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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47L
管理番号 1242741
審判番号 不服2010-18674  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-19 
確定日 2011-09-02 
事件の表示 特願2008-82010号「電気掃除機」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月15日出願公開、特開2009-233051号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成20年3月26日の出願であって、平成22年5月14日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年5月19日)、これに対し、同年8月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成22年8月19日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年8月19日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に「電動送風機を収容した掃除機本体と、この掃除機本体に設けられた集塵装置とを備え、前記集塵装置は、平面状に形成され、上側が上流側へと傾斜したメッシュ状の濾過フィルタと、この濾過フィルタの上方にて、この濾過フィルタの上流側面に対して0°より大きく45°以下の角度で吸込風を直線状に吸い込んで直接当てる位置に設けられた吸気口とを備えていることを特徴とした電気掃除機。」とあったものを「電動送風機を収容し管部が接続される掃除機本体と、この掃除機本体に設けられた集塵装置とを備え、前記集塵装置は、平面状に形成され、上側が上流側へと傾斜したメッシュ状の濾過フィルタと、この濾過フィルタの上方に筒状に設けられ、この濾過フィルタの上流側面に対して0°より大きく45°以下の角度に沿って中心軸を有するとともに、前記管部を通過した吸込風を直線状に吸い込んで前記濾過フィルタの上流側面に直接当てる位置に配置された吸気口とを備えていることを特徴とした電気掃除機。」と補正することを含むものである。
上記補正について検討する。
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、掃除機本体について、「管部が接続される」ことを限定し、吸気口について、本件補正前に「この濾過フィルタの上方にて、この濾過フィルタの上流側面に対して0°より大きく45°以下の角度で吸込風を直線状に吸い込んで直接当てる位置に設けられた」とあったものを「この濾過フィルタの上方に筒状に設けられ、この濾過フィルタの上流側面に対して0°より大きく45°以下の角度に沿って中心軸を有するとともに、前記管部を通過した吸込風を直線状に吸い込んで前記濾過フィルタの上流側面に直接当てる位置に配置された」と限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2.刊行物に記載された発明
(1)原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-181154号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a)「【請求項1】
吸気口と、第1の排気口と、第2の排気口を有し、ヘッドからホースを介して塵埃を含む空気を前記吸気口から吸引し、内部に前記塵埃を集塵する集塵庫と、
前記集塵庫内を傾斜をもって上流側と下流側に区画するように設置され、前記吸気口から吸気された前記塵埃を含む空気をフィルタリングし、その通過空気が前記第1の排気口に向かって排出される傾斜フィルタと、
前記集塵庫内の前記下流側に設けられ、前記吸引動作を行うファン装置と、
前記集塵庫内の前記上流側に設けられ、前記傾斜フィルタの傾斜に沿って吸引された前記塵埃を含む空気が流れ込み、前記塵埃を集積するダストカップと、
前記ダストカップ内の前記第2の排気口側に設けられ、前記塵埃を含む空気をフィルタリングし、その通過空気が前記第2の排気口に向かって排出される圧縮フィルタとを
有することを特徴とする掃除機。」(【特許請求の範囲】。下線は、当審にて付与。以下同様。)
b)「【技術分野】
本発明は、例えば、サイクロン式掃除機などの掃除機に関する。
【背景技術】
