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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1242820
審判番号 不服2010-24134  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-26 
確定日 2011-09-08 
事件の表示 特願2004- 39627「ウッド型ゴルフクラブ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月 2日出願公開、特開2005-230054〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年2月17日の出願であって、平成22年5月21日付けで手続補正がなされ、同年7月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月26日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、その請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成22年10月26日付けの手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成22年10月26日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成22年10月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び明細書についてするもので、特許請求の範囲については、本件補正前に、

「【請求項1】
シャフト重量Msが30g以上で60g以下であり、クラブ長さが42.0インチ以上で44.0インチ以下であり、ヘッド重量Mh(g)が215.0g以上で236.7g以下であり、且つ、ヘッド重量Mh(g)とシャフト重量Ms(g)とが次の式(C)及び式(B)を満たす関係に設定されていることを特徴とするウッド型ゴルフクラブ。
Mh≦-0.14・Ms+240.9 ・・・(B)
Mh≧0.1・Ms+212 ・・・(C)」
とあったものを、

「【請求項1】
グリップ部分に重りを有しないシャフトのシャフト重量Msが30g以上で60g以下であり、クラブ長さが42.0インチ以上で44.0インチ以下であり、ヘッド重量Mh(g)が215.0g以上で236.7g以下であり、クラブ総重量が313.0g以上で360.5g以下であり、クラブバランスがD2.5?D5であり、且つ、ヘッド重量Mh(g)とシャフト重量Ms(g)とが次の式(C)及び式(B)を満たす関係に設定されていることを特徴とするウッド型ゴルフクラブ。
Mh≦-0.14・Ms+240.9 ・・・(B)
Mh≧0.1・Ms+212 ・・・(C)」
とするものである(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(2)上記(1)の請求項1に係る本件補正は、次の補正内容からなる。
ア 本件補正前の請求項1の発明特定事項である「シャフト」を、「グリップ部分に重りを有しない」ものと限定する。
イ 本件補正前の請求項1の発明特定事項である「ゴルフクラブ」を、「クラブ総重量が313.0g以上で360.5g以下であり、クラブバランスがD2.5?D5であ」るものと限定する。

2 本件補正の目的
上記1(2)ア及びイの補正内容は、いずれも本件補正前の請求項1の発明特定事項を限定して、本件補正後の請求項1とするものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「旧特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるか(旧特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

