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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 出願日、優先日、請求日 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1243083
審判番号 不服2011-2576  
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-03 
確定日 2011-09-07 
事件の表示 特願2006-226767「発光ダイオード層と接合されたウェーハとの間の反射性境界面」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月24日出願公開、特開2006-319374〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成6年3月8日(優先権主張 1993年3月19日、アメリカ合衆国)に出願した特願平6-64528号(以下「原出願」という。)の一部を、平成15年8月18日に特許法第44条第1項の規定に基づき新たな特許出願とした特願2003-294341号の一部を、同規定に基づき新たな特許出願としたものとして、平成18年8月23日に出願したものであって、平成22年7月6日に手続補正がなされたが、同年9月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年2月3日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成22年7月6日になされた手続補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、同特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。

「 【請求項1】
成長基板上にエピタキシャル成長されたアルミニウムガリウムインジウム燐(AlGaInP)LED層であって、この成長基板が前記LED層を製造するための格子整合と適応性があるLED層と、
前記LED層の一方の側面にウェーハ・ボンディングされた第2の基板と、
透光性材料と、
からなり、
前記第2の基板が、前記透光性材料を間に置いて、前記LED層にウェーハ・ボンディングされている、発光ダイオード構造。
【請求項2】ないし【請求項5】 省略
【請求項6】
成長基板上にエピタキシャル成長されたアルミニウムガリウムインジウム燐(AlGaInP)LED層と、この成長基板が前記LED層を製造するための格子整合と適応性があり、
前記LED層の一方の側面にウェーハ・ボンディングされた透光性基板とからなる、発光ダイオード構造。
【請求項7】ないし【請求項9】 省略」

3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりである。

(1)本願は原出願の出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内でないものを含んでおり、出願の分割要件を満たしておらず、出願日の遡及は認められない。

(2)請求項1ないし2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(3)請求項3ないし4(審決注、平成22年7月6日になされた手続補正前のもの。上記2の請求項6ないし7に対応するものと認められる。)に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物である特開平6-302857号公報に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(4)請求項1ないし4に係る発明は、上記刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4 本願が分割出願の要件を満たすといえるかどうかについて
本願が特許法第44条第1項に規定する新たな出願といえるか(分割出願の要件を満たすといえるか)について、まず検討する。

(1)上記2によれば、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)である「発光ダイオード構造」は、第2の基板が、透光性材料を間において、成長基板上にエピタキシャル成長されたアルミニウムガリウムインジウム燐(AlGaInP)LED層にウェーハ・ボンディングされているという構成を備えるものと認められる。

(2)しかるところ、原出願の願書に最初に添付した明細書(以下「原明細書」という。)には、上記(1)の構成を備える発光ダイオード構造を明示して説明する記載が認められない。このことは、原出願の図面を考慮に入れても同様である。

(3)請求人は、平成22年7月6日に提出した意見書において、請求項1に係る発明は、図9及び【0041】?【0042】等に記載されている旨主張し、審判請求の理由において【0038】及び図7を挙げ、上記意見書で述べた箇所以外にも請求項1に係る発明は明確に発明の詳細な説明に記載されている旨主張するので、以下に検討する。

ア 原明細書には、以下の記載がある。

(ア)「 【0038】
半導体-ガラス接合において、半導体-半導体接合と比較して優れた接合強度が認められた。半導体-半導体接合と比較して同様のことが、半導体-SiO_(2) 接合の場合にも認められる。このように、機械的な完全性の観点から、半導体-ガラス-半導体の挟装層、又は半導体-SiO_(2) -半導体の挟装層を製造することによって透光性基板のLEDを形成することが望ましいだろう。図7を参照すると、ガラス又はSiO_(2) 、又はその他の酸化物の層52を導電性、透光性基板54上に形成することができる。次に層52がパターン形成されて、直前に述べた実施例の場合のように接点金属化領域56が付与される。あるいは、又はそれに加えて、LED構造40の最下層のLED層32上に酸化物及び/又は接点金属化領域58にパターン形成してもよい。この場合も、接点は良好な電気的接触用に充分な面積を付与し、同時に境界面を依然として大幅に透光性にするようにパターン形成される必要がある。次に層52の表面が緩衝層であるLED層32の表面と接触され、処理によって層の間のウェーハ接合が形成される。熱処理によって材料相互間の接合強度が増強される。」

