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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1242799
審判番号 不服2010-7757  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-12 
確定日 2011-09-08 
事件の表示 特願2000-310016「情報処理装置および方法、コンテンツ共有システムおよび方法、並びにプログラム格納媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月 6日出願公開、特開2001-184292〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年10月11日(優先権主張平成11年10月15日)の出願であって、平成21年7月13日付けで手続補正がなされ、同年9月16日付けの最後の拒絶の理由の通知に対して、同年11月13日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、平成22年1月14日付けで同手続補正の却下の決定がされるとともに、同日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し同年4月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成22年4月12日付けの手続補正についての却下の決定
[結論]
平成22年4月12日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正後の本願発明
平成22年4月12日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、平成21年7月13日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項10(以下「補正前の請求項10」という。)は、平成22年4月12日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項10(以下「補正後の請求項10」という。)に補正された。
補正前の請求項10及び補正後の請求項10は、以下のとおりである。

補正前の請求項10
「ネットワークを介して第2の情報処理装置と接続される情報処理装置において、
所定の同一のグループに属する前記第2の情報処理装置をリストとして表示する表示手段と、
複数のコンテンツデータを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記複数のコンテンツデータの項目リストを、前記第2の情報処理装置に前記ネットワークを介して転送する転送手段と、
前記第2の情報処理装置から送信されてきた、前記第2の情報処理装置において前記項目リストから選択された項目に対応するリクエスト情報を受信する受信手段と、
前記選択された項目に対応するコンテンツデータを前記記憶手段から読み出して、前記第2の情報処理装置に送信する送信手段と
を備えることを特徴とする情報処理装置。」

補正後の請求項10
「ネットワークを介して第2の情報処理装置と接続される情報処理装置において、
所定の同一のグループに属する前記第2の情報処理装置が、前記情報処理装置と音楽データを共有可能に接続されたときに、前記第2の情報処理装置をリストとして表示する表示手段と、
複数の音楽データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記複数の音楽データの項目リストを、音楽データを共有可能に接続された前記第2の情報処理装置に前記ネットワークを介して転送する転送手段と、
音楽データを共有可能に接続された前記第2の情報処理装置から送信されてきた、前記第2の情報処理装置において前記項目リストから選択された項目に対応するリクエスト情報を受信する受信手段と、
前記選択された項目に対応する音楽データを前記記憶手段から読み出して、音楽データを共有可能に接続された前記第2の情報処理装置に送信する送信手段と
を備えることを特徴とする情報処理装置。」(下線は当審が付与。)

本件補正は、補正前の請求項10に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記第2の情報処理装置をリストとして表示する」及び「第2の情報処理装置」に、それぞれ「前記第2の情報処理装置が、前記情報処理装置と音楽データを共有可能に接続されたときに」及び「音楽データを共有可能に接続された」との限定を付加し、補正前の請求項10に記載した発明を特定するために必要な事項である「コンテンツデータ」を「音楽データ」に限定するものであって、特許法17条の2第4項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項10に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用例の記載
原査定の拒絶の理由に引用された「小さなオフィスのピアツーピアLAN入門 3人から始めるLAN」、月刊CYBIZ SOHO コンピューティング、株式会社サイビズ、平成11年8月1日、第4巻第8号、86?95頁(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 「STEP3 Windowsの設定を行う
最後に、WindowsがLANで共調動作するように設定を行う。全パソコンで[マイコンピュータ]→[コントロールパネル]→[ネットワーク]と順にアイコンをダブルクリックして開き、[識別情報]タブを以下のように設定して再起動する。」(89頁左欄11行?中欄14行)

イ 「ワークグループ名を入力
LANにも名前をつけておく。このワークグループ名は、LANに接続するすべてのパソコンで同じ名前を入力する。」(89頁下段左側の「1 識別情報(Windows95の場合はユーザー情報)を入力する」の画面表示図)

ウ 「(3)(当審注:実際は丸数字3) ファイル共有マニュアル みんなでファイルを共有すれば、相手のパソコンを「読める」「書き込める」
LANにつながったパソコン同士でダイレクトにファイルを参照・変更・コピー・移動できるようにする機能を「ファイル共有」という。オフィスの中でデータを受け渡すときに、フロッピーやMOといった記録メディアを不用にしてしまう、大変便利な機能だ。
ファイルを共有するには、「共有フォルダ」と呼ばれる特別なフォルダを作って、受け渡ししたいファイルをただそこに置けばよい。共有フォルダに置いたすべてのファイルは、自動的に共有される。そしてこのファイルは、LANにつながったパソコンから自由に参照することができる。他のパソコンの共有フォルダの中身を参照するには、デスクトップの[ネットワークコンピュータ]アイコンを開いていくだけでよい。
また、ハードディスクやCD-ROMなどのドライブを丸ごと共有することもできる。この場合は「共有ドライブ」と呼ぶ。共有ドライブの例としては、デスクトップパソコンのCD-ROMドライブがある。CD-ROMドライブを共有ドライブにすれば、LANにつないだ薄型サブノートパソコンなどからもCD-ROMを利用できるようになる。」(90頁上部左?中欄)

