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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03F
管理番号 1242663
審判番号 不服2011-8260  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-18 
確定日 2011-08-31 
事件の表示 特願2008-195527「電力増幅器」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月 4日出願公開、特開2008-295088〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1996年9月25日を国際出願日とする出願である特願平9-514140号の一部を平成15年7月22日に新たな特許出願とした特願2003-277933号の一部を平成18年6月7日にさらに新たな特許出願とした特願2006-159006号の一部を平成19年11月30日にさらに新たな特許出願とした特願2007-311600号の一部を平成20年7月29日(優先権主張平成7年9月29日、平成8年1月16日、日本国)にさらに新たな特許出願としたものであって、平成21年7月30日付けで拒絶理由通知がなされ、同年10月5日付けで手続補正がなされ、平成22年5月26日付けで拒絶理由通知がなされ、同年7月23日付けで意見書が提出されたが、平成23年1月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成21年10月5日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「単極端と2以上の多投端とを有し、第1周波数の信号と該第1周波数とは異なる第2周波数の信号を切り替えるスイッチと、
前記スイッチの多投端の一つに接続された整合回路と、
前記スイッチの多投端のうち前記整合回路が接続されたものとは異なる一つに接続された、第2のトランジスタを備えた第2増幅器と、
前記スイッチの単極端に出力側が接続され、前記第1周波数の信号と前記第2周波数の信号とを通す、入力電流が前記第2のトランジスタよりも小さい第1のトランジスタを備えた第1増幅器と、
前記スイッチの多投端が前記整合回路に接続されるのに連動して、前記整合回路から出力される前記第1周波数の信号が所定の出力となるよう前記第1増幅器の入力端子および出力端子に印加される電圧を制御するとともに前記第2増幅器が動作しないように前記第2増幅器の入力端子または出力端子に印加される電圧を制御し、前記スイッチの多投端が前記第2増幅器に接続されるのに連動して、前記第2増幅器から出力される前記第2周波数の信号が所定の出力となるよう前記第1増幅器の入力端子および出力端子に印加される電圧を制御し、かつ前記第2増幅器をAB級動作させる電源制御回路と、
を備える電力増幅器。」

3.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-115331号公報(以下、「引用例1」という。)、及び特開平5-37255号公報(以下、「引用例2」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。

(引用例1)
A.「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は通信用の高出力の増幅装置に関するもので、特に高効率動作と低消費電力動作をする増幅装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図9は、例えば1991年電子情報通信学会秋季大会、C-42に示された従来の通信用の高出力増幅装置の構成の要部を示すブロック図である。図10は図9の高出力増幅装置を構成する多段増幅器の単位増幅器の例を示す図である。図9において、5は単位増幅器、6,7はそれぞれ単位増幅器の入力端子、出力端子、8は多段増幅器、9は電源装置、4は電源端子である。図10において、1はFET、2は入力整合回路、3は出力整合回路であり、4は電源端子である。単位増幅器5の半導体増幅素子1としては電界効果トランジスタ(以下、FETと呼ぶ)などが良く用いられている。多段増幅器は、最大出力電力の異なる単位増幅器5が出力レベルの小さい順に縦続接続されて構成されている。」

