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審決分類 |
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 C04B 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 C04B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C04B 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C04B 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 C04B 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C04B |
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管理番号 | 1242933 |
審判番号 | 不服2008-11458 |
総通号数 | 142 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-05-07 |
確定日 | 2011-09-07 |
事件の表示 | 特願2001-586216号「組成物及びコンクリート組成物の調製方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月29日国際公開、WO01/90024、平成15年11月18日国内公表、特表2003-534227号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2001年4月6日(パリ条約による優先権主張、2000年5月19日(EP)欧州特許庁、同日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成20年2月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成20年5月7日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、同年6月5日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成20年6月5日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年6月5日付けの手続補正を却下する。 [理由] (2-1)補正事項 平成20年6月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に係る補正を含み、補正前後の請求項1の記載は、次のとおりである。 (補正前) 「【請求項1】超可塑剤がポリカルボキシレートに結合されたカルボキシル基を有するポリマー主鎖を含むポリカルボキシレートであることを特徴とする水硬性バインダー、骨材、水、シリカゾル及び超可塑剤を含むコンクリート組成物。」 (補正後) 「【請求項1】超可塑剤が、カルボキシル基が主鎖に結合されたポリマー主鎖を含むポリカルボキシレートであることを特徴とする水硬性バインダー、骨材、水、シリカゾル及び超可塑剤を含む少なくとも1-2時間の作業時間を有するコンクリート組成物。」 (2-2)補正の適否 請求項1に係る補正の補正事項は、 (i)補正前の「超可塑剤がポリカルボキシレートに結合されたカルボキシル基を有するポリマー主鎖を含むポリカルボキシレートである」を、補正後の「超可塑剤が、カルボキシル基が主鎖に結合されたポリマー主鎖を含むポリカルボキシレートである」とし、 (ii)補正前の「コンクリート組成物」を、補正後の「少なくとも1-2時間の作業時間を有するコンクリート組成物」とするものである。 ここで、 (i)については、補正前後における技術的意味が同じであることから、単なる書き換えであり、 (ii)については、補正により「作業時間」に関する事項を追加するものであり、また、補正前の請求項1には、「作業時間」に関する事項の特定がないことから、当該補正事項は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであるということはできない。 したがって、請求項1に係る補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号、第2号、第3号および第4号に規定する請求項の削除を目的とするとも、特許請求の範囲の減縮を目的とするとも、誤記の訂正を目的とするとも、また明りょうでない記載の釈明を目的とするものとも認められない。 以上のとおりであるから、請求項1に係る補正を含む本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。 なお、仮に本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するか)について以下検討する。 (2-2-1)本願補正発明 本願補正発明は、上記(2-1)で示した補正後の請求項1に記載された事項により特定されるものである。 (2-2-2)引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用した特開2000-95554号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。 (a)特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】練り混ぜたセメント組成物(ベース組成物)に急結材料を添加してなる超早強性セメント組成物であって、急結材料がアルカリ含有量2重量%未満(固形分に対する酸化物換算値)の低アルカリ急結材であり、この急結材料をセメント100重量部に対して固形分で0.5?10重量部含有し、さらに可溶性カルシウム塩をセメント100重量部に対して固形分で0.1?5重量部含むことを特徴とする超早強性セメント組成物。」 (b)「【0014】上記分散剤を含有することにより、分散剤中のポリオキシアルキレン基がベース組成物中のセメントを分散させて流動性を付与するだけでなく、セメント粒子に吸着したポリオキシアルキレン基がセメント粒子相互の摩擦力を増してベース組成物の粘性を向上させ、ポンプあるいは空気流搬送時のベース組成物の分離を抑制する。オキシアルキレン基の付加モル数nが20より小さいとこの分離抑制効果がなく、またセメントに対する凝結遅延作用が大きくなってベース組成物中の可溶性カルシウム塩による初期強度促進効果が抑制される。さらにベース組成物のスランプロスが大きくなりベース組成物の流動性が施工中に低下して搬送管を詰まらせる場合がある。一方、付加モル数が500を超えると、ベース組成物の粘性が高くなり過ぎて搬送に大きな搬送圧が必要となり、また急結材料の添加時にベース組成物と急結材料とが均一に混合できず、所定の速効性が得られないことがある。 【0015】上記分散剤の添加量は、セメント100重量部に対して固形分で0.01?1重量部が好ましい。この量が0.01重量部より少ないとベース組成物に流動性を付与できず、また添加量が1重量部より多いとベース組成物が分離してベース組成物から水が浮いたり、あるいは骨材の砂が沈降して均一なセメント組成物とならず強度が局所的に低下する場合があるので好ましくない。」 (c)「【0026】実施例1 セメントとして早強ポルトランドセメントを用い、細骨材(小笠産陸砂)、可溶性カルシウム塩および分散剤を表1の配合に従って20℃でパン型ミキサーを用いて練り混ぜ、ベース組成物を調製した。練り混ぜから1時間経過後、10kgのベース組成物を取り分け、表1に示す3種(X,Y,Z)の急結材料を添加してハンドミキサーで30秒練り混ぜた後、直ちに簡易型枠(5cmφ×10cmH)に充填して成型した。成型した供試体は20℃で封かん養生を行った。このセメント組成物の流動性の評価として、規格(JIS R 5201)に準拠して練上り直後と60分経過後のモルタルフローを測定した。また強度発現の評価として硬化体について1日、3日、7日の圧縮強度を測定した。これらの結果を表2に示した。また、比較として本発明の急結材料、可溶性カルシウム塩、分散剤を用いないセメント組成物についても同様にして試験を行った。この結果を表2にまとめて示した。この結果に示すように、本実施例の試料は何れも圧縮強度が高く、特に材齢12時間から3日の初期強度に優れる。しかも、60分経過後の流動性の低下も少なく、優れた流動性を有している。」 (d)【表1】には、「実施例1について、水・セメント・細骨材・分散剤・Ca塩からなるベース組成物における分散剤のAがメタクリル酸とメトキシポリオキシエチレン(n=9)メタクリートとの共重合体であり、急結材料のXがシリカゾル(触媒化成工業社製SI-50、固形分量49重量%)である」ことが記載されている。 なお、上記「メタクリート」は、誤記であって正しくは「メタクリレート」であることは明らかであるので、以下、「メタクリレート」に読み替えることとする。 (2-2-3)引用例記載の発明 上記(a)ないし(d)の記載事項より、引用例には、 「『ベース組成物中のセメントを分散させて流動性を付与し、ベース組成物の分離を抑制する分散剤』が、メタクリル酸とメトキシポリオキシエチレン(n=9)メタクリレートとの共重合体である、セメント、細骨材(小笠産陸砂)、水、シリカゾル及び『ベース組成物中のセメントを分散させて流動性を付与し、ベース組成物の分離を抑制する分散剤』を含む『60分経過後でも流動性の低下が少なく、優れた流動性を有する』超早強性セメント組成物。」の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が開示されている。 (2-2-4)対比・判断 本願補正発明と引用例記載の発明を対比する。 ○引用例記載の発明の「『ベース組成物中のセメントを分散させて流動性を付与し、ベース組成物の分離を抑制する分散剤』」、「メタクリル酸とメトキシポリオキシエチレン(n=9)メタクリレートとの共重合体」、「セメント」、「細骨材(小笠産陸砂)」は、 本願補正発明の「可塑剤」、「カルボキシル基が主鎖に結合されたポリマー主鎖を含むポリカルボキシレート」、「水硬性バインダー」、「骨材」、にそれぞれ相当する。 ○引用例記載の発明の「『60分経過後でも流動性の低下が少なく、優れた流動性を有する』」ことは、60分経過後でも優れた流動性を有することで作業に供することができることを示しているので、本願補正発明の「少なくとも1-2時間の作業時間を有する」ことに相当する。 ○引用例記載の発明の「超早強性セメント組成物」と本願補正発明の「コンクリート組成物」は、「セメント組成物」という点で共通する。 上記より、本願補正発明と引用例記載の発明とは、 「可塑剤が、カルボキシル基が主鎖に結合されたポリマー主鎖を含むポリカルボキシレートである、水硬性バインダー、骨材、水、シリカゾル及び可塑剤を含む少なくとも1-2時間の作業時間を有するセメント組成物。」という点で一致し、以下の点で一応相違している。 <相違点1> 本願補正発明では、「コンクリート組成物」であるのに対して、引用例記載の発明では、「超早強性セメント組成物」である点。 <相違点2> 本願補正発明では、「超可塑剤」であるのに対して、引用例記載の発明では、「『ベース組成物中のセメントを分散させて流動性を付与し、ベース組成物の分離を抑制する分散剤』(可塑剤)」である点。 両相違点について検討する。 <相違点1>について 引用例記載の発明において、「超早強性セメント組成物」は、これの骨材が細骨材(小笠産陸砂)であることから、実質的にモルタルであるということができる。 一方、本願補正発明において、「コンクリート組成物」は、本願明細書の「【0013】・・・モルタルはここではコンクリートという用語の中に含まれることが意味される。」との記載からして、モルタルである場合を含んでいるということができる。 そうすると、引用例記載の発明の「超早強性セメント組成物」と本願補正発明の「コンクリート組成物」は、同等のもの(モルタル)であるということができる。 