3 独立特許要件
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載について
ア 特許法第36条第6項第1号違反
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1には、
「Mh≦-0.14・Ms+240.9 ・・・(B)
Mh≧0.1・Ms+212 ・・・(C)」
という、ヘッド重量Mh(g)及びシャフト重量Ms(g)をパラメータとした数値限定に関する記載がある。
(ア)本願明細書に開示された発明の課題と、本願の特許請求の範囲の請求項1の上記記載との技術的関係
a 本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0002】ないし【0004】には、発明の課題に関する記載があり、該記載によれば、従来のウッド型ゴルフクラブに対して、シャフト重量とヘッド重量との関係を最適化することにより、飛距離性能に優れたウッド型ゴルフクラブを提供するという目的に対し、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された構成を採用することにより、上記目的を達成することができたとされることが開示されていると認められる。
b しかしながら、本願明細書の発明の詳細な説明には、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に示された上記パラメータによる数値限定と、発明の解決しようとする課題との間の技術的関係について記載も示唆もされていない。
c 一方、本願明細書の発明の詳細な説明には、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に示された上記パラメータによる数値限定に関して、以下の記載がある。
(a) 「【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、グリップ部分に重りを有しないシャフトのシャフト重量Msが30g以上で60g以下であり、クラブ長さが42.0インチ以上で44.0インチ以下であり、ヘッド重量Mh(g)が215.0g以上で236.7g以下であり、クラブ総重量が313.0g以上で360.5g以下であり、クラブバランスがD2.5?D5であり、且つ、ヘッド重量Mh(g)とシャフト重量Ms(g)とが次の式(C)及び式(B)を満たす関係に設定されていることを特徴とするウッド型ゴルフクラブとしている。
Mh≦-0.14・Ms+240.9 ・・・(B)
Mh≧0.1・Ms+212 ・・・(C)
このようにすると、シャフト重量が30g以上で60g以下であるから、シャフトが重くなりすぎることによるスイングスピードの低下が抑えられる。
また、ヘッド重量とシャフト重量とを上記式(B)と式(C)の範囲内に設定しているので、スイング中におけるシャフトの撓り挙動及びスイングに要する時間(スイングのトップからインパクトまでの時間)が適切に考慮されることとなり、ヘッド重量Mhとヘッドスピードとのバランスが最適化されて飛距離が増大するが、詳細については後述する。」
(b) 「 【0017】
シャフト重量Msとヘッド重量Mhとのバランスを考慮することにより、インパクトにおけるシャフトの撓み状態を適切とすることができる。
ヘッド重量Mhが比較的軽い場合、切り返し時のゴルフクラブkにおけるシャフト2の撓み量が比較的少なくなり、該切り返し時におけるヘッド3のシャフト軸線zからの変位kh(図1参照)が小さくなる。したがってこの場合、シャフト軸に対するヘッドスピードzsは(仮に前記状態αに近い状態でインパクトを迎えたとしても)比較的小さくなるから、インパクト直前のヘッドスピードVh0も小さくなる。
また、前記変位khが小さいため、切り返し時におけるシャフト2の撓りがもとに戻るまでに要する時間が少なくなり、ダウンスイング間においてシャフト2は略真っ直ぐな状態を経由して更にスイング方向前方に撓った状態(即ち前記状態γ)でインパクトを迎える確率が高くなる。よってこれも、前記ヘッドスピードVh0を低下させる要因となるとともに、シャフト2、ヘッド3及びグリップ4の相対的な位置関係がアドレス時と相違してしまうことになる。
【0018】
そこで、ヘッド重量Mhが比較的軽い場合、飛距離を向上させるためには次の(1)及び(2)の点が重要となる。
(1)ヘッド重量Mhが軽くなるほどシャフト重量Msも大幅に軽量化して、スイングスピードspを大きくなるようにする。これによりインパクト直前のヘッドスピードVh0を大きくなり、且つヘッド重量の減少に伴う飛距離低下を補うことができる。
(2)スイングスピードspを大きくし、短時間に振り下げてダウンスイング間に要する時間を小さくすることにより、前記状態γでインパクトされるのをできるだけ防止し、前記状態αに近い状態でインパクトされるようにする。
上記(1)及び(2)により、インパクト直前のヘッドスピードVh0が最大限とすることが可能となり、これは、次の式(A)
Mh≧Ms+155 ・・・ (A)
を満たす関係にヘッド重量Mh及びシャフト重量Msを設定することにより達成され、
更には次の式(C)
Mh≧0.1・Ms+212 ・・・ (C)
を満たす関係にヘッド重量Mh及びシャフト重量Msを設定することにより達成される。
【0019】
