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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01M
管理番号 1243490
審判番号 不服2010-11883  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-02 
確定日 2011-09-14 
事件の表示 特願2006-199150「害虫駆除方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月21日出願公開、特開2006-340721〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成11年7月21日を国際出願日とする国際出願(受理官庁:米国特許商標庁)の一部を平成16年4月28日に新たな出願とした特願2004-133789号の一部を、さらに平成18年7月21日に新たな出願としたものであって、平成22年1月29日付けで拒絶査定がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし20に係る発明は、平成21年11月30日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】
害虫駆除装置において、1つ又は2つ以上の種の害虫により消費され又は変位されるように作動可能な少なくとも1つの餌部材と、無線励起信号に応答して前記害虫駆除装置に関する情報を伝送する受動型RF通信回路とを備える、害虫駆除装置。」(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

3 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である国際公開第98/18319号パンフレット(以下、「刊行物1」という。)には、「REMOTE MONITORING SYSTEM FOR DETECTING TERMITES『シロアリを検出するための遠隔監視システム』」に関して、図面と共に、概略次の事項が記載されている(当該国際公開に係る外国語特許出願について、国内公表された特表2001-502914号公報参照。)。
(1a)「本発明の好ましい実施形態は、以下の2つの反復可能なステップを特徴とする統合型害虫管理システムの一体化した一部である。これは、(1)集団の監視/捕獲(これ以下「監視」という)、及び(2)毒物を含む材料(matrix)を使用する害虫への毒物の送達である。プロセスにおける監視ステップは、シロアリの活動を検出するために単一または複数の特定の場所を監視することを含む。このステップは、さらに、シロアリの捕獲を含むことがある。・・・」(4頁10?15行)
(1b)「本発明を地下のシロアリの抑制にどのように適用するかの一例は、以下のとおりである。
適当な寸法の穴が、ステーションハウジングの位置決定のために地中に作られる。ステーションハウジングはその穴の中に配置される。監視装置は、ステーションハウジングの内側に配置される。カバーがステーションハウジングの上にかぶせられ、地表に固定される。あるいは、監視装置は、ステーションハウジングの開口部が地表近くになるまで土の中に差し込まれるか、打ち込まれたステーションハウジングの内側に設置することができる。・・・
監視装置は、シロアリの侵入の証拠がないか定期的に問い正すことができる。監視装置の検査は、必要や希望に応じて、毎週、隔週、毎月などで実行することができる。シロアリが柔らかな金属を食い破ることが知られているため、導電性金属の薄片が監視装置の中に組み込まれ、電子装置に接続されることがある。シロアリが薄い金属を食い破ると、回路が破壊され、これによりシロアリが存在することが明らかになる。」(4頁27行?5頁10行)
(1c)「本発明の好ましい遠隔監視システムは、例えば、図中に概略して示す。システムは、目標領域の周りに戦略的に配置されるセンサを含む。ここで説明する本発明の特定の用途を考慮すると、各センサは、シロアリが食べることができるセルロースやその他の物質でできた監視装置または監視ブロックを含むことが好ましい。
そして、監視装置または監視ブロックはシロアリが食い破ることができるところに対応するブリッジ回路を有する。対応するブリッジ回路を含む監視装置は、監視ステーションハウジング内に設置される。
1つの実施形態においては、各センサの各ブリッジ回路が、センサを現場のデータ収集装置にリンクするケーブルに接続される。多様に敷設されるケーブルが、検出されたシロアリの活動の正確な場所に関してさらに詳細な情報を提供するために、センサーの複数の個別ゾーンを作成するために使用することができ、各ゾーンはデータ収集装置への独自の個別ケーブルリンクを有する。このようにして、1つのゾーンでのシロアリの存在は、他のゾーンとは無関係に突き止められる。
各ゾーンは、例えば図2に示すように、1つのセンサを数個、または例えば図1に示すように複数のセンサーを多く含むことがある。ケーブルのような配線された構成部品の代わりに、システムは、センサを例えば図3に示すような無線通信装置を使用して形成し、独立した無線リンク上でデータ収集装置と通信するように構成することもある。現場のデータ収集装置は、各センサまたはセンサのグループに関するデータを連続的に、または(毎時、毎日、毎週などの)定期的な間隔で、あるいは指定されたスケジュールで、あるいは要求に応じて(リアルタイム監視)登録するように設定される。」(5頁11行?6頁2行)
(1d)「監視装置内でシロアリの存在が検出されると、監視装置がステーションハウジング(または土)から取り外され、毒物送達装置(餌管)の中に入った毒物を含む材料と置換することができる。・・・」(10頁21?23行)
(1e)図1?3には、複数のセンサが害虫管理の領域内で離間して配置されることが示されている。
(1f)図3には、害虫管理の領域内で離間して配置された複数のセンサが無線通信リンクを介してデータ収集装置と通信する態様が示されている。

