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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C09J
管理番号 1242735
審判番号 不服2008-12144  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-13 
確定日 2011-09-02 
事件の表示 特願2002-38064「防湿透明粘着テープ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年8月27日出願公開、特開2003-238911〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成14年2月15日の出願であって、平成19年10月30日付けの拒絶理由通知に対して、同年12月27日に意見書及び手続補正書が提出され、平成20年1月21日付けの拒絶理由通知に対して、同年3月21日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、平成20年4月8日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年5月13日に審判請求がされるとともに同年6月9日付けで手続補正がされ、平成22年9月17日付けの審尋に対して、回答書の提出がなかったものである。

第2 平成20年6月9日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[結論]
平成20年6月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成20年6月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1の「防湿処理層」を「セラミックコート処理層からなる防湿処理層」にする補正を含むものである。

2 請求項1の補正の目的要件の検討
上記請求項1についての補正は、補正前の請求項1の発明を特定するために必要な事項である「防湿処理層」を「セラミックコート処理層からなるものに限定するものであって、その補正前の請求項1に記載された発明とその補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 請求項1の補正の独立特許要件の検討
そこで、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」といい、本件補正後明細書を「本件補正明細書」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(この補正が平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものであるか)について検討する。

(1) 本件補正発明
本件補正発明は、平成20年6月9日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「透明な熱可塑性樹脂フィルム層の片面にセラミックコート処理層からなる防湿処理層を備えた基材層に、粘着剤層が備えられた防湿透明粘着テープであって、
前記粘着剤層は前記熱可塑性樹脂フィルム層に備えられ、
全光線透過率が70.0%以上、
透湿度が1.0g/m^(2)・24hr以下
であることを特徴とする防湿透明粘着テープ」

(2) 引用刊行物及び引用刊行物に記載された事項
ア 引用刊行物
刊行物1 特開平09-165560号公報
(原査定で引用された引用文献5)
刊行物2 特開平04-070330号公報
(原査定で引用された引用文献1)
刊行物3 特開平03-239536号公報
(原査定で引用された引用文献2)
刊行物4 特開平03-239537号公報
(原査定で引用された引用文献3)
刊行物5 特開2001-146240号公報
(原査定で引用された引用文献4)

イ 刊行物1に記載された事項
・摘示事項1-a:
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 セルロースアセテート系フィルム基材の一面に防湿層が設けられ、他面に直接もしくは間接的に粘着剤層が設けられてなることを特徴とするグリーンシート用表面保護フィルム。」
・摘示事項1-b:
「【0002】
【従来の技術】 セラミックICパッケージ等の高度な加工精度が要求される分野で用いられるグリーンシート用表面保護フィルムは、高精度で打抜き加工ができ、貼付されている未焼結セラミック組成物シート上で、湿度等の環境変化に対する高寸法安定性及び上記未焼結セラミック組成物シート上に導電ペーストで印刷する工程等に対する高い耐溶剤性が要求される。…」
・摘示事項1-c:
「【0007】
前記グリーンシート用表面保護フィルム用基材として使用されているセルロースジアセテートもしくはセルローストリアセテートからなるセルロースアセテート系フィルムは、打抜き特性は優れるが、吸湿による寸法安定性が劣る。ポリスチレンフィルムも、例えば、特開平4-261485号公報にも開示されているが、打抜き特性は優れるが、耐溶剤性が劣る。ポリエチレンテレフタレートフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム等は、耐湿性は優れるが、打抜き精度が悪く、完全に打抜かれず、フィルムの切屑が切除されずに表面保護フィルムに残り易い。叙上の如く、従来グリーンシート用表面保護フィルム用基材として使用されている前記フィルムは、打抜き加工性、寸法安定性、耐溶剤性の全てを同時に満足するものではなかった。」
・摘示事項1-d:
「【0012】
上記基材の一面に設けられられる防湿層は、好ましくはその透湿度が40℃、90%RHの条件下で、200g/m^(2)・24時間以下である。このような性能を有する防湿層に用いられる材料としては、例えば、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデンと塩化ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル等のコモノマーとの共重合体或いはこれらのモノマーの単独重合体の混合物、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリルと(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等のコモノマーとの共重合体、(メタ)アクリル酸エステル-ブタジエン共重合体、その他のアクリル系樹脂、シリコーン等が挙げられる。」
・摘示事項1-e:
「【0024】
本発明のグリーンシート用表面保護フィルムは、ロール状に捲重して長尺のフィルムとして保管してもよいが、枚葉として保管してもよい。…」
・摘示事項1-f:
「【0028】 (実施例1)
厚さ25μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製、商品名:フジタック)からなる基材の一面に、ポリ塩化ビニリデンの溶液をグラビアコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥させ、厚さ2μmの防湿層を形成した。次いで、上記基材の他の面に、上記粘着剤をコンマコーターで塗布し、100℃で30秒間乾燥させ、厚さ5μmの粘着剤層を形成した。更に、上記粘着剤層の表面に、シリコーン離型処理した厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人社製、商品名:S-31)の離型処理面を当接して貼り合わせてグリーンシート用表面保護フィルムを作製した。」
・摘示事項1-g:
「【0035】2.透湿度:JIS Z 0208に準拠し透湿度を測定した。」
・摘示事項1-h:
「【0039】
【表1】(審決注;省略)」
(表1の「実施例1」の「透湿度(g/m^(2)・24hr)」の欄は、「60」である。)

