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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1243604
審判番号 不服2009-15911  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-28 
確定日 2011-09-12 
事件の表示 特願2005-280528「無線デバイス中の電力リソースを最適化するための方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月 2日出願公開、特開2006- 33891〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年4月29日(国際出願日)に出願した特願2004-502520号(パリ条約による優先権主張2002年5月1日、米国、パリ条約による優先権主張2002年12月30日、米国)の一部を平成17年9月27日に新たな特許出願としたものであって、平成20年11月26日付けの拒絶の理由の通知に対して、平成21年2月27日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、平成21年4月23日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年8月28日に審判請求がなされたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年2月27日付け手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「無線デバイスでメッセージを受信する方法であって、
前記無線デバイスが所定の時間間隔の間にスリープモードからウェイクアップしてメッセージリストを受け取れるように、無線ネットワークと同期すること、
メッセージリストを受け取ることであって、前記メッセージリストは宛先識別子および関連するメッセージポインタを含み、前記メッセージポインタは前記メッセージを指し示すこと、
前記宛先識別子が前記無線デバイスに対応するとの判定に応答して、前記メッセージポインタを処理し、前記メッセージを受信することと
を含むことを特徴とする方法。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-199150号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

A.「【請求項1】 少なくとも1つの1次ステーションおよび複数の2次ステーションを具え、1次ステーションはトラフィックタイム周期中パケットにトラフィック情報を伝送する手段と、トラフィック情報周期間に配置された制御タイムスロット中制御情報を伝送する手段とを具え、2次ステーションは1次ステーションにより伝送された情報を受信する手段を具えるようにした情報伝送システムにおいて、制御情報を伝送する手段は、順次のトラフィック情報を意図する各2次ステーションを識別する表示を伝送するように配列し、少なくとも1つの2次ステーションは制御スロット中受信手段を附勢する手段とこの2次ステーションを識別する表示の受信に応答して次のトラフィックタイム周期の少なくとも1部分中受信手段を附勢する手段を有することを特徴とする情報伝送システム。」

B.「【0003】
【従来の技術】1次ステーションおよび多数の2次ステーションを具える情報伝送システム、例えば、ラジオシステムは1次ステーションと、システムが作動する全ての時間に対する全ての2次ステーションとの間で情報の搬送を必要としない場合がしばしばある。個別の2次ステーションは時間の僅かな部分に対し情報を送出または受信するのみである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】かかる状態では、2次ステーションが1次ステーションの伝送に払う注意の量を減少して例えば携帯用ラジオ受信機が電力消費を低減し、従って、バッテリの寿命を延ばすようにする必要があることは普通である。」

