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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1242705
審判番号 不服2010-6903  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-02 
確定日 2011-09-01 
事件の表示 特願2003- 77483「アライメント装置及びアライメント方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月14日出願公開、特開2004-288792〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成15年3月20日の出願であって、平成20年12月1日付け拒絶理由通知に応答して平成21年2月3日付けで手続補正がなされ、同年7月1日付け拒絶理由通知に応答して同年8月26日付けで手続補正がなされ、同年12月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年4月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。
そして、当審による平成22年10月27日付け審尋に対して、回答書の提出はなされなかった。

第2.平成22年4月2日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成22年4月2日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1.補正前の本願発明
補正前の特許請求の範囲の請求項1は、以下のとおりである。

「【請求項1】 ウエハを保持し平面内で回転可能に設けられるとともに、同一平面内で直交する所定のX、Y軸に沿って移動可能に設けられたウエハ保持用のテーブルと、前記ウエハの中心位置を検出する機能を有する検出手段と、前記テーブルの駆動手段とを備えたアライメント装置において、
前記ウエハの面内には、ダイシングライン又はストリートが形成され、当該ダイシングライン又はストリートの延出方向の四箇所の内何れか1のウエハ外周には方位マークが設けられ、
前記検出手段は、前記ダイシングライン又はストリートを認識してその延出方向を検出する機能と、ダイシングライン又はストリートの延出方向の四箇所の内何れか1のウエハ外周に設けられた方位マークを検出する機能とを備え、
前記駆動手段は、前記検出結果に基づいてウエハ中心位置ずれ及び方位マーク位置の角度ずれを補正してウエハを予め設定した所定位置に位置させるようにテーブルを駆動することを特徴とするアライメント装置。」


2.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。

「【請求項1】 ウエハを保持し平面内で回転可能に設けられるとともに、同一平面内で直交する所定のX、Y軸に沿って移動可能に設けられたウエハ保持用のテーブルと、前記ウエハの中心位置を検出する機能を有する検出手段と、前記テーブルの駆動手段とを備えたアライメント装置において、
前記ウエハの面内には、ダイシングライン又はストリートが形成され、当該ダイシングライン又はストリートの延出方向の四箇所の内何れか1のウエハ外周には方位マークが設けられ、
前記検出手段は、前記ダイシングライン又はストリートを認識してその延出方向を検出する機能と、ダイシングライン又はストリートの延出方向の四箇所の内何れか1のウエハ外周に設けられた方位マークの二次元画像を取り込んで検出する機能とを備え、
前記駆動手段は、前記検出結果に基づいてウエハ中心位置ずれ及び方位マーク位置の角度ずれを補正してウエハを予め設定した所定位置に位置させるようにテーブルを駆動することを特徴とするアライメント装置。」(下線は補正箇所を示す。)


3.補正の目的
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である検出手段における方位マークを検出する機能について、方位マーク「の二次元画像を取り込んで」検出する機能と限定するものであるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法(以下、「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか。)について以下に検討する。


4.本願補正発明、並びに刊行物の記載事項及び刊行物記載の発明

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記2.に記載したとおりのものである。

(2)刊行物の記載事項及び刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である国際公開第97/43785号(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.明細書第8ページ第15行ないし第10ページ第6行
「本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係るウエハの位置決め方法を実施するための装置の概略的な構成を示すもので、図において1は平面検査装置であり、これはCCDカメラ等でウエハの上面を撮影し、画像処理によって各バンプの位置や面積を算出して異常を検出するようになっている。2は3次元検査装置であり、・・・・・。3はインカー装置であり、・・・・・。4は検査用のウエハを置く台である。
上記各装置において、5はXYステージ、6はθステージであり、これらの構成は図2に示すようになっていて、XYステージ5はX方向とY方向に移動可能になっている各ステージ5a,5bとからなっており、これの上側のステージ5a上にθステージ6が旋回可能に搭載されている。7はウエハの表面を撮影するCCDカメラであり、この実施の形態では、このCCDカメラは位置決め装置を兼ねており、上記各装置1,2,3に1台ずつ搭載されている。・・・・・
14はメモリーを備えたCPUであり、パソコンでもよく、これによりステージの管理及び各装置の検査を制御する。そして複数のCPU14が、同じくメモリーを備えた主CPU15にイーサネット等の通信手段で接続されており、CPU15が検査装置全体を管理するようになっている。
上記各装置1?4におけるウエハの位置決めは、(1)ウエハの搬送・設置、(2)プリアライメント、(3)ファインアライメント、(4)搬出・搬送の工程から成る。本発明における要部は(2)プリアライメントの部分であるが、実施例として全体を説明する。」