従来のサイクロン式掃除機の具体的な構成を、図8を用いて説明する。ホースにつながっているヘッドからファンモータ(図示せず。)で吸引した塵埃を含む空気は、吸気口101から渦巻状の形状をした旋回室102へと流し込まれる。そして、旋回室102では遠心力を利用して、軽い空気と塵埃を含む重い空気とに分離される。分離された軽い空気は、吸気用フィルタ103を通過し、排気口104へと導かれる。一方、分離された塵埃を含む重い空気は、旋回室102を旋回し、ダストカップ105内へ運ばれる。重い空気に含まれる塵埃は、排気口104へ引き寄せられるように進み、圧縮フィルタ106に捕獲される。これら吸気排出が連続して行われることにより、重い空気に含まれる塵埃は圧縮フィルタ106で圧縮堆積される(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、従来のサイクロン式掃除機では、旋回室は複雑な流れの通路を形成しているため圧力損失が大きく、そのため吸引力が低くなるという問題があった。また、旋回室を有しているため掃除機が大型化するという問題があった。
【特許文献1】特開2003-325400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来のサイクロン式掃除機は、複雑な経路であることから空気の流れの圧力損失が高く、吸入力が低い、また旋回室が設けられていることから集塵庫が大型となる問題があった。
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、吸引力が大幅に高く、且つ小型形状の掃除機を提供することを目的とする。」(段落【0001】?【0005】)
c)「【実施例1】
本発明に係る掃除機の第1の実施形態を図1乃至図3を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る掃除機の外観を示す概略図である。
掃除機1は、本体4にヘッド2がホース3を介して設けられている。また、本体4には本体を移動可能とする左右の車輪4aと、商用電源と接続するための電源コード4bが設けられている。ホース3は、長筒部3b、蛇腹部3cで構成されており、蛇腹部3cは変形自在に動かすことが可能である。ホース3のハンドル部には、ホース先端に取り付けられるヘッド2内のローラを回転させると共に、本体4内のモータ電源のON/OFFを可能とする操作部3aが設けられている。
図2は、本体4内に設置された集塵庫5の断面図である。また図3は、本体4内に設置された集塵庫5の蓋体を開いた断面図である。
集塵庫5は、上面壁5aと、この上面壁5aに対面する底面壁5bと、長手方向の右側面を形成する右側面壁5cと、長手方向の左側面を形成する左側面壁5dと、正面を形成正面壁と(図示せず)、奥面を形成する奥壁と(図示せず)で囲われた略直方体形状に形成されている。右側面壁5cには吸気口6が設けられ、ホース3の蛇腹部3cと連結されている。また、左側面壁5dには第1の排気口である排気口15が設けられている。
集塵庫5内には、傾斜フィルタ7が集塵庫5内を上流側5A、下流側5Bに区画するように設けられている。この傾斜フィルタ7は、右側面壁5cから左側面壁5dに向かって所定の角度で傾き、上端部は集塵庫5の上面壁5aに係合し、下端部は集塵庫5の底面壁5bから突出している凸状の壁13と係合している。この凸状の壁13は、例えばプラスチックのような気体を通さない材質で構成され、底面壁5bから例えば垂直に形成されている。」(段落【0010】?【0015】)
d)「ここで図1および図2を用いて、第1の実施形態に係わる掃除機の動作を説明する。
本体4の後部に設けられた電源コード4bを商用電源のコンセント(図示せず)に挿入し、操作部3aの電源スイッチをONの状態にする。すると、ファン装置14が回転駆動することにより、ヘッド2から塵埃sを含む空気が吸い込まれ、ホース3を通り吸気口6から集塵庫5へと吸い込まれる。
吸気口6に吸い込まれた塵埃sを含む吸い込み空気は、矢印Aから第1の流路8を通り傾斜フィルタ7に運ばれる。そして、この傾斜フィルタ7に当った空気は、傾斜フィルタ7を通過することによって塵埃sが除去(フィルタリング)され、矢印Bに示す第2の流路9に流れるものと、傾斜フィルタ7に沿って矢印Cの第3の流路10に流れるものとに分かれる。この時、第3の流路10には塵埃sの大半が流れる。
矢印C方向の空気の流れは、第3の流路10の下流に流れる過程で傾斜フィルタ7から矢印Dの第2の流路9にも流れ込み、流量が減少する。しかし、ここでは第3の流路10の幅が下流に行くにつれて小さくする形状にしているため、流速が維持され塵埃sを下流まで導くことが可能となる。」(段落【0020】?【0023】)
e)上記cの記載事項及び【図2】の図示内容によると、傾斜フィルタ7が平板状で、上側が吸気口6側へと傾斜していることが示されている。