B.「【0020】実施例2.以下、請求項2に係わる増幅装置の実施例について図を参照して説明する。図2は増幅器の実施例2を示す構成ブロック図である。図において、13は入力側1極2投スイッチ(SPDTスイッチ)、14は出力側1極2投スイッチ、15は電源スイッチ、16は迂回路である。なお、従来技術、実施例1に示したものと同一のものには同一符号を付し説明を省く。図2には、増幅器の選択手段として、上記入力側1極2投スイッチ13及び出力側1極2投スイッチ14の制御部は省略して図示していない。なお、図2に示すこの実施例2では初段増幅器を含む2個の単位増幅器からなる多段増幅器を中出力増幅部としているがこれに限るものではない。
【0021】次に、実施例2の増幅装置の動作について説明する。増幅装置の入力端子6から入力した電波は、先ず初段増幅器を含む2個の多段増幅器からなる中出力増幅部を介して、入力側スイッチ13に入る。上記入力側スイッチ13は、最終段増幅器を含む多段増幅器からなる高出力増幅部か、もしくは上記高出力増幅部の迂回路16を選択し、出力側スイッチ14を通って、出力端子7に上記高出力増幅部の最終段増幅器出力か、もしくは上記中出力増幅部の多段増幅器出力が現れる。以上の経路は増幅装置の入力電力レベルによって決まり、通信の使用回線数が少ない場合等、入力電力レベルが極端に低い場合は最終段増幅器を含む高出力増幅部は不要で、初段増幅器を含む中出力増幅部で所要の出力電力が得られる場合は、迂回路16が選択される。上記中出力増幅部は比較的低出力電力に対して効率が高くなるように設計しているため高い効率で増幅器を動作できる。最終段増幅器を含む高出力増幅部が経路として選択されなかった場合、上記高出力増幅部の多段増幅器の供給電源を電源スイッチ15により遮断することにより不要の消費電力を省くことができる。増幅装置の入力電力レベルが大きくなり、所要の出力電力が大きくなると最終段増幅器を含む高出力増幅部側が選択される。」

ここで、
(ア)段落【0020】に「なお、従来技術、実施例1に示したものと同一のものには同一符号を付し説明を省く。」と記載されていることより、図2に記載された符号5の構成要素と符号9の構成要素は、それぞれ、上記A及び図9,図10に記載された単位増幅器5と電源装置9と同じものであると認められる。
(イ)そうすると、上記Bに記載された中出力増幅部と高出力増幅部のそれぞれは、図2の記載より単位増幅器5からなっているから、単位増幅器5を構成する半導体増幅素子1を備えている。そして、段落【0002】に「単位増幅器5の半導体増幅素子1としては電界効果トランジスタ(以下、FETと呼ぶ)などが良く用いられている。」と記載されているが、電界効果トランジスタ(FET)はトランジスタの一種であり、半導体増幅素子1としてトランジスタを用いることは排除していないから、中出力増幅部と高出力増幅部のそれぞれは、トランジスタを備えていると認められる。
(ウ)上記B及び図2に記載された中出力増幅部と高出力増幅部は、全体的に、単位増幅器5が縦続接続されて構成されている多段増幅器であり、これは上記A及び図9,図10に記載された多段増幅器8と同じく、最大出力電力の異なる単位増幅器5が出力レベルの小さい順に縦続接続されて構成されているものと認められる。そして単位増幅器5はトランジスタを備えているから、この多段増幅器は、トランジスタが出力レベルの小さい順に縦続接続されて構成されているものであると解される。
(エ)上記B及び図2に記載された電源スイッチ15は、高出力増幅部への供給電源を遮断するものであるが、高出力増幅部が経路として選択されなかった場合に電源スイッチ15を制御する電源制御回路は存在するものと解される。

よって、上記A,Bの記載及び関連する図面を参照すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。)
「単極端と二つの多投端とを有した入力側スイッチ13と、
前記入力側スイッチ13の多投端の一つに接続された迂回路16と、
前記入力側スイッチ13の多投端のうち前記迂回路16が接続されたものとは異なる一つに接続された、第2のトランジスタを備えた高出力増幅部と、
前記入力側スイッチ13の単極端に出力側が接続され、出力レベルが前記第2のトランジスタよりも小さい第1のトランジスタを備えた中出力増幅部と、
前記入力側スイッチ13の多投端が前記迂回路16に接続されるのに連動して、前記高出力増幅部が動作しないように制御する電源制御回路と、
を備える増幅装置。」

