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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1242782
審判番号 不服2009-16110  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-01 
確定日 2011-09-08 
事件の表示 特願2003-357885「プレゼンス表示システムにおけるサーバー装置及びクライアント装置並びにプレゼンス表示システム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月12日出願公開、特開2005-123970〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年10月17日に出願したものであって、平成20年12月22日付けで手続補正がなされたところ、平成21年5月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年9月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり、その特許請求の範囲の請求項6に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年12月22付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項6に記載された以下のとおりのものと認める。

「サーバー装置と各ユーザーのクライアント装置を有し、クライアント装置に他のユーザーの状態を表示することができるようになされたプレゼンス表示システムにおける前記クライアント装置であって、
ユーザーの状態を示す情報を前記サーバー装置に送信する手段と、
そのクライアント装置の現在位置を示す緯度及び経度の情報を含む位置情報を前記サーバー装置に定期的に送信する手段と、
前記サーバー装置から、他のユーザーの状態を示す情報、及び、他のユーザーとの間の距離が複数のしきい値を用いて判定される複数の段階のうちのいずれに属するかを示す近接度の情報を受信する手段と、
受信した他のユーザーの状態を示す情報及び近接度の情報に基づいて、前記他のユーザーの状態を示す情報に対応する画像を前記近接度に対応する大きさで表示する手段と
を有することを特徴とするプレゼンス表示システムにおけるクライアント装置。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された特開2002-354522号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、移動体端末の位置情報を表示する位置情報表示システムに係り、特に、自移動体端末の画面上に、他移動体端末との距離、方角、移動方向等の位置情報を簡易に表示する位置情報表示システム及びその表示方法並びに位置決定方法に関する。」
(3頁4欄)

ロ.「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の従来装置においては、GPS等のシステムを用いるために、移動体側にGPS受信機などの機能を有する必要があり、簡易に表示することができないという問題があった。
【0004】また、上記の従来装置は、GPS等の機能を用いているために、地図上等に比較的詳細な位置が把握できるので、利用者にとっては却って、必要以上に詳細な位置が他者に知られてしまうというプライバシー上での問題を有し、従って、通常の生活の中で常時利用することに抵抗のある利用者が多く、実際には、グループで旅行する等の限られた条件でしか使用しないという問題点があった。
【0005】この発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、携帯電話、簡易型携帯電話等の移動体端末において、その表示画面上に移動体自身の位置から位置情報取得を許可された他の移動体までの相対的な距離と方角とを簡易に表示する位置情報表示システム及びその表示方法を提供することを目的としている。
【0006】また、この発明は、表示対象である他移動体のその時点における任意の状態をリアルタイムに表示する位置情報表示システム及びその表示方法を提供することを目的としている。」
(3頁4欄?4頁5欄)

ハ.「【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、複数の移動体端末と、該複数の移動体端末と通信可能な複数の基地局と、該複数の基地局を介して上記複数の移動体端末の位置情報を管理する位置情報管理センターとを備え、上記複数の移動体端末の上記位置情報を取得して表示する位置表示システムであって、上記複数の移動体端末が、自己の移動体端末の位置情報として記憶している自データと、該自データの開示を許可する移動体端末を指示するリストである自データ開示許可先リストとを上記自己の移動体端末を管理する基地局に送信する手段と、上記基地局が、上記自データ及び上記自データ開示許可先リストとを上記位置情報管理センターに送信する手段と、上記位置情報管理センターが、上記自データ及び上記自データ開示許可先リストに基づいて、上記自データ開示許可先リストに指示された移動体端末の上記自己の移動体端末に対する相対的位置を示す相対位置情報を作成する手段と、上記位置情報管理センターが、上記相対位置情報を上記自己の移動体端末を管理する基地局を介して上記自己の移動体端末に送信する手段と、上記自己の移動体端末が、上記相対位置情報に基づいて、上記自己の移動体端末と、上記自データ開示許可先リストに指示された移動体端末の位置とを上記自己の移動体端末の画面上に表示する手段とを備えたことを特徴としている。」
(4頁5欄)

