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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04Q
管理番号 1243596
審判番号 不服2008-10431  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-24 
確定日 2011-09-12 
事件の表示 特願2004-507268「呼受付制御システムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年12月 4日国際公開、WO03/101127、平成17年 9月 8日国内公表、特表2005-527161〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、2003年5月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年5月24日及び2002年12月30日、米国)を出願日とする国際出願であって 平成20年1月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成20年4月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年4月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、平成19年10月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「通常の測定値に基づく呼受付制御を実行する方法であって、
目的とするセルの通常の測定を実行するステップと、前記目的とするセルの前記通常の測定は呼の受け付け制御の目的のみの測定ではなく、 隣接しているセルの通常の測定を実行するステップと、前記隣接しているセルの前記通常の測定は呼の受け付け制御の目的のみの測定ではなく、 要求された呼が受付される場合の前記目的とするセルおよび前記隣接しているセルの通
常の測定値のレベルを推定するステップと、
前記推定に基づいて前記目的とするセルおよび前記隣接しているセルの負荷を計算する
ステップと、
前記計算に基づき呼受付の受け付けまたは拒否を行なうステップと
を備えたことを特徴とする方法。」(下線は補正箇所を示す。)

2.補正の目的
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「目的とするセルの通常の測定」及び「隣接しているセルの通常の測定」において、「呼の受け付け制御の目的のみの測定ではなく、」と限定し、また、「目的とするセルおよび前記隣接しているセルの負荷を測定する」を具体的に「目的とするセルおよび前記隣接しているセルの負荷を計算する」とするもので、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特表2002-506334号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a)「通信ネットワークの意思決定(呼の承認及び呼の混雑制御など)は、入力として呼が設定されるセル内の情報だけでなく、呼が設定されるセルに隣接するセルからのセル状態情報も利用する。隣接セルのセル状態情報は、隣接セルが別の交換機、例えば、別の無線ネットワークコントローラ(RNC)によって制御されている場合においても入手される。実施形態では、意思決定に利用されるセル状態情報は、測定データを含んでおり、その1つの例は無線干渉情報である。」(【要約】の記載。)

b)「 【0036】
呼が設定されるセルに隣接するセルでの無線干渉を考慮する本発明の包括的呼の承認技法は、図5に示した基本的ステップを有している。図5に示した流れは、図2のネットワークトポロジーの状況において記載したシナリオの例に関連している。
【0037】
ステップ5-1は、基地局(BS)226_(2,1)のトランシーバ基板(Tx/Rx)264が、トランシーバ基板(Tx/Rx)264が無線通信している様々な移動局から(各周波数に関して)受信したパワーの(接続全部の)合計の測定を示している。各周波数に対して、トランシーバ基板(Tx/Rx)264は、図5の矢印5-2で示されたように、自身のBS制御ユニット262にパワー受信メッセージを定期的に送信する。矢印5-2で示されたパワー受信メッセージは、報告される無線周波数の識別とその無線周波数で受信したパワーの指標を含んでいる。ステップ5-3では、BS制御ユニット262が、定期的インターバルで、該インターバルの間に受信したパワー(例えば、干渉)の平均値の計算を行う。受信した干渉は受信したパワーと同じであり、例えば、基地局(BS)2262,1が、基地局(BS)226_(2,1)に検出される十分な強さの全ての移動局からの送信を受信したパワーである。
【0038】
このように、セル全体での受信したパワーの合計の平均がBS制御ユニット262によって計算される。しかし、受信したパワーの合計の平均はセル状態情報の1例である。セル状態情報の他の例は、セルの状態(アップ/ダウン)および基地局から周波数毎に送信したパワーを含むことができる。
【0039】
各インターバルの終わりで、ステップ5-3で得られた干渉平均値の測定値は、基地局(BS)226_(2,1)のBS制御ユニット262からリンク225_(2,1)によって無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(2)に送信される。図2及び図5の矢印5-4は、基地局(BS)226_(2,1)から無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(2)に送信されるBS平均干渉メッセージの送信を示している。BS平均干渉メッセージは、例えば、各セクタ及び周波数で受信したパワーの合計の値を含んでいる。BS平均干渉メッセージは、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(2)から自身のRNC制御ユニット242に送られる。
【0040】
無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(2)のRNC制御ユニット242は、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(2)の制御する基地局の全てでなければいくつかからBS平均干渉メッセージを受信する。上記のように、基地局(BS)226_(2,1)はステップ5-4で示されたBS平均干渉メッセージを送信した。図2の状況では、例えば、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(2)は、ステップ5-4’で示したような基地局(BS)226_(2,3)からの別のBS平均干渉メッセージを受信するかもしれない。基地局(BS)226_(2,3)からのBS平均干渉メッセージ(ステップ5-4’)はもちろん、基地局(BS)226_(2,3)が自身の係わる接続に関して行った同様のタイプの測定値を含んでいる。
【0041】
可能性のある複数の基地局からBS平均干渉メッセージ(例えば、ステップ5-4及び5-4’)を受信すると、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(2)のRNC制御ユニット242は、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(2)によって制御されるセルに隣接するセルを有する他のRNCそれぞれに送信する独自のRNC干渉メッセージを作成する。例えば、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(2)は、自身のセル227_(2,1)及び227_(2,3)が無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)に属するセルとの境界231に沿って位置しているのを知っている。従って、図5のステップ5-5で示されるように、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(2)は無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)に送信するRNC干渉メッセージを作成し、このRNC干渉メッセージは基地局226_(2,1)(セル227_(2,1)内に位置する)及び基地局226_(2,3)(セル227_(2,3)内に位置する)からの干渉値を含んでいる。別の無線ネットワークコントローラ(RNC)222に送信する同様なRNC干渉メッセージが無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(2)で作成され、この同様なメッセージは別の無線ネットワークコントローラ(RNC)222によってサービスされるセルとの境界に沿って位置するセルにサービスする基地局からの測定値を有している。」(段落【0036】?【0041】の記載。)