これらの記載事項及び図面に示された内容を総合すると、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。
「土中に設置されるステーションハウジングと、前記ステーションハウジング内に設置されるシロアリの監視装置(センサ)と、ステーションハウジング内においてシロアリの監視装置と置き換えて使用される毒物送達装置を有する、シロアリの遠隔監視装置であって、シロアリの監視装置は、シロアリにより食い破られる薄い金属と、シロアリの活動に関する情報を伝送する通信回路とを備える、シロアリの遠隔監視装置。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

4 対比
本願発明と刊行物1記載の発明を対比する。
本願発明の「害虫駆除装置」について、発明の詳細な説明には、段落【0006】に
「「害虫駆除装置」とは、広く、1つ又は2つ以上の種の害虫を感知し、検知し、監視し、餌でおびき寄せ、給餌し、毒を与え、すなわち全滅させるために使用される任意の装置を広く意味するものとする。」と記載され、実施例には活動監視アセンブリに通信回路を設け、害虫が検知された後に殺虫剤入り餌を設置することが記載されているから(段落【0050】参照)、「害虫駆除装置」とは、害虫を駆除するために使用される任意の装置を広く意味し、監視装置に置き換えて駆除装置を設置するような態様までをも含むものと解釈される。
そうすると、刊行物1記載の発明において、通信回路を含むシロアリの「監視装置」、監視装置を設置する「ステーションハウジング」及び監視装置に置き換えて設置される「駆除装置」は全体として、本願発明の「害虫駆除装置」に相当する。

そうすると、両者は、
「害虫駆除装置において、1つの種の害虫により消費されるように作動可能な1つの餌部材と、前記害虫駆除装置に関する情報を伝送する通信回路とを備える、害虫駆除装置。」である点で一致し、次の点で相違している。

[相違点]
通信回路が、本願発明では、無線励起信号に応答して情報を伝送する受動型RF通信回路とを備えるものであるのに対して、引用発明では、どのような形態の通信回路であるのか不明である点。

5 判断
上記相違点について検討すると、刊行物1記載の発明の害虫駆除装置のステーションハウジングは、すくなくとも一部が土中に埋設されているものであり、刊行物1には、害虫駆除装置に関する情報を無線通信手段を介してデータ収集装置に送信することが記載されている。
そして、地中に配置される埋設物から情報を得るための通信回路として、「無線励起信号に応答して情報を伝送する受動型RF通信回路」を用いることは、原査定の拒絶の理由で例示した特開平7-43460号公報、特開平9-26320号公報、特開平10-105861号公報にみられるように周知技術である。
そうすると、刊行物1記載の発明において、地中に配置される害虫駆除装置から情報を伝送する通信回路として、周知の受動型RF通信回路を採用して、相違点に係る本願発明の如くの構成とすることは、当業者が容易に想到しうることである。

なお、審判請求の理由において請求人は、「引用文献1の害虫センサは、データ収集ユニットにより送られる要求に応答することのない数多くの方法により、データ収集ユニットに情報を伝送するように構成され得る。例えば、個々の害虫センサは、それぞれ予め定められた、あるいは予めセットされたスケジュールによりプログラムされており、データ収集ユニットのために、質問することや要求なしにそのスケジュールに従ってデータ収集ユニットに自動的に前記情報を伝送するように構成され得る。引用文献1は、拒絶査定において指摘された「データ収集ユニットが害虫センサに対して要求を伝送するという構成」を明らかに開示していない。結果として引用文献1は、この度指摘されたように、受動型RF通信回路を含めるように当業者を導くものではない。」と主張している。
しかし、刊行物1には、データ収集装置は、各センサからのデータを連続的に、または定期的な間隔で、あるいは指定されたスケジュールで、あるいは要求に応じて登録するように設定されることが記載されているが、具体的にデータをどのようにして収集するかは何ら規定されているものではなく、定期的な間隔で、あるいは指定されたスケジュールで、あるいは要求に応じて、害虫監視装置に対し無線励起信号を送り、これに応答して、害虫監視装置に設けた受動型RF通信回路から信号を伝送させることが困難とはいえない。

そして、装置を掘り出し又は開放することなく害虫の活動を容易に検知できる等の本願発明の作用効果は、刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる程度のものである。
したがって、本願発明は、刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-07 
結審通知日 2011-04-12 
審決日 2011-04-26 
出願番号 特願2006-199150(P2006-199150)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 隆一  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 山本 忠博
宮崎 恭
発明の名称 害虫駆除方法及び装置  
代理人 藤田 尚  
代理人 片山 英二  
代理人 小林 浩  
代理人 大森 規雄  
代理人 鈴木 康仁  

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