• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1242770
審判番号 不服2009-5116  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-09 
確定日 2011-09-08 
事件の表示 特願2005-228011「周辺電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 2月15日出願公開、特開2007- 42015〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成17年8月5日の出願であって,平成20年11月18日付けの拒絶理由通知に対して,平成21年1月15日に意見書の提出とともに手続補正がなされ,平成21年2月3日付けで拒絶査定され,これに対し,平成21年3月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成22年12月14日付けで平成21年7月7日付けの前置報告書を援用した審尋がなされ,平成23年2月16日付けで回答がなされたものである。

2.平成21年3月9日の手続補正及び本願発明について

(1)手続補正について
平成21年3月9日の手続補正(以下「本件補正」という。)により,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1?請求項11に係る発明は,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?請求項10に係る発明に補正された。

(2)本件補正の目的について
本件補正の目的について以下に検討する。
ア 審判請求人の主張
審判請求人の主張は以下のとおりである。
「1.補正の根拠
特許請求の範囲の請求項1は,補正前の請求項1に記載の発明に,補正前の請求項2に記載の発明を組み込んだものです。また,補正前の請求項2を請求項1に組み込むことにより,補正前の請求項3から補正前の請求項11に記載の発明を,請求項2から請求項10に繰り上げる補正を行いました。また,特許請求の範囲の補正にあわせて,明細書についても形式的に補正しました。
したがって,これらの補正は,いずれも補正の要件を満たすものです。」
イ 当審の判断
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?請求項10に係る発明は,それぞれ本件補正前の特許請求の範囲の請求項2?請求項11に係る発明に対応するといえることから,本件補正前の請求項1に係る発明は削除されたものである。
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。

(3)本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,本件補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「複数の通信インターフェースを備え,各通信インターフェースにおいて互いに異なる通信ネットワークに接続可能とされ,自身に搭載された機能を該通信ネットワークに接続された端末装置からの指令に基づいて使用可能とされた周辺電子機器であって,
前記通信インターフェースと,その通信インターフェースに対する使用可能とするべき機能種別を特定する第1機能制限情報と,その第1機能制限情報により特定される機能を使用する場合における使用制限内容を特定する第2機能制限情報と,を対応付けて記憶する機能制限設定情報記憶手段と,
前記端末装置から機能の使用に係る接続があった場合に,接続された前記通信インターフェースを特定する接続特定手段と,
接続が特定された通信インターフェースに対し,当該接続に係る機能が使用可能な機能種別とされているか否かを,前記機能制限設定情報記憶手段に記憶された第1機能制限情報に基づいて特定し,使用可能な機能種別でない場合には該機能の使用を拒否する一方,使用可能な機能種別である場合には該機能の使用を許可する第1機能実行制御手段と,
該機能の使用が許可された場合に,該機能を使用するために前記端末装置から受信したデータの使用制限内容を,前記機能制限設定情報記憶手段に記憶された第2機能制限情報に基づいて特定し,前記端末装置から受信したデータのうち前記使用可能範囲外のデータについては,当該データについて機能を実行せずに削除することにより,該機能の使用を,特定された使用制限内容により定まる使用可能範囲内に限って許可する第2機能実行制御手段と,
を備えることを特徴とする周辺電子機器。」

3.原査定の拒絶の理由について

(1)拒絶理由について
原査定の拒絶理由の概要は,以下のとおりである。
『この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

1.【請求項1?13】に関して
引用文献1(【図13】等)や引用文献2(【0030】等)などに記載されているように,複数の通信インターフェースを備え,通信インターフェースに対応した機能制限を行うことは当該技術分野において周知の技術にすぎず,特に引用文献2には画像印刷機能を制限することについて記載されている。
また,必要に応じてユーザ認証等の周知の技術を組み合わせることにも格別の困難性は認められない。
したがって,【請求項1?13】に係る発明は,引用文献1?2に記載された発明に対して進歩性が認められない。
拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。
引 用 文 献 等 一 覧
1.特表2004-530968号公報
2.特開平11-194913号公報』