なお、図7は、次のものである。


(イ)「 【0041】
ウェーハ・ボンディング工程を利用して積層LED装置を形成することもできる。このような素子は図9に示されている。境界面が装置を通して高い導電率が保持されるような境界面である場合は、複数のLED構造40と64とを互いに接合でき、且つ(又は)別の層と接合できる。上部のLED構造40のLED層34と38のトーピングの形式は下部のLED構造64の層70及び66のそれぞれのドーピングの形式と対応する。従って、二つのLED構造40と64とは同じ極性で配置されている。更に、ウェーハ接合される表面は極めて重くドーピングされるように準備される必要がある。このようにして、構造が互いに接合される際に、LED構造と逆の極性を有する重くドーピングされたトンネル接合部72が形成される。あるいは、トンネル接合部は、この接合部の露出表面にウェーハ・ボンディングを行いつつ、LED構造の一部としてエピタキシャル成長させてもよい。
【0042】
図9の装置は個々のLED構造40及び64が順方向にバイアスされるように、上部電極74に電圧を印加し、下部電極76に電圧を印加することによって動作される。下部電極は導電性、透光性基板78上のパターン化された金属化層である。積層装置の順方向バイアスは重くドーピングされたトンネル接合部72に逆バイアスを加え、それによってトンネル接合部を導電性にする。このようにして、光線出力と効率を高めるために任意の数のLEDを互いに積層することができる。LED構造40及び64の積層から成るLED装置は、それが互いに積層されていない場合の個々のLED構造の電圧の総計で動作する。能動層であるLED層36と能動層68とが同じ放射エネルギを有することは決定的に重要ではない。しかし、導電性、透光性基板78は個々のLED構造の放出エネルギよりも大きいエネルギ・ギャップを有していることが好ましい。導電性の形式の全てが反転された場合も積層を形成できることに留意されたい。」

なお、図9は、次のものである。


イ 上記ア(ア)によれば、原明細書には、半導体-半導体接合と比較して半導体-ガラス接合、半導体-SiO_(2) 接合においては接合強度が優れており、機械的な完全性の観点から、半導体-ガラス-半導体の挟装層、又は半導体-SiO_(2) -半導体の挟装層を製造することによって透光性基板のLEDを形成することが望ましいこと、具体的には、ガラス又はSiO_(2) 、又はその他の酸化物の層52を導電性、透光性基板54上に形成し、次に層52がパターン形成されて接点金属化領域56が付与され、あるいは、又はそれに加えて、LED構造40の最下層のLED層32上に酸化物及び/又は接点金属化領域58にパターン形成してもよいこと、この場合、接点は良好な電気的接触用に充分な面積を付与し、同時に境界面を大幅に透光性にするようにパターン形成される必要があることが記載されているものと認められる。
そして、境界面を大幅に透光性にする旨の説明によれば、ガラスないしSiO_(2) は、透光性であることが前提とされているものと理解できる。
すなわち、原明細書には、LED構造の最下層のLED層と導電性、透光性基板との間に、透光性であるガラスないしSiO_(2) の層を接点金属化領域とともにパターン形成したものを挟んで接合し、接合強度を優れたものとする技術が開示されているものということができる。
しかし、かかる開示をもって、ガラスないしSiO_(2) の層を接点金属化領域とともにパターン形成するものに特定されることなく、単に、透光性材料が、第2の基板とLED層との間におかれてウェーハ・ボンディングされるという、本願発明1の上記(1)の構成に係る技術的思想を開示するものとは到底いえない。

ウ また、上記ア(イ)によれば、原明細書には、ウェーハ・ボンディング工程を利用し、トンネル接合部を間において複数のLED構造を接合する技術が開示されていることが理解できるが、同技術は、本願発明1の上記(1)の構成とは全く結びつかないものである。

