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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1243653 |
審判番号 | 不服2009-4390 |
総通号数 | 143 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-02-27 |
確定日 | 2011-09-15 |
事件の表示 | 特願2005-224384「表示装置、表示プログラム及び表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 2月15日出願公開、特開2007- 41790〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願の手続の概要は,以下のとおりである。 平成17年 8月 2日 出願 平成20年10月29日付け 拒絶理由通知 平成21年 1月 5日 意見書・手続補正 平成21年 1月27日付け 拒絶査定 平成21年 2月27日 審判請求 平成21年 3月27日 手続補正 平成22年12月14日付け 審尋 平成23年 2月 8日 回答 第2 平成21年3月27日の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年3月27日の手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正について 平成21年3月27日の手続補正(以下,「本件補正」という。)は,特許請求の範囲を,平成21年1月5日の手続補正書に記載されたとおりの 「 【請求項1】 複数の表示子を表示する表示部と、 上記表示部の表示面に対する操作入力を検知する検知部と、 上記表示部に表示された上記複数の表示子のうち一の表示子に対する操作入力を上記検知部が検知したときに、当該一の表示子のみに関連する呈示用表示子を上記表示部に表示させ、上記表示部に表示させた当該呈示用表示子に対する操作入力を上記検知部が検知したときに、上記一の表示子の選択を決定する制御部と を具える表示装置。 【請求項2】 上記制御部は、 上記呈示用表示子に対する操作入力が終了したことを上記検知部が検知したときに、上記一の表示子の選択を決定する 請求項1に記載の表示装置。 【請求項3】 上記制御部は、 上記一の表示子に対する操作入力を上記検知部が検知した後、当該操作入力が当該一の表示子から他の表示子へと移動すると、上記表示部に表示させた上記呈示用表示子を上記他の表示子のみに関連する他の呈示用表示子に変更させる 請求項1に記載の表示装置。 【請求項4】 上記制御部は、 上記一の表示子に対する操作入力を上記検知部が検知したときに、当該操作入力の位置座標を上記一の表示子の中心座標とみなし、当該一の表示子の中心座標を基点とする相対座標で当該操作入力の移動を判断する 請求項3に記載の表示装置。 【請求項5】 上記制御部は、 上記呈示用表示子の一部の表示色を変更して上記表示部に表示させる 請求項1に記載の表示装置。 【請求項6】 上記制御部は、 上記呈示用表示子を上記表示部に表示させてから、当該呈示用表示子に対する操作入力を上記検知部が検知することなく所定期間経過すると、上記呈示用表示子を非表示にさせる 請求項1に記載の表示装置。 【請求項7】 上記制御部は、 上記呈示用表示子を、上記一の表示子の同心上に、上記一の表示子よりも広い表示領域で表示させる 請求項1に記載の表示装置。 【請求項8】 上記制御部は、 上記呈示用表示子を、吹き出し形状で、上記一の表示子の近傍に表示させる 請求項1に記載の表示装置。 【請求項9】 コンピュータに、 表示部の表示面に対する操作入力として当該表示部に表示された複数の表示子のうちの一の表示子に対する操作入力を検知部が検知する第1の検知ステップと、 上記一の表示子に対する操作入力を上記第1の検知ステップで検知すると、当該一の表示子のみに関連する呈示用表示子を上記表示部に制御部が表示させる呈示用表示子表示ステップと、 上記表示部に表示させた当該呈示用表示子に対する操作入力を上記検知部が検知する第2の検知ステップと、 上記呈示用表示子に対する操作入力を上記第2の検知ステップで検知すると、上記一の表示子の選択を上記制御部が決定する選択決定ステップと を実行させるための表示プログラム。 【請求項10】 上記第2の検知ステップでは、 上記呈示用表示子に対する操作入力が終了したことを上記検知部が検知し、 上記選択決定ステップでは、 上記呈示用表示子に対する操作入力が終了したことを上記第2のステップで検知すると、上記一の表示子の選択を上記制御部が決定する 請求項9に記載の表示プログラム。 