(2)拒絶査定について
原査定の拒絶査定の概要は,以下のとおりである。
『この出願については,平成20年11月18日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって,拒絶をすべきものです。
なお,意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
(周知文献1)特開2004-289302号公報
(周知文献2)特開平11-102148号公報
出願人は,補正後の本願各請求項に関して,第1機能制限情報(端末装置から要求された機能の使用可否に関する制限)および第2機能制限情報(機能を実際に使用するときに受ける制限)により複数段階の機能制限が設定されるよう構成されている点において,新規性進歩性を主張している。
しかしながら,各種機器における機能制限の態様として,周知文献1(【0007】等)や周知文献2(【0024】等)などに記載されているように,第1機能制限情報(コピー機能,プリンタ機能等の機能単位での制限)と第2機能制限情報(カラー印刷を許可するか等)という複数段階により制限を行うことは,周知の技術にすぎず,引用文献1?2などにおいても同様の複数段階の機能制限を設けることは当業者が適宜なしうる事項にすぎない。
したがって,出願人の上記主張は採用できず,本願【請求項1?11】に係る発明は,依然として引用文献1?2に記載された発明に対して進歩性が認められない。』

4.当審の判断

4-1.引用例について

(1)引用例発明について
原査定の拒絶理由で引用文献2として引用した特開平11-194913号公報(以下「引用例」という。)には,図面とともに以下のことが記載されている。(以下「引用例摘記事項」という。)
(ア)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,ネットワークプリンタに関する。」
(イ)「【0013】
【発明の実施の形態】次に添付図面を参照して本発明によるネットワークプリンタの実施の形態を詳細に説明する。図1?図5を参照すると本発明のネットワークプリンタの実施形態が示されている。図1に本実施形態のネットワークプリンタの構成のブロック図を示す。
【0014】図1において,1は外部装置,2はネットワークプリンタ,31はネットワーク1,32はネットワーク2である。外部装置は,ユーザが操作する端末装置である。ネットワークプリンタは,外部装置からの印刷要求を受けて印刷出力する装置である。ネットワーク1及び2は,外部装置とネットワークプリンタを接続する。
【0015】また,図1においてネットワークプリンタ2は以下で構成される。201はネットワークインターフェイス1,202はネットワークインターフェイス2,203はMPU(マイクロプロセッサ)204は記憶部,205は印刷エンジン,206は印刷エンジンインターフェイス,207は内部バスである。本実施形態ではネットワークインターフェイスを2つ有する例を示しているが,本発明の範囲はネットワークインターフェイスの数は2つに限らない。
【0016】ネットワークインターフェイス1はネットワーク1(31)とネットワークプリンタ2の内部バス207とを接続する。ネットワークインターフェイス2はネットワーク2(32)とネットワークプリンタ2の内部バス207とを接続する。MPUはネットワークプリンタを制御する。記憶部はプログラムやデータを記憶する。印刷エンジンは印刷機能を主として扱う部分である。印刷エンジンインターフェイスは印刷エンジンと内部バスとを接続する。内部バスは前記各構成部の間の信号のやり取りを行うための共通信号路である。
【0017】図2に,本発明に係るネットワークプリンタの動作を説明する図を示す。図2において,印刷要求などをする外部装置1及び2(11及び12)と,外部装置1の接続するネットワーク1(31)及び外部装置2の接続するネットワーク2(32)と,ネットワーク1及び2(31及び32)に接続されて各外部装置からの印刷要求を受けて印刷出力するネットワークプリンタ2と,ネットワーク1とネットワーク2とを接続するルータ(ブリッジ)4とにより構成される。
【0018】〈第1の実施形態〉次に図1及び図2を参照して本発明に係るネットワークプリンタの第1の実施形態について説明する。印刷を行うときは,次のように処理される。外部装置1の印刷データを印刷処理する場合には,ネットワークプリンタ2は,ネットワーク1に接続されている外部装置1(11)からデータ(印刷データ・コマンドなど)をネットワークインターフェイス1(201)を介して受信する。MPU203は,受信したデータを,予め記憶部204に格納されている制御プログラムによって印刷イメージに展開処理し,また印刷エンジンインターフェイス206を通して印刷イメージを印刷エンジン205へ転送し,印刷出力する。
