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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1242660
審判番号 不服2010-17630  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-06 
確定日 2011-08-31 
事件の表示 特願2007-186653号「水エアシャワー装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 2月 5日出願公開、特開2009- 24907号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成19年7月18日の出願であって、平成22年4月30日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年5月7日)、これに対し、同年8月6日に拒絶査定不服審判が請求されたものであって、その請求項1及び2に係る発明は、平成22年4月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
清浄空気噴出口は、摺動自在にその向きを変更可能に支持された球状体ダクトに設けられ、水噴出口は前記清浄空気噴出口内に清浄空気噴出口と中心線を一致させて設けてなる水噴出口と清浄空気噴出口との両噴出口を併設するノズルを複数基、シャワー室内に向け水及び清浄空気を噴出するよう設けたことを特徴とする水エアシャワー装置。」

第2 刊行物
1 刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された特開2000-245650号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に、次の事項が記載されている。

(1)段落【0002】
「【0002】
【従来の技術】従来、エアシャワー室の構成技術として、ノズルを用いて所定流速のエアをエアシャワー室に継続的に吐出し、当該エアを衣服等に当てることによって塵埃等を除去する技術、ならびにノズルを用いて所定流速のエアをエアシャワー室に断続的に吐出し、当該エアを衣服等に当てることによって塵埃等を除去する技術が知られている。この場合、エアを継続的に吐出するノズルと、エアを断続的に吐出するノズルとをエアシャワー室内に配置しておいて、通常はエアを継続的に吐出するノズルを用いて塵埃等を除去するとともに、特に汚れのひどい箇所については、エアを断続的に吐出するノズルを手動操作で向けることによって、いわば「打たせ水」のごとく塵埃等を除去するという用い方が知られている。」

(2)段落【0004】
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技術の特徴を鋭意検討した上、異なる態様のエア流を吐出する各ノズルの最適な組合わせを実現することで高い塵埃等除去能力を有する一方、エアシャワー利用者がノズル操作などを自ら行う必要がないエアシャワー技術を提供することを課題とする。」

(3)段落【0011】?段落【0012】
「【0011】エアシャワー用ノズル111は、図2に示すように、エアシャワー室の壁部105に形成されたエアシャワー用ノズル設置孔121に取り付けられており、概略的に見て第1ノズル113と第2ノズル115とから構成される。第2ノズル115は、第1ノズル113内に設けられるとともに、双方のノズル113,115は、結合片125を介して一体状とされている。第1ノズル113は、シーリング123を介して設置孔121に対し相対的に回動可能に取り付けられるとともに、シーリング123aを介して継続流供給管143に接続されている。第1ノズル113は球面状に形成され、第2ノズル115と一体状となって、シーリング123,123aに対して相対的に回動することにより、設置孔121内にて適宜エア吐出方向を変化することができる。
【0012】第2ノズル115は、断続流供給管147に接続されるとともに、既に述べたように結合片125によって第1ノズル113に一体的に接続されており、第1ノズル113の回動とともに一体的に可動とされている。すなわち、第1ノズル113からのエア吐出方向と、第2ノズルからのエア吐出方向とは一致する構成とされている。」

(4)段落【0013】?段落【0014】
「【0013】本エアシャワー室101におけるエア供給ならびに吐出の構成態様について図3に示す。第1ノズル113,第2ノズル115および下降流用ノズル117は、それぞれ継続流供給管143,断続流供給管147および下降流供給管149を介して、エア供給源141に接続されている。エア供給源141は例えばポンプやブローワー等から構成される。本実施の形態では、エア供給源141からは25?30m/secのエアが供給される。第1ノズル113は、例えば、エアシャワー室101室内の前面側に設けられるノズル113aと後面側に設けられるノズル113bとに区別される(図1参照)。第2ノズル115は、例えば、前面側の第1ノズル113a内に設けられるノズル115aと後面側の第1ノズル113b内に設けられるノズル115bとに区別される。第1ノズル113に対しては、継続流供給管143を経由して、エア供給源141から継続的にエアが供給される。
【0014】一方、第2ノズル113に対しては、断続流生成ユニット145を介することにより、エア供給源141から断続的にエアが供給される。断続流生成ユニット145は、例えばソレノイド等で流路を切替可能なバルブを有しており、当該バルブの切替を介し、エア供給源141から送られるエアを前面側の第2ノズル115aまたは後面側の第2ノズル115bのいずれか一方に送る。そして所定時間が経過すると、今度はバルブを切り替えてエア供給源141からのエアを他方のノズルに送るようにする。この切替動作を交互に繰り返すことにより、前面側の第2ノズル115aおよび後面側の第2ノズル115bからは、所定時間はエアが吐出され、所定時間はエアの吐出が停止されるという形で断続流が生成されることになる。本実施の形態では、断続流生成ユニット145による切替は、0.7秒毎に行われる。すなわち、例えば前面側の第2ノズル115aでは0.7秒間エアが吐出され、その間後面側の第2ノズル115bではエアの吐出が休止しており、次に前面側の第2ノズル115aでのエアの吐出が0.7秒間休止するとともに、後面側の第2ノズル115bでは0.7秒間エアが吐出され、この動作がサイクリックに繰り返される。図3では、前面側の第2ノズル115aからエアが吐出され、後面側の第2ノズル115bからはエアが吐出されていない状態が示されている。なお、第2ノズル115から吐出されるエアは、第1ノズル113から吐出されるエアよりも一層高圧となるように構成することが好ましい。高圧である程、第2ノズル115から吐出される断続流による塵埃等の除去効果が高まるからである。」