したがって、相違点1は、実質的な相違であるとはいえない。 <相違点2>について 引用例記載の発明において、「『ベース組成物中のセメントを分散させて流動性を付与し、ベース組成物の分離を抑制する分散剤』(可塑剤)」は、超早強性セメント組成物(コンクリート組成物)が、60分経過後でも流動性の低下が少なく、優れた流動性を有するものであることから、1時間後でも優れた流動性を付与し、分離を抑制するものである、つまり、1時間後でも可塑性を維持させるものであるということができる。 一方、本願補正発明において、「超可塑剤」は、本願明細書の「【0010】 驚くことに、本発明のコンクリート組成物は、実質的に静的滲出(static bleeding)を生じないで、即ち、静的な振動されない水性コンクリート混合物中にセメント粒子及び骨材の分離又は水の分離を実質的に生じないで、どの位多くのシリカゾル及びポリカルボキシレート超可塑剤が添加されるのかに応じて、約1-2時間又はそれ以上の作業時間を得ることができることが注目された。これはポリカルボキシレート超可塑剤と好ましくは水性のシリカゾルの組み合わせ効果のためであり、これらは一緒にコンクリート混合物の作業性を増大するとともに滲出を抑制することができる。」との記載からして、約1-2時間又はそれ以上の経過後でも可塑性を維持させるものであるということができる。 上記からして、引用例記載の発明の「可塑剤」と本願補正発明の「超可塑剤」は、1時間後でも可塑性を維持させるものであるという点で同じである。 次に、引用例記載の発明において、「『ベース組成物中・・・分散剤』(可塑剤)」の添加量は、上記(2-2-2)の(b)で示した「・・・【0015】上記分散剤の添加量は、セメント100重量部に対して固形分で0.01?1重量部が好ましい。・・・」との記載からして、セメント(水硬性バインダー)100重量部に対して固形分で0.01?1重量部の量である。 一方、本願補正発明において、「超可塑剤」の添加量は、「【請求項8】ポリカルボキシレートが、水硬性バインダーに対して計算して、0.01重量%から3重量%までの乾燥重量の量で存在する・・・」との記載からして、水硬性バインダー100重量部に対して固形分で0.01?3重量部の量である。 上記からして、引用例記載の発明の「可塑剤」と本願補正発明の「超可塑剤」は、その添加量について、水硬性バインダー100重量部に対して固形分で0.01?1重量部の量であるという点で同じである。 そうすると、引用例記載の発明の「可塑剤」と本願補正発明の「超可塑剤」は、同等のものであるということができる。 したがって、相違点2は、実質的な相違であるとはいえない。 以上からして、本願補正発明は、引用例に記載された発明であることから、特許法第29条第1項第3号に規定された発明に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるので、本件補正は、仮に特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。 3.本願発明について (3-1)平成20年6月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年12月27日付け手続補正書により補正された、上記2.(2-1)で示した補正前の請求項1に記載された事項により特定されるものである。 (3-2)引用例の記載事項および引用例記載の発明 引用例の記載事項は、上記2.(2-2-2)で示したとおりであり、引用例記載の発明は、上記2.(2-2-3)で示したとおりである。 (3-3)対比・判断 上記2.(2-2-4)を考慮した上で、本願発明と引用例記載の発明を対比すると、両者は、 「可塑剤がポリカルボキシレートに結合されたカルボキシル基を有するポリマー主鎖を含むポリカルボキシレートである、水硬性バインダー、骨材、水、シリカゾル及び可塑剤を含むセメント組成物。」という点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点A> 本願発明では、「コンクリート組成物」であるのに対して、引用例記載の発明では、「超早強性セメント組成物」である点。 <相違点B> 本願発明では、「超可塑剤」であるのに対して、引用例記載の発明では、「『ベース組成物中のセメントを分散させて流動性を付与し、ベース組成物の分離を抑制する分散剤』(可塑剤)」である点。 上記両相違点について検討する。 相違点A、Bは、上記相違点1、2と同じであることから、<相違点1><相違点2>についての検討と同様に、相違点A、Bは、実質的な相違であるとはいえない。 したがって、本願発明は、本願補正発明と同様に、引用例に記載された発明である。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明であることから、特許法第29条第1項第3号に規定された発明に該当し、特許を受けることができない そして、本願は、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-03-31 |
結審通知日 | 2011-04-05 |
審決日 | 2011-04-18 |
出願番号 | 特願2001-586216(P2001-586216) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(C04B)
P 1 8・ 575- Z (C04B) P 1 8・ 573- Z (C04B) P 1 8・ 571- Z (C04B) P 1 8・ 574- Z (C04B) P 1 8・ 113- Z (C04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 末松 佳記 |
特許庁審判長 |
豊永 茂弘 |
特許庁審判官 |
目代 博茂 斉藤 信人 |
発明の名称 | 組成物及びコンクリート組成物の調製方法 |
代理人 | 大森 規雄 |
代理人 | 小林 浩 |
代理人 | 鈴木 康仁 |
代理人 | 片山 英二 |