C.「【0013】
【実施例】図1は1次ステーション10および4つの2次ステーション12,14,16,18を具えるラジオシステムを示す。1次ステーション10によって伝送されたラジオ信号は多数の経路20を経て2次ステーションに伝搬される。2次ステーションから1次ステーションへの情報伝送の復路は一般に存在するが簡潔のため図面には示さない。1次ステーションによって、システム制御信号が情報またはトラフィック信号により変更されるような秩序を保って情報を伝送する。
【0014】図2はチャネル構造の1例を示す。1つのマルチフレームMFは図の頂部に示すように16個のフレームFを具える。その下側には個別のフレームFのレイアウトを示す。本例ではこの個別のフレームFは2640ビットを具えるとともに、240ビットの最小制御チャネル(MCCH)スロットと各々が600ビットの4つの情報チャネル(XCCH)の群とに分割する。MCCHスロットMは120ビットのオーバーヘッドOHと、120ビットの制御データCDとを具える。XCCHスロットはそれぞれ音声チャネル、データチャネルまたは1つ以上の拡張制御チャネルとして用いることができる。各XCCHスロットXは120ビットのオーバーヘッドOHと、24ビットのスロウに関連する制御チャネルスロットSACHと、456ビットのトラフィックデータTDとを具える。XCCHスロットのオーバーヘッドは8ビットガードスロットGと、40ビットのランプスロットRと、72ビット同期化スロットSYとを具える。ランプスロットRは、2次ステーションによりラジオリンク(またはアップリンク)で1次ステーションに通信を行う際に送信機パワーを確立させるために用いる。この目的のために1次ステーションはランプスロットを必要としないため、現在受信中のみである1次ステーションおよびその2次ステーション間のラジオリンク(またはダウンリンク)はランプスロットにシステム情報を含むようにすることができる。図示の例では、MCCHスロットに組込み得る場合よりも多くの制御信号が必要な場合にXCCHスロットは2つの拡張制御チャネルを具えることができる。
【0015】図2に示すチャネル構造ではトラフィックタイム周期を4つの等しい長さのスロットに分割したが、多数の変更配置が可能であることは勿論である。特定のスロットを規定する必要はなく、スロット長さは1人以上のユーザに伝送すべき情報の量によって決めることができる。或は又、群当たり1つのオーバーヘッドとともに群別化し得る短いスロットを用いることもできる。かかる配置によってデータパケットの大きさに著しい可撓性を与え、しかも特定のデータの位置を識別することもできる。
【0016】図3は制御データスロットCDの構造を示し、このデータスロットは図2のチャネル構造におけるMCCHスロットMの半部を具える。制御データスロットは120ビットの長さであり、次のように細分割される。最初の8ビットOPは制御スロットに含まれるメッセージの機能を規定する演算符号である。本例では、この演算符号は制御スロットがシステムの2次ステーションの1つ以上のアドレスを含むことを識別する。或は又、この演算符号は(例えば登録要求に応答して)承認信号を識別し、2次ステーションに情報等を送出することができる。次の18ビットは識別表示CMD1を具え、これは、順次の情報がそのために決められたことを示す第1の2次ステーションのアドレスを含み、これら18個のビーム(審決注:「ビット」の誤記と認める。)は“ウエイク-アップ”命令と称される。続く54個のビットも各々が18ビットより成る3つの他のウエイク-アップ命令CMD2,CMD3およびCMD4を具え、これら命令の各々は関連する2次ステーションを識別するアドレスを含む。
【0017】制御データスロットの最後の40ビットは既知のようにエラー検出および便利な補正を行うチャネル符号化部CCを含んでいる。このチャネル符号化部は図示の端部に共に位置するよりも制御スロット全体を通じて分布させることができる。
【0018】識別表示CMD1・・・CMD4は多数の種々の方法で構成することができる。例えば、図3にE1で示すように識別表示CMD3は次の情報を決める2次ステーションを識別する16ビットアドレスを具え、これに2ビットスロット番号XNが後続する。このスロット番号によって次の4つのXCCHスロット(図2)にいずれがアドレスにより識別された特定の2次ステーションに意図される情報を含んでいるかを識別する。特定の2次ステーションに対する情報は次のMCCHスロットを越える場合でも次のスロットに拡張することができる。特定の2次ステーションに対する情報はフレームF当たり1つのXCCHスロット中、例えば、多数の順次のフレームにおける同一のXCCHスロット中伝送することができる。かかる技術は、デジタル化された音声信号が同一の順次のフレーム中他のXCCHスロットの同一のチャネルで伝送される場合にも特に適用させることができる。XCCHスロット(図2)のオーバーヘッドOHを用いてこの2次ステーションに向けられた情報を含む次のXCCHスロットを見いだすべき特定の2次ステーションに対する識別を行うことができる。変更例として、伝送終了(EOT)信号を受けるまで2次ステーションは受信を行うことができる。
【0019】情報伝送システムは情報を伝送し得る種々の周波数で多数の異なるチャネルを具えることができ、この際、意図され、且つ、異なるチャネルで伝送すべき次の情報に2次ステーションを変更するのが有利である。この場合には、図3にE2で示すようにチャネル識別CHをも18ビット表示に含めることができる。図示のシステムでは、4つのチャネルが存在し、従って、チャネル識別CHは2ビット長くなる。表示の全長を18ビットに抑制するためには、この場合アドレスを14ビットの長さとする。OP符号およびチャネル符号化は識別表示の構造を用いる限り同様に配列することができる。システムのチャネルを同期化しない場合には、情報が受信される前にチャネルが変化した際に新たなチャネルへの同期化を行う必要のある2次ステーションにチャネル識別を伝送し得るようにすることができる。」