ヘッド重量Mhが比較的重い場合には、切り返し時のゴルフクラブkにおけるシャフト2の撓み量が比較的多くなり、該切り返し時におけるヘッド3のシャフト軸線zからの変位kh(図1参照)が大きくなる。したがってこの場合、切り返し時におけるシャフト2の撓りがもとに戻るまでに要する時間が長くなるから、ダウンスイング間においてシャフト2は略真っ直ぐな状態に戻る前、即ち前記状態βでインパクトを迎える確率が高くなる。よって、シャフト軸に対するヘッドスピードzsが低下し、ヘッドスピードVh0が低下する可能性が高くなる。また、状態βでインパクトされやすくなるから、シャフト、ヘッド3及びグリップ4の相対的な位置関係がアドレス時と相違しやすくなる。
【0020】
更に、ヘッド重量Mhが比較的重い場合には、クラブ総重量やクラブバランスが比較的大きくなり、スイングスピードsp低下への影響が大きくなる。上述したヘッド重量Mhが比較的軽い場合には、ヘッド重量Mhが重いほどシャフト重量Msを重くしたが、ヘッド重量Mhが比較的重い場合に同様の関係とすると、クラブ総重量やクラブバランスが重くなりすぎてスイングスピードsp低下への影響が比較的大きくなる。
【0021】
そこで、ヘッド重量Mhが比較的重い場合に飛距離を向上させるためには、次の(3)?(5)が重要となる。
(3)ヘッド重量Mhが重いほどシャフト重量Msをある程度軽量化して、クラブ総重量やスイングバランスの増大によるスイングスピードsp低下の影響を最小限とする。
(4)ヘッド重量Mhが比較的重いため、シャフト重量Msを軽量化しすぎるとダウンスイング間に要する時間が短くなりすぎて、シャフト2が略真っ直ぐな状態に戻る前の状態βでインパクトを迎える確率が高くなるから、シャフト重量Msの重量をある程度確保してダウンスイング間に要する時間を長くし、前記状態αに近い状態でインパクトされるようにする。これにより、シャフト軸に対するヘッドスピードzsを向上させるとともに、シャフト2とヘッド3及びグリップ4の相対位置関係をアドレス時とできるだけ一致させる。
(5)上記(3)及び(4)を併せて考えると、上記(3)によりヘッド重量Mhが重いほどシャフト重量Msを軽量化するが、(4)を考慮すると、ヘッド重量Mhを重くすることに伴うシャフト重量Msの軽量化の度合いは比較的小さくしてある程度のシャフト重量Msを確保し、ダウンスイング間に要する時間を長くして前記状態αに近い状態でインパクトできるようにする。
【0022】
上記(3)?(5)の点は、シャフト重量Msとヘッド重量Mhとが次の式(B)
Mh≦-0.14・Ms+240.9 ・・・ (B)
を満たす関係とされることにより達成することができ、これによりヘッド重量Mhを比較的重くした条件下においてインパクト直前のヘッドスピードVh0が最大限に確保され、飛距離が向上する。
【0023】
シャフト重量Msは、軽すぎるとシャフト2の耐久性が維持できないから、20g以上が好ましく、30g以上がより好ましく、35g以上が特に好ましい。シャフト重量Msの上限は60g以下とするが、重すぎる場合には持ち運び等の取り扱い性が悪くなったり、非力なゴルファーに向かないゴルフクラブ1となったりすることがあるので、55g以下がより好ましく、50g以下が更に好ましく、45g以下が特に好ましい。
…(略)…
【0028】
クラブ長さは、短すぎると、ダウンスイング間におけるシャフトの撓りが少なくなりすぎて上述した本発明の効果が減少したり、インパクト直前のヘッドスピードVh0が小さくなって飛距離低下となったりする場合があるので、42インチ以上が好ましく、43インチ以上がより好ましく、43.5インチ以上が更に好ましい。また、クラブ長さが長すぎると、クラブの操作性が低下して打点のバラツキが大きくなり飛距離が減少する場合があるので、48インチ以下が好ましく、47インチ以下がより好ましく、46インチ以下が更に好ましい。
ヘッド重量Mhは、重すぎるとクラブバランスが重くなりすぎて、スイングスピードspが過度に減少する場合があるので、240g以下が好ましく、230g以下が更に好ましい。またヘッド重量Mhが軽すぎると、インパクト直前におけるヘッドの運動量が低下して反発係数が低下することがあるので、180g以上が好ましく、190g以上がより好ましい。
また、本発明は、上述した好ましい範囲のクラブ長さを通常有し、かつ最も飛距離が要求されるいわゆるウッド型のクラブに適用されるのが好ましく、特にはドライバー(W#1)に適用されるのが好ましい。なお、ドライバーのロフト角(リアルロフト角)は通常6度?15度程度である。
クラブ総重量は、重すぎるとスイングスピードspが過度に減少する場合があるから、340g以下が好ましい。
【0029】
なお、クラブ総重量が比較的重い場合には、スイングスピードspが遅くなるため、ダウンスイング間に要する時間が多くなるから、シャフトがスイング方向前方にしなってヘッドが先行した状態でインパクトされやすくなる。したがって、クラブバランス(14インチ方式のクラブバランス。以下同じ。)をD3?D5と比較的重めに設定して、インパクトでヘッドが先行せず前記状態αに近い状態でインパクトできるようにするのが好まし
い。一方、クラブ総重量が比較的軽い場合には、スイングスピードspが速くなるため、ダウンスイング間に要する時間が少なくなり、ヘッドが遅れた状態でインパクトされやすくなる。従って、クラブバランスをD0?D3と比較的軽めに設定して、インパクトでヘッドが遅れずに前記状態αに近い状態でインパクトできるようにするのが好ましい。
以上の理由により、本発明ではクラブバランスがD0?D5とするのが好ましい。」