エ 「鈴木さんのパソコン
[マイコンピュータ]アイコンからフォルダを開いたところ。ご存じのとおり、Windowsでは自分のパソコンの[マイコンピュータ]アイコンを起点として、フォルダやファイルにアクセスしていく。
佐藤さんのパソコン
[マイコンピュータ]ではなく、[ネットワークコンピュータ]アイコンを開くと、鈴木さんのデスクトップに佐藤さんのパソコンの中身(共有フォルダ)を表示させることができる。こうすることで、あたかも鈴木さんのパソコンのファイルであるかのように読み書きできる。もちろんファイルのドラッグ&ドロップも可能。
山田さんのパソコン
佐藤さんと同様に、山田さんのパソコン(共有フォルダ)を表示。アクセスできるパソコンの条件は、LANにつながっており、同じワークグループ(前ぺージ参照)に属していることだ。パスワードなどで読み書き制限を設けることもできる。」(90頁下部の(みんなのパソコン読み書き自在、デスクトップ画面からはこう見える)の画面表示図の左右欄)

オ 90頁下部の(みんなのパソコン読み書き自在、デスクトップ画面からはこう見える)の画面表示図には、鈴木さんのデスクトップにおいて、佐藤さんのパソコンの共有フォルダの中のファイル名を付した複数のファイルが一覧表示されること、また、山田さんのパソコンの共有フォルダの中のファイル名を付した複数のファイルが一覧表示されることが記載されている。

カ 「2 共有フォルダにアクセスする
相手のパソコンの共有フォルダを参照するには、[ネットワークコンピュータ]アイコンをただ開いていけばよい。この後、普通のドラッグ&ドロップ操作によって、共有フォルダと自分のパソコンの間のファイルコピーや移動が簡単に行える。
(1)(当審注:実際は丸数字1)「ネットワークコンピュータ」をダプルクリックする
(2)(当審注:実際は丸数字2)相手のパソコンをダブルクリックする
LANにつながったパソコンを選ぶ。「識別情報」(p.89参照)で付けた名前が見えている。
(3)(当審注:実際は丸数字3)共有フォルダが見える
パソコンに作成済みの共有フォルダが見える。ダブルクリツクすれば簡単に開く。
(4)(当審注:実際は丸数字4)共有フォルダを開く
共有フォルダの中にあるファイルが見えた。「フルアクセス」が指定されていなければ、書き込みはできない。」(91頁下部「2 共有フォルダにアクセスする」の項)

キ 91頁下部の「(2)(当審注:実際は丸数字2)相手のパソコンをダブルクリックする」の画面表示図には、相手のパソコンなどが表示されることが記載されている。

ク 91頁下部の「(3)(当審注:実際は丸数字3)共有フォルダが見える」の画面表示図には、相手のパソコンの共有フォルダが表示されることが記載されている。

ケ 91頁下部の「(4)(当審注:実際は丸数字4)共有フォルダを開く」の画面表示図には、共有フォルダの中のファイル名を付した複数のファイルが一覧表示されることが記載されている。

以上の記載によれば、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「自分のパソコン及び相手のパソコンは、LANにつながっており、また、同じワークグループに属しており、
相手のパソコンは、共有フォルダを有し、
共有フォルダは、複数のファイルを有し、
自分のパソコンにおいて、
「ネットワークコンピュータ」をダプルクリックすると、LANにつながった相手のパソコンなどが表示され、
相手のパソコンをダブルクリックすると、相手のパソコンの共有フォルダが表示され、
共有フォルダをダブルクリツクすると、共有フォルダの中のファイル名を付した複数のファイルが一覧表示され、
ドラッグ&ドロップ操作によって、共有フォルダと自分のパソコンの間のファイルコピーや移動が行える
ファイル共有。」