(5)段落【0018】
「【0018】以上の構成を有するエアシャワー用ノズル111およびエアシャワー室101によれば、エアシャワー室利用者の衣服等に付着した塵埃等に対し、常時二種類の異なる態様のエア(継続流としてのエアおよび断続流としてのエア)が吐出されることにより、継続的なエア流と断続的なエア流が重畳的に吐出されてエアシャワー利用者に吹き付けられることで、高い塵埃等除去効果が奏されることになる。」

(6)上記記載事項(3)の「第1ノズル113からのエア吐出方向と、第2ノズルからのエア吐出方向とは一致する構成とされている」(段落【0012】)との記載並びに図2及び3からみて、第1ノズル113と第2ノズル115の中心線が一致することは明らかである。

これらの記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1に記載された発明」という。)が記載されている。

「継続的なエアが吐出する第1ノズル113の吐出部は、相対的に回動することにより設置孔121内にて適宜エア吐出方向を変化することができる第1ノズル113に設けられ、断続的なエアが吐出する第2ノズル115の吐出部は前記第1ノズル113の吐出部内に第1ノズル113の吐出部と中心線を一致させて設けてなる第2ノズル115の吐出部と第1ノズル113の吐出部との両吐出部を併設するエアシャワー用ノズル111を複数基、シャワー室内に向け断続的なエア及び継続的なエアを噴出するよう設けたエアーシャワー室。」

2 刊行物2
同じく引用され、本願の出願前に頒布された特公昭63-28621号公報には、図面と共に、次の事項が記載されている。

(1)第1欄第13?16行
「発明の詳細な説明
本発明は清浄な雰囲気を必要とする施設(以下、清浄室という。)に入室する際に用いられるシヤワー装置に関する。」

(2)第1欄第25行?第2欄第3行
「シヤワー装置としては、清浄空気を噴霧する空気シヤワー装置が一般に採用されている。清浄度が厳格に要求される清浄室においては、空気シヤワー手段以外に、清浄水を噴霧する水シヤワー手段を併用する。」

(3)第2欄第4?9行
「上記の水シヤワー手段と空気シヤワー手段とを備えたシヤワー装置は、出入口を有して使用時は外部と遮断されるシヤワー室内に、水シヤワーのための噴霧ノズルと、空気シヤワーのための噴霧ノズルを、それぞれ必要箇所に併設し、これらのシヤワー手段を適宜組み合せて使用する。」

(4)第2欄第21行?第3欄第2行
「本発明に係る清浄室用シヤワー装置は、清浄水を噴霧するノズルを備えた水シヤワー手段と、この水シヤワー手段のノズルを共用して、このノズルから清浄空気を噴霧する空気シヤワー手段と、前記水シヤワー手段が稼動された際には引続き前記空気シヤワー手段を自動的に稼動させる運転手段とを有することを特徴とする。」

(5)第3欄第19?24行
「従来技術においては、水シヤワー、空気シヤワーのための噴霧ノズルが別々に設けられており、例えば噴霧ノズル26が水シヤワー用、噴霧ノズル28が空気シヤワー用とされていた。本発明においては、これらの噴霧ノズルが水シヤワーと空気シヤワーに区別なく共用される。」