d 上記cから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に示された上記パラメータによる数値限定と本願明細書に開示された発明の課題との因果関係、又は前記数値限定の特定が前記課題を解決するメカニズムを、当業者といえども把握できるものでない。

(イ)小括
上記のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された、
「Mh≦-0.14・Ms+240.9 ・・・(B)
Mh≧0.1・Ms+212 ・・・(C)」
というパラメータによる数値限定と、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明の課題との因果関係又はメカニズムについて記載も示唆もないものである。

(ウ) 本願明細書における具体例の開示からの検討
a 本願明細書の発明の詳細な説明に記載された具体例について、本願明細書には、
「 【0030】
実施例と比較例との比較により本発明の効果を確認した。即ち、14種類の実施例1?14と7種類の比較例1?7とを作製し比較テストを行った。各クラブの仕様及び結果を纏めたのが次の表1である。

【0031】
なお、全実施例及び全比較例のヘッド3は、図2に示すように、フェース部材fbとボディ部材(ヘッド3のうちフェース部材fb以外の部分)bdの2部材をTIG溶接により接合した2ピース構造である。フェース部材fbは、大同特殊鋼株式会社の製品名DAT55Gの板材を所定形状に打ち抜き、プレス加工を施して作製した。ボディ部材bdは6AL-4Vチタンを精密鋳造して作製した。また、必要に応じてボディ部材bdのソール部内面にタングステンニッケル(比重14.5)よりなる重量部材Jを接合してヘッド重量の調整を行った。
【0032】
全実施例及び全比較例のシャフト2は、炭素繊維強化樹脂製のプリグレグシートをマンドレル(芯金)に巻き付けて積層させ、熱硬化させることにより作製した。プリグレグシートとしては、エポキシ樹脂とPAN系炭素繊維とからなる三菱レイヨン株式会社のMR350Cを用いた。
【0033】
シャフト2の積層構成を図3及び表1に示す。図3に示すように、全実施例及び全比較例のシャフトは、バイアス層10と、ストレート層12と、バイアス層10とストレート層12との間に積層された第一先端補強層11と、最外層に積層された第二先端補強層13とからなる。ただし、ストレート層12の枚数は図3に示すように4枚とは限らず、各実施例及び比較例により異なる(この点は後述する。)。図3においては、各シートにおける炭素繊維の配向方向を一点鎖線で示している。バイアス層10は、シャフト長手方向に対して略+45度に配向する第一バイアス層10aと、シャフト長手方向に対して略?45度に配向する第二バイアス層10bとからなる。第二バイアス層10bを裏返して第一バイアス層に貼り付けた状態とした後にマンドレルにバイアス層10を巻き付けることにより、第一バイアス層10aと第二バイアス層10bとの繊維配向角度が互いに逆向きとなる。第一先端補強層11、ストレート層12及び第二先端補強層13における繊維の配向角度はシャフト長手方向と略平行(即ち、配向角度が0度)である。バイアス層10の外側に第一先端補強層11を巻回し、次にストレート層12を巻回し、最後に第二先端補強層13を巻回してシャフト2の積層が完了する。これを熱硬化させてシャフト2とする。
【0034】
表1に、各実施例及び各比較例のプリグレグ積層構成を示す。表1中の構成1?構成6は、バイアス層10、第一先端補強層11、第二先端補強層13のシート枚数は全て同一であるが、ストレート層12のシート枚数が異なる。構成1?構成6の各シート枚数は以下の通りである。
構成1:ストレート層12が4枚である。
構成2:ストレート層12が3枚である。
構成3:ストレート層12が2枚である。
構成4:ストレート層12が1枚である。
構成5:ストレート層12が2枚である。
構成6:ストレート層12が3枚である。
なお、図3は、上記各構成を代表して構成1のみを示している。
【0035】
構成3と構成5は共にストレート層12が2枚であるが、構成3と比較して構成5はストレート層12の目付量(プリグレグシートの単位面積当たりの重量)が少なくされており、これによりシャフト重量を調整している。同様に、構成2と構成6は共にストレート層12が3枚であるが、構成2と比較して構成6はストレート層12の目付量が少なくされており、これによりシャフト重量を調整している。また、全実施例及び全比較例においては、プリプレグシートの樹脂含浸率及び目付量を適宜調整することにより、シャフトフレックスが略統一されるようにしている。
【0036】
図4のグラフは、横軸をシャフト重量Ms(g)とし且つ縦軸をヘッド重量Mh(g)として、各実施例を黒塗り四角形で、各比較例を黒塗り三角形でプロットしたものである。また、式(A)、式(B)、式(C)を満たす領域の境界線をなす各直線を併せて示している。図4に示すように、各実施例は前記式(A)且つ式(B)を満たすとともにMs≦60の領域内にある。また、実施例1,2,3,7はそれぞれ直線(Mh=Ms+155)上の点であり、実施例9,10,11,12はそれぞれ直線(Mh=-0.14・Ms+240.9)上の点であり、実施例6,13,14はそれぞれ直線(Mh=0.1・Ms+212)上の点である。実施例7,12,13はそれぞれ直線(Ms=60)上の点である。実施例3,5,6,11はそれぞれ直線(Ms=30)上の点である。
【0037】
表1中の「トータル飛距離」とは、ハンディキャップ1?9のゴルファー10名が各10球ずつ打球した合計100球分の平均値であり、キャリーとランとを含めた打球の最終到達点における飛距離である。なお、打球テストに使用したゴルフボールは、SRIスポーツ株式会社製の商品名TOURSPECIAL(登録商標)である。各実施例は、全比較例よりもトータル飛距離が大きくなっている。」
と記載されており、実施例1ないし5(以下「参考例1ないし5」という。)、実施例6、実施例7(以下「参考例7」という。)、実施例8ないし14及び比較例1ないし7についての記載がある。

b 平成22年10月26日付け手続補正により、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1について、「グリップ部分に重りを有しないシャフトのシャフト重量Msが30g以上で60g以下であり、クラブ長さが42.0インチ以上で44.0インチ以下であり、ヘッド重量Mh(g)が215.0g以上で236.7g以下であり、クラブ総重量が313.0g以上で360.5g以下であり、クラブバランスがD2.5?D5であり、且つ、ヘッド重量Mh(g)とシャフト重量Ms(g)とが次の式(C)及び式(B)を満たす関係に設定されていることを特徴とするウッド型ゴルフクラブ。
Mh≦-0.14・Ms+240.9 ・・・(B)
Mh≧0.1・Ms+212 ・・・(C)」と変更されたものの、この変更に伴う上記参考例1ないし5、実施例6、参考例7、実施例8ないし14及び比較例1ないし7についての変更はされず、本願明細書において上記参考例1ないし5、実施例6、参考例7、実施例8ないし14及び比較例1ないし7に関する記載がある。
そして上記参考例1ないし5、参考例7及び比較例1ないし7は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載の「クラブバランスがD2.5?D5」以外となり、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に対応する実施例に相当しないことは明らかであるから、本願明細書に記載の上記参考例1ないし5、実施例6、参考例7、実施例8ないし14及び比較例1ないし7のうち、Ms-Mh平面において、
「Mh≦-0.14・Ms+240.9 ・・・(B)
Mh≧0.1・Ms+212 ・・・(C)」
を満たす上記実施例6及び実施例8ないし14の8例が記載されているにすぎない。
そうすると、上記8つの実施例、上記6つの参考例及び7つの比較例との間には、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された数値範囲の区画以外にも他の数値や数式による区画をすることができることは自明である以上、このようなパラメータを用いて発明を特定しようとする本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、本件補正後の明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるとすることはできない。