イ.明細書第10ページ第7ないし19行
「(1)ウエハの搬送・設置
図1において、まず搬送ロボット13がウエハホルダ10からウエハ11を取り上げ、平面検査装置1のθステージ6に搬送する。ウエハ11はウエハホルダ10にランダムな姿勢で搭載されている。
図2からわかるように、ステージ6はXY方向に平行移動するとともに、θ方向に回転移動するようになっている。
図2、図3に示すようにθステージ6には窪み16がついており、この窪みを搬送ロボット13に向けている。ウエハ11を乗せた搬送ロボット13のアーム12がここに入り込み、吸着を止めて下方にわずかに降りてウエハ11をθステージに乗せ後方へ下がると、θステージがウエハ11を吸着して固定する。」

ウ.明細書第10ページ第20行ないし第11ページ第1行
「図4にθステージ6上に置かれたウエハ11の平面図を示す(窪み16は図示しない)。X,Yは、θステージ6の移動方向を基準としたXY座標軸であり、Oはその原点である。20はカメラの視野(バンプ等の細かいものを検査する場合には数ミリ四方程度)であり、このθステージ6のXY座標に沿って動く。21はθステージの回転中心である。」

エ.明細書第11ページ第6ないし23行
「23はチップを切り出すためにウエハ11上に描かれた直交パターン、あるいはIC上に描かれた直交パターンであり、どのような形状をしているかは、CADデータから既知である。図4において、X′,Y′はウエハ11のパターンに基づいた座標系(ウエハ座標系)におけるXY座標軸であり、O′はその原点である。ウエハ11のオリフラ24は、ウエハ座標系のX′軸とほぼ平行になっており、オリフラ24が下方にきたときの左上がウエハ座標系の原点となる。22はウエハ11の中心であり、このウエハ11の中心と上記θステージ6の回転中心21との距離は、搬送ロボット13の位置決め誤差やウエハホルダ10のクリアランスなどから生まれるが、数ミリ程度に抑えるのはさほど難しいものではない。図4に示したパターン23、ウエハ座標系X′,Y′,O′、オリフラ24及びウエハ11の中心22がステージ座標系XYに対してどのような相対位置にあるかを検出するのがウエハ11の位置決めである。今後、単に座標という場合には、ステージ座標系を指すことにする。」

オ.明細書第11ページ第24行ないし第12ページ第16行
「(2)プリアライメント
図14にプリアライメントのフローを示す。このフロー及び図5から図9に従って、プリアライメントの手順を説明する。
1)オリフラをステージ座標系のXまたはY軸に平行に合わせる。
まず、図5に示すように、ステージの回転中心21が収まるようにカメラの視野20を移動して、パターン23の画像を取り込む・・・・・(ステップ1)。その画像からパターンとステージY軸とのなす角θ1を求める(ステップ2)。θ1を求める手法としては、例えばパターンマッチングなどが考えられる。・・・・・
θステージ6を、θ1が0となるように反時計回りに回転させる(ステップ3)と、オリフラ24はステージ座標系のXまたはY軸にほぼ平行になり、図6A,図6B,図6C,図6Dに示すように4通りの可能性がある。」

カ.明細書第12ページ第20行ないし第13ページ第14行
「2)ウエハの中心22の座標を求める。
実際のオリフラが図6Bの状態にある場合を例にとって説明する。
図7に示すように、カメラの視野を45°右下方向へ移動して、ステージ座標のあるX座標(x1)まで到達させる(ステップ4)。ここから視野をY軸に沿ってYマイナス方向へ移動し、ウエハ11の右下エッジを検出する(ステップ5)と、この点Aの座標(x1,y1)が求められる。点Aから視野をY軸プラス方向へ移動し(ステップ6)、ウエハ11の右上のエッジを検出すると、この点Bの座標(x1,y2)が求められる(ステップ7)。この両点A,Bから(y1+y2)/2を演算してウエハ11のy方向の中心を算出する(ステップ8)。ついで点Bから視野をX軸マイナス方向へ移動(ステップ9)して、ウエハ11の左上エッジを検出すると、この点Cの座標(x2,y1)が求められる(ステップ10)。ついで点B,Cから(x1+x2)/2を演算してウエハ11のx方向の中心を算出する(ステップ11)。ステップ8,11の両ステップによりウエハ11の中心22の座標(x1+x2)/2,(y1+y2)/2が得られる。」