【請求項11】 上記呈示用表示子表示ステップでは、 上記一の表示子に対する操作入力を上記第1の検知ステップで検知した後、当該操作入力が当該一の表示子から他の表示子へと移動すると、上記制御部が上記表示部に表示させた上記呈示用表示子を上記他の表示子のみに関連する他の呈示用表示子に変更させる 請求項9に記載の表示プログラム。 【請求項12】 上記呈示用表示子表示ステップでは、 上記一の表示子に対する操作入力を上記第1の検知ステップで検知したときに、上記制御部が、当該操作入力の位置座標を上記一の表示子の中心座標とみなし、当該一の表示子の中心座標を基点とする相対座標で当該操作入力の移動を判断する 請求項11に記載の表示プログラム。 【請求項13】 上記呈示用表示子表示ステップでは、 上記制御部が上記呈示用表示子の一部の表示色を変更して上記表示部に表示させる 請求項9に記載の表示プログラム。 【請求項14】 上記呈示用表示子表示ステップでは、 上記制御部が、上記呈示用表示子を上記表示部に表示させてから、当該呈示用表示子に対する操作入力を上記検知部が検知することなく所定期間経過すると、上記呈示用表示子を非表示にさせる 請求項9に記載の表示プログラム。 【請求項15】 上記呈示用表示子表示ステップでは、 上記制御部が、上記呈示用表示子を上記一の表示子の同心上に上記一の表示子よりも広い表示領域で表示させる 請求項9に記載の表示プログラム。 【請求項16】 上記呈示用表示子表示ステップでは、 上記制御部が、上記呈示用表示子を、吹き出し形状で、上記一の表示子の近傍に表示させる 請求項9に記載の表示プログラム。 【請求項17】 表示部の表示面に対する操作入力として当該表示部に表示された複数の表示子のうちの一の表示子に対する操作入力を検知部が検知すると、上記一の表示子のみに関連する呈示用表示子を上記表示部に制御部が表示させ、 上記表示部に表示させた当該呈示用表示子に対する操作入力を上記検知部が検知すると、上記一の表示子の選択を上記制御部が決定する 表示方法。」 から,平成21年3月27日の手続補正書に記載されたとおりの 「 【請求項1】 複数の表示子を表示する表示部と、 上記表示部の表示面に対する操作入力を検知する検知部と、 上記表示部に表示された上記複数の表示子のうち一の表示子を押下する第1の操作入力を上記検知部が検知したときに、当該一の表示子のみに関連する呈示用表示子を、当該一の表示子を押下する指先で隠れない程度の当該一の表示子の近傍に表示させ、当該第1の操作入力が終了して、表示させている当該呈示用表示子を押下する第2の操作入力が行われ、当該第2の操作入力が終了したことを上記検知部が検知したときに、上記一の表示子の選択を決定する制御部と を具える表示装置。 【請求項2】 上記制御部は、 上記一の表示子を押下する上記第1の操作入力を上記検知部が検知した後、当該第1の操作入力による押下が当該一の表示子から他の表示子へと移動すると、上記表示部に表示させた上記呈示用表示子を上記他の表示子のみに関連する他の呈示用表示子に変更させる 請求項1に記載の表示装置。 【請求項3】 上記制御部は、 上記一の表示子を押下する上記第1の操作入力を上記検知部が検知したときに、押下された位置座標を上記一の表示子の中心座標とみなし、当該一の表示子の中心座標を基点とする相対座標で当該第1の操作入力による押下の移動を判断する 請求項2に記載の表示装置。 【請求項4】 上記制御部は、 上記呈示用表示子の一部の表示色を変更して上記表示部に表示させる 請求項1に記載の表示装置。 【請求項5】 上記制御部は、 上記呈示用表示子を上記表示部に表示させてから、当該呈示用表示子を押下する上記第2の操作入力を上記検知部が検知することなく所定期間経過すると、上記呈示用表示子を非表示にさせる 請求項1に記載の表示装置。 【請求項6】 上記制御部は、 上記呈示用表示子を、吹き出し形状で、上記一の表示子の近傍に表示させる 請求項1に記載の表示装置。 【請求項7】 コンピュータに、 表示部の表示面に対する操作入力として当該表示部に表示された複数の表示子のうちの一の表示子を押下する第1の操作入力を検知部が検知したときに、当該一の表示子のみに関連する呈示用表示子を、当該一の表示子を押下する指先で隠れない程度の当該一の表示子の近傍に制御部が表示させる呈示用表示子表示ステップと、 上記第1の操作入力が終了して、表示させている当該呈示用表示子を押下する第2の操作入力が行われ、当該第2の操作入力が終了したことを上記検知部が検知したときに、上記一の表示子の選択を上記制御部が決定する選択決定ステップと を実行させるための表示プログラム。 【請求項8】 上記呈示用表示子表示ステップでは、 上記一の表示子を押下する上記第1の操作入力を上記検知部が検知した後、当該第1の操作入力による押下が当該一の表示子から他の表示子へと移動すると、上記制御部が上記表示部に表示させた上記呈示用表示子を上記他の表示子のみに関連する他の呈示用表示子に変更させる 請求項7に記載の表示プログラム。 