【0019】また,外部装置2の印刷データを印刷処理する場合には,ネットワークプリンタ2は,ネットワーク2に接続されている外部装置2(12)からデータ(印刷データ・コマンドなど)をネットワークインターフェイス2(202)を介して受信する。MPU203は,受信したデータを予め記憶部204に格納されている制御プログラムによって,印刷イメージに展開処理し,また印刷エンジンインターフェイス206を通して印刷イメージを印刷エンジン205へ転送し,印刷出力する。
【0020】上記のように,外部装置1又は2(11又は12)は,ルータ(ブリッジ)4を介さずにそれぞれネットワークインターフェイス1又は2(201又は202)を介して印刷データをネットワークプリンタ2に送信しているので,ネットワークプリンタ2以外の装置間の通信を規制する目的でルータ(ブリッジ)4がネットワーク1及び2(31及び32)の両セグメント間の通信を規制しているような場合でも,ルータ(ブリッジ)4やネットワーク上の関連機器の設定を調整しなくても,外部装置1からも外部装置2からもネットワークプリンタ2を利用可能である。
【0021】また,異なるセグメント間を接続するルータ(ブリッジ)4が存在しない場合でも,それぞれのセグメントに接続された外部装置1(11)外部装置2(12)は,いずれもネットワークインターフェイス1(201)ネットワークインターフェイス2(202)を介してネットワークプリンタ2に接続しているので,ネットワークプリンタ2を利用可能である。
【0022】また,それぞれのインターフェイスを同一のセグメントに接続した場合(図示しない)には,他のネットワーク接続機器からは複数のプリンタとして(TCP/IP利用時は異なるIPアドレスで)参照が可能となり,1つの印刷出力を仮想的に複数あるものとして利用可能である。」
(ウ)「【0027】〈第3の実施形態〉次に図4及び図5を参照して本発明に係るネットワークプリンタの第3の実施形態について説明する。図4に本発明に係るネットワークプリンタの第3の実施形態の構成のブロック図を示す。図5に本発明に係るネットワークプリンタの第3の実施形態の動作を示すフローチャートを示す。ただし,この図4に示される各構成部のうち,図1に示される構成部と同様の構成部には同じ番号を付す。
【0028】この図4に示される本発明に係るネットワークプリンタの第3の実施形態が図1に示される第1の実施形態と異なる点は,図1に示される第1の実施形態に係るネットワークプリンタに加えて,さらに,ネットワークプリンタ2に操作者が指示を入力できるオペレーションパネル209と,オペレーションパネル209を内部バス207に接続するオペレーションパネルインターフェイス210を有している点である。従って,このオペレーションパネル209の動作について説明する。
【0029】例えば,一時的に特定のインターフェイスからの印刷要求を停止させたい場合には,一時的に特定のインターフェイスからの印刷要求を停止させるような設定をオペレーションパネル209の操作によって入力する。入力された指示は,オペレーションパネルインターフェイス210を通して記憶部204に格納される。以後設定を変更するまでは,記憶部204に記憶された設定にしたがって処理される。
【0030】次に図5を参照して本発明の第3の実施形態の動作例を説明する。ネットワークプリンタ2には,前記の特定のインターフェイスからの印刷要求を停止する設定がなされている。この場合に外部装置からネットワークインターフェイス1又は2(201又は202)を介して印刷データの入力があると(S1/Yes),前記の設定により使用制限の対象になっているインターフェイスからの印刷データかどうかを記憶部204に格納されている設定と制御プログラムによってMPU203が判断する。使用制限の対象になっているインターフェイスからの印刷データであれば(S2/Yes)印刷処理せずに,外部装置に印刷拒否を通知する(S4)。使用制限の対象になっていないインターフェイスからの印刷データでなければ(S2/No),印刷処理を実行し(S3),再び印刷データ入力できる状態に戻る。
【0031】上記のように,印刷に関する条件をオペレーションパネルを介して容易に入力し設定できるので,あるインターフェイスからの印刷データの出力を制限するなどの処理が容易になる。」
(エ)「【0032】
【発明の効果】
(途中略)
【0035】また,ネットワークプリンタにオペレーションパネルを備え,印刷に関する条件の入力,設定を容易にしたため,複数のインターフェイスを有し,受信する印刷データが多く印刷要求元も多様である場合にも,一時的に特定のインターフェイスからの印刷要求だけを停止するなどの処理が容易に行える。」