(6)第3欄第30?32行
「噴霧ノズル30からは、清浄水または清浄空気のいずれか一方を噴霧させることができる。」

第3 対比
本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「継続的なエア」は本願発明の「清浄空気」に相当し、以下同様に、「継続的なエアが吐出する第1ノズル113の吐出部」は「清浄空気噴出口」に、「相対的に回動することにより設置孔121内にて適宜エア吐出方向を変化することができる第1ノズル113」は「摺動自在にその向きを変更可能に支持された球状体ダクト」に、「エアシャワー用ノズル111」は「ノズル」にそれぞれ相当する。

また、刊行物1に記載された発明の「断続的なエア」と本願発明の「水」とは塵埃除去用流体という点で共通し、以下同様に、「断続的なエアが吐出する第2ノズル115の吐出部」と「水噴出口」とは塵埃除去用流体の噴出口という点で共通し、「エアーシャワー室」と「水エアシャワー装置」とはエアシャワー装置という点で共通する。

したがって、両者は、
「清浄空気噴出口は、摺動自在にその向きを変更可能に支持された球状体ダクトに設けられ、塵埃除去用流体の噴出口は前記清浄空気噴出口内に清浄空気噴出口と中心線を一致させて設けてなる塵埃除去用流体の噴出口と清浄空気噴出口との両噴出口を併設するノズルを複数基、シャワー室内に向け塵埃除去用流体及び清浄空気を噴出するよう設けたエアシャワー装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
本願発明では、塵埃除去用流体が「水」であって、塵埃除去用流体の噴出口が「水噴出口」であり、エアシャワー装置が「水エアシャワー装置」であるのに対し、
刊行物1に記載された発明では、塵埃除去用流体が「断続的なエア」であって、塵埃除去用流体の噴出口が「第2ノズル115の吐出部」であり、エアシャワー装置が「エアーシャワー室」である点。

第4 当審の判断
そこで、相違点について検討する。
刊行物2には、清浄室に入室する際に用いられるシャワー装置に関して、「清浄度が厳格に要求される清浄室においては、空気シャワー手段以外に、清浄水を噴霧する水シャワー手段を併用する」ことが記載(前記第2の2(2))されており、この記載からみて、清浄水の噴霧はより清浄度を高めることを目的としたものであることが明らかである。

また、刊行物2には、水シャワー手段の使用に関して、空気シャワー手段と適宜組み合わせて使用することが記載され(前記第2の2(3))、具体的な態様として、噴霧ノズル26を水シャワー用、噴霧ノズル28を空気シャワー用にする他に、噴霧ノズルを水シャワーと空気シャワーに区別なく共用し、いずれか一方を噴霧することが記載されている(前記第2の2(4)ないし(6))。
そして、「噴霧ノズルを水シャワーと空気シャワーに区別なく共用」できることは、噴霧ノズルに対して水と空気とが互換して使用できることを示唆するものといえる。

一方、刊行物1に記載された発明の「断続的なエア」は、一層高圧となるように構成することが好ましく、特に汚れのひどい箇所について「打たせ水」のごとく塵埃等を除去することで除去効果を高めるものである。

そうしてみると、刊行物1に記載された発明の「断続的なエア」と刊行物2の「清浄水」とは、清浄空気を単独に噴出する場合に対して、より清浄度を高めるためのものであることで共通し、しかも、刊行物2には、噴霧ノズルに対して水と空気とが互換して使用できることが示唆されているから、刊行物1に記載された発明において「断続的なエア」に代えて「水」を用い、塵埃除去用流体の噴出口を「水噴出口」とし、エアシャワー装置を「水エアシャワー装置」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明を全体としてみても、その効果は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された事項から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。

なお、請求人は、「清浄空気と水という、異質の洗浄媒体が混じり合った状態で被処理体に当たることによる塵埃等の付着物への剥離効果が増大する」(審判請求書第3.(d))と述べているので、その点を検討すると、請求項1には水と清浄空気を同時に使用するとの明示はないが、そのように解したとしても、刊行物1には、継続的なエア流と断続的なエア流が重畳的に吐出されて高い除去効果が奏されること(前記第2の1(4)及び(5))や継続流と断続流が同時に吐出すること(図3の左側のエアーシャワー用ノズル参照。)が記載されており、刊行物2の清浄水がより清浄度を高めることを目的としたものであることからみて、当業者が予測できる範囲内のものといえる。

したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-05 
結審通知日 2011-07-06 
審決日 2011-07-20 
出願番号 特願2007-186653(P2007-186653)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 礒部 賢  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 青木 良憲
冨岡 和人
発明の名称 水エアシャワー装置  
代理人 大野 克躬  
代理人 大野 令子  

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