【請求項9】 上記呈示用表示子表示ステップでは、 上記一の表示子を押下する上記第1の操作入力を上記検知部が検知したときに、上記制御部が、押下された位置座標を上記一の表示子の中心座標とみなし、当該一の表示子の中心座標を基点とする相対座標で当該第1の操作入力による押下の移動を判断する 請求項8に記載の表示プログラム。 【請求項10】 上記呈示用表示子表示ステップでは、 上記制御部が上記呈示用表示子の一部の表示色を変更して上記表示部に表示させる 請求項7に記載の表示プログラム。 【請求項11】 上記呈示用表示子表示ステップでは、 上記制御部が、上記呈示用表示子を上記表示部に表示させてから、当該呈示用表示子を押下する上記第2の操作入力を上記検知部が検知することなく所定期間経過すると、上記呈示用表示子を非表示にさせる 請求項7に記載の表示プログラム。 【請求項12】 上記呈示用表示子表示ステップでは、 上記制御部が、上記呈示用表示子を、吹き出し形状で、上記一の表示子の近傍に表示させる 請求項7に記載の表示プログラム。 【請求項13】 表示部の表示面に対する操作入力として当該表示部に表示された複数の表示子のうちの一の表示子を押下する第1の操作入力を検知部が検知したときに、当該一の表示子のみに関連する呈示用表示子を、当該一の表示子を押下する指先で隠れない程度の当該一の表示子の近傍に制御部が表示させ、 上記第1の操作入力が終了して、表示させている当該呈示用表示子を押下する第2の操作入力が行われ、当該第2の操作入力が終了したことを上記検知部が検知したときに、上記一の表示子の選択を上記制御部が決定する 表示方法。」 と補正するものである。(下線は,補正された部分を示すものとして,手続補正書に付されたものを援用したものである。) 2.補正の目的について 本件補正は上記のとおりのものであって,その請求項1に係る補正前後の内容を対比すると,本件補正は,一の表示子に対する操作入力が「一の表示子を押下する第1の操作入力」であること,呈示用表示子の表示が「当該一の表示子を押下する指先で隠れない程度の当該一の表示子の近傍に」行われること,一の表示子の選択の決定は「上記第1の操作入力が終了して、表示させている」呈示用表示子を「押下する」第2の操作入力が行われ,「当該第2の操作入力が終了したこと」を検知部が検知したときであること,を特定する補正であるから,限定的減縮を目的とするものである。 したがって,請求項1に係る補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 3.独立特許要件について 上記2.で判断したように、請求項1に係る補正は特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)本件補正発明について 本件補正後の請求項1の記載を再掲すると,次のとおりである。 「複数の表示子を表示する表示部と、 上記表示部の表示面に対する操作入力を検知する検知部と、 上記表示部に表示された上記複数の表示子のうち一の表示子を押下する第1の操作入力を上記検知部が検知したときに、当該一の表示子のみに関連する呈示用表示子を、当該一の表示子を押下する指先で隠れない程度の当該一の表示子の近傍に表示させ、当該第1の操作入力が終了して、表示させている当該呈示用表示子を押下する第2の操作入力が行われ、当該第2の操作入力が終了したことを上記検知部が検知したときに、上記一の表示子の選択を決定する制御部と を具える表示装置。」 (2)引用例 (2-1)引用例1 原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-091677号(平成14年3月29日公開。以下「引用例1」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。なお,下線は当審において付加したものである。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、入力装置及び情報端末装置に関し、特に、少なくとも1つの操作項目を表示する表示手段と、表示手段上に設けられたタッチパネルと、タッチパネルへ押下が行なわれたとき押下位置を検出する検出手段と、少なくとも1つの操作項目を入力項目と判定する判定手段とを備える入力装置及びこの入力装置を備える情報端末装置に関する。」 (イ)「【0002】 【従来の技術】従来、この種の入力装置として、LCD(Liquid Crystal Display)などのディスプレイにキーボードのレイアウトを表示し、このキーボードの所定のキーをユーザがペン又は指で押下してデータを入力するものが利用されている。この入力装置では、ディスプレイの面積が限られているため、キーボード全体を表示すると各キーの表示面積が小さくなり、操作性が悪くなるという問題があった。 ・・・(中略)・・・ 【0004】本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、誤入力を十分に防止することを目的の一つとする。また、本発明は、操作性の良い入力装置を提供することを目的の一つとする。」 (ウ)「【0011】この本発明の情報端末装置では、前述した入力装置を用いて入力を行なうため、誤入力が少なくなるし、入力の操作性も良くなる。尚、情報端末装置とは、PDA(Personal Degital Assistance),パーソナルコンピュータ,PDC(Personal Digital Cellular),POS(Point Of Sale)端末などユーザから何らかのデータを入力される端末装置を含むものとする。」 (エ)「【0012】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。図1は、情報端末装置に搭載される本実施形態の入力装置の構成の概略を示す構成図である。入力装置100は、情報端末装置へ各種の入力操作を行なうための操作項目を表示するLCD10と、LCD10上に設けられ透明部材からなるタッチパネル12と、タッチパネル12を指や入力ペンなどで押下するとその押下位置座標を含む信号をCPU(Central Processing Unit)16へ送信するタッチパネルコントローラ14と、CPU16からの命令を受けてLCD10を制御するビデオコントローラ18と、LCD10に表示するデータを一時的に記憶するビデオメモリ20とを備える。ユーザは、指や入力ペンなどでLCD10に表示された操作項目をタッチパネル12上から押下し、携帯端末装置へ各種の入力操作を行なうことができる。」 (オ)「【0013】次に、こうして構成された入力装置100の動作について説明する。図2は、入力装置100のLCD10に表示される操作項目の一例うち、LCD10にキーボードのレイアウト30が表示されたときの様子を示す概略図であり、図3は、LCD10が図2に示す表示を行なっているときCPU16で実行されるキー入力確定処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、情報端末装置の電源がオンになり入力装置100に電力が供給された直後から実行される。 【0014】最初に、タッチパネルコントローラ14からの信号の有無を検査し、ユーザがタッチパネル12を指で押下したか否かを判定する(ステップS10)。タッチパネルコントローラ14が信号を送出しているとき、即ち、タッチパネル12がユーザにより指で押下されているときは、次に、タッチパネルコントローラ14が送出している信号より押下位置座標を導出し、LCD10が表示しているレイアウト30の中のどのキーがユーザに選択されたかを判定する(ステップS12)。ここで、ユーザは、レイアウト30のキーのうち「8」キーを選択したものとする。尚、ユーザがタッチパネル12を指で押下しておらずタッチパネルコントローラ14が信号を送出していないときは、ステップS12の処理を行なわず、処理ルーチンを終了する。 【0015】ステップS12の処理を行なった後、次に、選択された「8」キーとともに、「8」の周辺に配置されている「4」,「5」,「6」,「7」及び「9」の各キーを含む範囲を「8」キーを中心として拡大し、拡大した範囲をレイアウト30に重ねて表示するようビデオコントローラ18に信号を送出する(ステップS14)。ビデオコントローラ18は、CPU16からの信号を受けて、所定の範囲のキーを拡大表示するようLCD10を制御する。図4は、「8」キーと「8」キーの周辺のキーとがLCD10に拡大表示された様子を示す概略図である。このとき、キーの拡大表示に合わせて、タッチパネルコントローラ14の押下位置座標と拡大表示したキーが対応するようCPU16で演算する。尚、ステップS14以降の処理では、ユーザは拡大表示されたキーを押下している。 【0016】次に、タッチパネルコントローラ14からの信号の有無を検査し、ユーザがタッチパネル12から指を離したか否か、即ち、押下を終了したか否かを判定する(ステップS16)。ステップS16の処理で、タッチパネルコントローラ14からの信号が有り、ユーザがタッチパネル12から指を離していない、即ち、押下が終了していないと判定したときは、タッチパネルコントローラ14が送出している押下位置座標から選択されたキーが「8」キーから変更されているか否かを判定する(ステップS22)。キーが変更されている場合、例えば、ユーザが押下している指を押下したまま「8」キーの位置から「5」キーの位置にずらしたとき、選択キーが変更されていると判定し、選択キーを「5」キーに変更し(ステップS24)、ステップS16の処理に戻る。ステップS22の処理で、キーが変更されていないと判定したときは、ステップS16の処理に戻る。 【0017】ステップS16の処理で、タッチパネルコントローラ14からの信号が無い場合、ユーザがタッチパネル12から指を離しタッチパネル12の押下が終了しているので、最後に選択キーとなっているキーを入力キーと確定し(ステップS18)、ビデオコントローラ18に入力キーの表示色を変更するよう命令を出す(ステップS20)、処理を終了する。