取られ,RAM23内のカードデータメモリ23cに記憶される(ステップS4→S8)。」

(1l)「【0036】また,前記キャラクタカード16から読み込まれた使用回データにより,当該キャラクタカード16の挿入使用回数が1回目か又は2回目以上の何回目かが判断される(ステップS10)。
【0037】そして,1回目の使用であると判断された場合には,RAM23内に記憶されているキャラクタ制限テーブル23d(図5参照)に従って,対応するキャラクタデータの表示可能期限及びパワーデータ共に制限されることなく,単に次に挿入使用する場合の回数が2回目であることの情報がカード挿入部15にてキャラクタカード16に書き込まれ,前記解除フラグ"1"のセットされたティラノザウルスC2のキャラクタ表示用画像データが読み出され,液晶表示部13に解除表示される(ステップS10→S11→S3)。」

(1m)「【0041】また,キー部12におけるバトルボタン12bが操作されると,赤外線通信部14を介して,外部の同仕様の電子ゲーム装置との間で,互いの液晶表示部13に表示されているキャラクタデータ同士によるバトルゲームが行なわれる(ステップS5→S14)。」

(1n)「【0045】図7(A)に示すようなメモリカード式キャラクタカード16aを使用した場合,当該キャラクタカード16aに応じてそれぞれ異なるキャラクタの種類を示すキャラクタコード,及び挿入使用回数データは,nビットのデジタルデータとして,予め内蔵されている半導体メモリ16a1に対して記憶され,装置本体11のカード挿入部15に対する挿入使用に際しては,データ端子16a2を介して接続される。」

(1o)「【0049】図7(C)に示すようなパンチカード式キャラクタカード16cを使用した場合,当該キャラクタカード16bに応じてそれぞれ異なるキャラクタの種類を示すキャラクタコード,及び挿入使用回数データは,当該カード16bに穿孔形成されるパンチ穴16c1の配列パターンにより記録される。」

(1p) 【図6】には,符号「S5」で示されるステップにおいて,「バトルボタン?」が「YES」となると,符号「S6」で示されるステップにおいて,「赤外線送信・受信によるゲーム処理」を行うフローチャートが記載されている。

また,「装置本体11」が,段落【0031】?【0043】及び【図6】に記載された「全体制御処理」を行うためのプログラムを有することは自明であり,また,段落【0037】の「1回目の使用であると判断された場合には,…単に次に挿入使用する場合の回数が2回目であることの情報が…書き込まれ」との記載から,前記プログラムが挿入使用の回数を増やす処理を実行することも自明である。

これらの記載事項を総合すると,引用例1には以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「キャラクタコード及び使用回データが記録または記憶されたキャラクタカード16,及び,当該キャラクタカード16を使用可能な装置本体11を含む電子ゲーム装置であって,
前記装置本体11は全体制御処理プログラムを有し,
前記全体制御処理プログラムは,前記装置本体11のCPU21を,
カード挿入部15を介して,前記キャラクタカード16から前記キャラクタコード及び前記使用回データを読み取る手段,
バトルボタン12bが操作されたときに,前記キャラクタコードを使用してゲーム処理を行う手段として機能させ,
前記全体制御処理プログラムは,前記装置本体11のCPU21を,さらに,
前記キャラクタコード毎の使用回データをRAM23に記憶する手段,
前記読み取る手段によって前記キャラクタカード16が読み取られたときに,読み取られた前記キャラクタコードについての前記RAM23の使用回データが5回以上であるか否かを判断する手段,及び
前記ゲーム処理を行う手段によって前記キャラクタコードが使用されるときに,読み取られた前記キャラクタカード16に書き込む使用回データを増やす手段として機能させ,
前記ゲーム処理を行う手段は,前記判断する手段によって5回以上でないと判断されたときに,前記読み取られた前記キャラクタコードを使用してゲーム処理を行う電子ゲーム装置。」

(ロ)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である
特開平4-303488号公報(以下,「引用例2」という。)
には,図面とともに次の事項が記載されている。

