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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B21D
管理番号 1242810
審判番号 不服2010-19172  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-25 
確定日 2011-09-08 
事件の表示 特願2007-148378「アイオニングダイ及びパイロットリング」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月30日出願公開、特開2007-216302〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成14年8月14日(優先権主張、平成13年12月19日)に出願した特願2002-236405号(以下「本願原出願」という。)の一部を平成19年6月4日に新たな特許出願としたものであって、同22年3月5日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月12日に手続補正がなされ、同年5月27日付けで拒絶査定がされ、同年8月25日に本件審判の請求がなされ、当審において同23年4月18日付けで拒絶理由が通知され、同年6月17日に手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年6月17日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりと認められる。

「ホルダにダイを支持し、該ダイと同軸上に配置したパンチスリーブの先端に有底円筒状のワークを外挿し、該パンチスリーブを前記ダイに向けて前進させ、前記ワークを前記ダイの内部に押込むことによって前記ワークにしごき加工を施すアイオニングダイにおいて、
前記ホルダは、前記ダイの貫通孔と略同一内径の貫通孔を同軸上に有するパイロットリングを、前記ダイの押込み方向出口側に備え、前記ワークが前記ダイを通過した直後に、前記ワークの外周が前記パイロットリングに接触する構成とされており、
前記ダイは、しごき加工面と、このしごき加工面を中央にして、ダイの押し込み方向入口側及び押し込み方向出口側に所定の角度で拡径するテーパ面と、を有しており、
前記パイロットリングの前記貫通孔の最小内径部の内径が前記ダイのしごき加工面と略同一内径とされており、
前記パイロットリングは、前記貫通孔の押込み方向出口側に、出口方向に向かって徐々に拡径するテーパ面を有することを特徴とするアイオニングダイ。」

3.刊行物記載の発明
(1)刊行物1
これに対し、本願原出願の優先日前に頒布された刊行物であって、当審で通知した拒絶理由に引用された特公昭41-3524号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のように記載されている。

ア.第1ページ右欄第23?38行
「予め浅いコツプ状に成形された素材が本発明の装置に依り最終の深さ迄延伸される場合には、間隙35はコツプ状素材を受け容れるのに充分な大きさになされ且ダイス8は、展延用ダイス5と同様な展延用ダイスに置換えられる。
案内素子1はダイスとは別個な一ユニットとして作られてもよいし或は図面に示されたようにダイス5,6のリング2及び3と組合わされてもよい。此の案内素子は展延用ダイス5及び6の場合にはダイス孔4,4’の出口端部に、又ダイス8がコツプ状体形成用のダイスの場合にはダイス孔7の出口端部に隣接して夫々1,1’,1″で示されるように配置される。ダイス5のダイス孔4がダイス6のダイス孔4’より大きく且ダイス8のダイス孔7がダイス5と6の孰れのダイス孔よりも大であることは勿論である。通常前記案内素子の開口1a,1a’,1a″の直径又は円周は夫らと組合わされたダイスのダイス孔より僅かだけ大きい。」

イ.第1ページ右欄第43行?第2ページ左欄第2行
「本装置の展延作動に於ては、加工物は先ずコツプ状態成形用ダイス8に於てコツプ状体に形成され、次に前記コツプ状体の壁は順次径の小さいダイス孔を有するダイス5及び6に於て展延されて漸進的に伸長され、この展延作用によりコツプ状体の頂部には不規則な端縁10が生じるようになる。斯く形成された不規則形部分は耳と呼ばれている。」

ウ.第2ページ左欄第36?41行
「だがコツプ形成ダイスと、展延ダイスとの吐出端部に隣接して案内素子1を使用することに依り、前記両ダイスに関するパンチと加工物との心外れと、加工物の壁の好ましからぬ厚肉化とは、加工物が展延用のダイス又はコツプ形成用のダイスとを離れて次に続いたダイスに進入する迄前記加工物が完全に支持されるので、防止されるのである。」

エ.第1図、第2図
ダイスホールダー30がダイス5を支持すること、
ダイス5と同軸上に成形用パンチPが配置されること、
ダイス5が、しごき加工面と、しごき加工面を中央にして、ダイス5の押し込み方向入口側及び押し込み方向出口側に所定の角度で拡径するテーパ面を有すること、
が看取できる。

上記ア.のとおり、「案内素子1はダイスとは別個な一ユニットとして作られてもよい」ことから、案内素子1とダイスとは、別なものと解する。

これらを、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理すると、上記刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ダイスホールダー30にダイス5を支持し、該ダイと同軸上に配置した成形用パンチPの先端に浅いコツプ状に成形された素材を外挿し、該成形用パンチPを前記ダイス5に向けて前進させ、前記素材を前記ダイス5の内部に押込むことによって前記素材に展延しごき加工を施す装置において、
前記ダイスホールダー30は、前記ダイス5のダイス孔より僅か大きい径の開口1a’と略同一内径の貫通孔を同軸上に有する案内素子1を、前記ダイス5の押込み方向出口側に備え、前記素材が前記ダイス5を通過した後に、前記素材の外周が前記案内素子1に接触する構成とされており、
前記ダイス5は、しごき加工面と、このしごき加工面を中央にして、ダイの押し込み方向入口側及び押し込み方向出口側に所定の角度で拡径するテーパ面と、を有する装置。」

(2)刊行物2
同じく、実願昭58-93144号(実開昭60-1515号)のマイクロフイルム(以下「刊行物2」という。)には、次のように記載されている。

ア.明細書第2ページ第1?9行
「この考案は、例えば炭酸飲料缶あるいはビール缶等を加工する製缶装置の改良に係るもので、加工時における耳切れ現象等の欠陥を防止して、品質の安定化を図ることを目的とするものである。
従来のこの種缶製品は、絞り及びしごき加工によつて作られる場合が殆んどである。そして、この種アイアニング加工に使用されるダイス1は、・・・。」