ビデオコントローラ18は、CPU16からの信号を受けて、入力キーと確定したキーを他の領域と異なる色に表示するようLCD10を制御する。最後に選択キーとなっているのが「8」キーである場合は、即ち、最初に押下されたキーで入力が確定した場合、図5に示すように、拡大表示した「8」キーを他の領域と異なる色になるようLCD10に表示する。また、選択キーが最初に押下された「8」キーから「5」キーに変更されているときは、図6に示すように、拡大表示した「5」キーを他の領域と異なる色になるようLCD10に表示する。このように、入力を確定したキーを他の領域と異なる色に表示するので、ユーザは入力キーを容易に確認することができ、誤入力を防止することができる。」 したがって,上記摘記事項によれば,引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「情報端末装置へ各種の入力操作を行なうためのキーボードのレイアウトを表示するLCD10と, LCD10上に設けられたタッチパネル12を指で押下するとその押下位置座標を含む信号をCPU16へ送信するタッチパネルコントローラ14と, キーボードのレイアウト表示を行っているときのキー入力確定処理ルーチンであり, タッチパネルコントローラ14からの信号の有無を検査し,タッチパネル12がユーザにより指で押下されているときは,LCD10が表示しているレイアウト30の中のどのキーがユーザに選択されたかを判定し, 選択された「8」キーとともに,「8」の周辺に配置されている「4」,「5」,「6」,「7」及び「9」の各キーを含む範囲を「8」キーを中心として拡大し、拡大した範囲をレイアウト30に重ねて表示させ, タッチパネルコントローラ14からの信号の有無を検査し,ユーザがタッチパネル12から指を離したか否かを判定し,指を離したときに最後に選択キーとなっているキーを入力キーと確定する, キー入力確定処理ルーチンを実行するCPU16と, を具える情報端末装置。」 (2-2)引用例2 拒絶査定時に周知例として示された特開2004-078678号公報(平成16年3月11日公開。以下「引用例2」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。なお,下線は当審において付加したものである。 (カ)「【0015】 本発明の目的は、かかる問題を解消し、全選択対象の1画面全体にわたる表示を保ちながら、選択した選択対象の確認をし易くしたタッチパネルを備えた表示装置を提供することにある。」 (キ)「【0016】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために、本発明は、表示画面にタッチパネルが配置され、表示画面に選択対象が、選択対象に関する情報を表わす表示エリアでもって複数配列された選択画面が表示され、指示体でもって選択画面での所望とする選択対象の表示エリアに対してタッチパネルのタッチ操作を行なうことにより、所望とする選択対象に対して選択処理がなされるタッチパネルを備えた表示装置であって、タッチパネルのタッチ操作による所望とする選択対象の選択に伴って、選択された選択対象の表示エリアよりも広いサイズで操作ボタンを設定表示し、この操作ボタンのエリア内に選択された選択対象に関する情報を拡大表示するものである。」 (ク)「【0027】 表示画面1には、このようなタッチパネル2,3が設けられているので、指示手段がタッチパネル3の中空部3bに挿入されているが、タッチパネル2にタッチしていない状態(これを、以下、タッチパネル3にタッチした状態ということにする)と指示手段がタッチパネル3の中空部3bを通してタッチパネル2に接触している状態(これを、以下、タッチパネル2にタッチした状態ということにする)との2つの状態を取ることができ、ここでは、これらを表示画面1での別々の操作とするものである。即ち、上記のタッチパネル3にタッチした状態とすることをタッチパネル3のタッチ操作とし、上記のタッチパネル2にタッチした状態とすることをタッチパネル2のタッチ操作とする。」 (ケ)「【0032】 次に、図3及び図4により、図1に示したタッチパネルを備えた表示装置でのユーザの操作に伴う制御装置4aによる本発明の表示方法の一実施形態を説明する。なお、図3はタッチパネルを備えた表示装置でのユーザのタッチ操作状態とこれに応じた表示画面1での表示状態を摸式的に示すものであって、6は指示手段としての指先、7は表示画面1での選択対象としてのタッチ操作対象部分である。また、図4はかかるタッチ操作状態に応じた制御装置4aの制御手順を示すフローチャートである。なお、以下では、指示手段として、指先を例に説明するが、ぺンやペン型の入力デバイスなどの他の手段であってもよい。」 (コ)「【0039】 図5は電子投票での候補者選択画面の変化の第1の具体例を示す図である。 