ニ.「【0037】
【発明の実施の形態】次に、図面を参照して、この発明の実施の形態について詳細に説明する。説明は実施例を用いて具体的に説明する。図1は、この発明の一実施例である位置情報表示システムの構成を示す概略図である。以下、この例の位置情報表示システムの構成について説明する。この例の位置情報表示システムは、位置情報管理センター100と、複数の移動体端末(以下、移動体という)104乃至106と、各移動体のエリアをカバーしている各基地局102、103とで構成されている。各移動体は、移動体A104、移動体B105、移動体C106で示し、各基地局は、基地局A102、基地局B103で示している。また、移動体A104、移動体C106は、携帯電話であり、移動体B105は、PDA(携帯型情報機器)であり、各移動体は、位置情報データを有している。位置情報管理センター100は、各移動体の位置情報データを管理、蓄積する。基地局A102、基地局B103は、各移動体のエリアをカバーしている基地局であり、それぞれのエリア内の各移動体104乃106が記憶している位置情報データを受信する。位置情報データの受信は、各移動体104乃至106から定期的に、あるいはまた、移動体104乃至106もしくは位置情報管理センター100の要求等により不定期に行われる。各基地局102、103は、各移動体104乃106から位置情報データを受信した後、そのデータを位置情報管理センター100に送信する。また、各基地局102、103は、各移動体104乃至106の要求により、位置情報管理センター100から要求先移動体の要求元移動体に対する相対位置情報を受信し、要求元移動体にそのデータを送信することができる。要求元移動体(以下、自移動体という)は、位置情報管理センター100から基地局102、103を介して画面表示したい要求先移動体(以下、他移動体という)の位置情報データを受信することにより、他移動体の自移動体に対する相対位置情報を自移動体の表示画面に表示する。
【0038】図2は、この発明の一実施例である位置情報表示システムで用いられる位置情報データの一例を示す図である。この例における位置情報データ101は、位置情報管理センター100が管理するデータであり、このデータは、自移動体のデータとしての自データ201と、自データを開示することを許可された他移動体のデータとしての自データ開示許可先リスト202と、他移動体のデータを取得することを許可された他移動体のデータとしての他データ取得許可先リスト203とを含む。
【0039】自データ201は、要求元の移動体である自移動体のデータであり、自移動体の識別コード、現在位置、現在の状態を示すデータ等が格納されている。この例では、自データ201は、識別コードとして自移動体の電話番号、現在位置として自移動体をカバーしている基地局の番号又は名称、現在の状態を示すデータとして仕事中というデータが格納されている。また、自データ201は、自移動体の使用者が他移動体に対して自データ201の開示を許可している場合には、自移動体をカバーしている基地局102、103、位置情報管理センター100、あるいは自データ開示許可先リスト202に登録した他移動体からの要求により、自動的に送信されるデータである。
【0040】自データ開示許可先リスト202は、自移動体の位置情報を開示する許可を与える先となる他移動体のデータであり、各他移動体の識別コード204、許可状態を示すデータ205等が格納されている。この例では、識別コード204として他移動体の電話番号等が、許可状態を示すデータ205として自移動体の位置情報開示に対する許可状態を識別コード毎に示すデータが格納されている。許可状態を示すデータとしては、許可、一時禁止等である。
【0041】他データ取得許可先リスト203は、位置情報表示を許可された他移動体のデータであり、各他移動体の識別コード206、自移動体に対する各他移動体の相対位置情報207、各他移動体の使用者が任意に設定した現在の状態を示すデータ208が格納されている。この例では、識別コード206として各他移動体の電話番号等が、相対位置情報207として自移動体に対する各他移動体の方角、距離等(南南西1km、西3km、北東10km等と自移動体に対応する他移動体の方角、距離の情報)が、現在の状態を示すデータ208として様々な状態(「ひま」、「多忙」、「移動中」、「寝てる」等)の情報が格納されている。尚、相対位置情報207として、方角及び距離を特定できなければ圏外としている。
【0042】次に、図1及び図2を参照して、上述した位置情報データ101のやりとりについて具体的に説明する。例えば、移動体A104は、自移動体として記憶された自データ201と、移動体C106の識別コード204とを基地局A102に送信し、基地局A102は、位置情報管理センター100にそれらのデータを送信する。位置情報管理センター100は、受信した自データ201に対応する移動体A104の位置情報と、識別コード204に対応する移動体C106の位置情報とを位置情報データ101から取り出す。位置情報管理センター100は、移動体A104の位置情報と移動体C106の位置情報とから、移動体A104に対する移動体C106の相対的な位置情報である相対位置情報207を作成し、基地局A102に送信する。基地局A102は、受信した相対位置情報207を移動体A104に送信する。相対位置情報を受信した移動体A104は、その相対位置情報を記憶エリア内に記憶するとともに、表示画面上に移動体C106の位置を表示する。」
(5頁8欄?6頁10欄)

