• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23K
管理番号 1242969
審判番号 不服2010-11819  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-02 
確定日 2011-09-07 
事件の表示 特願2003-581598「水生動物のための餌」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月16日国際公開、WO03/84341、平成17年 7月21日国内公表、特表2005-521414〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年4月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成14年4月5日 ドイツ国)を国際出願日とする出願であって、平成22年2月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成22年10月1日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、平成22年12月24日に回答書が提出された。

第2 平成22年6月2日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成22年6月2日付け手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成22年6月2日付け手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を、次のとおりとする補正を含むものである。
「【請求項1】 少なくとも二つの異なる組成の押し出された混合餌を1個単位に含有する水生動物用の餌であって、1個単位が、互いに結合し、互いに別々に押し出された混合餌を含有する少なくとも二つの隣接区域からなるストランドを円板に切り出してフレーク形態とすることを特徴とする餌。」

2 補正の目的
上記補正は、補正前の請求項1に係る発明における「混合餌」について「ストランドを円板に切り出してフレーク形態」であるものに限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。

3 独立特許要件の判断(特許法第29条第2項違反)
(1)刊行物の記載内容
本願の優先日前に頒布された特表2001-505771号公報(以下、「刊行物A」という。)には、次のことが記載されていると認められる。
(A-1)「本発明は、淡水及び海水中の水生動物、特に魚、エビ及び無脊椎動物のための新規な薄片状餌(フレークフード)に関し、また、その製造方法に関する。」(4ページ3行?4行)
(A-2)「本発明のさらなる主題は、
a)適当な寸法の成形物を製造する工程と、
b)成形物を圧延して個々の薄片を得る工程と、
を含む、適当な餌成分から薄片状餌を製造する方法である。
本特殊な製造方法は以下の工程を含む。好ましくは押出し機、例えば二軸スクリュー押出し機により、成形物(含水率約40%以下)を、後で適当なシリンダミルでそれを圧延する場合に個々の薄片が10μm?5mmの間で変動しうる厚さ及び1?100mmの直径で製造されるような寸法に製造する。2個の回転ローラを有するフレーキング装置のローラ間の距離が薄片の厚さを決定する。」(5ページ20行?28行)
(A-3)「本発明の製造方法は、ドラム乾燥機で原料を乾燥させることによって薄片状餌を製造するための以前から公知の方法によっては達成することができなかった、以下のような改良された機能的及び物理的性質を有する薄片状餌の工業生産を可能にする。・・・
?多数の色を有する個々の薄片を製造する能力
多数の色を有する成形物のフレーキングにより、二つ以上の色を有する薄片を製造することができる。」(6ページ2行?28行)

これらの記載によれば、刊行物Aには、次の発明(以下、「刊行物A記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
「多数の色を有する餌成分を含有する水生動物用の餌であって、押し出された成形物をシリンダミルで圧延してフレーク形態とする餌。」

本願の優先日前に頒布された米国特許第3,851,084号明細書(以下、「刊行物B」という。)には、図面とともに、概略次のことが記載されていると認められる。
(B-1)「本発明は積層状態のシリアル、スナック食品を製造する方法に関する・・・」(1欄11行?12行)
(B-2)「図4は、2層押し出し物を製造するように改造された、図1類似の押し出し成型機のヘッドの断面図を示す。
・・・
図16は、層状の流出物を通過させて押し出しすための垂直方向の長方形のオリフィスを有するダイの断面図である。
図17は、図4のエクストルーダのヘッドに図16のダイを取り付けて使用した、2層の押し出し成形物の一部を示す。
図18は、図16のダイを通過させた押し出し物を、ダイの表面で定期的に切断した、異なる色と著しく異なる粘度の共押し出しされた生地の半製品である。
図19は、図18の半製品をフレーキングロールを通過させて形成したフレークである。」(2欄57行?3欄29行)
(B-3)「図1-3には、本発明で実際に使用することができる押出ヘッド10が示される。ヘッド10は取付板11によってオーガー・タイプ押出式形機(図示せず)の出口フェースに装着され、パイプ12によって別のオーガー・タイプ押出式形機(図示せず)に接続される。ヘッド10は1対の水平な側壁プレート14及び15、頂部及び底部のハウジング部材16および17・・・、ダイ・プレート19およびダイ・インサート20を含む。ハウジング部材16及び17は、入口22及びダイ・インサート20に設けられた出口24を有するチャンバ21の輪郭を規定する。・・・
チャンバ21内には、側壁プレート14と15の間に細長いノズル29部材が位置している。部材29は、入口22に向いたほぼ三角形のベースセクション30と、ダイ・インサート20の方へ伸びる1対の脚部31を有し、ほぼU字状に形作られている。
脚部はわずかに先細りで、狭い出口スロット33を有する細長い先細りのチャンバ32を形成している。・・・側壁プレート14には、チャンバ32の内部と連通し、第2の押出式形機からパイプ12を受け取る開口39が用意されている。」(3欄41行?4欄2行)
(B-4)「図4には、図1-3のヘッド10において、ノズル部材29間にプラグ44を設置したものが示され、ハウジング部材16は、水平な2つの層流れを押し出すヘッドに改変されている。プラグ44は、ヘッドの側壁14および15の内表面間の幅を有し、チャンバ21の上部からの流出を防ぐ。」(4欄7行?13行)
(B-5)「他の新規な生成物は、図16に示されるような垂直方向のダイ・オリフィスを通って異なる粘性の生地を共押し出しすることにより生産される。図18に示される生成物は、上部の層生地82が下部の層生地83より低い粘性を持っている2つの生地を共押し出しすることにより形成される。上部の層の速度が大きいことにより、押し出し物は下方へカールされる。異なる色の生地が使用される場合は、短い間隔でダイ表面でカットされ「チキンコーン」キャンディーに似たほぼ三角形の押し出し成形物が生産される。新規な2色フレーク製品は、図18の2色の三角形押し出し成形物をフレークロールの間に通すことにより形成される。生じるフレーク(そのうちの1つは図19に示される)は、1つの色の部分と、これとは異なる色の部分を有し、2色は線で明確に区切られている。」(10欄57行?73行)
(B-6)図17には2層の押し出し成形物がストランド状に押し出されることが示されている。
これらの記載によれば、刊行物Bには、次の発明が記載されていると認められる。
「二つの異なる色の押し出された生地を1個単位に含有する食品であって、1個単位が、互いに結合し、互いに別々に押し出された生地を含有する少なくとも二つの隣接区域からなるストランドを切り出し、ローラに通してフレーク形態とする食品。」