c)「ここで記載した無線ネットワークコントローラ(RNC)222の例示的アーキテクチャでは、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(2)のRNC制御ユニット242からのRNC干渉メッセージは、スイッチ240を通って無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(2)のRNCインタフェース246へ送られてRNC間転送リンク232に供給される。無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)では、RNC干渉メッセージがそのRNCインタフェース246で受信されて自身のスイッチ240を通ってそのRNC制御ユニット242へ送られる。
【0045】
図5のステップ5-8で示されるように、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)のRNC制御ユニット242は、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(2)から入手したRNC干渉メッセージで受信した測定値を、自身が保持するセル干渉テーブル900(図9参照)を更新するのに使用する。セル干渉テーブル900は数Mのレコードを有し、各レコードはエントリの対を有している。各レコードの第1のエントリはセルを識別する情報を含んでおり、各レコードの第2のエントリは同じレコードの第1のエントリで識別されたセルに関する干渉値を格納する。セル干渉テーブル900は、(1)RNCによって制御される基地局を有するセルそれぞれと、(2)RNCによって制御される基地局を有するセルに隣接するセルとに対するレコードを有している。このように、図2の例では、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)に格納されたセル干渉テーブル900は、セル227_(1,1)から227_(1,3)並びにセル227_(2,1)から227_(2,3)それぞれに対するレコードを有している。
【0046】
このようにステップ5-8で、別のRNCからのRNC干渉メッセージがステップ5-7でのように受信されたとき、RNC干渉メッセージを受信したRNCは受信したRNC干渉メッセージに格納されたセル識別子及び干渉値を使用して受信したRNCが保持するセル干渉テーブル900を更新する。」(段落【0044】?【0046】の記載)