引用例摘記事項の(ア)?(エ)によれば,引用例には,以下の発明(以下「引用例発明」という。)が開示されている。

「ユーザが操作する端末装置である外部装置1,2と,外部装置1,2とネットワークプリンタをそれぞれ接続するネットワーク1,ネットワーク2からなり,外部装置1,2からの印刷要求を受けて印刷出力する装置であるネットワークプリンタであって,
ネットワークプリンタは,ネットワークインターフェイス1,ネットワークインターフェイス2,MPU,記憶部,印刷エンジン,印刷エンジンインターフェイス,内部バスからなり,
ネットワークプリンタは,
外部装置1の印刷データを印刷処理する場合には,ネットワーク1に接続されている外部装置1からデータをネットワークインターフェイス1を介して受信し,MPUは受信したデータを予め記憶部に格納されている制御プログラムによって印刷イメージに展開処理し,また印刷エンジンインターフェイスを通して印刷イメージを印刷エンジンへ転送し,印刷出力し,
外部装置2の印刷データを印刷処理する場合には,ネットワーク2に接続されている外部装置2からデータをネットワークインターフェイス2を介して受信し,MPUは受信したデータを予め記憶部に格納されている制御プログラムによって印刷イメージに展開処理し,また印刷エンジンインターフェイスを通して印刷イメージを印刷エンジンへ転送し,印刷出力するものであり,
ネットワークプリンタに,操作者が指示を入力できるオペレーションパネルと,オペレーションパネルを内部バスに接続するオペレーションパネルインターフェイスを有し,
一時的に特定のインターフェイスからの印刷要求を停止させたい場合には,一時的に特定のインターフェイスからの印刷要求を停止させるような設定をオペレーションパネルの操作によって入力し,入力された指示はオペレーションパネルインターフェイスを通して記憶部に格納され,以後設定を変更するまでは記憶部に記憶された設定にしたがって処理され,
ネットワークプリンタに,特定のインターフェイスからの印刷要求を停止する設定がなされ,外部装置からネットワークインターフェイス1又は2を介して印刷データの入力があると,設定により使用制限の対象になっているインターフェイスからの印刷データかどうかを記憶部に格納されている設定と制御プログラムによってMPUが判断し,使用制限の対象になっているインターフェイスからの印刷データであれば印刷処理せずに,外部装置に印刷拒否を通知し,使用制限の対象になっていないインターフェイスからの印刷データでなければ印刷処理を実行することにより,
複数のインターフェイスを有して受信する印刷データが多く印刷要求元も多様である場合にも一時的に特定のインターフェイスからの印刷要求だけを停止する処理が行えるネットワークプリンタ。」