ウ 刊行物2に記載された事項
・摘示事項2-a:
「2.特許請求の範囲
(1)透明なフィルム基材上に、珪素酸化物からなる透明な第一層と、Cr、Ti、ZrおよびTaの中から選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物からなる透明な第二層とが設けられていることを特徴とする透明耐透湿性フィルム。」(1頁左下欄)
・摘示事項2-b:
「<産業上の利用分野>
この発明は、食品や薬品などの包装材料、EL(エレクトロルミネッセンス)素子の保護材料などに用いられる透明耐透湿性フィルム及びEL発光装置に関する。」(1ページ左下欄末行?右下欄3行)
・摘示事項2-c:
「このフィルム基材上に第一層として設けられる透明な珪素酸化物の層は、一般にSi_(x)O_(y)(x=1?2、y=0?3)で表されるものであって、通常Si、SiO、SiO_(2)、Si_(2)O_(3)の形の混合物として存在することが多い。

このような珪素酸化物の層からなる第一層の厚さは、100?6000Å、好ましくは200?5000Åの範囲とするのがよい。この層が薄すぎると、島状構造の膜となって耐透湿性が向上せず、また厚くなりすぎると、着色やクランクが生じやすく、その場合やはり耐透湿性の低下をきたすことになる。」(2ページ左下欄7行?右下欄5行)
・摘示事項2-d:
「<発明の効果>
以上のように、この発明によれば、耐透湿性および耐久性の改善された透明耐透湿性フィルムを提供することができる。」(3ページ左下欄13行?16行)
・摘示事項2-e:
「実施例1?5
厚さが50μmの透明なポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという)の片面に、蒸着材料としてのSiOを、エレクトロンビーム加熱法により…真空蒸着して、厚さが約2000Åの珪素酸化物からなる透明な第一層を形成した。
つぎに、この第一層の上に、蒸着材料として、Cr_(2)O_(3)(実施例1)、TiO_(2)(実施例2)、TiO(実施例3)、ZrO_(2)(実施例4)、Ta_(2)O_(5)(実施例5)を用いて、これらをそれぞれ上記と同様の方法により真空蒸着して、厚さが100?200Åの第二層を形成し、5種の透明耐透湿性フィルムを作製した。
実施例6
フィルム基材として、厚さが80μmの透明なポリカーボネートフィルムを使用した以外は、実施例1と同様にして、透明耐透湿性フィルムを作製した。
比較例1
第二層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、透明耐透湿性フィルムを作製した。
比較例2
第一層を厚さが約2000Åの酸化マグネシウム(MgO)からなる層に変更し、かつ第二層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、透明耐透湿性フィルムを作製した。
比較例3
珪素酸化物からなる第一層の厚さを6000Åに変更し、かつ第二層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、透明耐透湿性フィルムを作製した。
上記の実施例および比較例の各透明耐透湿性フィルムにつき、以下の特性試験を行った。結果は後記の第1表に示されるとおりであった。」(3ページ右下欄11行?4ぺージ右上欄6行)
・摘示事項2-f:
「第1表(審決注:省略)」(4ページ左下欄)
(「可視光線透過率(%)」の欄は、実施例1ないし6、比較例1,2は「84」、「85」、「86」いずれか、比較例3は「76」である。)