キ.明細書第15ページ第1ないし8行
「3)オリフラ24の向きが、図6A、図6B、図6C、図6Dで示す4通りのうちどこにあるかを求める。
図8において、ウエハ11の中心22から上下左右の4方向へ、ほぼウエハ11の半径だけカメラ視野を移動させる。E,F,G,Hの視野のうち、E,G,Hの視野ではウエハのエッジが検出されるが、Fではカメラがはみ出しているためエッジが検出されない。すなわち、これがオリフラ24部であると判定できる。」

ク.明細書第15ページ第16行ないし第17ページ第3行
「4)オリフラ24を正しい位置に回転させて、プリアライメントを実施する。
図14におけるステップ11でウエハ11の中心22を検出した状態で、このウエハ11のオリフラ24が図6A?図6Dの位置のいずれにあるかわからない場合について図15に示すフローに基づいて説明する。
カメラ視野をウエハ11の上端Gに移動して(ステップ12)、この上端Gでのエッジを検出し(ステップ13)、エッジがない場合にはウエハ11は図6Cに示すように、この上端にオリフラ24があることになるから、θステージ6を反時計回りに180°のオリフラ回転角θ2 だけ回転する(ステップ14)。これによりオリフラ24が例えば下側に位置するプリアライメント位置となる。
上記ステップ13において、上端Gでエッジを検出すると、カメラ視野をウエハ11の右端Fに移動して(ステップ15)、この右端Fでのエッジを検出し(ステップ16)、エッジがない場合にはウエハ11は図6Bに示すように、右側にオリフラ24があることになるから、θステージ6を反時計回りに270°のオリフラ回転角θ2 だけ回転する(ステップ17)。これによりオリフラ24が下側に位置する上記プリアライメント位置となる。
ついで、上記ステップ16において、右端Fでエッジを検出すると、カメラ視野をウエハ11の下端Eに移動して(ステップ18)、この下端Eでのエッジを検出し(ステップ19)、エッジがない場合はウエハ11は図6(a)に示すように、下側にオリフラ24があることになり、従ってこれがプリアライメント位置であることがわかり、このときのオリフラ回転角θ2 はゼロである(ステップ20)。
上記ステップ19において、下端Eでエッジを検出すると、カメラ視野をウエハ11の左端Hに移動して(ステップ21)、この左端Hでのエッジを検出し(ステップ22)、エッジがない場合にはウエハ11は図6(d)に示すように、左側にオリフラ24があることになるから、θステージ6を反時計回りに90°のオリフラ回転角θ2 だけ回転する(ステップ23)。
上記操作でウエハ11は、これのオリフラ24が下側に位置するプリアライメント状態となる。」

ケ.明細書第18ページ第1ないし11行
「これで、θステージ6とウエハ11との座標系の角度が図9に示すように、略一致し、プリアライメントが完了する。ウエハ座標系からみたウエハ中心22の座標は既知であり、先に求めたステージ座標系におけるウエハ中心の座標とこのプリアライメント角度θpから、2つの座標系の原点のオフセット量(xp,yp)が求められる(ステップ29)。このオフセット量(xp,yp)及びプリアライメント角度θpがウエハ固有のプリアライメントパラメータとしてcpu14から全体を管理する主CPU15に渡され、他のステージにウエハ11が搬送された場合に利用される。」

コ.明細書第20ページ第25行ないし第21ページ第5行
「マーク位置K1 ,L1 のステージ座標(xf1,yf1),(xf2,yf2)から、ウエハ11とパターンがXYステージに対してどのような関係にあるかを特定できる。このデータに基づいて、実際にXYステージを動かしてもよいし、ファインアライメントパラメータとして、検査時にハードウェアやソフトウェア上で補正してもよい。」

サ.図2の図示
図2には、θステージ6が平面内で回転可能であること、当該平面と同一の平面内を移動可能であること、平面内の移動が、直交するX、Y軸に沿ったものであることの図示がある。

シ.図4の図示
図4には、ウエハ11の面内に直交パターン23が形成され、当該直交パターン23の延出方向の四箇所の内の1のウエハ11外周にオリフラ24が設けられていることの図示がある。

