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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1242797
審判番号 不服2010-7348  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-07 
確定日 2011-09-08 
事件の表示 特願2003-360608「ズームレンズ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月19日出願公開、特開2005-128065〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成15年10月21日の出願であって、平成21年9月30日付けで拒絶理由が通知され、同年12月4日付けで手続補正がなされ、平成22年1月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年4月7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。
その後、前置報告書の内容について、審判請求人の意見を求めるために平成23年2月2日付けで審尋がなされたが、審判請求人からの回答はなかった。



2.本願発明

本願の請求項1及び2に係る発明は、平成22年4月7日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりのものである。

「 物体側より順に、全体として正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群、負の屈折力を有する第5レンズ群を具備し、少なくとも前記第2レンズ群および前記第4レンズ群を移動させることによりズーミングを行うように構成され、
前記第1レンズ群は、物体側より順に、負の屈折力を有する前側レンズ群、光路を折り曲げる光学部材、正の屈折力を有する後側レンズ群を具備し、
前記後側レンズ群に含まれるすべてのレンズは、それらの外径のうち前記前側レンズ群に最も近接した側とそれに対向する側とが欠落した形状を有し、
前記後側レンズ群に含まれるレンズのうち最も前記光学部材側に配置されたレンズは、正の屈折力を有し、当該レンズの外径のうち、前記前側レンズ群に最も近接した側に形成された欠落部には、前記前側レンズ群のうち少なくとも最も前記光学部材側に配置されたレンズの外縁部が配置される、
ことを特徴とするズームレンズ。」

なお、平成22年4月7日付けの手続補正は、補正前の請求項3に係る発明のうち請求項2を引用する発明を独立形式として新たな請求項1に係る発明とし、補正前の請求項1、請求項2、請求項5乃至9に係る発明を削除し、該削除に伴い補正前の請求項4に係る発明のうち請求項2を引用する発明を繰り上げて新たな請求項2に係る発明としたものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当し、適法な補正である。



3.引用発明

3-1.刊行物の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-202500号公報(以下「引用例」という)には、以下の技術事項が記載されている(後述の「3-2.引用発明の認定」において引用した記載に下線を付した)。

記載事項a.【0028】乃至【0029】
「【0028】図8に示された第8の実施形態の撮像装置に含まれるズームレンズ系は、物体側から順に、変倍時に像面に対して固定され正の光学的パワーを有する第1レンズ群Gr1、最短焦点距離状態から最長焦点距離状態への変倍に際して、像面に対して物体側から像側へ移動する負の光学パワーを有する第2レンズ群Gr2、絞りST、変倍時に像面に対して固定され正の光学的パワーを有する第3レンズ群Gr3、最短焦点距離状態から最長焦点距離状態への変倍に際して、像面に対して像側から物体側へ移動する正の光学パワーを有する第4レンズ群Gr4、変倍時に像面に対して固定され負の光学的パワーを有する第5レンズ群Gr5から構成されている。このうち、第1レンズ群Gr1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカス形状の第1レンズ素子L1、図上平行平板で表される直角プリズムPR、両凸形状の第2レンズ素子L2、から構成されている。また、第5レンズ群Gr5は、物体側に凹面を向けた負メニスカス形状のレンズ素子L8のみから構成されている。
【0029】各実施形態のズームレンズ系は、第1群内部に物体光の光軸を略90°折り曲げる反射面を持つようリズムPRを備えている。このように、物体光の光軸を略90°折り曲げることにより、撮像装置の見かけ上の薄型化を達成することが可能になる。」

記載事項b.図8




記載事項c.図18





3-2.引用発明の認定

記載事項a(【0029】)の「リズムPR」は、「直角プリズムPR」の誤記であることは明かである。
上記事項及び記載事項a乃至記載事項cの記載内容から、引用例には、

「 ズームレンズ系は、物体側から順に、変倍時に像面に対して固定され正の光学的パワーを有する第1レンズ群Gr1、最短焦点距離状態から最長焦点距離状態への変倍に際して、像面に対して物体側から像側へ移動する負の光学パワーを有する第2レンズ群Gr2、絞りST、変倍時に像面に対して固定され正の光学的パワーを有する第3レンズ群Gr3、最短焦点距離状態から最長焦点距離状態への変倍に際して、像面に対して像側から物体側へ移動する正の光学パワーを有する第4レンズ群Gr4、変倍時に像面に対して固定され負の光学的パワーを有する第5レンズ群Gr5から構成され、
第1レンズ群Gr1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカス形状の第1レンズ素子L1、物体光の光軸を略90°折り曲げる反射面を持つ直角プリズムPR、両凸形状の第2レンズ素子L2、から構成される、
ズームレンズ系。」