エ 刊行物3に記載された事項
・摘示事項3-a:
「2.特許請求の範囲
(1) 透明なフイルム基材上に透明な導電層と透明な珪素酸化物層とがこの順に設けられ、さらにこの上に透明な接着剤層が設けられてなる透明導電性耐透湿フイルム。」(1ページ左下欄)
・摘示事項3-b:
「〔従来の技術〕
食品や薬品などの包装において内容物の変質防止のため、また電子工業分野ではEL素子の保護やメンブレンスイツチ(タツチパネル)の誤動作防止のため、透明でかつ耐透湿性にすぐれたフイルム材料の使用が望まれている。
従来公知のこの種のフイルム材料は、ポリエチレンテレフタレートやポリ塩化ビニルなどの各種プラスチツクをフイルム基材として使用したものであるが、多くの場合耐透湿性が不足する。このため、特公昭53-12953号公報や特開昭60-27532号公報などにみられるように、基材フイルム上に、珪素化合物やマグネシウム酸化物などの薄膜を形成して上記耐透湿性の改善を図る工夫がなされている。」(1ページ左下欄末行?右下欄14行)
・摘示事項3-c:
「このような導電層上に設けられる透明な珪素酸化物層は、一般にSi_(x)O_(y)(x=1?2、y=0?3)で表されるものであつて、通常Si、SiO、SiO_(2)、Si_(2)O_(3)の形の混合物として存在することが多い。かかる珪素酸化物層は、前記の導電層に積層されることによつて、耐透湿性および透明性の向上に好結果を与え、またこの上に設けられる後述の接着剤層との密着性にも好結果を与えるものである。

このような珪素酸化物層の厚さは、通常20?4,000Å、好ましくは50?2,000Åの範囲とするのがよい。この層が薄すぎると島状構造の膜となつて後述の接着剤層との密着性が向上せず耐透湿性が向上しない。また、厚くなりすぎると着色やクラツクが生しやすく、その場合透明性や耐透湿性の低下をきたすことになる。」(2ページ右下欄3行?3ページ左上欄4行)
・摘示事項3-d:
「〔発明の効果〕
以上のように、この発明によれば、耐透湿性および透明性にすぐれ、しかも帯電に起因したシール不良や外観不良あるいは誤動作などをきたすおそれのない透明導電性耐透湿フイルムを提供することができる。」(3ページ右上欄16行?左下欄1行)
・摘示事項3-e:
「実施例1
厚さが50μmの透明なポリエチレンテレフタレートフイルム(以下、PETフイルムという)の表面を、…高周波スパツタエツチング処理した。
その後、この処理面上に…インジウム-スズ(重量比9:1)合金を用いた反応性スパツタリング法により、厚さが約1,000ÅのITOからなる透明な導電層を形成した。…
つぎに、上記の導電層の上に、SiO_(2)を、エレクトロンビーム加熱法により…真空蒸着して、厚さが約900Åの珪素酸化物層を形成した。…
ついで、この珪素酸化物層の上に、感圧性接着剤層として、…アクリル系の透明な感圧性接着剤(…)を約25μmの厚さに形成し、第1図に示す構造の透明導電性耐透湿フイルムを作製した。
実施例2
感圧性接着剤層に代えて、厚さが50μmのポリエチレン系感熱性接着剤層を形成するようにした以外は、実施例1と同様にして透明導電性耐透湿フイルムを作製した。
実施例3.4
フイルム基材として、厚さが25μmの透明なポリエーテルスルホンフイルム(実施例3)、厚さが80μmの透明なポリカーボネートフイルム(実施例4)を使用した以外は、実施例1と同様にして、2種の透明導電性耐透湿フイルムを作製した。
比較例1
透明な導電層および透明な珪素酸化物層を形成しなかつた以外は、実施例1と同様にして透明耐透湿フイルムを作製した。
比較例2
透明な珪素酸化物層を形成しなかつた以外は、実施例1と同様にして透明導電性耐透湿フイルムを作製した。
比較例3
透明な導電層を形成しなかつた以外は、実施例1と同様にして透明耐透湿フイルムを作製した。
比較例4,5
透明な導電層および透明な珪素酸化物層を形成しなかつた以外は、実施例3,4と同様にして2種の透明耐透湿フイルムを作製した。
上記の実施例および比較例の各耐透湿フイルムにつき、以下の特性試験を行つた。結果は、後記の第1表に示されるとおりであつた。」(3ページ左下欄9行?4ページ右上欄5行)
・摘示事項3-f:
「第1表(審決注:省略)」(4ページ左下欄)
(「可視光線透過率(%)」の欄は、実施例1ないし4、比較例1ないし5は「82」ないし「88」の範囲内の値である。)

