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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1242817
審判番号 不服2010-23085  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-13 
確定日 2011-09-08 
事件の表示 特願2005-255949号「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成19年3月22日出願公開、特開2007-71414号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年9月5日の出願であって、平成22年7月14日付け(発送日:同20日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年10月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、審判請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成22年10月13日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年10月13日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、請求項1は次のように補正された。
「断熱区画された貯蔵室を備えた冷蔵庫本体と、前記貯蔵室に備えられた光源とを有し、前記光源によって照射される光は、設定温度に即して色調が切り替わるとともに、前記貯蔵室はユーザーの設定により冷凍温度から冷蔵温度までの間の数段階に設定温度を切り替えることが可能であり、前記光源は照射した光の波長を変換することができる瞳孔盤を備え、前記設定温度が変更されたとき、設定温度に達するまで室内の色調を段階的に変化させる場合に、前記光源および前記瞳孔盤を用いて複数の波長の光を照射することを特徴とする冷蔵庫。」(下線は補正個所を示す。)

2.補正の目的
本件補正は、発明を特定するために必要な事項である貯蔵室について「冷凍温度から冷蔵温度までの間の数段階に設定温度を切り替えることが」可能であることを限定するとともに、光源について「照射した光の波長を変換することができる瞳孔盤を備え」るものであり、色調を段階的に変化させる場合に、「光源および前記瞳孔盤を用いて複数の波長の光を照射すること」を限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか。)について以下に検討する。