(以下「引用発明」という)が記載されていると認められる。



4.対比

本願発明と引用発明を対比する。

引用発明の「正の光学的パワーを有する第1レンズ群Gr1」は、本願発明の「全体として正の屈折力を有する第1レンズ群」に相当する。以下同様に、「負の光学パワーを有する第2レンズ群Gr2」は「負の屈折力を有する第2レンズ群」に、「正の光学的パワーを有する第3レンズ群Gr3」は「正の屈折力を有する第3レンズ群」に、「正の光学パワーを有する第4レンズ群Gr4」は「正の屈折力を有する第4レンズ群」に、「負の光学的パワーを有する第5レンズ群Gr5」は「負の屈折力を有する第5レンズ群」に、「(第1レンズ群乃至第5レンズ群)から構成され」は「(第1レンズ群乃至第5レンズ群)を具備し」に、「ズームレンズ系」は「ズームレンズ」に、それぞれ相当する。
引用発明の「第2レンズ群Gr2」が「最短焦点距離状態から最長焦点距離状態への変倍に際して、像面に対して物体側から像側へ移動する」こと、及び、「第4レンズ群Gr4」が「最短焦点距離状態から最長焦点距離状態への変倍に際して、像面に対して像側から物体側へ移動する」ことは、本願発明の「少なくとも前記第2レンズ群および前記第4レンズ群を移動させることによりズーミングを行うように構成され」ていることに相当する。
引用発明の「物体光の光軸を略90°折り曲げる反射面を持つ直角プリズムPR」は、本願発明の「光路を折り曲げる光学部材」に相当する。
本願明細書の実施例の記載内容を参酌すると、本願発明の「前側レンズ群」及び「後側レンズ群」とはそれぞれ、1枚のレンズからなるものも含むと解される。よって、引用発明の「第1レンズ群Gr1」を構成する「物体側に凸面を向けた負メニスカス形状の第1レンズ素子L1」は、本願発明の「負の屈折力を有する前側レンズ群」に相当し、同様に、「両凸形状の第2レンズ素子L2」は「正の屈折力を有する後側レンズ群」に相当する。また、引用発明では、「物体側から順に」「直角プリズムPR、両凸形状の第2レンズ素子L2、から構成されている」のであるから、引用発明の「両凸形状の第2レンズ素子L2」は、本願発明の「前記後側レンズ群に含まれるレンズのうち最も前記光学部材側に配置されたレンズ」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、

「 物体側より順に、全体として正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群、負の屈折力を有する第5レンズ群を具備し、少なくとも前記第2レンズ群および前記第4レンズ群を移動させることによりズーミングを行うように構成され、
前記第1レンズ群は、物体側より順に、負の屈折力を有する前側レンズ群、光路を折り曲げる光学部材、正の屈折力を有する後側レンズ群を具備し、
前記後側レンズ群に含まれるレンズのうち最も前記光学部材側に配置されたレンズは、正の屈折力を有する、
ズームレンズ。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明では、「前記後側レンズ群に含まれるすべてのレンズは、それらの外径のうち前記前側レンズ群に最も近接した側とそれに対向する側とが欠落した形状を有し」ているのに対し、引用発明ではそのような特定事項を有していない点。

(相違点2)
本願発明では、「前記後側レンズ群に含まれるレンズのうち最も前記光学部材側に配置されたレンズ」が「当該レンズの外径のうち、前記前側レンズ群に最も近接した側に形成された欠落部には、前記前側レンズ群のうち少なくとも最も前記光学部材側に配置されたレンズの外縁部が配置される」ものであるのに対し、 引用発明ではそのような特定事項を有していない点。



5.判断

レンズ系において、レンズの外径の一部を欠落させ、該欠落させることにより確保されたスペースに他の構造体を配置することは、周知の技術思想である(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-56221号公報の【0017】、図1参照)。
ズームレンズ系において、全長の短縮も含めた全体の小型化が求められるのは当業者の技術常識であり、引用発明において、「第1レンズ素子L1」や「第2レンズ素子L2」を、より「直角プリズムPR」の反射面に近接させることは、ズームレンズ系の全長を短縮する上で求められる事項であると認められるところ、例えば引用例の記載事項c(図18)で図示されたような各レンズ素子の大きさ及び配置の場合に、「直角プリズムPR」の前後に配置された各レンズ素子を、より「直角プリズムPR」の反射面に近接させると、各レンズ素子の外径部分同士が干渉することは明かであり、このような干渉を避けるために、前記周知技術を採用し、一方のレンズにおける上記干渉に係る外径部分を欠落させ、該欠落により確保されたスペースに他方のレンズの外周部が配置されるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。その際、「第1レンズ素子L1」と「第2レンズ素子L2」のいずれの外径部分を欠落させるかは、外力の影響やレンズ形状に係る強度等を考慮して、当業者が適宜決定し得る設計的事項に過ぎない。さらに、レンズの外径の一部を欠落させる際に、撮像面が矩形形状であることを考慮して欠落させる部位を決定することも周知であるので(同じく特開2000-56221号公報の【0017】、図1参照)、上記干渉に係る外径部分に加え、それに対向する側も欠落させる構成とすることも、当業者が容易に想到し得たことである。してみれば、引用発明に上記周知技術及び技術常識を採用することにより、相違点1及び相違点2に係る構成を得ることは、当業者が容易に想到できたものである。



6.効果について

本願発明による効果は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が予測し得る範囲内のものに過ぎず、格別なものとはいえない。



7.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-29 
結審通知日 2011-07-05 
審決日 2011-07-25 
出願番号 特願2003-360608(P2003-360608)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 下村 一石  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 吉川 陽吾
森林 克郎
発明の名称 ズームレンズ  
代理人 服部 毅巖  

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