オ 刊行物4に記載された事項
・摘示事項4-a:
「2.特許請求の範囲
(1) 透明なフイルム基材上に、珪素酸化物からなる透明な第一層と、シランカツプリング剤からなる透明な第二層とが設けられていることを特徴とする透明耐透湿性フイルム。」(1ページ左下欄)
・摘示事項4-b:
「〔従来の技術〕
食品や薬品などの包装において内容物の変質防止のため、また電子工業分野ではEL素子の保護やメンブレンスイツチ(タツチパネル)の誤動作防止などのため、透明でかつ耐透湿性を有するフイルム材料が用いられている。
このようなフイルム材料としては、たとえばプラスチツクフイルムを基材とし、この上に珪素酸化物の層を形成したもの(特公昭53-12953号公報)や、上記同様の基材上にマグネシウム酸化物の層を形成したもの(特開昭60-27532号公報)などが知られている。」(1ページ左下欄16行?右下欄11行)
・摘示事項4-c:
「このフイルム基材上に第一層として設けられる透明な珪素酸化物の層は一般にSi_(x)O_(y)(x=1?2、y=0?3)で表されるものであつて、通常Si、SiO、SiO_(2)、Si_(2)O_(3)の形の混合物として存在することが多い。

このような珪素酸化物の層からなる第一層の厚さは、100?6,000Å、好ましくは200?5,000Åの範囲とするのがよい。この層が薄すぎると、島状構造の膜となつて耐透湿性が向上せず、また厚くなりすぎると、着色やクラツクが生じやすく、その場合やはり耐透湿性の低下をきたすことになる。」(2ページ右上欄16行?左下欄14行)
・摘示事項4-d:
「〔発明の効果〕
以上のように、この発明によれば、耐透湿性および耐久性の改善された透明耐透湿性フイルムを提供することができる。また、このフイルムは、これを構成する第一層、第二層または接着剤層がそれぞれその下地に対する密着性にすぐれており、また吸湿によるフイルムの寸法変化やシワなどの発生が起こりにくく、さらに水に対する表面接触角が小さいため、印刷性にもすぐれるといつた多くの特徴を備えている。」(3ページ右上欄18行?左下7行)
・摘示事項4-e:
「実施例1
厚さが50μmの透明なポリエチレンテレフタレートフイルム(以下、PETフイルムという)の片面に、蒸着材料としてのSiOを、エレクトロンビーム加熱法により…真空蒸着して、厚さが約1,000Åの珪素酸化物からなる透明な第一層を形成した。
つぎに、この第一層の上に、信越化学工業(株)製のシランカツプリング剤…塗布したのち、常温乾燥して、厚さが約300Åの第二層を形成した。
しかるのち、上記の第二層の上に、厚さが50μmのポリエチレン系感熱性接着剤層を形成して、前記第1図に示す構造の透明耐透湿性フイルムを作製した。
実施例2
ポリエチレン系感熱性接着剤層に代えて、…アクリル系の透明な感圧性接着剤…を約25μmの厚さに形成した以外は、実施例1と同様にして、前記第1図に示す構造の透明耐透湿性フイルムを作製した。
実施例3
フイルム基材として、厚さが80μmの透明なポリカーボネートフイルムを使用した以外は、実施例1と同様にして、前記第1図に示す構造の透明耐透湿性フイルムを作製した。
比較例1
第二層を形成しなかつた以外は、実施例Iと同様にして、透明耐透湿性フイルムを作製した。
比較例2
第二層を形成しなかつた以外は、実施例2と同様にして、透明耐透湿性フイルムを作製した。
比較例3
第二層を形成しなかつた以外は、実施例3と同様にして、透明耐透湿性フイルムを作製した。
上記の実施例および比較例の各透明耐透湿性フイルムにつき、以下の特性試験を行つた。結果は、後記の第1表に示されるとおりであつた。」(3ページ左下欄11行?4ページ左上欄14行)
・摘示事項4-f:
「第1表(審決注:省略)」(4ページ左下欄)
(「可視光線透過率(%)」の欄は、実施例1ないし3、比較例1ないし3は「83」、「84」である。)