(2)対比
補正発明と刊行物A記載の発明を対比する。
刊行物A記載の発明における「多数の色を有する餌成分」は、補正発明の「少なくとも二つの異なる組成」に相当し、また、該餌成分は、押し出された成形物から成形されるから、「押し出された混合餌」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
「少なくとも二つの異なる組成の押し出された混合餌を1個単位に含有する水生動物用の餌であって、混合餌をフレーク形態とする餌。」

また、両者は次の点で相違する。
[相違点]
1個単位のフレーク形態が、補正発明では、「互いに結合し、互いに別々に押し出された混合餌を含有する少なくとも二つの隣接区域からなるストランドを円板に切り出した」ものであるのに対し、刊行物A記載の発明は、少なくともの二つ異なる組成の押し出された混合餌を含有するものではあるが、具体的にどのように押し出されたものか不明な点。

(3)判断
上記相違点1について検討すると、刊行物B記載の発明には、別々に押し出された二つの異なる組成の材料を互いに結合し、二つの隣接区域からなるストランド状とし、これを切断することが示されており、刊行物A記載の発明において、二つの異なる組成の押し出された混合餌を製造する際に、刊行物Bに示される発明を適用し、別々に押し出された二つの異なる組成の材料を互いに結合し、二つの隣接区域からなるストランド状とし、これを切断して餌を製造することは当業者が容易になしうることである。
また、餌の形状は、任意のダイを選択することにより容易に変更することができるものであり、ダイの出口を円形とし、ダイ出口で短い間隔で切断することによりストランドを円板に切り出すことも、当業者が適宜なしうることである。
なお、刊行物Bの図18には、粘度の異なる組成物を共押し出しすると全体がカールし、切断した成型物が三角形になることが示されているが、粘度が同じ組成物を共押し出しすることにより、切断した成型物を平板状とすることができることは容易に理解でき、三角形となる例が示されているとしても、刊行物B記載の発明の技術を刊行物A記載の発明に適用することが困難とはいえない。

また、補正発明の作用効果は全体として、刊行物A及びB記載の発明から予測できることである。
したがって、補正発明は、刊行物A及びB記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 補正の却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成22年6月2日付け手続補正は上記のとおり却下され、また、平成21年12月2日付け手続補正は補正の却下の決定がなされているので、本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成21年5月20日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】少なくとも二つの異なる組成の押し出された混合餌を1個単位に含有する水生動物用の餌であって、1個単位が、互いに結合し、互いに別々に押し出された混合餌を含有する少なくとも二つの隣接区域からなることを特徴とする餌。」(以下、「本願発明」という。)