(エ)よって、本件補正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものでない。

イ まとめ
本件補正後の特許請求の範囲の記載は、上記アのとおり、特許法第36条第6項第1号に適合するものでないから、本願は、同項に規定する要件を満たしていない。
よって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(2)進歩性について
ア 引用刊行物及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-185119号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 回転中心の回りに回転又は回動する回転体において、
回転又は回動時の径方向における質量分布が、上記回転中心及びその直近傍の範囲には大きな質量が集中し、かつ上記回転中心及びその直近傍以外の範囲には小さな質量が均一に又は不均一に分散した分布となっていることを特徴とする低慣性モーメント回転体。
【請求項2】 上記回転体が、片手又は両手でグリップ又は柄を握り、片手の掌中央又は両手の間を回転中心にして回転又は回動させる手持ち道具類であって、上記グリップ又は柄の回転中心及びその直近傍の部位には集中質量が設けられている請求項1記載の低慣性モーメント回転体。
【請求項3】 上記回転体がグリップを握る両手の間に回転中心のあるゴルフクラブであり、上記集中質量が上記グリップの回転中心を中心とする4cmの範囲内に設けられている請求項2記載の低慣性モーメント回転体。」

(イ)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は低慣性モーメント回転体に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、ゴルフクラブをスイングする場合、図15に示されるように、胴体B及び両手Aの掌の間の各々に運動の回転軸X1、X2が生じる。胴体B側の回転軸を第1軸X1、掌側の回転軸を第2軸X2とすると、人間工学的に見た場合には第1軸X1は第2軸X2に比して大きな負荷に耐えることができる一方、第2軸X1はわずかな負荷の増加でも影響を受ける。従って、第1軸X1側の負荷が増えても、第2軸X2側の負荷を減少させることができれば、全体としての運動性をアップできることが期待される。ここで、図15の(a) はスイング開始直後、(b) はインパクト直前、(c) はインパクト直後における身体とクラブシャフトの関係を示す。なお、図中、Sはクラブシャフトであり、
【0003】そこで、第2軸側の負荷を減少させるべく、グリップの後端側に重錘を設け、静的な不釣り合いや動的な不釣り合いを改善し、軽くスイングできるようにしたゴルフクラブが提案されている(例えば、特許第2581577号参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来のゴルフクラブでは第2軸を支点として先端ヘッド側と後端側とをバランスさせるようにしているので、両手でゴルフクラブを軽く支えることはできるものの、重錘を付加した分だけ第2軸回りの慣性モーメントが増加し、ゴルフクラブをスイングする時に大きな力でなければ振り廻せないという問題があった。
【0005】本発明は、かかる問題点に鑑み、スイングする時に軽く振り廻せるようにしたゴルフクラブを提供することを課題とする。」

(ウ)「【0011】特に、本発明をゴルフクラブに適用する場合、グリップを握る両手の間に回転中心のあるので、集中質量が上記グリップの回転中心を中心とする4cmの範囲内に設けられるのがよい。この集中質量はクラブ設計時にグリップに予め質量が集中するように設計し、グリップの材料を適宜選択して製造してもよく、又グリップを通常の材料で製造し、重錘を固定するようにしてもよい。重錘を固定する場合、ゴルフクラブの使用者の筋力等によって最適な慣性モーメントにできるように、重錘を脱着できる構造として適切な重さの重錘を選んで固定できるようにするのが好ましい。」