3 対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「相手のパソコン」及び「自分のパソコン」は、それぞれ本願補正発明の「情報処理装置」及び「第2の情報処理装置」に相当する。また、引用発明の「LAN」は、本願補正発明の「ネットワーク」に相当する。さらに、引用発明において、相手のパソコンが、LANを介して自分のパソコンと接続されているのは明らかである。したがって、引用発明の「相手のパソコン」は、本願補正発明の「ネットワークを介して第2の情報処理装置と接続される情報処理装置」に相当する。
引用発明の「同じワークグループ」は、本願補正発明の「所定の同一のグループ」に相当する。
引用発明の「ファイル」は、本願補正発明の「データ」に相当する。
引用発明において、自分のパソコンが、相手のパソコンの共有フォルダの中の複数のファイルを共有可能に接続されていることは明らかである。
引用発明において、相手のパソコンの共有フォルダは複数のファイルを有することから、相手のパソコンが、共有フォルダの中の複数のファイルを記憶する記憶手段を有していることは明らかである。
引用発明の「ファイル名」は、本願補正発明の「項目」に相当する。
引用発明において、自分のパソコンの画面に、相手のパソコンの共有フォルダの中のファイル名を付した複数のファイルが一覧表示されることから、相手のパソコンの記憶手段に記憶された複数のファイルのファイル名の一覧が、自分のパソコンにLANを介して転送されていることは明らかである。ここで、「複数のファイルのファイル名の一覧」は、本願補正発明の「複数のデータの項目リスト」に相当する。
引用発明において、ドラッグ&ドロップ操作によって、共有フォルダと自分のパソコンの間のファイルコピーや移動が行えることから、自分のパソコンにおいて、相手のパソコンの共有フォルダの中のファイル名を付した複数のファイルの一覧から選択されたファイル名を付したファイルをドラッグ&ドロップ操作することにより、選択されたファイル名に対応するリクエスト情報が相手のパソコンに送信され、相手のパソコンにおいて、送信されたリクエスト情報を受信し、リクエスト情報のファイル名に対応するファイルを記憶手段から読み出して、読み出したファイルを自分のパソコンに送信していることは、明らかである。

すると、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「ネットワークを介して第2の情報処理装置と接続される情報処理装置において、
複数のデータを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記複数のデータの項目リストを、データを共有可能に接続された前記第2の情報処理装置に前記ネットワークを介して転送する転送手段と、
データを共有可能に接続された前記第2の情報処理装置から送信されてきた、前記第2の情報処理装置において前記項目リストから選択された項目に対応するリクエスト情報を受信する受信手段と、
前記選択された項目に対応するデータを前記記憶手段から読み出して、データを共有可能に接続された前記第2の情報処理装置に送信する送信手段と
を備えることを特徴とする情報処理装置。」

一方、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本願補正発明では、データが音楽データであるのに対し、引用発明では、データの種類について明確な記載がない点。
<相違点2>
本願補正発明では、所定の同一のグループに属する第2の情報処理装置が、情報処理装置と音楽データを共有可能に接続されたときに、第2の情報処理装置をリストとして表示する表示手段を備えるのに対し、引用発明では、所定の同一のグループに属する第2の情報処理装置が情報処理装置とデータを共有可能に接続されることについては記載があるが、接続されたときに第2の情報処理装置をリストとして表示する表示手段については明確な記載がない点。

4 当審の判断
上記相違点について検討する。
<相違点1についての検討>
情報処理装置の処理するデータとして、テキストデータ、画像データ、音楽データ又は映像データなどがあるが、どのような種類のデータを用いるかは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計的事項にすぎない。したがって、引用発明において、データを音楽データとすることは、当業者が適宜なし得ることである。

<相違点2についての検討>
ネットワークに接続する複数の情報処理装置が会話などのデータを共有するシステムにおいて、データを共有している現在の参加者のリストを表示する表示手段を備える技術は、例えば、特開平11-242545号公報(特に、段落【0014】及び図2参照。)及び特開平11-161588号公報(特に、段落【0024】?【0025】及び図5、6参照。)に記載されているように、本願優先日前周知である。この場合において、新たな情報処理装置が共有可能に接続されたときに、当該情報処理装置の利用者が現在の参加者のリストに表示されることは、明らかである。そして、参加者のリストは、接続された情報処理装置を利用している利用者のリストとなっているが、利用者のリストに代えて、利用者が利用している情報処理装置のリストとすることは、当業者が適宜なし得る程度のことである。
また、音楽データについては、上記<相違点1についての検討>で述べたとおりである。
したがって、引用発明において、上記周知技術を適用して、所定の同一のグループに属する第2の情報処理装置が、情報処理装置と音楽データを共有可能に接続されたときに、第2の情報処理装置をリストとして表示する表示手段を備えるように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。

また、本願補正発明の構成によって生じる効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる程度のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
平成22年4月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項10に係る発明(以下「本願発明」という。)は、補正前の請求項10に記載された事項により特定される、前記「第2 1」に記載したとおりのものであると認める。

1 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 2」に記載したとおりである。

2 当審の判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から、「前記第2の情報処理装置が、前記情報処理装置と音楽データを共有可能に接続されたときに」及び「音楽データを共有可能に接続された」との構成を省き、「音楽データ」を「コンテンツデータ」に戻したものである。そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 4」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について論及するまでもなく、本願は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-07 
結審通知日 2011-07-12 
審決日 2011-07-27 
出願番号 特願2000-310016(P2000-310016)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須藤 竜也  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 中野 裕二
稲葉 和生
発明の名称 情報処理装置および方法、コンテンツ共有システムおよび方法、並びにプログラム格納媒体  
代理人 稲本 義雄  

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