(引用例2)
C.「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、高周波信号を増幅する広帯域増幅器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図4は従来の広帯域増幅器を示す回路図であり、図において、1は高周波信号を入力する入力端子、2はカップリングコンデンサ、3は高周波信号を増幅するトランジスタ(増幅素子)、4はトランジスタ3の入力側に接続され、高周波信号の周波数に応じてそのトランジスタ3の入力側インピーダンスを調整する入力側整合回路、5はトランジスタ3の出力側に接続され、高周波信号の周波数に応じてそのトランジスタ3の出力側インピーダンスを調整する出力側整合回路、6は所定の周波数以上の高周波電流を阻止する高周波チョークコイル、7は高周波信号中のノイズ分を除去するバイパスコンデンサ、8は高周波信号を出力する出力端子である。
【0003】次に動作について説明する。入力端子1から入力された高周波信号をトランジスタ3で最も高率よく増幅されるようにするため、トランジスタ3の入力側と出力側のインピーダンスが等しくなるように、高周波信号の周波数に応じて入力側整合回路4及び出力側整合回路5により、入力側と出力側のインピーダンスが調整される。そして、トランジスタ3で増幅された高周波信号が出力端子8から出力される。」

D.「【0012】
【実施例】実施例1.以下、この発明の一実施例を図について説明する。図1は請求項1記載の発明の一実施例による広帯域増幅器を示す回路図であり、図において、従来のものと同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
【0013】9は複数の入力側整合回路4及び出力側整合回路5がそれぞれ適応する周波数範囲を予めメモリ9bに記憶しておき、検出制御部9aにて、その記憶した周波数範囲と高周波信号の周波数とを比較することにより最も適応性のよい入力側整合回路4及び出力側整合回路5を選択し、ピンダイオード9cの抵抗値を制御することによりその選択した入力側整合回路4及び出力側整合回路5とトランジスタ3とを接続状態にする制御回路である。
【0014】次に動作について説明する。入力端子1から入力された高周波信号は分配されて検出制御部9aに入力される。検出制御部9aでは、メモリ9bに記憶された各整合回路が適応する周波数範囲とその高周波信号の周波数を比較し、最も適応性のよい入力側整合回路4と出力側整合回路5を選択する。例えば、高周波信号の周波数が100MHzである場合に、一の入力側整合回路4の適応する周波数範囲が70MHzから90MHzで、一方の入力側整合回路4が90MHzから110MHzであれば、90MHzから110MHzに適応する入力側整合回路4が選択される。出力側整合回路5についても同様である。そして、検出制御部9aでは、選択した入力側整合回路4及び出力側整合回路5をトランジスタ3と接続すべく、各ピンダイオード9cに対して電圧H(High)またはL(Low)を与えることにより各ピンダイオード9cの抵抗値を制御する。
【0015】この結果、入力された高周波信号の周波数に適した入力側整合回路4及び出力側整合回路5が選択されるため、高周波信号の周波数が広帯域にわたってもトランジスタ3の入力側及び出力側におけるインピーダンスを調整することができ、効率のよい増幅が可能になる。」

ここで、上記D及び図1に記載されたピンダイオード9cは、単極端に対し二つの多投端を切り替えるスイッチと同等の構成要素であると解される。

よって、上記C,Dの記載及び関連する図面を参照すると、引用例2には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例2記載の発明」という。)
「単極端と二つの多投端とを有し、第1周波数の信号と該第1周波数とは異なる第2周波数の信号を切り替えるスイッチと、
前記スイッチの多投端の二つにそれぞれ接続された出力側整合回路5と、
前記スイッチの単極端に出力側が接続され、前記第1周波数の信号と前記第2周波数の信号とを通す、トランジスタ(増幅素子)3と、
を備える広帯域増幅器。」

4.対比
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。

(あ)引用例1記載の発明における「入力側スイッチ13」,「高出力増幅部」,「中出力増幅部」,「増幅装置」は、それぞれ、本願発明における「スイッチ」,「第2増幅器」,「第1増幅器」,「電力増幅器」に相当する。

(い)引用例1記載の発明における「入力側スイッチ13」は「二つの多投端」を有するものである一方、本願発明における「スイッチ」は「2以上の多投端」を有するものである。そして、「2以上」には「2」も含まれるため、引用例1記載の発明における「入力側スイッチ13」と、本願発明における「スイッチ」とは、「二つの多投端」を有する点において、共通するものである。