カ 刊行物5に記載された事項
・摘示事項5-a:
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリエチレンテレフタレートフイルムの下面に、透明な蒸着膜を蒸着し、更に上記透明な蒸着膜の下面に、上面を明色に、下面を暗色に着色したポリエチレンフイルムを溶着又は接着して積層シートを形成し、上記積層シートにより、そのポリエチレンテレフタレートフイルム側を外側にして袋体を形成したことを特徴とする袋。

【請求項6】 上記透明な蒸着膜は、酸化アルミニウム系蒸着膜であることを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1項記載の袋。
【請求項7】 上記透明な蒸着膜は、酸化ケイ素系蒸着膜であることを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1項記載の袋。」
・摘示事項5-b:
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遮光性に優れ、且つ酸素、湿気等に対して高度のバリアー性を有し、しかも環境に優しい袋に関する。」
・摘示事項5-c:
「【0009】上記積層シートにおけるポリエチレンテレフタレートフイルムは、透明性が良好で、ガス,湿気に対するバリアー性を有する。そして、そのポリエチレンテレフタレートフイルムにおける下面や上下両面又は上面に、透明な蒸着膜(酸化アルミニウム系蒸着膜又は酸化ケイ素(シリカ)系蒸着膜)を形成したものは、透明性及びバリアー性が一層高くなる。…」
・摘示事項5-d:
「【0026】また、上記積層シートAに使用した各フイルムのガス,湿気に対するバリアー性の物性は表2の通りである。
【表2】(審決注:省略)
注.バリアー性能
1.酸化アルミニウム蒸着PETフイルム/ドライ/L-LDPE(60ミクロン)

水蒸気透過率 g/m^(2) 24hrs 40℃ 90%RH
2.酸化ケイ素蒸着PETフイルム/ドライ/L-LDPE(60ミクロン)

水蒸気透過率 g/m^(2) 24hrs 40℃ 90%RH
…」
(表2の「酸化アルミニウム蒸着PETフイルム」及び「酸化ケイ素(シリカ)蒸着PETフイルム」の「水蒸気透過率」の値はそれぞれ「0.6」、「0.9」である。)

(3) 刊行物1に記載された発明
刊行物1は、「セルロースアセテート系フィルム基材の一面に防湿層が設けられ、他面に直接もしくは間接的に粘着剤層が設けられてなることを特徴とするグリーンシート用表面保護フィルム」(摘示事項1-a)に関し記載するものであって、実施例1(摘示事項1-f)に、
「厚さ25μmのトリアセチルセルロースフィルム(…)からなる基材の一面に、ポリ塩化ビニリデンの溶液をグラビアコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥させ、厚さ2μmの防湿層を形成した。次いで、上記基材の他の面に、上記粘着剤をコンマコーターで塗布し、100℃で30秒間乾燥させ、厚さ5μmの粘着剤層を形成した。更に、上記粘着剤層の表面に、シリコーン離型処理した厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(…)の離型処理面を当接して貼り合わせてグリーンシート用表面保護フィルムを作製した。」
と、その一例の保護フィルムが記載されており、そのフィルムの透湿度は、「60g/m^(2)・24hr」(摘示事項1-h)であることが記載されている。
そうすると、刊行物1には、
「厚さ25μmのトリアセチルセルロースフィルムからなる基材の一面に、
ポリ塩化ビニリデンからなる乾燥後厚さ2μmの防湿層を形成し、
次いで、上記基材の他の面に、乾燥後厚さ5μmの粘着剤層を形成してなる、
グリーンシート用表面保護フィルムであって、
透湿度が、60g/m^(2)・24hrである、
グリーンシート用表面保護フィルム。」
の発明(以下、「引用発明」という)が記載されているといえる。