d)「【0048】
呼の承認の判断に含まれる基本的ステップが図7に示されている。ここで例示のために、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)のRNC制御ユニット242が、セル227_(1,3)内の移動局によって要求された呼の設定に関する呼の承認の判断に係わっていると仮定し、この場合隣接するセル227_(2,1)及び227_(2,3)からの干渉測定値が関係するであろう。
【0049】
図7の呼の承認技法のステップ7-1は、接続の設定要求が無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)によって受信されたことを示している。検討中のこの例では、現在セル227_(1,3)内に位置する移動局からの接続設定要求が受信された。
【0050】
ステップ7-2で呼を制御しているRNC、すなわち図2のシナリオでは無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)は、閾値(「閾値1」)を計算する。図示した実施形態では、閾値1はセルに対する許容可能な最大アップリンク干渉から特定の接続によって生じる予測される最大パワー(例えば、そのビットレート及びビットエラーレートに基づく)を減じたものに基づいて計算される。
【0051】
ステップ7-3で、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)のRNC制御ユニット242は、自身が保持するセル干渉テーブル900を調べて要求されているセル(例えば、この例ではセル227_(1,3))に対するアップリンク干渉を決定する。そしてステップ7-4で、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)のRNC制御ユニット242は、要求されているセル内の干渉が閾値1未満であるかどうかを判定する。要求されているセル内での干渉が閾値1以上であったら、ステップ7-5で示されるように呼の設定要求は拒絶される。このように、呼が生じるセルの干渉が既に過度であったら呼の設定要求は否定される。
【0052】
呼が生じるセル内の干渉が問題とならない場合でも、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)のRNC制御ユニット242は、隣接するセル(例えば、呼が生じるセルに隣接するセル)内での干渉に関する更なる干渉判定を行う。これに関して、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)のRNC制御ユニット242はステップ7-6で、呼が生じるセルを囲むあるいは隣接するセルのリストを作成する。図2を参照して説明するこの例においては、ステップ7-6では、セル227_(1,3)に隣接しているセル227_(1,1)、227_(2,1)及び227_(2,3)を含むリストが編集される。このようなリストは、ネットワークトポロジーの無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)のRNC制御ユニット242による知識に鑑みて容易に組み立てられる。
【0053】
無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)のRNC制御ユニット242は、ステップ7-7から7-9のループをステップ7-6でリスとされたセルのそれぞれについて実行する。図7のループは各隣接セルについて独立して行われる。ステップ7-7で、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)のRNC制御ユニット242は、隣接するセルに対して別の閾値、特に閾値2を計算する。ここで説明する実施形態では、閾値2はセルに対する許容可能な最大アップリンク干渉から特定の接続によって生じる予測されるアップリンクパワー(例えば、そのビットレート、ビットエラーレート、及び隣接するセルとの距離に基づく)を減じたものに基づいて計算される。ステップ7-8で、それぞれの呼に対する干渉(それぞれの呼に対するセル干渉テーブル900のレコードの第2フィールドから得られる)が閾値2未満であるかどうかがチェックされる。ステップ7-8でのチェック結果が肯定的であれば、ステップ7-9で隣接する最後のセル(例えば、ステップ7-6で展開されたリストの最後のセル)がチェックされたと判定されるまでループの実行が続けられる。リストの最後のセルがチェックされたら、ステップ7-10で無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)のRNC制御ユニット242は、呼を承認、すなわち無線接続の設定を許容すべく進める。一方、ステップ7-8でのチェック結果がいずれかの隣接セルに対して否定的であれば、ステップ7-5で接続設定要求は拒絶される。」(【0048】?【0053】の記載。)

これらの記載によれば、引用例1には、
「通信ネットワークの呼の承認を行う承認技法として入力として呼が設定されるセル内の情報だけでなく、呼が設定されるセルに隣接するセルからのセル状態情報も利用する方法であって、
まず、ステップ5-1は、基地局(BS)226_(2,1)のトランシーバ基板(Tx/Rx)264が、トランシーバ基板(Tx/Rx)264が無線通信している様々な移動局から(各周波数に関して)受信したパワーの(接続全部の)合計を測定し、
ステップ5-3では、BS制御ユニット262が、定期的インターバルで、該インターバルの間に受信したパワー(例えば、干渉)の平均値の計算を行い、各インターバルの終わりで、ステップ5-3で得られた干渉平均値の測定値は、基地局(BS)226_(2,1)のBS制御ユニット262からリンク225_(2,1)によって無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(2)に送信され、
可能性のある複数の基地局からBS平均干渉メッセージを受信すると、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(2)のRNC制御ユニット242は、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(2)によって制御されるセルに隣接するセルを有する他のRNCそれぞれに送信する独自のRNC干渉メッセージを作成し、
無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)のRNC制御ユニット242は、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(2)から入手したRNC干渉メッセージで受信した測定値を、自身が保持するセル干渉テーブル900(セル干渉テーブルは、1)RNCによって制御される基地局を有するセルそれぞれと、2)RNCによって制御される基地局を有するセルに隣接するセルとに対するレコードを有している。)を更新し、
現在セル227_(1,3)内に位置する移動局からの接続設定要求が受信された際に、
ステップ7-2で呼を制御している無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)は、セルに対する許容可能な最大アップリンク干渉から特定の接続によって生じる予測される最大パワー(例えば、そのビットレート及びビットエラーレートに基づく)を減じたものに基づいて閾値1を計算し、
ステップ7-3で、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)のRNC制御ユニット242は、自身が保持するセル干渉テーブル900を調べて要求されているセル(例えば、この例ではセル227_(1,3))に対するアップリンク干渉を決定し、
ステップ7-4で、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)のRNC制御ユニット242は、要求されているセル内の干渉が閾値1未満であるかどうかを判定する。要求されているセル内での干渉が閾値1以上であったら、ステップ7-5で示されるように呼の設定要求は拒絶を行う、
そして、呼が生じるセル内の干渉が問題とならない場合でも、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)のRNC制御ユニット242は、隣接するセル(例えば、呼が生じるセルに隣接するセル)内での干渉に関する更なる以下の干渉判定を行う、
ステップ7-7で、無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)のRNC制御ユニット242は、隣接するセルに対してセルに対する許容可能な最大アップリンク干渉から特定の接続によって生じる予測されるアップリンクパワー(例えば、そのビットレート、ビットエラーレート、及び隣接するセルとの距離に基づく)を減じたものに基づいて閾値2を計算し、
ステップ7-8で、それぞれの呼に対する干渉が閾値2未満であるかどうかがチェックされ、
ステップ7-8でのチェック結果が肯定的であれば、ステップ7-9で隣接する最後のセルがチェックされたと判定されるまでループの実行が続けられ、
リストの最後のセルがチェックされたら、ステップ7-10で無線ネットワークコントローラ(RNC)222_(1)のRNC制御ユニット242は、呼を承認、すなわち無線接続の設定を許容すべく進め、一方、ステップ7-8でのチェック結果がいずれかの隣接セルに対して否定的であれば、ステップ7-5で接続設定要求は拒絶される
通信ネットワークの呼の承認を行う承認方法」の発明(以下「引用例1記載の発明」という。)が開示されていると認めることができる。