(エ)「【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図2は本発明に係る低慣性モーメント回転体の好ましい実施形態を示し、これはウッド型ゴルフクラブに適用した例である。図2の(a) に示されるように、ウッド型ゴルフクラブ10はシャフト12の先端にクラブヘッド11が取付けられ、シャフト12の後端部にはグリップ13が設けられ、グリップ13の後端にはエンドキャップ15が固定されている。
【0020】グリップ13は図2の(b) に示されるように、上半部が右手で握られる右手エリアR、下半部が左手で握られる左手エリアLとなっており、その間に回転中心Cがあり、該グリップ13内には図2の(b) に示されるように、回転中心Cを中心として4cm以内の範囲に重錘14が付加されて該重錘14がグリップ13の集中質量となっている。
【0021】図3は重錘14を設ける具体的な構造の1例を示す。重錘14には比重の大きな金属材料、例えばタングステンや鉛が用いられ、該重錘14は外殻、例えば17ー4ステンレス鋼製の外殻16内に内蔵されている。この外殻16には両端外周部にシャフトの嵌め込み部16aが形成され、シャフト12のグリップ13の回転中心Cに相当する部位が切断され、その切断端が外殻16の嵌め込み部16aに嵌め込まれ、その上からグリップ13が装着され、外殻16はシャフト12の接続部分を補強するようになっている。
【0022】図4の(a)(b)は重錘14を設ける具体的な構造の他の例を示す。図4の(a) では重錘14は17ー7ステンレス鋼を用い、円柱部と外側円筒部とからなる構造に製作され、シャフト12の後端は重錘14の外側円筒部と円柱部との間に嵌め込まれ、重錘14がグリップ13の回転中心近傍に来るように重錘14の外側円筒部には強化プラスチックパイプ製の延長シャフト12aが外嵌され、シャフト12及び延長シャフト12aの外側には発泡樹脂材料の層17を介してゴム製グリップ13が取付けられている。
【0023】図4の(b) ではシャフト12内にはグリップ13の回転中心の位置に重錘14が挿入して固定され、該シャフト12の外側には合成樹脂製の環状補強リブ18及び重錘として機能する比重の大きな環状補強リブ14aを介して強化プラスチック製パイプ19が外嵌され、強化プラスチック製パイプ19とシャフト12の間には衝撃吸収用の発泡樹脂材料20が充填され、又強化プラスチック製パイプ19の外側にはゴム製グリップ13が取付けられている。なお、発泡重材料20の部分は空洞のままであってもよい。
【0024】図5の(a)(b)は重錘14を設ける具体的な構造の更に他の例を示す。本例ではシャフト12内にはグリップ13の回転中心の位置に重錘14が挿入して固定され、該シャフト12の外側には第2の重錘14bが取付けられるとともに、基盤材又は発泡樹脂材料21がシャフト12の後端部分を覆って取付けられ、その外側にゴム製グリップ13が取付けられている。
【0025】以上の構造は図6の(a)(b)に示されるアイアン型ゴルフクラブ30やパター40のグリップ33、43に適用することもできる。さらに、図6の(c) に示されるいわゆるロングパター50では両手の間隔をあけてグリップ53と下側グリップ53aとを握り、その間に回転中心Cがある。そこで、ロングパター50のシャフト12内の回転中心Cに重錘を設けるようにしてもよい。
【0026】ここで、具体的な数値を挙げると、ウッド型ゴルフクラブの場合、全長約96cm?120cm、総重量230g?420g、ヘッド重量180g?250g、シャフト重量30g?100g、グリップ重量25g?70g、長さ20cm?30cmであり、グリップの回転中心に設ける重錘は5g?18gが最適であった。」

(オ)上記(ア)ないし(エ)から、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「シャフトの先端にクラブヘッドが取付けられ、シャフトの後端部にはグリップが設けられており、グリップを握る両手の間に回転中心のあるウッド型ゴルフクラブであって、
重錘を固定することなくグリップの材料を適宜選択することで、回転時の径方向における質量分布が、回転中心を中心とする4cmの範囲内に大きな質量が集中し、かつ前記範囲以外の範囲には小さな質量が均一に又は不均一に分散した分布となっており、
全長約96cm?120cm、総重量230g?420g、ヘッド重量180g?250g、シャフト重量30g?100g、グリップ重量25g?70g、長さ20cm?30cmである、
スイングする時に軽く振り廻せるようにしたウッド型ゴルフクラブ。」

イ 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「クラブヘッド」及び「重錘」は、それぞれ、本願補正発明の「ヘッド」及び「重り」に相当する。

(イ)引用発明の「ウッド型ゴルフクラブ」は、シャフトの先端に「ヘッド(クラブヘッド)」が取付けられ、シャフトの後端部にはグリップが設けられており、「重り(重錘)」を固定することなくグリップの材料を適宜選択したものであるから、引用発明の「ウッド型ゴルフクラブ」と本願補正発明の「『グリップ部分に重りを有しないシャフトのシャフト重量Msが30g以上で60g以下であり、クラブ長さが42.0インチ以上で44.0インチ以下であり、ヘッド重量Mh(g)が215.0g以上で236.7g以下であ』る『ウッド型ゴルフクラブ』」とは「グリップ部分に重りを有しないシャフトと、ヘッドと、グリップとを備えた」ものである点で一致するといえる。