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2004-286333号公報(以下「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.段落【0001】?【0002】
「【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却室内の温度を庫内灯の色変化によって表示するようにした冷凍冷蔵庫に関するものである。
【従来の技術】
冷凍冷蔵庫は、例えば図8に示すように、最上段に冷蔵室1(約3℃)、その下段に横並びで切替室2と製氷室3(約-19℃)、その下段に野菜室4(約7℃)、最下段に冷凍室5(約-19℃)が配置されている。切替室2は冷却温度設定の切替によってソフト冷凍室(約-8℃)、パーシャル室(約-3℃)、チルド室(約0.5℃)、ワイン室(約10℃)等として使用される。そして、冷却室の温度を表示するタイプの冷凍冷蔵庫では、表示/操作部6が設けられ、ここにおいて各冷却室の内部温度をサーミスタ等の温度センサで検知して数値表示している。図9はこの表示/操作部6を示す図であり、7はLCD(液晶)等からなる温度数値表示部を、8は温度設定やその他の操作のためのボタン等からなる操作部を示す。」(下線は当審で付与。以下、同様。)
イ.段落【0017】?【0018】
「【発明の実施の形態】
本実施形態では、冷蔵室や冷凍室等の冷却室の扉を開いたときにそれに連動して作動する扉スイッチによって庫内灯が点灯する冷凍冷蔵庫において、庫内灯に庫内の食品を照らすという役割・目的以外に、庫内灯の色を庫内の温度に応じて変化させる機能を持たせる。庫内にはサーミスタ等の温度センサを設置して、その温度センサで検知した庫内温度に応じて、その温度が高いときは暖色系、低いときは寒色系の色に変化させ、庫内温度に追尾してリニアに又は離散的に色を変化せる。このときの庫内灯は3原色LEDや3原色LCDなどの色光源で構成し、温度と色の関係を所望の関係に設定する。
このようにすることで、数値ではなく色によって庫内温度が表示されるので、、各個人の持つ漠然とした色彩の感情効果(温度感覚)に強い印象を与えることでき、数値による定量的表示よりも冷却内容が実感できやすくなり、ユーザによる扉の開閉頻度や扉の開放時間が抑制されやすくなる。また、温度と色光源の色との関係は任意に設定できるので、微妙な温度変化を大きな色変化で表すことも可能となり、わずかな温度変化が貯蔵食品の品質に影響与える冷凍冷蔵庫に好適となる。」
ウ.段落【0020】?【0026】
「【実施例】
以下、冷凍冷蔵庫の内の冷蔵室の温度表示を行う場合の実施例について詳しく説明する。図2は冷蔵室の制御ブロック図である。11はマイクロコンピュータ等からなる制御部、12は温度設定その他を行うための操作部、13は冷蔵室1に設けたサーミスタからなる温度センサ、14は冷蔵室1の扉を開放すると連動して作動する扉スイッチ、15は3原色LED(発光ダイオード)からなる色光源をもつ庫内灯、16は冷凍サイクル、17はその冷凍サイクルの蒸発器で生成した冷気をダクトを介して冷蔵室1内に吹き出す送風ファン、18は設定温度等を格納するメモリ、19は他の電気系統である。図3は制御系統図であり、冷凍サイクル16は圧縮機21、凝縮器22、キャピラリー23、蒸発器24を具備し、圧縮機21が制御部11によって制御される。
図4はこの庫内灯15を制御するフローチャートである。まず、冷蔵室1の扉が開いたか否かを判定して、開いたときは庫内灯15を点灯させる。そして、庫内灯15を点灯させた後は、反復記号Iを0に設定して、それを1つインクリメントする度に温度センサ13で検知した温度Tsに応じて、庫内灯15の色を制御し、I=10になるまでこれを繰り返す。冷蔵室1の場合であるので、色の制御は温度Tsが0℃<Ts<10℃の範囲において複数の温度帯を予め区画しておき、各温度帯に特定の色を割り当てる。このとき、特定の温度帯の色には明暗の区別も行う。また、高い温度帯には暖色系の色を、低い温度帯には寒色系の色を割り当てる。
・・・
庫内灯15では、赤、青、緑の3原色の光の組み合わせにより、1つの色を表現する。この3原色を組み合わせると、例えば図5に示すように多数の色を表すことができる。そこで、この庫内灯15は、図6に示すように、筒状体31に赤、緑、青のLED32R,32G,32Bを収納して3原色LEDからなる色光源33を構成し、この色光源33を回転台座34の表面の中央に1個、周囲に8個で合計9個配置し、その表面側を磨りガラスのような光拡散効果の大きな材質のカバー(図示せず)で覆って構成する。なお、色光源33の回転台座34への取り付けは、波長の短い青色のLED32Bを外周側に位置させる。また、回転台座34は扉スイッチ27が扉開放により作動したときモータ等によって回転するように構成する。また、回転台座34は、光の乱反射しやすい白色のABS板のようなプラスチックプレート等を材質とし、必要に応じてランダムな傷をつけて乱反射効果を高めたものとする。このような庫内灯15の取付位置は、冷蔵室1の冷気ダクト吐出口近傍の壁面、他の壁面、天井等とし、その場所に埋設させる。
以上により、複数の色光源33の発光光は、カバー内における回転台座34の定速回転によって混合されカバーによって拡散されて冷蔵室1内に放射されるので、1つの色の面光源として機能する。
・・・
なお、以上は冷蔵室1の庫内灯について説明したが、他の冷却室の庫内灯についても全く同様に実施できることは勿論であり、また、冷凍室と冷蔵室をもつ冷凍冷蔵庫を対象としたが、冷凍室のみをもつもの、冷蔵室のみをもつものにも同様に適用できる。発明の名称として「冷凍冷蔵庫」としたが、これは冷凍冷蔵庫、冷凍庫、冷蔵庫のいずれも含む概念である。また、以上では色光源33に3原色LEDを使用したが、3原色LCD(液晶)を使用することもできる。・・・」
エ.段落【0027】
「【発明の効果】
以上から本発明によれば、温度センサが検知した温度によって色を変化させる3原色LEDや3原色LCDを庫内灯の色光源に使用するので、扉を開けたときの庫内温度を庫内灯の色によって表示することができるばかりか、温度センサが検知した温度と色表示との関係を任意に設定することができるので、若干の温度変化でも色変化を大きくさせることが可能であり、扉を開けているときの庫内の温度変化をユーザに強力にアッピールできる利点がある。」
オ.記載ウの「他の冷却室の庫内灯についても全く同様に実施できる」との記載によれば、冷却室として記載アの「冷却温度設定の切替によってソフト冷凍室(約-8℃)、パーシャル室(約-3℃)、チルド室(約0.5℃)、ワイン室(約10℃)等として使用される」切替室にも適用できることは明らかである。

これら記載事項、図示内容及び認定事項を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「冷却室を備えた冷凍冷蔵庫本体と、前記冷却室に備えられた庫内灯とを有し、前記庫内灯の色を庫内の温度に応じて色を変化させるとともに、前記冷却室はソフト冷凍室(約-8℃)、パーシャル室(約-3℃)、チルド室(約0.5℃)、ワイン室(約10℃)等に使用される切替室であり、庫内灯は、赤、青、緑の3原色の光の組み合わせであり、庫内灯の色を庫内の温度に応じて変化させるとき、庫内灯は複数の温度帯を予め区画しておき、各温度帯に特定の色を割り当てる冷凍冷蔵庫。」