【0040】 この第1の具体例においても、図12で示した従来の電子投票端末と同様、投票者がカードを挿入するまでは、表示画面1(図1)に案内画面が表示されており、カードを挿入すると、図5(a)に示すような候補者の一覧を表わす候補者選択画面P1が表示される。この図5(a)は、図3(a)に示すように、指先6がタッチパネル3にも触っていないときの表示画面1の表示状態を示すものであり、この候補者選択画面P1では、全ての候補者のリストが表示されている。各候補者は、その氏名と所属政党名との対で表わされている。ここでは、このリストは表示画面1の、その端部も含めて、全体にわたって表示されており、従って、候補者数が多いほど一覧リストでの1候補者当たりの表示エリアが狭くなり、表示文字も小さくなる。 【0041】 なお、ここでは、便宜上、全ての候補者の氏名,所属政党名を同じ「候補○○」,「××党」で表わしているが、夫々異なることはいうまでもない。 【0042】 投票者は、この候補者選択画面P1から投票しようとする候補者を探し、この候補者の表示部分を、図5(b)に示すように、指先6でタッチし、この候補者を選択する。ここで、図5(b)に示すタッチが、図3(b)に示すように、指先6でタッチパネル3にタッチしたものであるときには(これを、以下、選択タッチ操作という)、候補者選択画面P2にこの選択タッチ操作した候補者(これを、以下、選択候補者という)の操作ボタン8が表示される。この操作ボタン8は、この選択候補者と上下・左右に隣り合う候補者(以下、隣接候補者という)の氏名,所属政党名の表示と全く重ならない範囲いっぱいのサイズで、かつ隆起して見えるように表示される。そして、この操作ボタン8内にこの選択候補者の氏名,所属政党名が拡大表示される。 【0043】 これにより、選択候補者の氏名,所属政党名が見易くなり、投票者は選択候補者が投票しようとする候補者(以下、投票対象候補という)に間違いがないか否かを容易に確認することができる。また、このように、選択候補者の操作ボタン8が表示されても、この操作ボタン8は隣接候補者を含む他の候補者の表示に全く影響することがないので、これら他の候補者の配列をずらしたり、変更させたりする必要がなく、そのままの状態で表示させることができ、表示画面1の全体にわたって候補者の一覧を表示させることができる。 【0044】 投票者が図5(b)に示す候補者選択画面P2で間違いなく投票対象候補者を選択したことを確認し、この操作ボタン8を指先6で押圧するようにして図3(c)に示すタッチパネル2をタッチ操作すると(これを、以下、決定操作、もしくは投票操作という)、図12(c)で示すようなこの選択候補者に対する選択候補者確認画面が表示され、投票操作を行なうことができる。 ・・・(中略)・・・ 【0052】 そこで、指先6(図3)が操作ボタン8内にあるときには、たとえ隣接候補者の仮想ボタンエリア9b,9cなどの範囲内にあっても、その操作ボタン8がそのまま設定されていて有効であるが、この指先6が移動してこの操作ボタン8の範囲からはずれ、これに隣接候補者の仮想ボタンエリア9bまたは9c内での表示エリア内に移ると、これまでの選択候補者9aの操作ボタン8がなくなり、新たに指先6によってタッチされた隣接候補者が選択候補者となり、仮想ボタンエリア9bまたは9cのその選択候補者に対して、新たな操作ボタン8が設定表示されることになる。 【0053】 このように、この第1の具体例は、候補者の表示エリア間のスペースを隣接候補者の表示エリア間で共有し、タッチパネル3で選択タッチ操作されると、これによる選択候補者に対し、その周りのスペースを含む拡大された操作ボタン8が設定されることになり、他の候補者の表示エリアの配列を変更することなく、等価的に選択候補者の表示エリアを拡大できて選択候補者の表示を見易くするものである。このため、表示する候補者が非常に多く、これが全員同時に表示されていても、選択した表示エリア、即ち、選択候補者に間違いがないかどうかを事前に確認することができる。また、操作ボタン8は隆起して見えるように表示されるので、操作がし易いものとなる。」 (サ)「【0088】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明によれば、選択画面に表示される選択対象を選択すると、これに対する操作ボタンがこの選択対象の表示エリアよりも大きく表示され、この操作ボタンのエリア内にこの選択対象に関する情報が拡大表示されるから、多数の選択対象が同時にこの選択画面に表示されても、その選択した選択対象が所望のものであるかどうかを容易にかつ確実に確認することができ、間違った選択を防止できるし、また、直ちに修正することができる。」 (シ)操作ボタン8の拡大表示は,選択した候補者に関する情報のみである点(【図5】) したがって,上記摘記事項によれば,引用例2には次の発明が記載されているものと認められる。 