D.「【0022】図4は本発明による1次ステーションに用いる伝送配置を示すブロック図を示す。情報入力端子22を記憶装置(RAM)24の入力端子に接続する。RAM24をそれ自体クロック発振器28により駆動されるアドレス指定装置(ADDR)26によってアドレス指定する。記憶装置24からの出力をスイッチ34の第1入力端子および宛先識別子(DST)30の第1入力端子に結合する。宛先識別子(DST)30はその出力端子を任意のリードオンリーメモリ(ROM)またはルックアップテーブル32をアドレス指定し得るように結合し、そのデータ出力端子をスイッチ34の第2入力端子に結合する。また、計数器(CNT)38を設けて情報伝送における制御スロットおよびトラフィックタイム周期間の比に相当するマーク-スペース比を有する方形波を発生させるようにする。計数器38からの出力を宛先識別子30の第2入力端子に結合するとともにスイッチ34の制御入力端子に結合する。スイッチ34はその出力端子が制御入力端子の状態に依存して第1入力端子および第2入力端子のいずれかに内部的に接続されるように構成する。このスイッチ34の出力端子を送信機36に結合し、次いでアンテナ40に結合する。
【0023】作動に当たり、情報およびその所望の宛先をRAM24に含め、このRAMを入力端子22を経て更新し得るようにする。情報およびその所望の宛先はマイクロプロセッサを具えるアドレス指定装置26によって適当な速度で読出すようにする。本例ではRAM24もMCCHスロットおよびXCCHスロットに含まれる個別のオーバーヘッドを含むようにする。このオーバーヘッドは所望に応じ他の段の幾つかで伝送すべき信号に含めることができる。宛先識別子30はRAM24からの出力を受けるように結合するとともに宛先識別子30の作動はCNT38によって作動し得るように制御する。CNT38によってMCCHスロット中第1状態(高レベル)にあり、4つのXCCHスロット中第2状態(低レベル)にある信号を発生させる。計数器からの信号が第1状態にある場合にはDST30が作動状態となり、RAM24の出力を4つの識別子信号まで探索し得るようにする。チャネル変更情報も探索することができる。次いで、DST30によって図3につき説明するようにアドレスおよびチャネル情報を正しい順序に配列するとともにROM32をアドレス指定する信号を通過せしめるようにする。このROM32は任意であり、制御信号をさらに符号化する必要がある場合にはこのROMを含めることができ、これによってROM内のアドレスをその個別のアドレス値の符号化バージョンを含むように配列する。CNT38の出力も第1状態にある場合には、ROM32のスイッチ34を経て送信機(Tx)36に結合し、これにより例えば位相推移キーイングによって制御情報を既知のように伝送する。」