(う)引用例1記載の発明における「迂回路16」と、本願発明における「整合回路」とは、第2増幅器ではない方の「スイッチの多投端の一つに接続された回路」である点において、共通するものである。

上記(あ)?(う)の事項を踏まえると、本願発明と引用例1記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。

(一致点)
本願発明と引用例1記載の発明とは、ともに、
「単極端と二つの多投端とを有したスイッチと、
前記スイッチの多投端の一つに接続された回路と、
前記スイッチの多投端のうち前記回路が接続されたものとは異なる一つに接続された、第2のトランジスタを備えた第2増幅器と、
前記スイッチの単極端に出力側が接続され、第1のトランジスタを備えた第1増幅器と、
前記スイッチの多投端が前記回路に接続されるのに連動して、前記第2増幅器が動作しないように制御する電源制御回路と、
を備える電力増幅器。」
である点。

(相違点1)
本願発明においては、「スイッチ」は第1周波数の信号と該第1周波数とは異なる第2周波数の信号を切り替えるものであり、「第1のトランジスタを備えた第1増幅器」は前記第1周波数の信号と前記第2周波数の信号とを通すものであるのに対し、引用例1記載の発明においては、「入力側スイッチ13」と「第1のトランジスタを備えた中出力増幅部」はそのようなものではない点。

(相違点2)
本願発明においては、スイッチの多投端の一つに「整合回路」が接続されているのに対し、引用例1記載の発明においては、スイッチの多投端の一つに「迂回路16」が接続されている点。

(相違点3)
本願発明においては、第1増幅器は入力電流が第2のトランジスタよりも小さい第1のトランジスタを備えているのに対し、引用例1記載の発明においては、中出力増幅部は出力レベルが第2のトランジスタよりも小さい第1のトランジスタを備えている点。

(相違点4)
本願発明においては、「電源制御回路」は、スイッチの多投端が整合回路に接続されるのに連動して、前記整合回路から出力される第1周波数の信号が所定の出力となるよう第1増幅器の入力端子および出力端子に印加される電圧を制御するとともに第2増幅器が動作しないように前記第2増幅器の入力端子または出力端子に印加される電圧を制御し、前記スイッチの多投端が前記第2増幅器に接続されるのに連動して、前記第2増幅器から出力される第2周波数の信号が所定の出力となるよう前記第1増幅器の入力端子および出力端子に印加される電圧を制御し、かつ前記第2増幅器をAB級動作させるものであるのに対し、引用例1記載の発明においては、「電源制御回路」は、入力側スイッチ13の多投端が迂回路16に接続されるのに連動して、高出力増幅部が動作しないように制御するものである点。

