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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1243600
審判番号 不服2009-5700  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-16 
確定日 2011-09-12 
事件の表示 特願2000-334494「誤り訂正アルゴリズムによるユニバーサル・シリアル・バス上の等時性転送方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月 6日出願公開、特開2001-184270〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年11月1日(パリ条約による優先権主張1999年11月3日、米国)の出願であって、平成20年3月31日付け拒絶理由通知に対して、同年10月8日付けで意見書が提出され、同年12月9日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成21年3月16日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?3に係る発明は、平成19年8月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものであるところ、請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項2】 ホスト・コンピュータと外部装置との間の連続した通信を確立するシステムであって、
前記ホスト・コンピュータ上にあり、該ホスト・コンピュータの固有のオペレーティング・システム上で適切にサポートされる広帯域幅通信インタフェースと、
前記通信インタフェースと結合して使用され、広い通信帯域幅があらかじめ割り振られた等時性データ転送モードと、
前記ホスト・コンピュータと前記外部装置との間で実施され、前記ホスト・コンピュータと前記外部装置との間のデータ通信精度を保証するデータ信頼性機構であって、誤りのある場合に、データを再送信する機構を含む、データ信頼性機構と、
を備えて成るシステム。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、長岡泰彦,つねにシステムの中で高速であることが要求されるPCのシリアル/パラレルインターフェース規格,Interface,日本,CQ出版株式会社,1998年4月1日,第24巻、第4号,p.122?150(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている(なお、黒い右向き三角の記号を、|>と表記した。)。

(イ)「USB (Universal Sirial Bus)に期待されているのは,やはり現在のPCインターフェースの統合により,低コスト化を実現することです.IEEE1394と比較すると,速度は遅いものの手軽なインターフェースとして発展して行くものと思われます.
とくに,Windows98で標準インターフェースとしてサポートされることと,Intelによる本格的なサポートにより弾みがつくでしょう.すなわち,周辺装置メーカーは, PC98準拠のPCが登場すると同時に本格的なサポートを開始するでしょう.」(第135頁左欄第1?8行)

(ロ)「●USBのおもな機能
次に,USBのおもな機能とその特徴を示します.
|>12Mbpsと1.5Mbpsのシリアルバス
|>操作が簡単
|>プラグ&プレイに対応
|>アイソクロナス転送が可能
|>低コストで実現可能
USBとIEEE1394が世の中で最初に注目されたとき,競合するテクノロジだといわれました.たしかに機能を比較すると非常に似ています.しかし,速度を比較するとIEEE1394のほうが1桁勝っています.
そしてUSBは,PCと周辺装置の通信に的を絞ることによりはっきり棲み分けがなされています.PCのインターフェースをUSB に統合し,しかも使いやすくすることがポイントになります.
●接続形態
USBにつながれたデバイスの中では,PCがホストとして一番上の存在になります.」(第135頁左欄第30行?同頁右欄13行)

(ハ)「●転送方式
USBの転送方式には,次の4種類があります.
|>コントロール転送
|>インタラプト転送
|>バルク転送
|>アイソクロナス転送
コントロール転送は,ホストがUSBのデバイスからコンフィギュレーション情報を知るためにあります.これは,デバイスが接続されたときに行われます.
インタラプト転送は,デバイスが少量のデータを周期的に送る際に使用します.インターバルの値は,初期設定のときにデバイスから知らされます.マウスやキーボードなどに使用されます.
バルク転送は,周期性をもたずに大量のデータを転送する場合に使われます.しかも,バンド幅を保証しなくともよい場合で,プリンタやスキャナなどに用いられます.
アイソクロナス転送は,バンド幅が保証されなければならない大量のデータを転送する際に用いられます.音声データなどのように遅延が許されず,多少のデータエラーが起こってもかまわないものに使われます(図4).」(第135頁右欄第30行?第136頁左欄第15行)

上記引用例記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ホストであるPCと周辺装置の通信におけるPCのインターフェースであって、USB (Universal Sirial Bus)は、12Mbpsと1.5Mbpsのシリアルバスで、Windows98で標準インターフェースとしてサポートされ、該USBの転送方式にはアイソクロナス転送が含まれ、該アイソクロナス転送は,バンド幅が保証されなければならない大量のデータを転送する際に用いられる、PCのインターフェース。」