4-2.対比

本願発明と,上記引用例発明とを比較する。
(ア)引用例発明のネットワークプリンタは,ネットワークインターフェイス1,2を備え,ネットワークインターフェイス1,2は互いに異なるネットワーク1,2に接続され,ネットワークプリンタの印刷機能を各ネットワークに接続されたそれぞれの外部装置からの印刷指示に基づいて印刷が可能なものであるから,本願発明とは,「複数の通信インターフェースを備え,各通信インターフェースにおいて互いに異なる通信ネットワークに接続可能とされ,自身に搭載された機能を該通信ネットワークに接続された端末装置からの指令に基づいて使用可能とされた周辺電子機器」である点で一致する。
(イ)引用例発明のネットワークプリンタは,操作者が指示を入力できるオペレーションパネルと,オペレーションパネルを内部バスに接続するオペレーションパネルインターフェイスを有し,一時的に特定のインターフェイスからの印刷要求を停止させたい場合には,一時的に特定のインターフェイスからの印刷要求を停止させるような設定をオペレーションパネルの操作によって入力し,入力された指示はオペレーションパネルインターフェイスを通して記憶部に格納され,以後設定を変更するまでは記憶部に記憶された設定にしたがって処理されるものである。
してみると,引用例発明と本願発明とは,「通信インターフェースと,その通信インターフェースに対する使用可能とするべき機能種別を特定する第1機能制限情報とを対応付けて記憶する機能制限設定情報記憶手段」を有する点で共通する。
(ウ)引用例発明のネットワークプリンタは,特定のインターフェイスからの印刷要求を停止する設定がなされ,外部装置からネットワークインターフェイス1又は2を介して印刷データの入力があると,設定により使用制限の対象になっているインターフェイスからの印刷データかどうかを記憶部に格納されている設定と制御プログラムによってMPUが判断し,使用制限の対象になっているインターフェイスからの印刷データであれば印刷処理せずに,外部装置に印刷拒否を通知し,使用制限の対象になっていないインターフェイスからの印刷データでなければ印刷処理を実行するものである。
してみると,引用例発明と本願発明とは,「端末装置から機能の使用に係る接続があった場合に,接続された前記通信インターフェースを特定する接続特定手段と,接続が特定された通信インターフェースに対し,当該接続に係る機能が使用可能な機能種別とされているか否かを,機能制限設定情報記憶手段に記憶された第1機能制限情報に基づいて特定し,使用可能な機能種別でない場合には該機能の使用を拒否する一方,使用可能な機能種別である場合には該機能の使用を許可する第1機能実行制御手段」を有する点で共通する。
(エ)そして,引用例発明と本願発明とは,「機能の使用が許可された場合に,該機能を使用するために端末装置から受信したデータにより,該機能を使用する」ものである点で共通する。
(オ)そうすると引用例発明と本願発明とは,
「複数の通信インターフェースを備え,各通信インターフェースにおいて互いに異なる通信ネットワークに接続可能とされ,自身に搭載された機能を該通信ネットワークに接続された端末装置からの指令に基づいて使用可能とされた周辺電子機器であって,
通信インターフェースと,その通信インターフェースに対する使用可能とするべき機能種別を特定する第1機能制限情報を対応付けて記憶する機能制限設定情報記憶手段と,
端末装置から機能の使用に係る接続があった場合に,接続された前記通信インターフェースを特定する接続特定手段と,接続が特定された通信インターフェースに対し,当該接続に係る機能が使用可能な機能種別とされているか否かを,機能制限設定情報記憶手段に記憶された第1機能制限情報に基づいて特定し,使用可能な機能種別でない場合には該機能の使用を拒否する一方,使用可能な機能種別である場合には該機能の使用を許可する第1機能実行制御手段と,
機能の使用が許可された場合に,該機能を使用するために端末装置から受信したデータにより,該機能を使用すること
を特徴とする周辺電子機器。」
である点で一致し,以下の点で相違する。
[相違点]
本願発明では,機能制限設定情報記憶装置が,第1機能制限情報により特定される機能を使用する場合における使用制限内容を特定する第2機能制限情報を対応付けて記憶するものであり,第1機能実行制御手段により機能の使用が許可された場合に,該機能を使用するために端末装置から受信したデータの使用制限内容を,機能制限設定情報記憶手段に記憶された第2機能制限情報に基づいて特定し,端末装置から受信したデータのうち使用可能範囲外のデータについては,当該データについて機能を実行せずに削除することにより,該機能の使用を,特定された使用制限内容により定まる使用可能範囲内に限って許可するものであるのに対し,引用例発明ではそのような構成になっていない点。