(2a)「【請求項1】 ROMカートリッジを挿入する挿入口が形成されかつ当該挿入口にROMカートリッジが装着されたゲーム機に対して,光学式ディスクメモリ再生装置を関連的に設け,それによって情報記憶媒体としてROMカートリッジと光学式ディスクメモリを併用してゲームを行うゲーム機システムであって,
前記光学式ディスクメモリは,記憶容量が大容量で,アクセス時間が比較的低速のものであり,ゲームのための複数のキャラクタを組合せてなる画像を表示するための画像データを記憶する画像データ記憶領域と,ゲームのための音楽または効果音を発生する音声データをディジタル的に記憶する音声データ記憶領域とを含み,
前記ROMカートリッジは,記憶容量が前記光学式ディスクメモリよりも小容量で,アクセス時間が比較的高速の半導体ROMを含み,
前記半導体ROMは,ゲーム用画像処理および音声発生処理のためのプログラムを記憶した処理プログラム記憶領域と,前記光学式ディスクメモリ再生装置を制御して光学式ディスクメモリのデータを読出制御するためのプログラムを記憶した読出プログラム記憶領域とを含み,
前記光学式ディスクメモリ再生装置は,前記光学式ディスクメモリを回転させる駆動手段と,回転中の前記光学式ディスクメモリから画像データと音声データを読出す読出手段を含み,
前記ゲーム機は,前記光学式ディスクメモリから読出された画像データを一時記憶する第1の書込読出可能メモリと,前記光学式ディスクメモリから読出された音声データを一時記憶する第2の書込読出可能メモリと,前記半導体ROMに記憶されている処理プログラムおよび/または読出プログラムに基づいて演算処理する演算処理手段と,前記演算処理手段の制御の下で前記第1の書込読出可能メモリに一時記憶されている画像データに基づいて表示すべき画像信号を発生する画像処理手段と,前記演算処理手段の制御の下で前記第2の書込読出可能メモリに一時記憶されている音声データに基づいて音声信号を発生する音声処理手段とを備え,
前記演算処理手段は,前記半導体ROMに記憶されている読出プログラムに基づいて前記光学式ディスクメモリ再生装置によって光学式ディスクメモリの記憶データを読出制御し,前記処理プログラムに基づいて画像処理手段と音声処理手段とを制御する,ROMカートリッジと光学式ディスクメモリを使用したゲーム機システム。」

(2b)「【請求項3】前記光学式ディスクメモリは,当該光学式ディスクメモリと他の光学式ディスクメモリとを区別するための第1の識別データを記憶する識別データ記憶領域をさらに含み,
前記半導体ROMは,前記光学式ディスクメモリとの対応関係が所定の関係であることを示す第2の識別データと前記第1の識別データとの照合を実行するための照合プログラムを記憶する照合プログラム記憶領域をさらに含み,
前記演算処理手段は,前記半導体ROMに記憶されている照合プログラムに基づいて前記光学式ディスクメモリの第1の識別データと前記半導体ROMに記憶されている第2の識別データとの照合を実行し,第1の識別データと第2の識別データとが所定の関係であることを判定した後,前記処理プログラムの実行を開始する,請求項第1項記載のROMカートリッジと光学式ディスクメモリを使用したゲーム機システム。」

(2c)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明はROMカートリッジと光学式ディスクメモリ(以下「CD-ROM」という)を使用したゲーム機システムに関し,特にテレビゲーム機のような画像処理機能を有しかつ情報記憶媒体としてROMカートリッジとCD-ROMを併用してゲームを行うゲーム機システムに関する。」

(2d)「【0012】
【実施例】第1図はこの発明の原理を説明するための一実施例のブロック図である。図において,テレビゲーム機10は,演算処理手段の一例の中央処理ユニット(以下「CPU」という)を含む。…」

(2e)「【0013】テレビゲーム機10に関連して,ROMカートリッジ20が着脱自在に設けられるとともに,光学式ディスクメモリ(以下「CD-ROM」という)25の記憶データを読出すCD-ROM再生装置30が接続される。ROMカートリッジ20は,カートリッジケース(図示せず)内に半導体リードオンリメモリ(以下「ROM」)21を装着した回路基板(図示せず)を収納して構成される。…」

(2f)「【0014】…半導体ROM21の記憶データとしては,CD-ROM25の記録データを読出制御するためのプログラムを記憶した記憶領域21aと,ゲーム処理のためのプログラムを記憶した記憶領域21bと,割込処理プログラムを記憶した記憶領域21cと,重要データ(例えば,メインマップデータ,重要画像データ,重要音声データ等)を記憶する記憶領域21d等が含まれ,好ましくは照合プログラムを記憶する記憶領域21eがさらに含まれる。…」