(4) 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ポリ塩化ビニリデンからなる乾燥後厚さ2μmの防湿層」、「乾燥後厚さ5μmの粘着剤層」は、それぞれ、本件補正発明の「防湿処理層」、「粘着剤層」に相当し、引用発明の「トリアセチルセルロース」は熱可塑性樹脂であり通常透明であると認められるから、引用発明の「厚さ25μmのトリアセチルセルロースフィルムからなる基材」は本件補正発明の「透明な熱可塑性樹脂フィルム層」に相当する。
そして、引用発明の「粘着剤層」は、「上記基材の他の面に」形成されている、」すなわち「防湿層」の設けられたのと別の面に形成されているものであるから、本件補正発明の「粘着剤層は前記熱可塑性樹脂フィルム層に備えられ」ているのと同じであるといえる。
そして、引用発明の「グリーンシート用表面保護フィルム」は、「防湿層」、「粘着層」を有し、構成層の材料などからみて透明であると認められるから、「防湿透明粘着」フィルムであるといえ、その「ロール状に捲重して長尺のフィルムとして保管」(摘示事項1-e)する「長尺のフィルム」という態様は「テープ状」といえる。
また、長尺のフィルムの態様の引用発明の「グリーンシート用表面保護フィルム」は、本件補正発明の「防湿透明粘着テープ」に相当するといえる。
そうすると、本件補正発明は、引用発明と、
「透明な熱可塑性樹脂フィルム層の片面に防湿処理層を備えた基材層に、
粘着剤層が備えられた防湿透明粘着テープであって、
前記粘着剤層は前記熱可塑性樹脂フィルム層に備えられた、
防湿透明粘着テープ」
において一致するが、次のA,Bの点において一応相違するといえる(以下、「相違点A」、「相違点B」という。)。

A 本件補正発明においては、「防湿処理層」が、「セラミックコート処理層からな」るものであり、テープの「透湿度」が「1.0g/m^(2)・24hr以下」であるのに対して、引用発明においては、「防湿層」が、「ポリ塩化ビニリデンからな」るものであって、フィルムの「透湿度」が、「60g/m^(2)・24hr」である点
B 本件補正発明においては、テープの「透明性」が「全光線透過率70.0%以上」であるのに対して、引用発明においては、その率は明らかではない点

(5) 相違点についての検討
ア 相違点Aについて
包装や保護フィルムの分野において、例えば、刊行物3の「従来の技術」の欄(摘示事項3-b)にもあるとおり、「透明でかつ耐透湿性にすぐれたフイルム材料の使用が望まれている」ところ、「従来公知のこの種のフイルム材料は、ポリエチレンテレフタレートやポリ塩化ビニルなどの各種プラスチックをフイルム基材として使用したものであるが、多くの場合耐透湿性が不足する」ことが知られており、耐透湿性の改善のために、「基材フイルム上に、珪素化合物やマグネシウム酸化物などの薄膜を形成する工夫がなされている」ことも知られている。
引用発明のフィルムも、外部(環境)からの湿分の侵入を阻止するものであって、そのために「防湿層」を設けるものであるから、その機能からすれば「防湿層」は湿分侵入阻止の程度がより高いものが望ましいことは明らかである。そうすると、「防湿層」としてより耐透湿性が高いことが知られたもの、例えば、刊行物2ないし5において使用される珪素酸化物などのセラミックコート層を使用することは、当業者が必要に応じ適宜なし得ることといえる。
そしてそのフィルムの「透湿度」は、そのコート層の耐透湿性が、摘示事項5-dによれば、「酸化アルミニウム」、「酸化ケイ素(シリカ)」の蒸着PETフィルムの「水蒸気透過率」(g/m^(2)・24hrs)の値はそれぞれ「0.6」、「0.9」であることから、「1.0g/m^(2)・24hr以下」であると認められる。
よって、引用発明において、「防湿層」を「セラミックコート処理層からな」るものとしその結果「透湿度」が「1.0g/m^(2)・24hr以下」のものとすることは、当業者が必要に応じ適宜なし得ることといえる。

イ 相違点Bについて
引用発明の保護フィルムの構成層の材料や厚さ、さらに透過率を低下させる事情もないことから、刊行物2ないし4のフィルムと同等程度の透過率(80%超。なお、刊行物2の比較例3の値は「76」であるが、「珪素酸化物からなる第一層の厚さを6000Å」(摘示事項2-e)と厚く、「着色」(摘示事項2-c)して低下したものと認められる。)であるか、少なくとも70%以上であると認められる。
そうすると、相違点Bは、両者の実質的な相違であるとはいえない。