(ウ)上記(ア)及び(イ)から、本願補正発明と引用発明とは、
「グリップ部分に重りを有しないシャフトと、ヘッドと、グリップとを備えたウッド型ゴルフクラブ。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
本願補正発明では、前記シャフトの重量Msが「30g以上で60g以下」であり、前記ゴルフクラブの長さが「42.0インチ以上で44.0インチ以下」であり、前記ヘッドの重量Mhが「215.0g以上で236.7g以下」であり、前記ゴルフクラブの総重量が「313.0g以上で360.5g以下」であり、前記ゴルフクラブのクラブバランスが「D2.5?D5」であり、前記ヘッドの重量Mh(g)と前記シャフトの重量Ms(g)とが「Mh≧0.1・Ms+212」及び「Mh≦-0.14・Ms+240.9」を満たす関係に設定されているのに対して、
引用発明では、前記シャフトの重量が「30g?100g」であり、前記ゴルフクラブの全長が「約96cm?120cm」であり、前記ヘッドの重量が「180g?250g」であり、前記ゴルフクラブの総重量が「230g?420g」であり、前記ゴルフクラブのクラブバランスは明らかでなく、前記ヘッドの重量と前記シャフトの重量とがそのような関係に設定されているのかも明らかでない点。

ウ 判断
上記相違点について検討する。
(ア)引用発明のゴルフクラブは、全長約96cm?120cm、総重量230g?420g、ヘッド重量180g?250g、シャフト重量30g?100g、グリップ重量25g?70g、長さ20cm?30cmであるところ、これらを具体的にどのような値とするかは、当業者が、引用発明が規定する範囲内において適宜決定すべき設計事項というべきである。

(イ)ゴルフクラブのクラブバランスを具体的にどの程度とするかは、当業者が、ゴルファーの属性等に応じて適宜決定すべき設計事項というべきである(例.特開平9-285570号公報(【0002】参照。【0002】には「総重量とスイングウェイトだけでなく、ゴルフクラブのセットにおいては、ライ角度、ロフト角度、クラブ長さ、スイートエリア、重心位置など多くの機能因子が、セット内では、単調に変化することによって、ゴルフクラブの3大機能であるセットとしての飛び、方向性、打ち易さを実現している。総重量とスイングウェイト(SW)は、主に打ち易さに関係している。一般には、非力なプレーヤーには、Cバランス、パワーのあるプレーヤーにはDバランスが良いと言われているように、SWには適性な値がある。」と記載されている。前記「スイングウェイト」は「クラブバランス」に相当する。)、特開平9-75484号公報(【0011】参照。【0011】には「パワーヒッターにはスイングバランスの重いクラブが合い、非力なゴルファーにはスイングバランスの軽いクラブが向いていると一般的に言われている。」と記載されている。前記「スイングバランス」は「ゴルフバランス」に相当する。))。

(ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用発明において、全長を「106.68cm?111.76cm」とし、ヘッド重量を「226g」とし、シャフト重量を「45g」とし、グリップ重量を「42g?70g」とし、総重量を「313g?341g」とするとともに、クラブバランスを「D2.5?D5」とすることは、当業者が適宜なし得た設計上のことである。

(エ)上記(ウ)の「106.68cm?111.76cm」は、換算すると、「42.0インチ?44.0インチ」となる。
また、上記(ウ)の226gとしたヘッド重量と、上記(ウ)の45gとしたシャフト重量とは、
226>0.1×45+212=216.5
226<-0.14×45+240.9=234.6
という連立不等式を満たすから、本願補正発明の式(C)及び式(B)を満たす。
したがって、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の構成となすことは、上記(ウ)のとおり、当業者が適宜なし得た設計上のことである。

(オ)効果について
本願補正発明の奏する効果は、当業者が引用発明の奏する効果から予測できた程度のものである。

(カ)まとめ
したがって、本願補正発明は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括
上記2及び3のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、旧特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願の特許請求の範囲の記載について
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の記載は、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前のものとして記載したとおりである。
そして、特許請求の範囲の請求項1には、
「Mh≦-0.14・Ms+240.9 ・・・(B)
Mh≧0.1・Ms+212 ・・・(C)」
という、ヘッド重量Mh(g)及びシャフト重量Ms(g)をパラメータとした数値限定に関する記載がある。

1 本願明細書に開示された発明の課題と、特許請求の範囲の請求項1の上記記載との技術的関係
(1)本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0002】ないし【0004】には、発明の課題に関する記載があり、該記載によれば、従来のウッド型ゴルフクラブに対して、シャフト重量とヘッド重量との関係を最適化することにより、飛距離性能に優れたウッド型ゴルフクラブを提供するという目的に対し、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された構成を採用することにより、上記目的を達成することができたとされることが開示されていると認められる。
(2)しかしながら、本願明細書の発明の詳細な説明には、特許請求の範囲の請求項1に示された上記パラメータによる数値限定と、発明の解決しようとする課題との間の技術的関係については記載も示唆もされていない。
(3)一方、本願明細書の発明の詳細な説明には、特許請求の範囲の請求項1に示された上記パラメータによる数値限定に関して、以下の記載がある。
ア 「【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、シャフト重量Msが30g以上で60g以下であり、クラブ長さが42.0インチ以上で44.0インチ以下であり、ヘッド重量Mh(g)が215.0g以上で236.7g以下であり、且つ、ヘッド重量Mh(g)とシャフト重量Ms(g)とが次の式(C)及び式(B)を満たす関係に設定されていることを特徴とするウッド型ゴルフクラブとしている。
Mh≦-0.14・Ms+240.9 ・・・(B)
Mh≧0.1・Ms+212 ・・・(C)
このようにすると、シャフト重量が30g以上で60g以下であるから、シャフトが重くなりすぎることによるスイングスピードの低下が抑えられる。
また、ヘッド重量とシャフト重量とを上記式(B)と式(C)の範囲内に設定しているので、スイング中におけるシャフトの撓り挙動及びスイングに要する時間(スイングのトップからインパクトまでの時間)が適切に考慮されることとなり、ヘッド重量Mhとヘッドスピードとのバランスが最適化されて飛距離が増大するが、詳細については後述する。」