(2g)「【0017】一方,半導体ROM21に照合プログラムを記憶させ,かつCD-ROM25に識別コードを記憶させるのは,次の理由による。画像データ及び音声データをCD-ROM25に記憶させ,ゲーム処理プログラムを半導体ROM21に記憶させているので,ROMカートリッジ20とCD-ROM25が所定の関係になければ,ゲームソフトの本来の動作が達成できないので,両者が所定の関係であることを照合した後でなければ,異常な動作をすることになる。そこで,この実施例では,記憶領域21eにCD-ROM25側の識別コードに対応する識別データを記憶させておき,ゲームの開始に先立ち照合プログラムを実行して両者が所定の関係であることをチェックしている。…」

(2h)「【0019】…まず,ステップ(図示では「S」と略記号で示す)1において,CPU11は記憶領域21aに記憶されている読出プログラムに基づいて,ドライブ機構31を駆動させて,記憶領域25eに記憶されている識別コードを読み出させ,W-RAM15にロードさせる。CPU11は,続くステップ2において記憶領域21eに記憶されている照合プログラムを実行し,半導体ROM21に記憶されている識別データと識別コードが所定の関係か否かを判別し,所定の関係あることを判別するとステップ3?8に示すCD-ROM25のデータ読出動作を実行する。
【0020】 ステップ4において,CPU11はCD-ROM再生装置30を駆動させて,記憶領域25a及び25bの記憶データの読出を行わせる。ステップ5において,記憶領域25aに記憶されている画像データの一部が読出され,制御回路32によってW-RAM15へ転送されてる。ステップ6において,記憶領域25bに記憶されている音声データの一部が読出され,制御回路32によってW-RAM15へ転送されて記憶される。ステップ7において画像データがV-RAM7へ転送され,ステップ8において音声データがS-RAM17へ転送される。これによって,ある画面数分の画像データと音声データが読出されて,ゲーム機10内のRAM16および17に転送されるので,以後CPU11は後述のステップ10?13で説明するゲーム処理プログラムを実行する。一方,上述のステップ3において,識別コードが所定の関係でないことが判断された場合は,使用者が対応関係のないCD-ROM25とROMカートリッジ20を装着しているので,ステップ9においてその旨のメッセージ(例えば,「CD-ROMとROMカートリッジが所定のものではありませんので,所定の関係のものに交換して下さい」)を表示したのち,終了する。」

(2i)【第3図】には,符号「S3」で示されるステップにおいて,「所定の関係か?」が「YES」となると,符号「S5」?「S8」で示されるステップにおいて,CD-ROMに記憶されたゲームのためのデータをロード・転送し,符号「S10」で示されるステップにおいて,「ゲーム処理」を実行するフローチャートが記載されている。

これらの記載事項を総合すると,引用例2には以下の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「ゲームのためのデータ及び第1識別データが記憶されたCD-ROM25,及び,当該CD-ROM25を使用可能なテレビゲーム機10を含むゲーム機システムであって,
前記テレビゲーム機10は,読出プログラム,ゲーム処理のためのプログラム及び照合プログラム並びに第2の識別データが記憶されたROMカートリッジ20を着脱自在に装着可能であり,
前記読出プログラム,ゲーム処理のためのプログラム及び照合プログラムは,前記テレビゲーム機10のCPU11を,
CD-ROM再生装置30を介して,前記CD-ROM25から前記ゲームのためのデータ及び前記第1識別データを読み取る手段,
前記読み取る手段によって読み取られた前記第1識別データに基づいて,当該第1識別データが現在装着中の前記ROMカートリッジ20に記憶された第2の識別データと所定の関係にあることをチェックする手段,及び
前記チェックする手段によって所定の関係にあると判断されたときに,前記ゲームのためのデータを使用してゲーム処理を行う手段として機能させるゲーム機システム。」