4-3.判断
[相違点]について以下に判断する。
ア 使用できる機能が特定されること,特定された機能が使用できてその機能を使用する場合に,使用が可能な範囲を特定して制限することは良く知られている。(以下「周知事項A」という。)
(例えば,原査定の拒絶査定時に周知文献1として提示された特開2004-289302号公報(以下「周知例1」という。)の【0007】段落には,
「次に第2実施例を説明する。図7は第2実施例の制御フローチャートである。ユーザAは,MFP11にてカラーコピーを使用するため,「カラーコピーキー」を押下する(S1)。MFP11はこの要求を受け付け,利用者制限機能の有無をチェックする(S2)。機能が有効であった場合,図5に示すようなユーザID,パスワード入力画面を表示する(S3)。ユーザAは,ドメイン名:A.DOMでの自分のユーザID,パスワードを入力する(S4)。MFP11は,これを基にA.DOMのドメインコントローラ13に対し,ログインを試みる(S5)。ここでログインできなければ(S6でN),ユーザAに「機器の使用が許可されていない」エラーメッセージを表示する(S7)。ログインが成功した場合,LDAPサーバに接続し,ユーザAの情報を取得する(S8)。コピー機能に関する許可がされていなければ(S9でN),「コピーは許可されていません」エラーメッセージを表示する(S10)。ユーザAは,コピー機能に関してモノクロコピー権限しか所有していないため,「カラーコピーが許可されていない」エラーメッセージを表示する(S11,S12,S13)。同様に,ユーザBが「カラーコピーキー」を押下した場合,ユーザBは,コピー機能に関して「カラー/モノクロ」権限を所有しているため,カラーコピーを実行することが可能となる(S14,S15)。コピー機能に関してのアクセス制限は,この他,コピー出力用紙に関する制限,画像変換に関する制限,コピー部数に関する制限等が考えられる。」
と記載されている。
例えば,原査定の拒絶査定時に周知文献2として提示された特開平11-102148号公報(以下「周知例2」という。)の【0022】?【0024】段落には,
「【0022】次に,ステップS4では,IDカード12から読み出した許可画像読取装置情報14a(図4参照)を参照して,その情報の中に,先のステップS3で読み出した画像読取装置9の装置ID16bが含まれているか否か,つまりユーザーに対して画像読取装置9の使用が許可されているか否かを判定する。このとき,読み出した情報の中に画像読取装置9の装置IDが含まれていなれば,その画像読取装置9の使用不許可を決定し,表示部7にその旨の表示を行う(ステップS5)。
【0023】一方,読み出した情報の中に画像読取装置9の装置IDが含まれていれば,その画像読取装置9の使用許可を決定するとともに,使用許可された画像読取装置9に対して,IDカードから読み出した許可機能情報14c(図4参照)を通知する(ステップS6)。これにより画像読取装置9では,管理装置1側から通知された許可機能情報14cを基に,ユーザーが使用できる機能について自装置の操作パネル( 図示せず) に表示し,ユーザーが使用を許可されていない機能については,表示しないか選択できないようにする。
【0024】具体的には,図4に例示した許可機能情報14cであれば,画像の出力機能として,コピーとファクス送信が可能であるので,これらの選択メニューが表示される。また,カラー機能としては,白黒出力とカラー出力がいずれも許可されているので,コピーやファクス送信では,白黒コピーやカラーコピー,並びに,白黒ファクス送信やカラーファクス送信がメニューに表示される。さらに,ステープル機能については全て(ALL) 許可されているので,画像出力装置が可能とするステープル位置等のメニューが画像読取装置9に表示される。こうした表示メニューの中から,ユーザーは所望の使用機能を任意に選択することができる。」
と記載されている。)

イ 機能を使用するために端末装置から受信したデータの使用可能範囲が特定されて制限され,端末装置から受信したデータのうち使用可能範囲外のデータについては,当該データについて機能が実行されずに削除されることも良く知られている。(以下「周知事項B」という。)
(例えば,当審の前置審尋で提示した特開2005-7773号公報(以下「周知例3」という。)の【0029】段落には,
「【0029】
他方,部門管理機能が実行されている場合には,続いて,前記エラーが,印刷可能上限超過エラーであるかどうか,例えばパソコンS12から印刷データを受信した時点で,当該印刷データ受信以前に,或いは当該印刷データによって,部門S1の印刷可能上限を超えるかどうかが判定される(図3のステップS22)。ここで「印刷データを受信した時点で…印刷可能上限を超える」とは,例えば,部門S1の印刷可能上限が「500枚」であったとして,前記パソコンS12から印刷データが送信された時点で,既に使用済み用紙の総カウント数が「500枚」に達していた場合をいう。この場合には,画像形成装置は当該印刷データを拒絶するということになる。他方,前記の「当該印刷データによって,印刷可能上限を超える」とは,例えば,部門S1の印刷可能上限が「500枚」であり,且つ,前記パソコンS12から印刷データが送信された時点における使用済み用紙の総カウント数が480枚であるという場合に,当該印刷データが,50枚の用紙を必要とする印刷である場合をいう。この場合には,当該印刷データに基づく画像形成実行中,20枚目の処理を行った時点において,印刷可能上限に達することになり,以後の画像形成は中止されることになる(残る30枚の印刷は拒絶される。)。」
と記載されている。
例えば,当審の前置審尋で提示した特開平11-85419号公報(以下「周知例4」という。)の【0002】,【0003】段落には,
「【0002】【従来の技術】従来より,オフィスなどにおいてプリンタや複写機を利用する際に,各部門ごとにプリント出力枚数に制限を設けて,運用管理が行われていた。
【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来例では,プリント途中でその制限枚数に達した場合,無条件にそのプリント出力を中断していたため,それ以後プリント出力は不可能となり,例えば,一連の文書出力が完成しないなど,ユーザにとっては使い勝手がわるいという問題があった。」
と記載されている。)