(4)以上によれば、上記(1)の構成を備える本願発明1が、原明細書に記載されていたものとすることはできず、原出願は、本願発明1を包含するものとはいえないものであるから、本願が、特許法第44条第1項に規定する新たな出願である(分割出願の要件を満たす)ということはできない。
よって、本願を、原出願の出願の時に出願したものとみなすことはできず、本願は、現実の出願日である平成18年8月23日に出願されたものというべきである。

5 特許法第36条第6項第1号についての検討
本願明細書の発明の詳細な説明に、上記4(1)の構成を備える発光ダイオード構造を明示して説明する記載は認められないことは、原出願の出願当初の明細書と同様である。また、上記4(3)の請求人主張に係る本願明細書及び図面の記載内容は、原出願の出願当初のものと変わりがない。
したがって、上記4での検討と同様の理由により、本願発明1が本願明細書の発明の詳細な説明に記載されているものとは認められないから、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

6 特許法第29条第1項第3号についての検討

(1)刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用した、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-302857号公報(以下「引用刊行物」という。)には、以下の記載がある(下線は、審決で付した。)。

「【0024】
【実施例】図1を参照すると、本発明を実施する第1の工程は、複数個のLED層をその上で順次成長させる第1基板として成長基板30を選択することである。好適な実施例では、成長基板30はLED層の製造後に除去される一時的成長基板である。この実施例では、成長基板の電気的、光学的特性は製造されるLEDの動作には関係ないので、成長基板はLED層の成長に影響する特性に関してだけ選択することができる。例えば、格子整合は一般に成長基板を選択する上で配慮される重要な側面である。しかし、実施例によっては成長基板は残されるので、その実施例では成長の適応性以外の特性が重要になる。
【0025】一時的成長基板30の例は厚さが250ないし500μmの範囲内のGaAs基板である。次に四つのLED層32,34,36及び38が成長基板30上で成長される。LED層32-38は液相エピタキシ、気相エピタキシ、金属有機化学蒸着及び分子ビーム・エピタキシを含む多様な公知の方法の何れかを利用して成長させることができる。LED層32-38は二重異質接合LEDを形成するが、本発明はどの種類のLED装置にも利用できる。
【0026】成長基板30の真上のLED層32はn-ドーピングされた緩衝層であるが、成長基板(30)と結合された第2側面ともなる。緩衝層の上方ではn-ドーピングされた下部のAlGaInP密封層が成長される。下部の密封層のLED層34の厚さは例えば800ナノメートルである。
【0027】AlGaInPの能動層となるLED層36は厚さが例えば500ナノメートルまで成長される。次にp-ドーピングされたAlGaInPの上部密封層となるとともに、第1側面ともなるLED層38の模範的な厚さが例えば800ナノメートルである。電流の拡散を促進することによって、LED構造の性能を向上するために、透明で、LED層34,36及び38よりも導電性が高いウインドゥ層をオプションとして上部密封層となるLED層38の上で成長させてもよい。このようなウインドゥ層はフレッチャー(Fletcher)他の米国特許明細書第5,008,718号に記載されている。
【0028】LED層32-38内ではある程度の光吸収性及び電気抵抗率の誤差が許容される。それはこれらの層が充分に薄く、最適な特性を達成するために素子の性能を著しく妥協しなくてもよいからである。しかし、光吸収性の一時的成長基板30は明確に性能に影響を及ぼす。さて、図2を参照すると、成長基板は既に除去され、成長層であるLED層32-38によって形成されたLED構造が残されている。成長基板の除去は、化学エッチング、ラップ研磨/研磨、反応性イオン・エッチング及びイオン摩砕を含むそれらの組み合わせの方法で達成できる。後に詳述するように、成長基板を除去する方法は除去した後で清浄で平坦な表面が現れる限りは限定的なものではない。成長基板に加えて、緩衝層であるLED層32の全部、又は一部を除去し、下部の密封層であるLED層34の一部を除去することができる。
【0029】一時成長基板を除去した後、性能向上基板が図2に示したLED構造40の最下層のLED層32又は最上層のLED層38の何れかに接合される。接合されるべきウェーハの位置はLED構造40、及び成長層32-38及び/又は接合される基板の電気的及び光学的特性に左右される。ウェーハ・ボンディング技術が採用される。ウェーハ・ボンディングによってLEDに性能増強基板を付与する別の方法と比較して多くの利点が得られる。
【0030】図3は透明層として使用され、また永久基板でもある導電性、透光性基板42が緩衝層であるLED層32にウェーハ接合された実施例を示している。ウェーハ・ボンディングには透光性基板を成長させる必要なくてもこれを得られるという利点をもたらす。好ましくはウェーハ接合された導電性、透光性基板42は8ミルを超える厚さを有している。従来の技術を使用してこれに匹敵する厚さを有する基板を成長させることは困難であるか、不可能であり、可能であるにしても極めて長時間を要するであろう。LED構造40の比較的薄い層であるLED層32-38だけを成長させればよいので、エピタキシャル成長に要する時間を劇的に短縮でき、それによって処理量を最大限にすることができる。更に、ウェーハ・ボンディング工程によってエピタキシャル成長される透光性基板と比較して機械的特性が増強された厚い装置が得られる。その結果産出されるLED装置は取扱いが一層容易になり、破損しにくくなるので、製造がより簡単になり、装置の産出量が増大する。ウェーハ・ボンディングは更に装置の底部からp-n接合部を変位するために利用してもよく、それによって従来のように装置を導電性銀含有エポキシに実装する際に装置が短絡回路とする可能性が軽減される。
【0031】さて図4を参照すると、製造工程の残りには標準型のLED技術が含まれる。電極44が例えば蒸着によって上部密封層であるLED層38上に形成される。電極を形成する代表的な材料は金-亜鉛合金である。第2電極46は導電性、透光性基板42上に形成される。この場合も蒸着が用いられるが、それに限定されるものではない。代表的な材料は金-ゲルマニウム合金である。」