(3)対比
本願発明(以下,本欄において「前者」という。)と引用発明1(以下,本欄において「後者」という。)とを対比すると,
・後者の「キャラクタコード」は,上記摘記事項(1j)に記載されるように,電子ゲーム装置の液晶表示部13に表示されるキャラクタを特定するものであるから,ゲーム処理を行う際に使用されるデータである点において,前者の「ゲームデータ」に対応し,また,上記摘記事項(1h)に記載されるように,当該コードとともに使用回データを記憶するものであるから,使用回数の管理単位となるデータである点において,後者の「カードの識別情報」にも対応し,
・後者の「キャラクタカード16」は前者の「ゲームカード」に相当し,
・後者の「装置本体11」は前者の「ゲーム装置」に相当し,
・後者の「電子ゲーム装置」は前者の「ゲームシステム」に相当する。
また,
・後者の「全体制御処理プログラム」は前者の「ゲームプログラム」に相当するから,
・後者の「全体制御処理プログラムを有」することと,前者の「ゲーム装置は,ゲームプログラムおよびゲーム識別データが記憶された記憶媒体を着脱自在に装着可能」であることとは,「ゲームプログラムを用いる」ことで共通する。
さらに,
・後者の「CPU21」は前者の「プロセッサ」に相当し,
・後者の「カード挿入部15」は前者の「読取手段」に相当し,
・後者の「読み取る手段」は前者の「読み取るゲームカード読取制御手段」に相当し,
・後者の「ゲーム処理を行う手段」は前者の「ゲーム処理を行うゲーム処理手段」に相当する。
そして,上記のとおり,後者の「キャラクタコード」は前者の「ゲームデータ」と「カードの識別情報」とを兼ねるから,
・後者の「キャラクタカード16」に「キャラクタコード」が「記録または記憶され」る態様と,前者の「ゲームカードに記録または記憶されるゲームデータはカードの識別情報を含」むこととは,「ゲームカードにカードの識別情報が記録または記憶される」ことにおいて共通する。
また,
・後者の「使用回データ」は前者の「使用回数データ」に相当し,
・後者の「RAM23」は前者の「記憶手段」に相当し,
・後者の「記憶する手段」は前者の「記憶する使用回数記憶制御手段」に相当し,
・後者の「5回以上であるか否かを判断する」ことは前者の「所定回数以下であるか否かを判断する」ことに相当し,
・後者の「判断する手段」は前者の「第2の判断手段」に相当し,
・後者の「読み取られたキャラクタカード16に書き込む使用回データを増やす手段」と前者の「読み取られた識別情報についての記憶手段の使用回数データを増やす使用回数増加手段」とは,「使用回数データを増やす使用回数増加手段」で共通し,
・後者の「5回以上でないと判断された」ことは前者の「所定回数以下であると判断された」ことに相当する。

してみると,両発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「ゲームデータが記録または記憶されたゲームカード,および,当該ゲームカードを使用可能なゲーム装置を含むゲームシステムであって,
前記ゲーム装置は,ゲームプログラムを用い,
前記ゲームプログラムは,前記ゲーム装置のプロセッサを,
読取手段を介して,前記ゲームカードから前記ゲームデータを読み取るゲームカード読取制御手段,
前記ゲームデータを使用してゲーム処理を行うゲーム処理手段として機能させ,
前記ゲームカードにカードの識別情報が記録または記憶され,
前記ゲームプログラムは,前記ゲーム装置のプロセッサを,さらに,
前記識別情報毎の使用回数データを記憶手段に記憶する使用回数記憶制御手段,
前記ゲームカード読取制御手段によって前記ゲームカードが読み取られたときに,読み取られた前記識別情報についての前記記憶手段の使用回数データが所定回数以下であるか否かを判断する第2の判断手段,および
前記ゲーム処理手段によって前記ゲームデータが使用されるときに,使用回数データを増やす使用回数増加手段として機能させ,
前記ゲーム処理手段は,前記第2の判断手段によって所定回数以下であると判断されたときに,読み取られた前記ゲームデータを使用してゲーム処理を行うゲームシステム。」

[相違点1]
本願発明では,「ゲーム装置」に「記憶媒体を着脱自在に装着可能であり」,「現在装着中の記憶媒体内」に記憶された「ゲームプログラム」を利用して情報処理を行うのに対して,引用発明1では,「ゲーム装置」は記憶媒体を着脱自在に装着したものではなく,「ゲーム装置」自体が有する「ゲームプログラム」を利用して情報処理を行う点。

[相違点2]
本願発明では,「ゲームカード」が「ゲーム識別データ」を記憶し,「ゲームカード読取制御手段」がこの「ゲーム識別データ」を読み取るとともに,「ゲームカード読取制御手段によって読み取られた前記ゲーム識別データに基づいて,当該ゲーム識別データが現在装着中の記憶媒体に記憶されたゲーム識別データと所定の関係にあることを判断する第1の判断手段」を有し,「第1の判断手段により前記所定の関係にあると判断されたときに」,「ゲームプログラム」が「ゲーム装置のプロセッサ」を所定の手段として機能させるのに対して,引用発明1では,「ゲームカード」が「ゲーム識別データ」を有さないことから,これを「ゲームカード読取制御手段」が読み取ることもなく,また「第1の判断手段」も存在しないことから,当該手段による判断に基づく「ゲームプログラム」による処理が存在しない点。