上記a?dの記載事項、上記eの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「回転駆動するファン装置14が設置され、ヘッド2がホース3を介して設けられている本体4と、
本体4内に設置された集塵庫5とを備え、
集塵庫5内には、塵埃sを含む吸い込み空気を、通過させて、塵埃sが除去された第2の流路9に流れるものと、沿わせて、第3の流路10に流れるものとに分ける、平板状で、右側面壁5cから左側面壁5dに向かって所定の角度で傾くことにより、上側が吸気口6側へと傾斜した傾斜フィルタ7と、傾斜フィルタ7の吸い込み側に設けられ、塵埃sを含む空気をホース3を通して集塵庫5へと吸い込み、傾斜フィルタ7に当てる吸気口6とが設けられる掃除機1。」

(2)原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-185570号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a)「【請求項1】
塵とともに吸込まれた空気を電動送風機に導く吸込み風路中に設けられ、吸込まれた含塵空気を塵と空気とに分離するとともに分離された塵を溜める塵処理手段を備え、
この塵処理手段が、集塵室と、この集塵室に含塵空気を導入する導入部と、この導入部から含塵空気が斜めに吹付けられるように前記集塵室に臨んで設けられ含塵空気をろ過して前記集塵室に溜められる塵と前記吸込み風路を流れる空気とに分離するフィルタとを備えている電気掃除機。」(【特許請求の範囲】)
b)「【技術分野】
本発明は、含塵空気をろ過するフィルタを有した塵処理手段を備えた電気掃除機に関する。」(段落【0001】)
c)「図1中符号1で示す例えばキャニスタ型の電気掃除機は、床面を走行可能な掃除機本体2と、吸込風路体3とを備えている。」(段落【0009】)
d)「第1フィルタ33は、集塵室31に吸込まれた含塵空気をろ過して集塵室31に溜められる塵と第1フィルタ33の下流側の吸込み風路を流通する空気とに分離するものである。この第1フィルタ33は、図4?図6に示すように表裏両面を集塵室31及び排気ケース部42内に個別に臨ませて本体ケース部41の後端開口に取付けられている。この第1フィルタ33は平らな濾材、例えばナイロンネットで作られていて、立てて設けられている。なお、第1フィルタ33は排気ケース部42の入口をなす前端開口に取付けてもよい。」(段落【0020】)
e)「こうした吸込みに伴う塵処理装置24での除塵について説明する。
延長管22を通って導入部34に導入された含塵空気は、導入部34の軸方向に沿って図4中矢印A方向に流動するので、その直進を出口部34bの方向変換壁34b1で遮られるとともに、この方向変換壁34b1で流動方向を第1フィルタ33に向けて変換された後、図4中矢印Bで示すように出口34b2を通って第1フィルタ33に対して好ましくは45°以下の入射角θで斜めに吹付けられる。この吹付け下での第1フィルタ33のろ過作用によって、図4中符号Cで示すように第1フィルタ33を通過し排気ケース部42を介して吸塵ホース21の握り部27に吸込まれる空気と、第1フィルタ33で通過を妨げられるが塵とが分離される。
この場合、既述のように含塵空気が第1フィルタ33の表面(上流側の面)に斜めに吹付けられた含塵空気の一部は、第1フィルタ33の表面に沿って底蓋43に向けて流動した後に、底蓋43に沿って集塵室31の次第に狭くなっている前端部側に流動する(この流動方向を図4及び図5中に矢印Dで示す。)。こうした集塵室31内での空気の動きによって、第1フィルタ33の表面に吸付けられた塵を集塵室31の前端部に吹き寄せることができる。
このように導入部34から集塵室31に導かれる含塵空気の勢いを利用して第1フィルタ33の表面の塵を吹き払うので、第1フィルタ33の表面への塵の堆積の進行を抑制できる。これにより、第1フィルタ33が目詰まり状態となることが抑制されて、所定量の空気を第1フィルタ33に通過させる機能を持続できるので、電気掃除機1の吸込み仕事率の低下を抑制できる。」(段落【0028】?【0031】)
f)上記d、eの記載事項及び【図4】の図示内容によると、導入部34の出口34b2が第1フィルタ33の上方に設けられることが示されている。

上記a?eの記載事項、上記fの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物2には、次の発明が記載されていると認められる。
「塵とともに吸込まれた空気を電動送風機に導く吸込み風路中に設けられ、吸込まれた含塵空気を塵と空気とに分離するとともに分離された塵を溜める塵処理手段を備え、
この塵処理手段が、集塵室と、集塵室に臨んで設けられ含塵空気をろ過して集塵室に溜められる塵と吸込み風路を流れる空気とに分離する、ナイロンネットで作られる平らな濾材からなる第1フィルタ33と、集塵室に含塵空気を導入する導入部34に、第1フィルタ33の上方に設けられ、含塵空気を通して第1フィルタ33の上流側の面に対して45°以下の入射角θで斜めに吹付ける、出口34b2とを備えている電気掃除機。」