(2)引用発明
上記(1)によれば、引用刊行物には、次の発明が記載されているものと認められる。

「成長基板30の上に、緩衝層であるLED層32、下部のAlGaInP密封層となるLED層34、AlGaInPの能動層となるLED層36、AlGaInPの上部密封層となるLED層38が成長され、成長基板が除去されて残された、成長層であるLED層32-38によって形成されたLED構造40の最下層の緩衝層であるLED層32に導電性、透光性基板42が接合され、電極44が上部密封層であるLED層38上に形成され、第2電極46が導電性、透光性基板42上に形成されたLED装置であって、前記成長基板30を選択する上で格子整合が配慮されたLED装置。」(以下「引用発明」という。)

(3)対比、判断
本願の請求項6に係る発明(以下「本願発明2」という。)と引用発明とを対比するに、引用発明の「成長基板30」、「成長基板30の上に、緩衝層であるLED層32、下部のAlGaInP密封層となるLED層34、AlGaInPの能動層となるLED層36、AlGaInPの上部密封層となるLED層38が成長され、成長基板が除去されて残された、成長層であるLED層32-38によって形成されたLED構造40」、「『LED層32』に『接合され』た『導電性、透光性基板42』」及び「LED装置」は、それぞれ、本願発明2の「成長基板」、「成長基板上にエピタキシャル成長されたアルミニウムガリウムインジウム燐(AlGaInP)LED層」、「前記LED層の一方の側面にウェーハ・ボンディングされた透光性基板」及び「発光ダイオード構造」に相当し、引用発明は、「成長基板30を選択する上で格子整合が配慮された」ものであるから、本願発明2の「この成長基板が前記LED層を製造するための格子整合と適応性があり」との構成を備える。
したがって、引用発明は、本願発明2の構成をすべて備えるものであり、両者の間に相違するところは見当たらない。
よって、本願発明2は、引用刊行物に記載された発明というべきものであり、特許法第29条第1項第3号に該当するものである。

7 むすび
以上のとおり、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、また、本願発明2は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-08 
結審通知日 2011-04-12 
審決日 2011-04-25 
出願番号 特願2006-226767(P2006-226767)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01L)
P 1 8・ 537- Z (H01L)
P 1 8・ 03- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 三寛  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 松川 直樹
吉野 公夫
発明の名称 発光ダイオード層と接合されたウェーハとの間の反射性境界面  
代理人 津軽 進  
代理人 笛田 秀仙  

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