4.対比
そこで、本願発明と、引用発明と比較する。
引用発明の「ホストである」「PC」が、本願発明の「ホスト・コンピュータ」に相当する。
次に、引用発明の「周辺装置」が、本願発明の「外部装置」に相当する。
次に、引用発明の「Windows98」が、オペレーティング・システムであること、及び、引用発明の「12Mbpsと1.5Mbpsのシリアルバス」が広帯域であることは明らかであるから、引用発明1の「PCのインターフェース」であって、「Windows98で標準インターフェースとしてサポートされ」、「12Mbpsと1.5Mbpsのシリアルバス」である「USB (Universal Sirial Bus)」が、本願発明の「該ホスト・コンピュータの固有のオペレーティング・システム上で適切にサポートされる広帯域幅通信インタフェース」に相当する。
次に、引用発明において、「PCのインターフェース」として用いられる「USB」の「アイソクロナス転送」は、「バンド幅が保証され」、「12Mbps」の帯域を有している「転送方式」であるから、本願発明の「前記通信インタフェースと結合して使用され、広い通信帯域幅があらかじめ割り振られた等時性データ転送モード」に相当する。
次に、「アイソクロナス転送」は、等時性の転送であるから、引用発明において「アイソクロナス転送」により行われる「ホストであるPCと周辺装置」との間の「通信」が連続的な通信であることは明らかである。
よって、引用発明において、「アイソクロナス転送」により行われる「ホストであるPCと周辺装置」との間の「通信」が、本願発明の「ホスト・コンピュータと外部装置との間の連続した通信」に相当するといえる。
同様に、引用発明の「ホストであるPCと周辺装置」との間で「アイソクロナス転送」により「通信」を行うシステムが、本願発明の「ホスト・コンピュータと外部装置との間の連続した通信を確立するシステム」に相当するといえる。

すると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
ホスト・コンピュータと外部装置との間の連続した通信を確立するシステムであって、
前記ホスト・コンピュータ上にあり、該ホスト・コンピュータの固有のオペレーティング・システム上で適切にサポートされる広帯域幅通信インタフェースと、
前記通信インタフェースと結合して使用され、広い通信帯域幅があらかじめ割り振られた等時性データ転送モードと、
を備えて成るシステム。」

一方で、両者は次の点で相違する。
<相違点>
本願発明の「等時性データ転送」による通信は、「前記ホスト・コンピュータと前記外部装置との間で実施され、前記ホスト・コンピュータと前記外部装置との間のデータ通信精度を保証するデータ信頼性機構であって、誤りのある場合に、データを再送信する機構を含む、データ信頼性機構」を備えているのに対し、引用発明の「アイソクロナス転送」(本願発明の「等時性データ転送」に相当する。以下同じ)による通信は、かかる「データ信頼性機構」を備えていない点。

5.判断
そこで、上記相違点について以下検討する。
I. Miloucheva, O. Bonnesz, XTPX Transport System for Flexible QoS Support of Multimedia Applications, Conference Proceedings of the 1995 IEEE Fourteenth Annual International Phoenix Conference on Computers and Communications, 1995, p. 643?649の「4.2 Error Control for Isochronous Media」(当審訳:等時性メディアのためのエラー制御)欄(第648頁左欄第21行?同頁右欄第11行)には、連続的なメディア用のエラー制御技術(the error control techniques for continuous media)として、「再送なし」(without retransmission)の外に、「選択的な再送技術(FASTNAK)と、遅延したTSDU(トランスポート・サービス・データ・ユニット)の放棄技術との組合せ」(Combination of selective retransmission techniques (FASTNAK) and techniques for discarding delayed TSDUs)を採用しうること、及びこれにより、「PDU(プロトコルデータユニット)のロスが検知された場合に、直ちに否定応答を返すことが許される」(It allows immediately a negative acknowledgment when PDU loss is detected.)」ことが記載されている。
また、特開昭62-199146号公報(第3頁左下欄第16行?同頁右下欄第9行、第4頁左下欄第13?20行)には、受信された音声パケットに誤りが検出された場合、時間的な余裕がある限り、該音声パケットの再送を行うことが記載され、特開平10-164174号公報(第【0022】?【0023】段落、第【0058】?【0059】段落)には、USBのアイソクロナス伝送において、データの内容を保証するため、データにエラーが検出された場合には、データの再送を行なうことが記載されている。
従って、本願の優先日前において、等時性のデータの転送、すなわちアイソクロナス転送において、データエラー(なお、データのロスもデータエラーの一つである。)が検出されたときに、該データの再送を行うことは、周知技術であったものと認められる。
従って、かかる周知技術を引用発明に適用し、引用発明において、「ホストであるPCと周辺装置」(前記ホスト・コンピュータと前記外部装置)との間で実施され、「ホストであるPCと周辺装置」の通信にデータエラーが起こった場合(誤りのある場合)に、該データの再送(再送信)を行なってデータの内容を保証するような機構(前記ホスト・コンピュータと前記外部装置との間のデータ通信精度を保証するデータ信頼性機構であって、誤りのある場合に、データを再送信する機構を含む、データ信頼性機構)を備えるようにすることは、当業者が必要に応じ適宜なし得たことである。

また、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測しうるものである。

6.まとめ
以上のとおり、本願の請求項2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-12 
結審通知日 2011-04-15 
審決日 2011-05-02 
出願番号 特願2000-334494(P2000-334494)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤井 浩  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 清水 稔
鈴木 重幸
発明の名称 誤り訂正アルゴリズムによるユニバーサル・シリアル・バス上の等時性転送方法  
代理人 松島 鉄男  
代理人 有原 幸一  
代理人 河村 英文  
代理人 奥山 尚一  

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