E.「【0025】図5は本発明第2ステーション(審決注:「2次ステーション」の誤記と認める。)の受信装置の構成を示すブロック図である。本例ではアンテナ42を正の給電線Pおよび負の給電線Nを有する受信機(Rx)の入力側に結合する。受信機の出力端子を識別手段(ID)46と、スイッチ(SWT)52の第1入力端子と、伝送終了検出器(EOT)48の入力端子とにそれぞれ結合する。ID46はその出力端子が、2次ステーションに対するアドレス(または2次ステーションを部材とする群に対するアドレス)が受信機の出力側で検出される際に第1状態となり、その他の場合に第2状態となる。ID46からの出力はID46からの入力に応答して第1状態となり、第2入力端子におけるEOT48からのリセット信号に応答して第2状態となるサンプル-ホールド装置(HLD)50に結合する。第2入力端子はEOT48の出力端子に結合する。サンプル-ホールド装置(HLD)50の出力端子をスイッチ(SWT)52の制御入力端子に結合するとともにORゲート56の第1入力端子に結合する。スイッチ52の出力端子を情報出力装置(O/P)、例えば表示装置、プリンタおよび/または記憶手段に結合する。ORゲート56への第2入力端子は計数器(CNT)60の出力側に結合し、これにより図4に示すCNT38の出力信号と同一の出力信号を発生し得るようにする。CNT60は電源62、例えばバッテリに直接接続する。電源62の正端子もスイッチ(SWT)58の入力端子に接続する。スイッチ58への制御入力端子はORゲート56の出力側に結合する。スイッチ58からの出力はRx44の正の給電ラインPに結合する。スイッチ58はその制御入力端子の能動信号に応答してその入力端子を出力端子に接続する。電源負端子はRx44の負の給電ラインNに直接接続する。(ORゲート56およびスイッチ58を除く)残りの回路は電源62に、または所望に応じスイッチされた電源ラインP,Nに直接接続することができる。
【0026】作動に当たり、CNT60はORゲート56、スイッチ58、従ってRx44を作動させて送信機36(図4)によりMCCH中に伝送された制御情報を周期的に受信する。受信機の出力は特定の2次ステーションに関連するアドレスに対しID46により探索する。アドレスを検出すると、ID46の出力は第1状態となり、HLD50がラッチされてこの第1状態の信号をSWT52およびORゲート56に供給する。これがため、HLD50の出力信号はORゲート56を経てスイッチ58の導通を保持するとともにRx44は能動状態のままである。特定の2次ステーションに向けられたXCCHスロットの情報はスイッチ52を経てO/P54に結合する。情報がすべて受信されると、ETO(審決注:「EOT」の誤記と認める。)48はこの2次ステーションに対する伝送が終わり、HLD50にリセット信号を供給することを検出する。これがため、ORゲート56はもはやHLD50からの信号によって作動せず、CNT60によってのみ作動するようになる。
【0027】かようにして、2次ステーションは“リスニング”モードの際のみ、短い時間周期に亘りその受信機を作動状態とすることができる。2次ステーションに向けられた情報が1次ステーションにより伝送される場合には識別表示信号およびID46によってアドバンス警報を受け、且つHLD50によって受信機44を作動させ、次のXCCHトラフィックスロット中情報を受信し得るようにする。この受信機は情報のすべてが受信された場合、または受信した信号が伝送中に符号化し得なくなる際タイムアウトすることによって電源を遮断する。CNT60とは別に、受信機を作動させる場合回路の残部は作動させる必要があり、これはバッテリの電力をさらに保護することができる。正しく作動させるために、CNT60およびCNT38(図4)は(信号の伝搬遅延を行うために)同期化する必要があり、これを既知のように多数の同期化技術により達成することができる。
【0028】さらに、ID46は、スイッチ58の作動を遅延するとともに関連する情報が存在する特定のXCCHスロットを受信する必要があるまでRx44の電力増大を遅延する手段を設けることができる。この情報は制御スロットにおける命令信号アドレスの位置によって、または図3につき前述したように明快な記法によって得ることができる。表示信号のトラフィックスロット識別子XN(図3)は次のMCCHスロット後に発生するトラフィックスロットを識別することができる。混雑時間では例えば2次ステーションはこれらに向けられた伝送によって良好に警報することができ、従って次の制御スロットのスペースを他のメッセージに対し保持することができる。また、メッセージを多数の2次ステーションに同時に送出する必要がある場合にも多くの2次ステーションを群として配列する必要はなく、また1つのMCCHスロットで可能となる場合よりも多くの2次ステーションの群を注意する必要があり、従って特定のスロットを用いることができる。
【0029】図5に示す構造の変形例として、EOT48は省略することができ、且つHLD50はあらかじめ配列した幅に対し受信機の作動を保持するタイミング装置を設けることができる。このタイミング装置は単に次のMCCHスロットまでRx44の作動を保持することができるが、情報メッセージが次のMCCHスロットを越えて継続する場合には他の識別表示によって2次ステーションへのアドレス指定を行う必要がある。」