ホ.「【0044】次に、この発明の実施例である位置情報表示方法について詳細に説明する。図4は、この例の第1実施例である位置情報表示方法を示す概略図である。この例の位置情報表示方法は、自移動体、他移動体の現在の状態を同時に示するために、画面右に示しているようなシンボル表403を表示している。シンボル表403は、星形、丸形、三角型、バッテン型のシンボルマークが、それぞれ、「自分」、「ひま」、「多忙」、「仕事中」であることを示している。これらのシンボルマークは、使用者により任意に設定することができる。まず、所定の半径の円が複数描画された同心円400を表示し、この同心円400の半径を示すための目盛り402を表示し、さらに、方角を示すための方角指示マーク401を表示している。同心円400の中心には、「自分」を示す星型のシンボルマーク404を表示し、同心円400、方角指示マーク401、目盛り402に基づき他移動体の位置を表示している。シンボルマークは、他移動体の自移動体に対する相対的位置をも示すために、上述した同心円400、方角指示部401、目盛り402に従った位置に表示される。目盛り402は、画面右下に0乃至5kmの目盛りを示している。他移動体のうち、現在の状態が「ひま」である他移動体を丸形のシンボルマーク405、407で、現在の状態が「多忙」である他移動体を三角型のシンボルマーク406で、現在の状態が「仕事中」である他移動体をバッテン型のシンボルマーク408で表示している。
【0045】この例によれば、丸型のシンボルマーク405、407により、北西の方角1.5kmの位置にある他移動体が、現在「ひま」であり、西の方角約4kmにある他移動体も、現在「ひま」であることが分かる。また、三角型のシンボルマーク406により、南東の方角約2.5kmの位置にある他移動体が、現在「多忙」であることが分かる。さらに、バッテン型のシンボルマーク408により、南西の方角5kmより遠い位置にある他移動体が、現在「仕事中」であることが分かる。」
(7頁11欄?12欄)

ヘ.「【0051】以上、位置情報表示方法について説明したが、・・・(中略)・・・。
【0052】?【0054】(略)
【0055】また、画面には位置情報を表示せずに設定された識別コードの移動体が3km以内等自移動体近辺にある場合にのみ、そのことを画面表示、音などで自移動体の使用者に通知する機能も考えられる。」
(8頁13欄)

ト.「【0066】
【発明の効果】以上説明したように、この発明の構成によれば、画面上に他データ取得許可先リストにある識別コードに対応した他移動体の自移動体からの相対的な距離と方角を認識することが可能である。また、画面上に位置表示している他移動体の使用者が任意に設定した現在の状態を認識することが可能である。さらに、自移動体の画面上に表示されている他移動体に対して電話をかける、メールを送信する、その他メッセージ等を送信する等の連絡手段を有することが可能である。また、他移動体の位置情報表示はそれほど詳細には行わないため、プライバシーの侵害に関してもある程度緩和され、積極的な利用を促すことが可能である。」
(9頁15欄)