[相違点3]
本願発明では,ゲーム処理を行う際に使用されるデータである「ゲームデータ」が,使用回数の管理単位となるデータである「カードの識別情報を含み」と特定されるように,「ゲームデータ」の中に,その他のデータと区別できる「カード識別情報」が含まれているのに対して,引用発明1では,「ゲームデータ」が,ゲーム処理を行う際に使用されるデータと使用回数の管理単位となるデータとを兼ねており,他のデータと区別できる使用回数の管理単位となるデータである「カードの識別情報」を別途備えていない点。

[相違点4]
「使用回数データを増やす使用回数増加手段」について,本願発明では,「読み取られた前記識別情報についての記憶手段の使用回数データを増やす」ものであるのに対して,引用発明1では,「読み取られたキャラクタカード16に書き込む使用回データを増やす」ものであり,また,「RAM23」に記憶された「使用回データ」を増やしているかは不明である点。

(4)判断
上記各相違点について以下に検討する。

(イ)[相違点1]について
「ゲーム装置」に「ゲームプログラムが記憶された記憶媒体を着脱自在に装着可能」とすることにより,ゲーム装置に汎用性を持たせることは,例えば,引用発明2に,「テレビゲーム機10(本願発明の「ゲーム装置」に相当。以下,本欄において括弧内は同様。)」に「読出プログラム,ゲーム処理のためのプログラム及び照合プログラム(3つのプログラムをまとめて「ゲームプログラム」に相当。)が記憶されたROMカートリッジ20(「記憶媒体」に相当。)を着脱自在に装着可能」とするものが開示されているように,電子ゲーム装置の技術分野において周知技術である。
してみると,引用発明1において,「ゲーム装置」自体が有している「ゲームプログラム」を,上記のように周知である「記憶媒体を着脱自在に装着可能」な「ゲーム装置」で実行するようにして,ゲーム装置に汎用性を持たせることは当業者が容易に想到しうる事項であり,そのために引用発明1の「ゲームプログラム」を,上記周知なゲーム装置の「記憶媒体」に記憶させるようにして,「現在装着中の記憶媒体内」の「ゲームプログラム」を利用して情報処理を行うようにすることは,当業者が適宜なし得た事項である。

(ロ)[相違点2]について
引用例2には,引用発明2として認定したように,「ROMカートリッジ20」及び「CD-ROM25」の2つの記憶媒体を使用する「テレビゲーム機10」において,各記憶媒体に「第1識別データ」及び「第2識別データ」を各々記憶し,
「読出プログラム,ゲーム処理のためのプログラム及び照合プログラムは,テレビゲーム機10のCPU11を,
CD-ROM再生装置30を介して,CD-ROM25からゲームのためのデータ及び第1識別データを読み取る手段,
前記読み取る手段によって読み取られた前記第1識別データに基づいて,当該第1識別データが現在装着中のROMカートリッジ20に記憶された第2の識別データと所定の関係にあることをチェックする手段,及び
前記チェックする手段によって所定の関係にあると判断されたときに,前記ゲームのためのデータを使用してゲーム処理を行う手段として機能させる」という情報処理が開示されている。

引用発明2がこのような情報処理を行う理由は,引用例2の上記摘記事項(2g)に,「画像データ及び音声データをCD-ROM25に記憶させ,ゲーム処理プログラムを半導体ROM21に記憶させているので,ROMカートリッジ20とCD-ROM25が所定の関係になければ,ゲームソフトの本来の動作が達成できないので,両者が所定の関係であることを照合した後でなければ,異常な動作をすることになる。」と記載されるように,ゲーム装置が交換可能な二つの記憶媒体を利用する場合において,それらの整合を取ってゲーム装置を正常に動作させるためにある。

そして,本願の出願日(平成13年11月29日)前において,カードを利用した電子ゲームは多数存在するところ,カードをそのカードが使用可能なゲーム機又はゲームプログラムにおいてのみ使用できるようにする必要があることは自明であり,また,引用発明1の「キャラクタカード16」は,交換可能な記録媒体である点において,引用発明2の「CD-ROM25」と共通している。