以上の記載によれば、この引用例には以下のような発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

「2次ステーションが電力消費を低減し、バッテリの寿命を延ばすようにするための、1次ステーション10および2次ステーション12,14,16,18を具えるラジオシステムにおいて、
1次ステーション10によって伝送されたラジオ信号の1つのマルチフレームMFは16個のフレームFを具え、個別のフレームFは2640ビットを具えるとともに、240ビットの最小制御チャネル(MCCH)スロットと各々が600ビットの4つの情報チャネル(XCCH)の群とに分割し、MCCHスロットMは120ビットの制御データスロットCDを具え、XCCHスロットはそれぞれ音声チャネル、データチャネルまたは1つ以上の拡張制御チャネルとして用いることができ、制御データスロットCDは18ビットの識別表示CMD1を具え、これは、“ウエイク-アップ”命令と称される第1の2次ステーションのアドレスを含み、続く54個のビットも各々が18ビットより成る3つの他のウエイク-アップ命令CMD2,CMD3およびCMD4を具え、これら命令の各々は関連する2次ステーションを識別するアドレスを含み、
E1で示すように識別表示CMD3は次の情報を決める2次ステーションを識別する16ビットアドレスを具え、これに2ビットスロット番号XNが後続し、このスロット番号によって次の4つのXCCHスロットにいずれがアドレスにより識別された特定の2次ステーションに意図される情報を含んでいるかを識別し、
2次ステーションの受信装置において、識別手段(ID)46はその出力端子が、2次ステーションに対するアドレスが検出される際に第1状態となり、その他の場合に第2状態となり、ID46からの出力はサンプル-ホールド装置(HLD)50に結合し、サンプル-ホールド装置(HLD)50はID46からの入力に応答して第1状態となり、第2入力端子におけるEOT48からのリセット信号に応答して第2状態となり、サンプル-ホールド装置(HLD)50の出力端子をスイッチ(SWT)52の制御入力端子に結合するとともにORゲート56の第1入力端子に結合し、ORゲート56への第2入力端子は計数器(CNT)60の出力側に結合し、CNT60から、MCCHスロット中第1状態(高レベル)にあり、4つのXCCHスロット中第2状態(低レベル)にある信号を発生させる1次ステーションのCNT38の出力信号と同一の出力信号を発生し得るようにするものであって、2次ステーションのCNT60および1次ステーションのCNT38は(信号の伝搬遅延を行うために)同期化する必要があり、これは既知のように多数の同期化技術により達成することができ、
作動に当たり、CNT60はORゲート56、スイッチ58、従って受信機(Rx)44を作動させて1次ステーションの送信機36によりMCCH中に伝送された制御情報を周期的に受信し、特定の2次ステーションに関連するアドレスを検出すると、ID46の出力は第1状態となり、HLD50がラッチされてこの第1状態の信号をSWT52およびORゲート56に供給し、HLD50の出力信号はORゲート56を経てスイッチ58の導通を保持するとともにRx44は能動状態のままとなり、特定の2次ステーションに向けられたXCCHスロットの情報はスイッチ52を経てO/P54に結合し、情報がすべて受信されると、EOT48はこの2次ステーションに対する伝送が終わり、HLD50にリセット信号を供給することを検出し、これがため、ORゲート56はもはやHLD50からの信号によって作動せず、CNT60によってのみ作動するようになり、かようにして、2次ステーションは“リスニング”モードの際のみ、短い時間周期に亘りその受信機を作動状態とすることができ、
さらに、ID46は、スイッチ58の作動を遅延するとともに関連する情報が存在する特定のXCCHスロットを受信する必要があるまでRx44の電力増大を遅延する手段を設けることができ、表示信号のトラフィックスロット識別子XNは次のMCCHスロット後に発生するトラフィックスロットを識別することができるラジオシステム。」

4.対比
本願発明と引用発明を対比する。

(1)引用発明の「2次ステーション」は、本願発明の「無線デバイス」に相当する。引用発明において、情報チャネル(XCCH)のスロットは、「それぞれ音声チャネル、データチャネルまたは1つ以上の拡張制御チャネルとして用いることができ」るが、摘記事項Eの【0028】段落及び【0029】段落には2次ステーションに送信される情報が「メッセージ」であることが示唆されており、引用発明の2次ステーションが情報チャネル(XCCH)で受信する情報に「メッセージ」が含まれていることは明らかである。したがって、引用発明は、無線デバイスでメッセージを受信する方法であると言える。

(2)引用発明において、2次ステーションの「CNT60から、MCCHスロット中第1状態(高レベル)にあり、4つのXCCHスロット中第2状態(低レベル)にある信号を発生させる1次ステーションのCNT38の出力信号と同一の出力信号を発生し得るように」すること、「2次ステーションのCNT60および1次ステーションのCNT38は(信号の伝搬遅延を行うために)同期化する必要があり、これは既知のように多数の同期化技術により達成することができ」ること、及び、2次ステーションの「CNT60はORゲート56、スイッチ58、従ってRx44を作動させて1次ステーションの送信機36によりMCCH中に伝送された制御情報を周期的に受信」し、「かようにして、2次ステーションは“リスニング”モードの際のみ、短い時間周期に亘りその受信機を作動状態とすることができ」ることから、引用発明の「2次ステーション」は、MCCHスロット中、すなわち、所定の時間間隔の間に、スリープモードからウェイクアップして、MCCHスロットの制御データスロットCD(下記(3)に後述するように本願発明の「メッセージリスト」に対応する。)を受け取れるように、1次ステーションに同期している、すなわち、無線ネットワークと同期していることは明らかである。