イ 上記第2〔理由〕3(1)ア(ア)c(b)参照。

(4)上記(3)から、特許請求の範囲の請求項1に示された上記パラメータによる数値限定と本願明細書に開示された発明の課題との因果関係、又は前記数値限定の特定が前記課題を解決するメカニズムを、当業者といえども把握できるものでない。

2 小括
以上のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、特許請求の範囲の請求項1に記載された、
「Mh≦-0.14・Ms+240.9 ・・・(B)
Mh≧0.1・Ms+212 ・・・(C)」
というパラメータによる数値限定と、特許請求の範囲の請求項1に記載された発明の課題との因果関係又はメカニズムについて記載も示唆もないものである。

3 本願明細書における具体例の開示からの検討
(1)上記第2〔理由〕3(1)ア(ウ)a参照。
(2)平成22年5月21日付けの手続補正により、特許請求の範囲の請求項1について、「シャフト重量Msが30g以上で60g以下であり、クラブ長さが42.0インチ以上で44.0インチ以下であり、ヘッド重量Mh(g)が215.0g以上で236.7g以下であり、且つ、ヘッド重量Mh(g)とシャフト重量Ms(g)とが次の式(C)及び式(B)を満たす関係に設定されていることを特徴とするウッド型ゴルフクラブ。
Mh≦-0.14・Ms+240.9 ・・・(B)
Mh≧0.1・Ms+212 ・・・(C)」と変更されたものの、この変更に伴う上記参考例1ないし5、実施例6、参考例7及び実施例8ないし14及び比較例1ないし7についての変更はされず、本願明細書において上記参考例1ないし5、実施例6、参考例7及び実施例8ないし14及び比較例1ないし7に関する記載がある。
そして、参考例1ないし5、実施例6、参考例7及び実施例8ないし14及び比較例1ないし7のうち、参考例1ないし5及び比較例1ないし7は、特許請求の範囲の請求項1に記載の「ヘッド重量Mh(g)が215.0g以上で236.7g以下」以外となり、特許請求の範囲の請求項1に対応する実施例に相当しないことは明らかであり、また、参考例7は、特許請求の範囲の請求項1に記載の
「Mh≧0.1・Ms+212 ・・・(C)」以外となり、特許請求の範囲の請求項1に対応する実施例に相当しないことは明らかであるから、本願明細書に記載の参考例1ないし5、実施例6、参考例7及び実施例8ないし14及び比較例1ないし7のうち、Ms-Mh平面において、
「Mh≦-0.14・Ms+240.9 ・・・(B)
Mh≧0.1・Ms+212 ・・・(C)」
を満たす実施例6及び実施例8ないし14の8例が記載されているにすぎない。
そうすると、上記8つの実施例、上記6つの参考例及び7つの比較例との間には、特許請求の範囲の請求項1に記載された数値範囲の区画以外にも他の数値や数式による区画をすることができることは自明である以上、このようなパラメータを用いて発明を特定しようとする特許請求の範囲の請求項1の記載は、明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるとすることはできない。

4 以上のとおりであるから、本願の特許請求の範囲の記載は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものとは認められず、特許法第36条第6項第1号に適合するものでない。

第4 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年5月21日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記第2〔理由〕3(2)アに記載したとおりのものである。

3 対比・判断
本願発明は、上記第2〔理由〕3で検討した本願補正発明において、その発明特定事項である「シャフト」から、「グリップ部分に重りを有しない」との限定を省くとともに、同じくその発明特定事項である「ゴルフクラブ」から、「クラブ総重量が313.0g以上で360.5g以下であり、クラブバランスがD2.5?D5であり」との限定を省いたものである(上記第2〔理由〕1(2)参照。)。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2〔理由〕3(2)に記載したとおり、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
本願の特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおり、特許法第36条第6項第1号に適合するものでないから、本願は、同項に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明は、上記第4のとおり、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-11 
結審通知日 2011-07-12 
審決日 2011-07-25 
出願番号 特願2004-39627(P2004-39627)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63B)
P 1 8・ 121- Z (A63B)
P 1 8・ 537- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 恒明  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 桐畑 幸▲廣▼
菅野 芳男
発明の名称 ウッド型ゴルフクラブ  
代理人 特許業務法人サンクレスト国際特許事務所  
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