5.判断
そこで、上記相違点1?4について検討する。

(相違点1,2について)
引用例1記載の発明に対して引用例2記載の発明を適用することにより、上記相違点1,2を当業者が容易に想到し得るかについて、以下に検討する。
引用例1記載の発明と引用例2記載の発明は、共用される増幅器の出力側にスイッチの単極端を接続し、前記スイッチの二つの多投端に接続された回路を前記スイッチにて選択することにより、全体として所望の特性を得る構成である点で共通のものであるから、引用例1記載の発明に引用例2記載の発明を適用し、スイッチを第1周波数の信号と該第1周波数とは異なる第2周波数の信号を切り替えるものとし、第1のトランジスタを備えた第1増幅器を前記第1周波数の信号と前記第2周波数の信号とを通すものとし、前記スイッチの多投端の一つに整合回路を接続し、前記スイッチを前記整合回路と第2増幅器を選択する構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(相違点3について)
請求人は平成20年7月29日付けの上申書において、
「A.第2増幅器を構成する第2のトランジスタの入力電流が第1増幅器を構成する第1のトランジスタの入力電流より小さい点
この点については、本願明細書の例えば段落0025に、「第1、第2、第3のGaAsMESFET PA101、PA201、PA301のゲート幅が、それぞれ1mm、4mm、8mmである」ことが記載されており、ここで、第1のGaAsMESFET PA101は、第2増幅器(図1に示す第1の電力増幅器PA1)を構成するトランジスタであり、第2および第3のGaAsMESFET PA201およびPA301は、それぞれ、第1増幅器(図1に示す第2、第3の電力増幅器PA2、PA3)を構成するトランジスタに相当しています。従って、この段落0025には、第2増幅器を構成する第2のトランジスタの入力電流が第1増幅器を構成する第1のトランジスタの入力電流より小さい点が開示されています。」(なお、平成21年10月5日付けの手続補正書により、請求項1の記載としては、「第2増幅器」、「第2のトランジスタ」、「第1増幅器」、「第1のトランジスタ」は、それぞれ、「第1増幅器」、「第1のトランジスタ」、「第2増幅器」、「第2のトランジスタ」に補正された。)
と述べていることから、相違点3の「第1増幅器は入力電流が第2のトランジスタよりも小さい第1のトランジスタを備えている」とは、具体的には、例えば、第1,第2増幅器を構成する第1,第2のトランジスタとしてFETを用いた場合に、第1のトランジスタのゲート幅を第2のトランジスタのゲート幅よりも小さくすることに該当する事項である。
しかるに、一般に、増幅器を構成するトランジスタとしてFETを用いた場合に、そのゲート幅を大きくすればするほど大きな出力電流が得られることは、当業者にとって明らかであるから、引用例1記載の発明において、「中出力増幅部」及び「高出力増幅部」を構成するトランジスタとしてFETを用いた場合に、「中出力増幅部」を構成するFETのゲート幅よりも「高出力増幅部」を構成するFETのゲート幅を大きくして「高出力増幅部」から大きな出力レベルの電流を得るようにすること、逆に言えば、「高出力増幅部」を構成するFETのゲート幅よりも「中出力増幅部」を構成するFETのゲート幅を小さくして「中出力増幅部」から小さな出力レベルの電流を得るようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
よって、引用例1記載の発明において、「第2のトランジスタ」の入力電流よりも「第1のトランジスタ」の入力電流を小さくするようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(相違点4について)
電力増幅器の出力信号が所定の出力となるように、前段の増幅器を制御することは、例えば特開平5-227076号公報の図1及びその説明に記載されており、前段の増幅器の入力端子や出力端子に印加される電圧を制御することは、例えば特開平7-176967号公報の図2,図3及びそれらの説明や、特開平6-85580号公報の図8及びその説明等に記載されているように、周知技術にすぎない。
また、増幅器が動作しないように制御する仕方として、増幅器の入力端子または出力端子に印加される電圧を制御することは、例えば特開平5-14068号公報の図4及びその説明等に記載されているように、常套手段にすぎない。
そしてまた、所望の増幅器を入出力特性の線形性を重視してAB級で動作させることは、例えば特開昭63-253730号公報に記載されているように一般的に行われていることであるから、引用例1記載の発明において、高出力増幅部をAB級動作させることは、当業者が適宜決定すべき設計事項にすぎない。
したがって、引用例1記載の発明に引用例2記載の発明を適用した構成において、上記周知技術を用いて、電源制御回路を、スイッチの多投端が整合回路に接続されるのに連動して、前記整合回路から出力される第1周波数の信号が所定の出力となるよう第1増幅器の入力端子および出力端子に印加される電圧を制御するとともに第2増幅器が動作しないように前記第2増幅器の入力端子または出力端子に印加される電圧を制御し、前記スイッチの多投端が前記第2増幅器に接続されるのに連動して、前記第2増幅器から出力される第2周波数の信号が所定の出力となるよう前記第1増幅器の入力端子および出力端子に印加される電圧を制御し、かつ前記第2増幅器をAB級動作させるものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。

(本願発明の作用効果について)
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1,2記載の発明及び周知技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1,2記載の発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-07 
結審通知日 2011-07-08 
審決日 2011-07-20 
出願番号 特願2008-195527(P2008-195527)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石原 由晴  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 甲斐 哲雄
岩崎 伸二
発明の名称 電力増幅器  
代理人 大塩 竹志  
代理人 山本 秀策  
代理人 安村 高明  

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