3.対比
本件補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「回転駆動するファン装置14」は、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「電動送風機」に相当し、以下同様に、
「ヘッド2がホース3を介して設けられている本体4」は「管部が接続される掃除機本体」に、
「集塵庫5」は「集塵装置」に、
「平板状で、右側面壁5cから左側面壁5dに向かって所定の角度で傾くことにより、上側が吸気口6側へと傾斜した傾斜フィルタ7」は「平面状に形成され、上側が上流側へと傾斜した」「濾過フィルタ」に、
「掃除機1」は「電気掃除機」に、
それぞれ相当する。
そして、刊行物1に記載された発明の「傾斜フィルタ7の吸い込み側に設けられ、塵埃sを含む空気をホース3を通して集塵庫5へと吸い込み、傾斜フィルタ7に当てる吸気口6」と、本件補正発明の「濾過フィルタの上方に筒状に設けられ、この濾過フィルタの上流側面に対して0°より大きく45°以下の角度に沿って中心軸を有するとともに、前記管部を通過した吸込風を直線状に吸い込んで前記濾過フィルタの上流側面に直接当てる位置に配置された吸気口」とは、前者において、塵埃sを含む空気は、吸気口6から傾斜フィルタ7の吸い込み側の面に直接当てられるものであるから、両者は、「濾過フィルタの上流側に設けられ、管部を通過した吸込風を吸い込んで濾過フィルタの上流側面に直接当てる位置に配置された吸気口」である点で共通する。

したがって、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「電動送風機を収容し管部が接続される掃除機本体と、この掃除機本体に設けられた集塵装置とを備え、前記集塵装置は、平面状に形成され、上側が上流側へと傾斜した濾過フィルタと、濾過フィルタの上流側に設けられ、管部を通過した吸込風を吸い込んで濾過フィルタの上流側面に直接当てる位置に配置された吸気口とを備えている電気掃除機。」

[相違点1]
平面状に形成された濾過フィルタが、本件補正発明では、メッシュ状であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、メッシュ状であるか否か不明である点。

[相違点2]
吸気口が、本件補正発明では、濾過フィルタの上方に筒状に設けられ、この濾過フィルタの上流側面に対して0°より大きく45°以下の角度に沿って中心軸を有するとともに、管部を通過した吸込風を直線状に吸い込んで前記濾過フィルタの上流側面に直接当てる位置に配置されているのに対して、刊行物1に記載された発明では、傾斜フィルタ7の吸い込み側に設けられ、塵埃sを含む空気をホース3を通して集塵庫5へと吸い込み、傾斜フィルタ7に当てる点。

4.当審の判断
(1)上記相違点1について
電気掃除機の技術分野において、濾過フィルタを平面状に形成されたメッシュ状のもので形成することは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、刊行物2に記載された発明のナイロンネットで作られる第1フィルタ33を参照。)。
したがって、刊行物1に記載された発明の傾斜フィルタ7に、上記周知の技術事項を適用して、メッシュ状の傾斜フィルタ7とすることは当業者が容易になし得たものである。