ウ してみると,引用例発明に周知事項Aと周知事項Bとを適用することにより,特定された機能が使用できてその機能を使用する場合に,使用が可能な範囲を特定して制限をするものとし,端末装置から受信したデータの使用可能範囲を特定して制限し,端末装置から受信したデータのうち使用可能範囲外のデータについては,当該データについて機能が実行されずに削除されるものとすることには何ら困難性がない。
つまり,引用例発明において,機能制限設定情報記憶装置を,第1機能制限情報により特定される機能を使用する場合における使用制限内容を特定する第2機能制限情報を対応付けて記憶するものとし,第1機能実行制御手段により機能の使用が許可された場合に,該機能を使用するために端末装置から受信したデータの使用制限内容を,機能制限設定情報記憶手段に記憶された第2機能制限情報に基づいて特定し,端末装置から受信したデータのうち使用可能範囲外のデータについては,当該データについて機能を実行せずに削除することにより,該機能の使用を,特定された使用制限内容により定まる使用可能範囲内に限って許可するものとすることには何ら困難性がなく,当業者が容易に想到することができたものである。

4-4.審判請求人の主張の参酌

(1)審判請求人は,審判請求書において以下のとおり主張している。
(ア)「しかしながら,これら周知文献1,2に記載されている発明は,複数段階のいずれとも,データを受信する前にその機能制限を行っています。よって,そもそもデータを受信することがないので,本願発明のように,受信したデータのうち使用範囲外のデータについて機能を実行せずに削除することにより,該機能の使用を,特定された使用制限内容により定まる使用可能範囲内に限って許可する構成についての記載はありません。」
(イ)「また,引用文献1,2には,複数段階で機能制限を行うことの記載すらないので,当然,受信したデータのうち使用範囲外のデータについて機能を実行せずに削除することにより,該機能の使用を,特定された使用制限内容により定まる使用可能範囲内に限って許可する構成についての記載もありません。」
(ウ)「したがって,いずれの文献をどのように組み合わせたとしても,「受信したデータのうち使用範囲外のデータについて機能を実行せずに削除することにより,該機能の使用を,特定された使用制限内容により定まる使用可能範囲内に限って許可する」構成についての記載はなく,本願発明のように,「データの無駄な送受信を行うことなく,周辺機器の使用に対するセキュリティを確保しつつ,該周辺機器の使用に対して,データを受信しなければ分からない使用範囲についても,容易に制限を設けることができる」といった効果も奏しません。」
(平成21年3月9日付け審判請求書の第4ページ6行?22行,なお(ア)?(ウ)は当審で整理のために付したものである。)