以上の記載事項のうち、上記カ.は、カメラでの画像を基にウエハ11の中心の座標を算出することを示しており、当該算出が、上記ア.のCPU14で行われていることは明らかである。
さらに、上記オ.は、ウエハ11のパターン23とステージY軸とのなす角θ1を求めることを示しており、そのようにθ1を求めることが、上記ア.のカメラやCPU14で行われていることは明らかである。
また、上記キ.及びク.は、ウエハ11のエッジを検出することを示しており、そのような検出が、上記ア.のカメラやCPU14で行われていることは明らかである。
そして、上記ク.は、ウエハ11のオリフラ24が下側に位置するようにθステージ6を回転させることを示している。

刊行物におけるこれらの記載事項を、本願補正発明の記載に沿って整理すると、刊行物には、次の発明(以下、「刊行物記載の発明」という。)が記載されていると認める。

「ウエハ11を吸着して固定し、平面内で回転可能に設けられるとともに、同一平面内で直交する所定のX,Y軸に沿って移動可能に設けられたθステージ6と、前記ウエハ11の中心位置を検出する機能を有するカメラ及びCPU14とを備えた平面検査装置1において、
前記ウエハ11の面内には、直交パターン23が形成され、当該直交パターン23の延出方向の四箇所の内の1のウエハ11外周にはオリフラ24が設けられ、
カメラ及びCPU14は、ウエハ11のパターン23とステージY軸とのなす角θ1を求める機能と、ウエハ11のエッジを検出する機能とを備え、
前記検出結果に基づいて、ウエハ11中心位置ずれを求め、オリフラ24が下側に位置するようにθステージ6を回転させる平面検査装置1。」


5.対比
本願補正発明と刊行物記載の発明とを対比すると、刊行物記載の発明の「ウエハ11」が本願補正発明の「ウエハ」に相当し、「ウエハ11を吸着して固定」することが「ウエハを保持」することに相当し、「θステージ6」が「ウエハ保持用のテーブル」に相当することは、明らかである。
また、刊行物記載の発明の「カメラ及びCPU14」は、ウエハの中心位置を検出する機能を有しているから、本願補正発明の「検出手段」に相当する。
また、刊行物記載の発明の「直交パターン23」は、上記4.(2)エ.の摘示に示すように、「チップを切り出すためにウエハ11上に描かれた」ものであるから、本願補正発明の「ダイシングライン」に相当する。
また、刊行物記載の発明の「オリフラ24」は、上記4.(2)ク.の摘示に示すように、オリフラ24が下側に位置するようにθステージ6を回転させるための基準となるマークであるから、本願補正発明の「方位マーク」に相当する。
また、刊行物記載の発明の「ウエハ11のパターン23とステージY軸とのなす角θ1を求める機能」は、パターン23の延出方向とステージY軸の延出方向とのなす角を求める機能であって、パターン23の延出方向を検出することにほかならないから、本願補正発明の「前記ダイシングライン」「を認識してその延出方向を検出する機能」に相当する。
また、刊行物記載の発明の「ウエハ11のエッジを検出する機能」は、上記4.(2)キ.及びク.に摘示するように、ウエハ11のエッジを検出できない部分について、オリフラ24が存在していると判定する機能、すなわちオリフラ24の有無を検出する機能といえるから、「ダイシングラインの延出方向の四箇所の内の1のウエハ外周に設けられた方位マークの有無を検出する機能」という点で、本願補正発明の「ダイシングライン又はストリートの延出方向の四箇所の内何れか1のウエハ外周に設けられた方位マークの二次元画像を取り込んで検出する機能」と共通する。
また、刊行物記載の発明の「前記検出結果に基づいて、ウエハ11中心位置ずれを求め、オリフラ24が下側に位置するようにθステージ6を回転させる」ことは、「前記検出手段に基づいてウエハ中心位置ずれ及び方位マーク位置の角度ずれを求める」という限りにおいて、本願補正発明の「前記駆動手段は、前記検出結果に基づいてウエハ中心位置ずれ及び方位マーク位置の角度ずれを補正してウエハを予め設定した所定位置に位置させるようにテーブルを駆動すること」と共通する。