(3)引用発明の「制御データスロットCDは18ビットの識別表示CMD1を具え、これは、“ウエイク-アップ”命令と称される第1の2次ステーションのアドレスを含み、続く54個のビットも各々が18ビットより成る3つの他のウエイク-アップ命令CMD2,CMD3およびCMD4を具え、これら命令の各々は関連する2次ステーションを識別するアドレスを含み」、「E1で示すように識別表示CMD3は次の情報を決める2次ステーションを識別する16ビットアドレスを具え、これに2ビットスロット番号XNが後続し、このスロット番号によって次の4つのXCCHスロットにいずれがアドレスにより識別された特定の2次ステーションに意図される情報を含んでいるかを識別」するので、引用発明の「制御データスロットCD」、「アドレス」は、本願発明の「メッセージリスト」、「宛先識別子」に対応し、引用発明の「スロット番号XN」は、本願発明の「メッセージポインタ」と、ポインタである点で共通する。したがって、引用発明において、2次ステーションで前記制御スロットCDを受信することと、本願発明の「メッセージリストを受け取ることであって、前記メッセージリストは宛先識別子および関連するメッセージポインタを含み、前記メッセージポインタは前記メッセージを指し示すこと」とは、メッセージリストを受け取ることであって、前記メッセージリストは宛先識別子および関連するポインタを含む点で共通する。

(4)引用発明において、「E1で示すように識別表示CMD3は次の情報を決める2次ステーションを識別する16ビットアドレスを具え、これに2ビットスロット番号XNが後続し、このスロット番号によって次の4つのXCCHスロットにいずれがアドレスにより識別された特定の2次ステーションに意図される情報を含んでいるかを識別」することから、識別表示CMD3で示されるアドレスを有する2次ステーションは、識別表示CMD3を受信した際に、そのアドレスがこの2次ステーションに対応すると判定した場合、次のスロット番号XNを処理して、スロット番号XNで識別される次のXCCHスロットで送られるメッセージを含む情報を受信することは明らかであり、引用発明において、2次ステーションで前記識別表示CMD3を受信する場合と、本願発明の「宛先識別子が前記無線デバイスに対応するとの判定に応答して、前記メッセージポインタを処理し、前記メッセージを受信すること」とは、宛先識別子が前記無線デバイスに対応するとの判定に応答して、前記ポインタを処理し、前記メッセージを受信する点で共通する。

(5)したがって、両者は、
「無線デバイスでメッセージを受信する方法であって、
前記無線デバイスが所定の時間間隔の間にスリープモードからウェイクアップしてメッセージリストを受け取れるように、無線ネットワークと同期すること、
メッセージリストを受け取ることであって、前記メッセージリストは宛先識別子および関連するポインタを含み、
前記宛先識別子が前記無線デバイスに対応するとの判定に応答して、前記ポインタを処理し、前記メッセージを受信することと
を含むことを特徴とする方法。」
で一致するものであり、以下の点で相違している。

(相違点)
本願発明では、ポインタは「メッセージポインタ」であり、「前記メッセージポインタは、メッセージを指し示」しており、宛先識別子が無線デバイスに対応するとの判定に応答して、「前記メッセージポインタ」を処理し、前記メッセージを受信するのに対し、引用発明では、ポインタであるスロット番号XNで指し示すのはメッセージを送信するためのものであるものの、指し示すのはメッセージではなくXCCHスロットであり、2次ステーション(本願発明の「無線デバイス」に相当する。)のアドレスが検出されたときはスロット番号XNが指すXCCHスロットを受信する点。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。

引用発明において、直接スロット番号XNで識別しているのはXCCHスロットであるものの、2次ステーションの受信対象はXCCHスロットで送られるメッセージであることは明らかであるから、引用発明において、スロット番号XNで、XCCHスロットで送信されるメッセージを指すように構成して、本願発明のようにポインタをメッセージポインタとして、メッセージポインタは、メッセージを指し示すようにし、宛先識別子が無線デバイスに対応するとの判定に応答して、メッセージポインタを処理し、メッセージを受信する構成とすることは当業者が容易に想到し得たものである。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-04 
結審通知日 2011-04-08 
審決日 2011-04-21 
出願番号 特願2005-280528(P2005-280528)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小河 誠巳  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 稲葉 和生
青木 健
発明の名称 無線デバイス中の電力リソースを最適化するための方法およびシステム  
復代理人 井原 光雅  
代理人 谷 義一  
復代理人 濱中 淳宏  
代理人 阿部 和夫  

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