(2)審判請求人は,当審の審尋に対する回答で以下のとおり主張している。
(エ)「ここで,引用文献2および引用文献3の開示内容と,詳細に本願発明とを比較します。
本願発明では,「前記端末装置から受信したデータのうち前記使用可能範囲外のデータについては,当該データについて機能を実行せずに削除することにより,該機能の使用を,特定された使用制限内容により定まる使用可能範囲内に限って許可」します。すなわち,通信インターフェース毎の機能制限の内容として,使用可能範囲を設定し,範囲外のデータについて受信を拒否するのではなく,機能を実行せずに削除しています。」
(オ)「引用文献2の段落(0029)には,「当該印刷データに基づく画像形成実行中,20枚目の処理を行った時点において,印刷可能上限に達することになり,以後の画像形成は中止されることになる(残る30枚の印刷は拒絶される。)。」と記載されています。すなわち,引用文献2では,使用可能範囲外のデータについては受信を拒否することが記載されています。つまり本願発明のような,使用可能範囲外のデータについて,機能を実行せずに削除することの記載はありません。」
(カ)「引用文献3の段落(0003)には,「プリント途中でその制限枚数に達した場合,無条件にそのプリント出力を中断していた」ことが記載されています。また,引用文献3の段落(0047)から段落(0062)には,印刷データを送信するパーソナルコンピュータでプリント上限枚数を超えるかどうかを判断することが記載されています。すなわち,引用文献3にも,本願発明のように,使用可能範囲外のデータについて,機能を実行せずに削除することの記載はありません。」
(キ)「例えば,端末装置には,周辺電子機器へ送信するデータが途中で受信されなくなった場合,つまり,周辺電子機器が受信を拒否した場合,そのデータを再送することがあります。本願発明では,使用可能範囲外のデータについて受信を拒否するのではなく,機能を実行せずに削除します。すなわち,本願発明の周辺電子機器に,端末装置が使用可能範囲外のデータを送信した場合であっても,機能を実行しないのであって,データの受信は行うので,端末装置は,データが最後まで正常に送信できたと判断します。したがって,端末装置はそのデータを再送しません。つまり,本願発明では,印刷できないことがわかっているにもかかわらず,無駄にデータを受信する必要となる問題を回避することができます。」
(平成23年2月16日付け回答書の第2ページ7行?第3ページ8行,なお(エ)?(キ)は当審で整理のために付したものである。)

(3)審判請求人の上記(1)(2)の主張(ア)?(キ)について以下に検討する。
ア 主張(ア)について。
原査定は,複数段階で機能を制限することが周知であることを示すために周知文献1,2つまり当審の周知例1,2を示すにとどまるものであり,当審の判断は,前記「4-3.判断」の「ア」のとおりであるから,主張(ア)を採用することはできない。
イ 主張(イ)について。
原査定の引用文献2の発明,つまり当審の引用例発明との相違点に対する判断は,前記「4-3.判断」に示したとおりであるから,主張(イ)を採用することはできない。
ウ 主張(ウ)について。
後記する「オ」で併せて検討する。
エ 主張(エ)?(カ)について。
主張(オ)は,これを要すれば,前置報告の引用文献2つまり当審の周知例3には「当該印刷データに基づく画像形成実行中,20枚目の処理を行った時点において,印刷可能上限に達することになり,以後の画像形成は中止されることになる(残る30枚の印刷は拒絶される。)。」と記載されていることから「使用可能範囲外のデータについては受信を拒否する」ものであるとの主張であると認められるところ,前置報告の引用文献2つまり当審の周知例3が「使用可能範囲外のデータについては受信を拒否する」ものであるとまでは言えない。
仮に,主張(オ)のとおりであったとしても,主張(カ)は前置報告の引用文献3つまり当審の周知例4が開示する「発明」に係る主張であると思われるところ,前置報告が引用し,当審が引用するのは周知例4が開示する「従来技術」に係るものであって,主張(カ)に対する当審の判断は前記「4-3.判断」の「イ」のとおりであることから,主張(オ)の採否の如何にかかわらず主張(エ)?(カ)を採用することはできない。
オ 主張(ウ)及び(キ)について。
審判請求人の主張はつまり,データが最後まで送信されることを前提としており,本願の図11のS260に記載され,発明の詳細な説明の【0051】段落に記載される「S260に進み画像印刷データの受信が終了したか否かを判定する。」との事項を前提とするものであるところ,特許請求の範囲は「画像印刷データの受信が終了したか否かを判定する」ことを特定しないから,審判請求人の主張は特許請求の範囲の記載に基づかないものであり,主張(ウ)及び(キ)を採用することはできない。

以上のとおり,審判請求人の主張を採用することはできない。

4-5.まとめ
以上判断したとおり,本願発明における上記[相違点]に係る発明特定事項は,当業者が容易に想到することができたものであり,想到することが困難な格別の事項は見いだせない。
また,本願発明の作用効果も,引用例発明及び周知事項A,Bから当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本願発明は,引用例発明及び周知事項A,Bに基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例発明及び周知事項A,Bに基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-06 
結審通知日 2011-07-12 
審決日 2011-07-26 
出願番号 特願2005-228011(P2005-228011)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須藤 竜也千本 潤介  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 須田 勝巳
津幡 貴生
発明の名称 周辺電子機器  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