4.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、機能または作用等からみて、後者の「冷却室」は、前者の「貯蔵室」に相当し、以下同様に、「冷凍冷蔵庫本体」は「冷蔵庫本体」に、「庫内灯」は「光源」に、「冷凍冷蔵庫」は「冷蔵庫」に、それぞれ相当する。
また、後者の「前記庫内灯の色を庫内の温度に応じて色を変化させる」ことは、庫内灯によって照射される光が庫内の温度に応じて色が変化することであるから、前者の「前記光源によって照射される光は、設定温度に即して色調が切り替わる」ことに相当する。さらに、後者の「前記冷却室はソフト冷凍室(約-8℃)、パーシャル室(約-3℃)、チルド室(約0.5℃)、ワイン室(約10℃)等に使用される切替室」であることは、切替室がソフト冷凍室(約-8℃)からワイン室(約10℃)までの間の数段階に設定温度を切り替えることが可能であるあから、前者の「前記貯蔵室はユーザーの設定により冷凍温度から冷蔵温度までの間の数段階に設定温度を切り替えることが可能で」あることに相当する。
そして、後者の「庫内灯の色を庫内の温度に応じて変化させるとき、庫内灯は複数の温度帯を予め区画しておき、各温度帯に特定の色を割り当てる」ことは、庫内の温度が変わったとき、庫内灯を庫内の温度帯に応じて特定の色とすることであるから、前者の「設定温度が変更されたとき、設定温度に達するまで室内の色調を段階的に変化させる」ことに相当する。
そうすると、後者の「冷却室」が断熱区画されていることは明らかであるから、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。

(一致点)
「断熱区画された貯蔵室を備えた冷蔵庫本体と、前記貯蔵室に備えられた光源とを有し、前記光源によって照射される光は、設定温度に即して色調が切り替わるとともに、前記貯蔵室はユーザーの設定により冷凍温度から冷蔵温度までの間の数段階に設定温度を切り替えることが可能であり、前記設定温度が変更されたとき、設定温度に達するまで室内の色調を段階的に変化させる冷蔵庫。」

そして、両者は次の点で相違する。
(相違点)
光源について、本願補正発明では、光源は照射した光の波長を変換することができる瞳孔盤を備え、前記光源および前記瞳孔盤を用いて複数の波長の光を照射するものであるのに対し、引用発明では、庫内灯は、赤、青、緑の3原色の光の組み合わせである点。

5.相違点の判断
可変色の光源として、光源が照射した光の波長を変換することができる板部材を備えて、光源と板部材を用いて複数の波長の光を照射することで可変色とすることは、例えば、特開平4-248204号公報(光源40と円盤状混色フィルタ10)、特開昭62-61003号公報(光源31と多色フィルタ33)に見られるように従来周知であり、引用発明の光源を可変色とするに際して、従来周知の光源を採用して、上記相違点に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成22年4月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「断熱区画された貯蔵室を備えた冷蔵庫本体と、前記貯蔵室に備えられた光源とを有し、前記光源によって照射される光は、設定温度に即して色調が切り替わるとともに、前記貯蔵室はユーザーの設定により設定温度を変更可能であり、前記設定温度が変更されたとき、設定温度に達するまで室内の色調を段階的に変化させる冷蔵庫。」

第4 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、その記載事項及び認定事項並びに引用発明は、前記「第2 3.」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、前記「第2 1.」の本願補正発明から、貯蔵室について「冷凍温度から冷蔵温度までの間の数段階に設定温度を切り替えることが」可能であるとの限定を省くとともに、光源について「照射した光の波長を変換することができる瞳孔盤を備え」るものであり、色調を段階的に変化させる場合に、「光源および前記瞳孔盤を用いて複数の波長の光を照射する」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 5.」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-06 
結審通知日 2011-07-12 
審決日 2011-07-25 
出願番号 特願2005-255949(P2005-255949)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25D)
P 1 8・ 575- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千壽 哲郎久保 克彦  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 冨岡 和人
青木 良憲
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 藤井 兼太郎  
代理人 永野 大介  
代理人 内藤 浩樹  

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