してみると,上記(イ)欄において述べた周知技術に基づく汎用化に際して,引用発明1に引用発明2の上記情報処理も併せて適用し,ともに着脱自在に装着可能な「ゲームカード」と「記憶媒体」との双方に,両者が所定の関係にあることを判断するための「識別データ」(本願発明の「ゲーム識別データ」に相当。)を記憶させ,当該「識別データ」が所定の関係にあることが照合された後にゲーム処理を行うようにすることによって,上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。
なお,ここで,上記適用により,引用発明1の「ゲームカード読取制御手段」が上記「識別データ」をも読み取るようになることは,当業者にとって自明な事項である。

(ハ)[相違点3]について
引用例1に記載された実施例は,【図4】に記載された「キャラクタデータメモリ23b」のデータ構造や,カード側に使用回データを書き込むことからして,同一の「キャラクタコード」を有する複数のカードが存在しないものであって,カードの重複がないことにより,当該「キャラクタコード」にゲーム処理を行う際に使用されるデータと使用回数の管理単位となるデータとを兼ねさせることが可能になっていると解される。
しかし,同じカードゲーム装置を持ち寄って遊ぶ場合や,ゲームカードが別売りされる場合などに,同一の「キャラクタコード」を有するカードが重複して存在するようになることは当業者が想定し得た事項であって,このようにカードが重複して存在する場合に,使用回数の管理のために,同一の「キャラクタコード」を有するカードどうしを識別する必要が生じることは自明であり,また,カードにカード固有のコードを記憶することも,例えば,原査定の理由において提示した以下の文献A又はBに開示されるように周知である。
A.特開平10-208002号公報
(特に,段落【0073】に記載された「カードIDナンバー」を参
照。)
B.特開昭57-152049号公報
(特に,第2頁右上欄第17?18行目に記載された「記録媒体S
中」の「識別情報X」を参照。)

してみると,引用発明1において同一の「キャラクタコード」を有する「キャラクタカード16」が存在することを考慮して上記周知技術を適用し,当該「キャラクタコード」と区別可能な「カード固有のコード」(本願発明の「カードの識別情報」に相当。)を別途備えるようにすることによって,上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。

(ニ)[相違点4]について
カードの使用回数を制限するシステムにおいて,使用回数データをカード側でなく,カードを利用して情報処理を行う機器側に設けることは,例えば,原査定の理由において提示した上記文献A又はBに開示されるように周知である。
文献A:特に,段落【0078】の「…また,第8,9の実施例では,P
Cカードメモリ1の使用回数制限を行うためのカード再生検出用フラグ
をPCカードメモリ1に記録するのではなく,名称を一致検出フラグと
して履歴用メモリ6内に設けた再生禁止制御用ワードエリアに記録する
。また,第8,9の実施例における再生禁止制御用ワードは,各々記憶
されているカードIDナンバーに対応して設けられたシフトレジスタで
構成されている。また,シフトレジスタは1又は複数ビットにより構成
されていて,初期状態は0データに設定されている。したがって,ステ
ップS59において一致検出フラグが書込まれると,シフトレジスタは
1ビット加算される。…」との記載を参照。
文献B:特に,第2頁右下欄第4?8行目の「…複製許容回数Nの内容に
対して,複製前の複製許容回数よりも1回又は必要に応じて所定の回数
だけ少ない内容へと書き換えて前記対応テーブルTに再格納する…」と
の記載を参照。

してみると,引用発明1において,使用回データを増やして「キャラクターカード16」に書き込む構成に代えて,上記周知技術を適用して,引用発明1の「装置本体11」側にあって,「キャラクタカード16」から読み込んだ使用回データを記憶している「RAM23」に書き込む構成に変更することによって,上記相違点4に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。

また,本願発明の全体構成により奏される作用・効果は,引用発明1及び2並びに上記周知技術から当業者が予測できた範囲内のものである。

(5)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明1及び2並びに上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-30 
結審通知日 2011-07-04 
審決日 2011-07-19 
出願番号 特願2007-187046(P2007-187046)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (A63F)
P 1 8・ 561- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大山 栄成植田 泰輝  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 仁科 雅弘
鈴野 幹夫
発明の名称 ゲームシステム、ゲームプログラム、およびゲームカード読取装置  

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