上記摘記事項によれば、
a)まず、引用例の「移動体端末」は、上記ハ.段落【0008】、ニ.段落【0037】、図1等から明らかなように、「複数の移動体端末104?106と、該複数の移動体端末104?106と通信可能な複数の基地局102、103と、該複数の基地局102、103を介して前記複数の移動体端末104?106の位置情報を管理する位置情報管理センター100とを備え、前記複数の移動体端末104?106の前記位置情報を取得して表示する位置表示システムにおける前記移動体端末104?106」である。
b)また、同「移動体端末」は、上記ニ.段落【0037】?【0039】、【0042】、図2等から明らかなように、「自己の移動体端末の現在位置及び現在の状態を示す自データ201を自己の移動体端末を管理する基地局102、103を介して前記位置情報管理センター100に定期的に送信する」ものであり、また、そのための「手段」を備えていることは技術常識である。
c)また、同「移動体端末」は、ニ.段落【0037】?【0039】、【0042】等から明らかなように、「前記位置情報管理センター100から、他の移動体端末と自己の移動体端末に対する相対的位置を示す相対位置情報とを自己の移動体端末を管理する基地局を介して受信する」ものであり、また、そのための「手段」を備えていることは技術常識である。また、この「受信する」「手段」は、ニ.段落【0044】、図2等から明らかなように、上記相対位置情報を受信する際に、他の移動体端末の現在の状態を示すデータを受信するものである。
したがって、同「移動体端末」は、「前記位置情報管理センター100から、他の移動体端末の現在の状態と自己の移動体端末に対する相対的位置を示す相対位置情報とを自己の移動体端末を管理する基地局を介して受信する手段」を備えている。
d)また、同「移動体端末」は、ニ.段落【0044】から明らかなように、「前記他の移動体端末の現在の状態と相対位置情報とに基づいて、他の移動体端末の現在の状態を示すシンボルマークを自己の移動体端末を示すシンボルマークからの相対的位置に表示する」ものであり、また、そのための「手段」を備えていることは技術常識である。

したがって、上記摘記事項及びこの分野の技術常識によれば、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