2 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された特開平8-280333号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次のことが記載されていると認められる。
(1a)「【請求項1】 エクストルーダを用いて筒状体に加工された養魚用飼料。
【請求項2】 筒状体を構成する材料とは異なる他の材料で筒状内を二重状に形成した請求項1の養魚用飼料。
【請求項3】 省略
【請求項4】 用いるエクストルーダが二重ノズルのエクストルーダである請求項2または3の養魚用飼料。」
(1b)「【0007】そこで本発明は、熱安定性の弱いものやエクストルーダ内での原料溶融や組織化を阻害するものは二重構造を有した膨化飼料の内部に添加し、より膨化飼料ペレットの機能を高め、特徴的な飼料を提供しようとするものである。」
(1c)「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1)エクストルーダを用いて筒状体に加工された養魚用飼料、(2)筒状体を構成する材料とは異なる他の材料で筒状内を二重状に形成した上記(1)の養魚用飼料、(3)筒状体の両端が封鎖されている上記(1)または(2)の養魚用飼料、(4)二重ノズルのエクストルーダを用いて二重構造の筒状体に加工された養魚用飼料である上記(2)または(3)の養魚用飼料である。
【0009】本発明のエクストルーダを用いて筒状体に加工された養魚用飼料は、従来の養魚飼料原料を2軸押出機によりダイに供給して得られる。筒状体に加工された養魚用飼料は、切断方式の違いにより、筒状ペレットと筒状体の両端が封鎖されたペレットが得られる。・・・二重構造のものは、前記飼料原料を2軸押出機によりダイに供給して得られる筒状体内に、前記2軸押出機とは別の搬送手段によって搬送された前記飼料原料とは異なる他の材料を前記ダイを介して供給することにより、前記筒状体と内部材料を二重状に同時成形することにより得られる。
【0010】以下に本発明の二重構造のものの製造方法について説明する。図1に示すように、まず二重ノズルをエクストルーダのダイに装着し、外皮にはエクストルージョンクッキングされた従来の養魚飼料原料、そして内部には目的物質、例えば脂質、ビタミン類、色素等を注入し、二重構造ペレットを作成する。内容物はエクストルーダとは別に設置されたポンプにてダイ中に運ばれ、ダイ出口付近で外皮と接触、注入され、二重構造となる。・・・
【0011】二重構造ペレットは、切断方式の違いにより、図2および図3に示すような外皮と内容物の二重構造を有したEPペレットが得られる。
【0012】図2の円柱タイプの場合、ノズル出口から出てくる二重構造物をノズル出口に備え付けたカッターで任意の長さに切断する事で二重構造ペレットが得られる。・・・」

これらの記載によれば、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。
「従来の養魚飼料原料及び脂質、ビタミン類、色素等の目的物質が二重構造の筒状体に加工された養魚用飼料であって、二重ノズルをエクストルーダのダイに装着し、外皮にはエクストルーダにより押し出された従来の養魚飼料原料を、内部には目的物質をポンプにて注入して形成され、ノズル出口に備え付けたカッターで任意の長さに切断される養魚用飼料。」

3 対比、判断
本願発明と刊行物1記載の発明を対比する。
刊行物1記載の発明における「従来の養魚飼料原料及び脂質、ビタミン類、色素等の目的物質」は、本願発明の「少なくとも二つの異なる組成」に相当し、刊行物1記載の発明における「養魚用飼料」は、本願発明の「混合餌」又は「水生動物用の餌」に相当する。
また、刊行物1記載の発明における「二重構造の筒状体に加工された養魚用飼料」は、外皮と内部からなる二重構造物がカッターで切断されたものであって、切り口(断面)では、二つの異なる組成に部分が隣接しているから、「1個単位が、互いに結合した混合餌を含有する少なくとも二つの隣接区域からなるもの」といえる。
さらに、刊行物1記載の発明において、「外皮にはエクストルーダにより押し出された従来の養魚飼料原料を、内部には目的物質をポンプにて注入する」ことと、本願発明において「互いに別々に押し出された」とは、「互いに別々に供給された」点で共通する。

したがって、両者は、
「少なくとも二つの異なる組成の混合餌を1個単位に含有する水生動物用の餌であって、1個単位が、互いに結合し、互いに別々に供給された混合餌を含有する少なくとも二つの隣接区域からなる餌。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
二つの異なる組成を供給する手段が、本願発明ではいずれも「押し出し」であるのに対し、刊行物1記載の発明は、外皮材料は押し出しであるが、内部材料は、ポンプによる注入である点。

上記相違点について検討すると、刊行物1記載の発明における「ポンプによる注入」も、押し出し手段の一つといえるものであるが、仮にそうでないとしても、二つの異なる組成物を共押し出しすることにより二つの隣接区域からなる製品を製造することは、原査定の拒絶の理由で引用された特開平2-53474号公報及び前記第2で提示した刊行物Bに記載されているように本願の優先日前周知の技術であり、刊行物1記載の発明において、二つの異なる組成をいずれも押し出しにより供給することは当業者が容易になしうることである。
したがって、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-29 
結審通知日 2011-04-05 
審決日 2011-04-19 
出願番号 特願2003-581598(P2003-581598)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 隆一  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 宮崎 恭
山本 忠博
発明の名称 水生動物のための餌  
代理人 津国 肇  
代理人 柳橋 泰雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