4.対比
そこで、本願補正発明と引用例1記載の発明とを比較すると、引用例1記載の発明の「呼の承認を行う」は、本願補正発明の「呼受付制御」に相当し、以下同様に、「移動局からの接続設定要求が受信」された「現在セル」は、「目的とするセル」に、「隣接セル」は「隣接しているセル」に、それぞれ相当し、さらに、引用例1記載の発明の「移動局から受信したパワーの合計を測定」をすることは、本願補正発明の「セルの通常の測定を実行する」ことに相当する。そして、引用例1記載の発明の「自身が保持するセル干渉テーブル900を調べて要求されているセルおよび隣接するセルに対するアップリンク干渉を決定」することは、本願補正発明における「要求された呼が受付される場合の前記目的とするセルおよび前記隣接しているセルの通常の測定値のレベルを推定する」ことに相当する。また、引用例1記載の発明の「閾値1」、「閾値2」を計算し、「呼に対する干渉が閾値未満であるかどうか」でもって「呼の承認を行う」ことは、本願補正発明の「推定に基づいて前記目的とするセルおよび前記隣接しているセルの負荷を計算するステップと、前記計算に基づき呼受付の受け付けまたは拒否を行なう」ことに相当している。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「通常の測定値に基づく呼受付制御を実行する方法であって、
目的とするセルの通常の測定を実行するステップと、
隣接しているセルの通常の測定を実行するステップと、
要求された呼が受付される場合の前記目的とするセルおよび前記隣接しているセルの通常の測定値のレベルを推定するステップと、
前記推定に基づいて前記目的とするセルおよび前記隣接しているセルの負荷を計算するステップと、
前記計算に基づき呼受付の受け付けまたは拒否を行なうステップと
を備えたことを特徴とする方法。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本願補正発明は、目的とするセル及び隣接するセルの通常の測定をする各ステップにおいて、当該測定は、呼の受け付け制御の目的のみの測定ではないのに対し、引用例1記載の発明は、当該測定についてそのような明記がない点。

5.相違点の判断
<相違点1について>
引用例1記載の発明における「無線通信している様々な移動局から(各周波数に関して)受信したパワーの(接続全部の)合計の測定」は、呼の受付制御に使用されているが、移動局からのパワーの測定は、呼の制御で使用する以外に、例えば、移動局との送受信のパワーの制御を行うために使われることは、引例を挙げるまでもなく周知の技術であることから、当該相違点1に格別の意義は認められない。
したがって、相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用文献1記載の発明に、当該技術分野における周知の技術を適用したものであり、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明が奏する作用、効果についてみても、引用文献1記載の発明及び周知の技術から当業者が予想できる程度のものである。

よって、本願補正発明は、引用文献1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成20年4月24日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年10月30日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「通常の測定値に基づく呼受付制御を実行する方法であって、
目的とするセルの通常の測定を実行するステップと、
隣接しているセルの通常の測定を実行するステップと、
要求された呼が受付される場合の前記目的とするセルおよび前記隣接しているセルの通常の測定値のレベルを推定するステップと、
前記目的とするセルおよび前記隣接しているセルの負荷を測定するステップと、
前記測定に基づき呼受付の受け付けまたは拒否を行なうステップと
を備えたことを特徴とする方法。」

第4 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「第2の3.引用例」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、前記「第2の2.補正の目的」に記載した限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2の5.相違点の判断」に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-11 
結審通知日 2011-04-15 
審決日 2011-04-26 
出願番号 特願2004-507268(P2004-507268)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04Q)
P 1 8・ 121- Z (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 望月 章俊  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 大野 克人
江口 能弘
発明の名称 呼受付制御システムおよび方法  
復代理人 濱中 淳宏  
代理人 阿部 和夫  
代理人 谷 義一  
復代理人 合田 潔  

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