「複数の移動体端末104?106と、該複数の移動体端末104?106と通信可能な複数の基地局102、103と、該複数の基地局102、103を介して前記複数の移動体端末104?106の位置情報を管理する位置情報管理センター100とを備え、前記複数の移動体端末104?106の前記位置情報を取得して表示する位置表示システムにおける前記移動体端末104?106であって、
自己の移動体端末の現在位置及び現在の状態を示す自データ201を自己の移動体端末を管理する基地局102、103を介して前記位置情報管理センター100に定期的に送信する手段と、
前記位置情報管理センター100から、他の移動体端末の現在の状態と自己の移動体端末に対する相対的位置を示す相対位置情報とを自己の移動体端末を管理する基地局を介して受信する手段と、
前記他の移動体端末の現在の状態と相対位置情報とに基づいて、他の移動体端末の現在の状態を示すシンボルマークを自己の移動体端末を示すシンボルマークからの相対的位置に表示する手段と
を備えた位置表示システムにおける移動体端末。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
イ.引用発明は、「複数の移動体端末104?106と、該複数の移動体端末104?106と通信可能な複数の基地局102、103と、該複数の基地局102、103を介して前記複数の移動体端末104?106の位置情報を管理する位置情報管理センター100とを備え、前記複数の移動体端末104?106の前記位置情報を取得して表示する位置表示システムにおける前記移動体端末104?106」であるところ、前記「複数の移動体端末104?106」、「位置情報管理センター100」、及び「位置表示システム」は、それらの機能からみて、それぞれ「各ユーザのクライアント装置」、「サーバー装置」、及び「プレゼンス表示システム」といえるから、「サーバー装置と各ユーザーのクライアント装置を有し、クライアント装置に他のユーザーの状態を表示することができるようになされたプレゼンス表示システムにおける前記クライアント装置」である点で本願発明と一致する。
ロ.また、引用発明は、「自己の移動体端末の現在位置及び現在の状態を示す自データ201を自己の移動体端末を管理する基地局102、103を介して前記位置情報管理センター100に定期的に送信する手段」を備えるものであるところ、前記自己の移動体端末の現在の状態を示す自データは、移動体端末を保持する「ユーザーの状態を示す情報」といえるから、「ユーザーの状態を示す情報を前記サーバー装置に送信する手段」を有する点で本願発明と一致する。
ハ.また、引用発明は、「自己の移動体端末の現在位置及び現在の状態を示す自データ201を自己の移動体端末を管理する基地局102、103を介して前記位置情報管理センター100に定期的に送信する手段」を備えるものであるところ、前記自己の移動体端末の現在位置を示す自データは、「クライアント装置の現在位置を示す位置情報」といえるから、「そのクライアント装置の現在位置を示す位置情報を前記サーバー装置に定期的に送信する手段」を有する点で本願発明と一致する。
ニ.また、引用発明は、「前記位置情報管理センター100から、他の移動体端末の現在の状態と自己の移動体端末に対する相対的位置を示す相対位置情報とを自己の移動体端末を管理する基地局を介して受信する手段」を備えるものであるところ、前記他の移動体端末の現在の状態、及び、他の移動体端末の自己の移動体端末に対する相対的位置を示す相対位置情報は、それぞれ「他のユーザーの状態を示す情報」、「他のユーザーとの間の距離を示す近接度の情報」といえるから、「前記サーバー装置から、他のユーザーの状態を示す情報、及び、他のユーザーとの間の距離を示す近接度の情報を受信する手段」を有する点で本願発明と一致する。
ホ.また、引用発明は、「前記他の移動体端末の現在の状態と相対位置情報とに基づいて、他の移動体端末の現在の状態を示すシンボルマークを自己の移動体端末を示すシンボルマークからの相対的位置に表示する手段」を備えるものであるところ、前記「他の移動体端末の現在の状態を示すシンボルマーク」は「他のユーザーの状態を示す情報に対応する画像」といえるから、該画像を「近接度に対応する大きさ」で表示する点を除き「受信した他のユーザーの状態を示す情報及び近接度の情報に基づいて、前記他のユーザーの状態を示す情報に対応する画像を前記近接度に対応して表示する手段」を有する点で本願発明と一致する。

以上総合すると、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、また相違する。

(一致点)
「サーバー装置と各ユーザーのクライアント装置を有し、クライアント装置に他のユーザーの状態を表示することができるようになされたプレゼンス表示システムにおける前記クライアント装置であって、
ユーザーの状態を示す情報を前記サーバー装置に送信する手段と、
そのクライアント装置の現在位置を示す位置情報を前記サーバー装置に定期的に送信する手段と、
前記サーバー装置から、他のユーザーの状態を示す情報、及び、他のユーザーとの間の距離を示す近接度の情報を受信する手段と、
受信した他のユーザーの状態を示す情報及び近接度の情報に基づいて、前記他のユーザーの状態を示す情報に対応する画像を前記近接度に対応して表示する手段と
を有するプレゼンス表示システムにおけるクライアント装置。」

(相違点1)
「クライアント装置の現在位置を示す位置情報」に関し、本願発明が、そのクライアント装置の現在位置を示す「緯度及び経度の情報を含む」のに対して、引用発明は、その点について明示していない点。
(相違点2)
サーバーから受信する「近接度の情報」に関し、本願発明が、「他のユーザーとの間の距離が複数のしきい値を用いて判定される複数の段階のうちのいずれに属するかを示す」情報であるのに対して、引用発明は、「相対位置情報」である点。
(相違点3)
「他のユーザーの状態を示す情報に対応する画像」に関し、本願発明が、「近接度に対応する大きさ」で表示するのに対して、引用発明は、「近接度」に応じた「表示位置」に表示する点。