イ.明細書第5ページ第15行?第6ページ第19行
「前記ダイス6は、第4図に示すように、従来のダイスと同様にダイス鋼等の台金2に超硬3を焼きばめて成り、そして、超硬3の内径部分には、加工基部を構成するランド部14と、このランド部14の材料供給側に形成されるアプローチ部15と、ランド部14の取り出し側に形成される逃げ部16とが設けられている。この場合、前記アプローチ部15及び逃げ部16は、それぞれランド部14から離隔する方向に向つて拡開するアプローチ角θ_(3)及び逃げ角θ_(4)等の傾斜角を有しており、前者のアプローチ角θ_(3)は通常のこの種ダイスと同じく6?10°となつているが、後者の逃げ角θ_(4)は0°6'?0°20’と非常に小さく形成されている。これは斜め缶(缶材料)の低い部分がダイス6のランド部14を通り抜けた後も、逃げ角θ_(4)のテーパ面が缶材料に接触するようにしたためで、ダイス6の許容移動範囲内において缶材料に接触するような狭小角度に設定される。したがつて、缶材料のエツジが薄くなるのを防止でき、その部分の耳切れ現象が発生しなくなると同時に、缶材料の高い部分も加工されることになり、次のダイスでの加工に無理がかからなくなり、大きな耳切れも無くなることになる。」

上記記載を、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえ整理すると、刊行物2には、以下の事項(以下「刊行物2事項」という。)が記載されていると認める。

「アイアニング加工に使用されるダイス1であって、加工時における品質の安定化を図るため、ランド部14の取り出し側に形成される逃げ部16について、缶材料の低い部分がダイス6のランド部14を通り抜けた後も、逃げ角θ_(4)のテーパ面が缶材料に接触するようにしたもの。」

4.対比・判断
刊行物1発明の「ダイスホールダー30」は本願発明の「ホルダ」に相当し、同様に、「ダイス5」は「ダイ」に、「成形用パンチP」は「パンチスリーブ」に、「浅いコツプ状に成形された素材」は「有底円筒状のワーク」に、「展延」は「しごき」に、「ダイス孔」は「貫通孔」に、「案内素子1」は「パイロットリング」に、それぞれ相当する。
刊行物1発明の「後」と、本願発明の「直後」とは、「後」である限りにおいて一致する。
刊行物1発明の「装置」は、その機能からみて「アイオニングダイ」ということができる。

そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。
「ホルダにダイを支持し、該ダイと同軸上に配置したパンチスリーブの先端に有底円筒状のワークを外挿し、該パンチスリーブを前記ダイに向けて前進させ、前記ワークを前記ダイの内部に押込むことによって前記ワークにしごき加工を施すアイオニングダイにおいて、
前記ホルダは、前記ダイの貫通孔と略同一内径の貫通孔を同軸上に有するパイロットリングを、前記ダイの押込み方向出口側に備え、前記ワークが前記ダイを通過した後に、前記ワークの外周が前記パイロットリングに接触する構成とされており、
前記ダイは、しごき加工面と、このしごき加工面を中央にして、ダイの押し込み方向入口側及び押し込み方向出口側に所定の角度で拡径するテーパ面と、を有しているアイオニングダイ。」

そして、以下の点で相違する。
パイロットリングについて、本願発明では「パイロットリングの前記貫通孔の最小内径部の内径が前記ダイのしごき加工面と略同一内径とされており、前記パイロットリングは、前記貫通孔の押込み方向出口側に、出口方向に向かって徐々に拡径するテーパ面を有」し、ワークがダイを通過した「直後」に接触するものであるが、刊行物1発明では「ダイの孔より僅か大きい径の開口1a’と略同一内径の貫通孔」であり、テーパ面を有するものではなく、ワークがダイを通過した「後」に接触するものである点。

相違点について検討する。
刊行物2事項は、上記のとおり、刊行物1発明同様「アイオニング加工」に関するものである。
また、刊行物2事項により、「加工時における品質の安定化」が期待され、このことは、刊行物1発明においても、望ましいことである。
よって、刊行物1発明に、刊行物2事項の「逃げ部16について、缶材料の低い部分がダイス6のランド部14を通り抜けた後も、逃げ角θ_(4)のテーパ面が缶材料に接触する」点、すなわち、ダイの押込み方向出口側を出口方向に向かって徐々に拡径する連続テーパ面とする点を適用することに困難性は認められない。
これにより、刊行物1発明のパイロットリングは、連続テーパ面とするために、「パイロットリングの前記貫通孔の最小内径部の内径が前記ダイのしごき加工面と略同一内径とされており、前記パイロットリングは、前記貫通孔の押込み方向出口側に、出口方向に向かって徐々に拡径するテーパ面を有」し、ワークがダイを通過した「直後」に接触するものとなる。
請求人は、意見書で、刊行物1発明と刊行物2事項とは、パイロットリングの位置が異なるから、組合せ困難と主張するが、上記のとおり、適用しえないとまでは認められない。

5.むすび
本願発明は、刊行物1発明、刊行物2事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-05 
結審通知日 2011-07-12 
審決日 2011-07-25 
出願番号 特願2007-148378(P2007-148378)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 睦  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 藤井 眞吾
長屋 陽二郎
発明の名称 アイオニングダイ及びパイロットリング  
代理人 高橋 詔男  
代理人 細川 文広  
代理人 西 和哉  
代理人 佐伯 義文  
代理人 志賀 正武  
代理人 山崎 哲男  

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