(6) 本件補正発明の効果について
本件補正明細書には、本件補正発明の効果について、
「【0031】…被着体に貼付した場合でも粘着テープを通して被着体表面や被着体内部並び貼付位置を容易に観察することができる。…しかも保存中には、筐体内部に湿気が入り込まず、製品の劣化を防止できる。」
と記載されている。
しかしながら、引用発明にセラミックコート処理層適用したフィルムが、防湿性及び透明性に優れている、ということは、刊行物1?刊行物5に記載から予期できるところであることはすでに述べたところであるから、本件補正発明のこの効果は、当業者が予期し得ない顕著な効果であるとは認められない。
さらに、本件補正明細書には、
「【0032】このとき、粘着剤層は樹脂フィルム層に備えるのがよく、この場合、樹脂フィルム層に直接粘着剤層を備えることになるので、防湿処理層の種類に関係なくほとんど同じ製造条件の下で粘着剤層を形成できる。しかも、実績のある熱可塑性樹脂フィルム層にあった粘着剤層をそのまま適用できる。このため、製造工程の管理が簡便になり、至極簡単に防湿性及び透明性に優れた粘着テープを提供できる。また、防湿処理層に粘着剤層を備える時のように特別な工程を経る必要がない。」
と記載されている。
しかしながら、引用発明も、「粘着剤層は樹脂フィルム層に備える」ものであって上記効果を当然に奏するものであり、この効果を格別顕著な効果であるということはできない。

(7) まとめ
以上検討したところによれば、本件補正発明は、その出願前日本国内において頒布された刊行物1に記載された発明、及び、刊行物1?刊行物5の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
したがって、請求項1についての補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、上記補正を含む本件補正は、その余を検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成20年6月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願に係る発明は、平成20年3月21日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、下記のとおりのものである。
「透明な熱可塑性樹脂フィルム層の片面に防湿処理層を備えた基材層に、粘着剤層が備えられた防湿透明粘着テープであって、
前記粘着剤層は前記熱可塑性樹脂フィルム層に備えられ、
全光線透過率が70.0%以上、
透湿度が1.0g/m^(2)・24hr以下
であることを特徴とする防湿透明粘着テープ。」

第4 原査定の理由
原査定は、「この出願については、平成20年 1月21日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。」というものであり、その「理由1」は、
「1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。
その理由における「下記の請求項」とは、全請求項である1ないし4であり、「下記の刊行物」は、次の1から5であり、その論理は主たる引用刊行物を引用文献5とし、引用文献1?4記載の発明を組み合わせて全請求項に係る発明が容易想到である、というものであると認められる。

1 特開平04-070330号公報
2 特開平03-239536号公報
3 特開平03-239537号公報
4 特開2001-146240号公報
5 特開平09-165560号公報
上記引用文献1ないし5は、それぞれ前記第2の3(2)の項における「刊行物2」,「刊行物3」,「刊行物4」,「刊行物5」,「刊行物1」である。以下、これらの刊行物を、同様に「刊行物2」,「刊行物3」,「刊行物4」,「刊行物5」,「刊行物1」という。)

第5 当審の判断
当審は、本願発明1は、原査定の理由のとおり、特許を受けることができないものであると考える。

1 刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明
刊行物1?刊行物5の記載事項は、前記第2の3(2)の「イ」?「カ」に記載したとおりであり、刊行物1に記載された発明は、同(3)に記載したとおりである(以下、その発明を、同様に「引用発明」という。)。

2 対比・検討
本願発明1は、前記第2の1の項に記載したとおり、本件補正発明の「防湿処理層」の限定事項である「セラミックコート処理層からなる」という事項がないものである。
そうすると、本願発明1の構成要件を全て含みさらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3の項に記載したとおり、刊行物1に記載された発明、及び、刊行物1?刊行物5の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1は、同様の理由により、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるといえる。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1は特許を受けることができないものであるから、その余を検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-04 
結審通知日 2011-07-06 
審決日 2011-07-20 
出願番号 特願2002-38064(P2002-38064)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C09J)
P 1 8・ 575- Z (C09J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 泰之  
特許庁審判長 柳 和子
特許庁審判官 橋本 栄和
小出 直也
発明の名称 防湿透明粘着テープ  
代理人 志村 尚司  

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