4.判断
相違点1について検討する。
携帯電話機等の無線通信装置において、無線通信装置の現在位置を緯度、経度を含む情報として表す技術は、特開2001-59740号公報(段落【0007】?【0008】参照。以下、「周知例1」という。)や原査定の拒絶理由に引用された特開2003-21534号公報(段落【0032】?【0034】参照。以下「周知例2」という。)等に記載されているように、きわめて常識的、基礎的な周知技術と認められる。
引用発明において、上記周知例1及び周知例2に記載された周知技術を適用して、「クライアント装置の現在位置を示す情報」を、緯度、経度を含む情報にすることは当業者が容易になし得ることである。

次に、相違点3について検討する。
引用発明では、「他のユーザーの状態を示す情報に対応する画像」、例えば、図4における「ひま」、「多忙」、「仕事中」に応じた○や△や×等のシンボルマークを、自分の現在位置から他のユーザの位置までの『近接度』に応じた表示位置に表示しており、これに対して本願発明では、「他のユーザーの状態を示す情報に対応する画像」を、自分の現在位置から他のユーザまでの『近接度』に応じた大きさで表示している。
すなわち、相違点3に係る両発明の相違は、自分の現在位置から他のユーザの位置までの『近接度』に応じて「他のユーザの状態を示す情報に対応する画像」を表示する際の、表示手法の差に起因している。
ここで、自分の現在位置から表示の対象までの距離、すなわち『近接度』に応じて、表示の対象である対象物画像の大きさを変えて表示する手法は、特開2003-92616号公報(段落【0033】,【0083】?【0084】,【図17】参照。以下、「周知例3」という。)や特開2002-300548号公報(段落【0022】?【0027】,【図4】参照。以下、「周知例4」という。)や特開2003-131784号公報(段落【0032】,【図7】参照。以下、「周知例5」という。)や特開2002-277260号公報(段落【0049】?【0053】参照。以下、「周知例6」という。)に記載されているように周知の表示手法である。
このように周知例3乃至周知例6に記載された周知の表示手法を引用発明に適用して、『近接度』に応じて、シンボルマーク、すなわち「他のユーザーの状態を示す情報に対応する画像」の大きさを変えるように表示することは当業者が容易に実施し得ることである。

最後に、相違点2について検討する。
引用発明では、相対位置情報、すわなち『近接度』を連続的な数値として受信しているが、引用例の段落【0055】には、「また、画面には位置情報を表示せずに設定された識別コードの移動体が3km以内等自移動体近辺にある場合にのみ、そのことを画面表示、音などで自移動体の使用者に通知する機能も考えられる」と記載され、『近接度』を段階的なものとすることも示唆されている。
また、前掲した周知例6には、『近接度』に応じて表示の対象である対象物画像の大きさを変えて表示するにあたり、対象物画像の大きさを『段階的』に変化させることも、『連続的』に変化させることも適宜定めることができるとされており、周知例3,5,6には、『近接度』を自分の現在位置から表示の対象までの距離を複数のしきい値を用いて判定し、判定された複数の段階に応じて『段階的』に対象画像の大きさを変える手法が記載されている。
したがって、当業者であれば、引用発明において、『近接度』に応じて『段階的』に対象画像の大きさを変えるように為すようにするために、位置情報管理センターから受信する「近接度の情報」を「他のユーザーとの間の距離が複数のしきい値を用いて判定される複数の段階のうちのいずれに属するかを示す」情報とすることを適宜なし得るものである。

上記のとおり、各相違点は格別なものでない。そして、本願発明の効果は、引用発明及び各周知技術から当業者が容易に予測し得るものであって格別のものではない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び各周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-06 
結審通知日 2011-07-12 
審決日 2011-07-26 
出願番号 特願2003-357885(P2003-357885)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 聡史  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 田中 庸介
神谷 健一
発明の名称 プレゼンス表示システムにおけるサーバー装置及びクライアント装置並びにプレゼンス表示システム  
代理人 武山 吉孝  
代理人 浅見 保男  
代理人 鈴木 隆盛  
代理人 祖父江 栄一  
代理人 高橋 英生  

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