以上の対比に基づいて、本願補正発明の用語を用いて表現すると、本願補正発明と刊行物記載の発明とは、次の点で一致及び相違する。

<一致点>
「ウエハを保持し平面内で回転可能に設けられるとともに、同一平面内で直交する所定のX,Y軸に沿って移動可能に設けられたウエハ保持用のテーブルと、前記ウエハの中心位置を検出する機能を有する検出手段とを備えたアライメント装置において、
前記ウエハの面内には、ダイシングラインが形成され、当該ダイシングラインの延出方向の四箇所の内の何れか1のウエハ外周には方位マークが設けられ、
前記検出手段は、前記ダイシングラインを認識してその延出方向を検出する機能と、ダイシングラインの延出方向の四箇所の内の何れか1のウエハ外周に設けられた方位マークの有無を検出する機能とを備え、
前記検出結果に基づいてウエハ中心位置ずれ及び方位マーク位置の角度ずれを求める装置。」である点。

<相違点1>
方位マークの有無を検出するにあたり、本願補正発明では、方位マークの二次元画像を取り込んで検出しているのに対して、刊行物記載の発明では、ウエハ11のエッジを検出している点。

<相違点2>
本願補正発明は、テーブルの駆動手段を備えており、当該駆動手段は、検出手段の検出結果に基づいてウエハ中心位置ずれ及び方位マーク位置の角度ずれを補正してウエハを予め設定した所定位置に位置させるようにテーブルを駆動するアライメント装置としているのに対して、刊行物記載の発明は、平面検査装置1であって、θステージ6を駆動させる手段の有無が明確でなく、カメラ及びCPU14の検出結果に基づいてウエハ中心位置ずれ及びオリフラ24の角度ずれを求め、オリフラ24の角度ずれを補正してθステージ6を所定位置に回転させているものの、ウエハ中心位置ずれ及びオリフラ24の角度ずれの両方を補正してウエハを予め設定した所定位置に位置させるように、駆動手段によりテーブルを駆動させていない点。


6.相違点の判断
上記<相違点1>について検討すると、方位マークの有無を検出するにあたり、方位マークの二次元画像を取り込んで検出することは、例えば特開2000-68361号公報の段落【0032】の「画像処理装置55は、任意の適当な方法によりノッチ部を識別することができる。例えば、画像処理装置55は、ノッチ部の形状を認識するパターン認識要素を含むことができる。」という記載に示すように、本願の出願前に周知の技術的事項であるから、刊行物記載の発明において、方位マークの有無を検出するにあたり、方位マークの二次元画像を取り込んで検出するように構成することは、当業者が容易に想到できた事項である。

次に上記<相違点2>について検討すると、上記4.(2)ア.には、本願補正発明のウエハ保持用テーブルに相当するθステージ6について、平面内で回転可能とすることや、直交する所定のX、Y軸に沿って移動可能とすることが示されているし、移動可能に構成されているテーブルを駆動させるように駆動手段を設けることは、改めて例示するまでもない周知の技術的事項である。
そして、上記4.(2)ケ.に摘示するように、刊行物記載の発明は、ウエハ中心位置ずれを求めているところ、さらに刊行物には、上記4.(2)コ.に摘示するように、マーク位置とテーブルとの関係を特定した後に、実際にテーブルを駆動させることの示唆がある。
また、方位マーク位置の角度ずれについては、上記4.(2)ク.に摘示するように、テーブルを回転させることが示されている。
以上を考慮すると、刊行物記載の発明において、回転や移動が可能に構成されているウエハ保持用テーブルを駆動させるように駆動手段を設け、ウエハ中心位置ずれ及び方位マーク位置の角度ずれを補正してウエハを予め設定した所定位置に位置させるようにテーブルを駆動させてアライメント装置とすることは、当業者が格別の困難性を有することなく想到できた事項である。

したがって、本願補正発明は、刊行物に記載の発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。


7.むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について

1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記第2.1.に記載したとおりのものである。


2.刊行物の記載事項及び刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、並びにその記載事項及び刊行物記載の発明は、上記第2.4.(2)に記載したとおりである。


3.対比及び判断
本願発明は、上記第2.2.に補正後の本願発明として記載した発明、すなわち本願補正発明から、方位マークの検出に関して「二次元画像を取り込んで」との限定事項を省いたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2.6.に記載したとおり、刊行物記載の発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、刊行物記載の発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


4.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物記載の発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-29 
結審通知日 2011-07-05 
審決日 2011-07-19 
出願番号 特願2003-77483(P2003-77483)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼辻 将人  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 長屋 陽二郎
刈間 宏信
発明の名称 アライメント装置及びアライメント方法  
代理人 山口 義雄  

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