(2)上記相違点2について
本件補正発明と刊行物2に記載された発明とを対比する。
刊行物2に記載された発明の「電気掃除機」は、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「電気掃除機」に相当する。
そして、刊行物2に記載された発明の「塵とともに吸込まれた空気を電動送風機に導く吸込み風路中に設けられ、吸込まれた含塵空気を塵と空気とに分離するとともに分離された塵を溜める塵処理手段を備え」ることと、本件補正発明の「電動送風機を収容し管部が接続される掃除機本体と、この掃除機本体に設けられた集塵装置とを備え」ることとは、前者において、塵処理手段は、電気掃除機の吸込み風路中に設けられるものであるのに対して、後者において、集塵装置は、掃除機本体に設けられるものであるから、両者は、「掃除機に設けられた集塵装置」である点で共通し、以下同様に、
刊行物2に記載された発明の「集塵室に臨んで設けられ含塵空気をろ過して集塵室に溜められる塵と吸込み風路を流れる空気とに分離する、ナイロンネットで作られる平らな濾材からなる第1フィルタ33」と本件補正発明の「平面状に形成され、上側が上流側へと傾斜したメッシュ状の濾過フィルタ」とは、「平面状に形成されたメッシュ状の濾過フィルタ」である点で、
刊行物2に記載された発明の「第1フィルタ33の上方に設けられ、含塵空気を通して第1フィルタ33の上流側の面に対して45°以下の入射角θで斜めに吹付ける、出口34b2」と本件補正発明の「濾過フィルタの上方に筒状に設けられ、この濾過フィルタの上流側面に対して0°より大きく45°以下の角度に沿って中心軸を有するとともに、管部を通過した吸込風を直線状に吸い込んで濾過フィルタの上流側面に直接当てる位置に配置された吸気口」とは、「濾過フィルタの上方に設けられ、この濾過フィルタの上流側面に対して0°より大きく45°以下の角度に、濾過フィルタの上流側面に直接当てる位置に配置された吸気口」である点で、
それぞれ共通する。
したがって、刊行物2に記載された発明は、
「掃除機に設けられた集塵装置は、平面状に形成されたメッシュ状の濾過フィルタと、濾過フィルタの上方に設けられ、この濾過フィルタの上流側面に対して0°より大きく45°以下の角度に、濾過フィルタの上流側面に直接当てる位置に配置された吸気口とを備えている電気掃除機。」と言い換えることができる。
そして、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とは、共に、集塵装置内のフィルタにより、含塵空気を、塵を含む空気と塵を含まない空気とに分離するという共通の機能を有する電気掃除機という共通の技術分野に属するものである点で共通する。
また、電気掃除機の集塵装置の技術分野において、フィルタの上方に、中心軸を有するとともに、管部を通過した吸込風を直線状に吸い込む、筒状の吸気口を集塵装置に設けることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開昭62-114518号公報の短い円筒形状の筒状挿入部20や、特開昭62-117517号公報の中心軸が上方へ向って前方へ傾斜した円筒形状の通風口19を参照。)。
これらのことから、刊行物1に記載された発明の吸気口6に、刊行物2に記載された発明の出口34b2の構成を適用するとともに、適用に際して、上記周知の技術事項に倣って、出口34b2を、中心軸を有する筒状とし、吸い込み風を直線状に吸い込むようにして、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項に到達することは、当業者が容易になし得たものである。

(3)小括
本件補正発明の奏する効果は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
したがって、本件補正発明は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
ゆえに、本件補正発明は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成22年8月19日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年3月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「電動送風機を収容した掃除機本体と、この掃除機本体に設けられた集塵装置とを備え、前記集塵装置は、平面状に形成され、上側が上流側へと傾斜したメッシュ状の濾過フィルタと、この濾過フィルタの上方にて、この濾過フィルタの上流側面に対して0°より大きく45°以下の角度で吸込風を直線状に吸い込んで直接当てる位置に設けられた吸気口とを備えていることを特徴とした電気掃除機。」

2.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、刊行物の記載事項及び刊行物に記載された発明は、前記「第2.[理由]2.刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

3.対比および判断
本願発明は、前記「第2.[理由]」において検討した本件補正発明において、掃除機本体について、「管部が接続される」との限定を省き、吸気口について、「この濾過フィルタの上方に筒状に設けられ、この濾過フィルタの上流側面に対して0°より大きく45°以下の角度に沿って中心軸を有するとともに、前記管部を通過した吸込風を直線状に吸い込んで前記濾過フィルタの上流側面に直接当てる位置に配置された」とあったものを「この濾過フィルタの上方にて、この濾過フィルタの上流側面に対して0°より大きく45°以下の角度で吸込風を直線状に吸い込んで直接当てる位置に設けられた」とその限定を省くものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2.[理由]3.対比および4.当審の判断」に記載したとおり、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-30 
結審通知日 2011-07-06 
審決日 2011-07-20 
出願番号 特願2008-82010(P2008-82010)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47L)
P 1 8・ 575- Z (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長馬 望五十嵐 康弘  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長崎 洋一
稲垣 浩司
発明の名称 電気掃除機  
代理人 樺澤 聡  
代理人 樺澤 襄  
代理人 樺澤 聡  
代理人 樺澤 襄  
代理人 樺澤 聡  
代理人 樺澤 襄  

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