「複数の選択対象(候補者)を表示する表示画面1と, 表示画面1に配置され,タッチした位置と状態を検出するタッチパネル2,3と, 選択(投票)しようとする選択対象(候補者)を指先6でタッチパネル3をタッチし,選択対象(候補者)を選択すると,選択対象(候補者)の操作ボタン8を表示し,操作ボタン8内に選択対象(候補者)のみの情報(氏名,所属政党名)を拡大表示し, 操作者(投票者)が間違いなく投票対象候補者を選択したことを確認し、この操作ボタン8を指先6で押圧するようにしてタッチパネル2をタッチ操作すると(決定操作),投票操作が行われる, ユーザの操作に応じた表示を行う制御装置4aと, を具え, タッチパネルによる選択対象が所望のものであるかどうかを確実に確認することができるようにした表示装置。」 (3)対比 次に,本願補正発明を引用発明と対比する。 (a)引用発明の「LCD10」は,複数の表示子(キー)を含むキーボードをレイアウト表示するから,本願補正発明の「表示部」に相当する。 (b)引用発明の「タッチパネルコントローラ14」は,LCD10上のタッチパネルを指で押下したときに押下位置座標を含む信号を得るものであるから,本願補正発明の「検知部」に相当する。 (c)引用発明の,タッチパネル12を「ユーザにより指で押下」することは,本願補正発明の「第1の操作入力」に相当する。そして,引用発明の「タッチパネルコントローラ14からの信号の有無を検査し,タッチパネル12がユーザにより指で押下されているときは,LCD10が表示しているレイアウト30の中のどのキーがユーザに選択されたかを判定」は,キーボードのレイアウトを表示した状態においてキーボード中のどのキーが選択されたかを判定するものであるから,本願補正発明の「上記表示部に表示された上記複数の表示子のうち一の表示子を押下する第1の操作入力を上記検知部が検知」に相当する。 (d)引用発明の「選択された「8」キーとともに、「8」の周辺に配置されている「4」,「5」,「6」,「7」及び「9」の各キーを含む範囲を「8」キーを中心として拡大し、拡大した範囲」は,複数の表示子(キー)に関連するものであり,一の表示子のみに関連するものでない点を除き,本願補正発明の「呈示用表示子」に対応する。 (e)引用発明の「拡大した範囲をレイアウト30に重ねて表示」は,押下する指先で隠れない程度の当該一の表示子の近傍に表示するかどうか不明な点を除き,本願補正発明の「当該一の表示子を・・・表示」に対応する。 (f)引用発明の「ユーザがタッチパネル12から指を離し」は,第1の操作入力によって表示された表示用表示子に対して指示入力を行う処理である点で,本願補正発明の「第2の操作入力」に対応する。そして,本願補正発明の「第2の操作入力」は,第1の操作入力が「終了」して,表示させている呈示用表示子を「押下」するものであるのに対し,引用発明はそうでない点において相違している。 また,引用発明の「指を離したとき最後に選択キーとなっている入力キーと確定する」は,最初の入力に応じて呈示した表示子に対し,タッチパネルコントローラからの信号によりCPUが行う表示子の決定処理である点において,本願補正発明の「上記一の表示子の選択を決定する」に対応する。そして,本願補正発明は,第2の操作入力が「終了」したことを検知部が「検知」したときに決定するものであるのに対し,引用発明はそうでない点において相違している。 そうすると,引用発明の「タッチパネルコントローラ14からの信号の有無を検査し,ユーザがタッチパネル12から指を離したか否かを判定し,指を離したときに最後に選択キーとなっているキーを入力キーと確定する」は,上述した相違点を除き,本願補正発明の「第2の操作入力が行われ・・・上記一の表示子の選択を決定」に対応する。 (g)引用発明の「CPU16」は,本願補正発明の「制御部」に相当する。 (h)引用発明の「情報端末装置」は,LCD10を有しているから,本願補正発明の「表示装置」に相当する。 したがって,本件補正発明と引用発明は,以下の点で一致する。 [一致点] 「複数の表示子を表示する表示部と、 上記表示部の表示面に対する操作入力を検知する検知部と、 上記表示部に表示された上記複数の表示子のうち一の表示子を押下する第1の操作入力を上記検知部が検知したときに、呈示用表示子表示させ、第2の操作入力に関して上記検知部が検知したときに、上記一の表示子の選択を決定する制御部と を具える表示装置。」 そして,本件補正発明と引用発明は以下の点で相違する。 [相違点1] 本願補正発明の呈示用表示子は,「一の表示子のみに関連」するものであるのに対し,引用発明は,選択された「8」キーとともに、「8」の周辺に配置されている「4」,「5」,「6」,「7」及び「9」の各キーを含む範囲を拡大したものであるから,複数の表示子に関連するものである点。 [相違点2] 本願補正発明の呈示用表示子の表示は,「一の表示子を押下する指先で隠れない程度の当該一の表示子の近傍に」行われるのに対し,引用発明は,タッチパネルを指で押下することによってなされる拡大表示が,レイアウト30に重ねて表示されるものの,その位置が,一の表示子を押下する指先で隠れない程度の当該一の表示子の近傍であるかどうか不明な点。 [相違点3] 本願補正発明の第2の操作入力は,「第1の操作入力が終了して、表示させている当該呈示用表示子を押下」するものであるのに対し,引用発明のキーの確定は,ユーザがタッチパネル12から「指を離した」か否かを判定し,指を離したときに最後に選択キーとなっているキーを入力キーするものであり,「第1の操作入力が終了」して,表示させている当該呈示用表示子を「押下」するものではない点。 [相違点4] 本願補正発明の選択の決定は,「第2の操作入力が終了」したことを検知部で「検知」したときであるのに対し,引用発明の入力キーの確定は,第2の操作入力に対応する「タッチパネルから指を離し」たときであり,つまり,第2の操作入力が行われることをもって確定するものであり,確定のタイミングが,「第2の操作入力が終了」したことを「検知」したときではない点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 (4-1)[相違点1]について 表示画面上のタッチパネルにより複数の項目から一の項目を選択するに際し,項目を選択タッチすると,選択対象のみに関連する情報を拡大表示した操作ボタンを表示し,当該操作ボタンへの決定操作としてのタッチ操作を可能にすることは,引用例2にも記載されているように,タッチパネルによる入力インタフェースの技術分野において周知の技術事項に過ぎない。 そうすると,引用例2に記載された周知の技術事項に基づき,引用発明において,選択対象が所望のものであるかどうかを確認するための「一の表示子のみに関連」する操作ボタンを表示するように構成することは,当業者であれば容易である。 (4-2)[相違点2]について タッチパネルによる入力インタフェースの技術分野において,表示画面上を指で操作することにより入力項目を選択するに際し,指の下に選択項目が隠れて見えなくなるという問題を解消するために,選択項目候補を指で隠れない指先の位置に表示することは,常套手段である。(必要であれば,特開2003-271294号公報(段落【0036】,【図8】(2))等を参照。) そうすると,引用発明において,タッチパネルによって選択された項目に関する表示が指の下に隠れて見えなくならないように,拡大したキーを「一の表示子を押下する指先で隠れない程度の当該一の表示子の近傍」に表示するように構成することは,当業者が適宜なし得た事項に過ぎない。 (4-3)[相違点3]について タッチパネルによる入力インタフェースの技術分野において,ユーザが最初に押下したキーに対応する1または複数のキーを拡大表示したうえで,再度のユーザ入力としてのキー押下入力を促し,再度のユーザ入力によりキーを確定することは,常套手段である。(必要であれば,特開2001-175375号公報(段落【0001】,【0003】,【0005】,【0013】?【0017】,【0023】,【0025】,【0029】,【0034】,【図4】)等を参照。)ここで,本願出願当時のタッチパネルは,マルチタッチを検出できない方式が一般的(必要であれば,上で例示した特開2001-175375号公報の段落【0003】にも,タッチパネルとして,マルチタッチを検出できない方式である「抵抗膜式」が例示されている)であり,そのようなタッチパネルを採用するのであれば,最初と再度の計2回のユーザ入力(押下入力)を行うに際し,最初のユーザ入力(押下入力)を終了,つまり,タッチパネルから指を解放したあとに,再度のユーザ入力(押下入力)を行わないと,同時的な複数の押下入力(マルチタッチ)となるためにタッチパネルによる検出ができない。そのため,マルチタッチを検出できない方式のタッチパネルにより最初と再度の計2回のユーザ入力(押下入力)を検出するためには,再度のユーザ入力(押下入力)を検出する時点で,最初のユーザ入力の押下が終了し,指が解放された状態であることは自明である。 入力インタフェースの目的,用途などに応じて,様々な入力方式を検討することは,当業者であれば当然に追求すべき事項であり,引用発明において,タッチパネルへの指の押下によって選択されたキーを,ユーザによる確認を行った後に確定するために,再度のユーザ入力(押下入力)を促すように構成し,このとき,再度のユーザ入力は,最初のキー入力が終了し,指がタッチパネルから解放された状態から行われるよう構成し,相違点3にかかる構成とすることは,当業者が適宜なし得た事項にすぎない。 (4-4)[相違点4]について タッチパネルによる入力インタフェースの技術分野において,タッチパネルへの押下入力を判定するために,まず,指が画面のボタンに接触されると,接触された位置の座標がタッチパネルのパネルドライバを介してCPUに通知され,当該ボタンが選択されたものと判断し,続いてボタンが解放されると,解放された位置の座標がタッチパネルのパネルドライバを介してCPUに通知され,ボタンに対応する処理が実行されることは,通常の技術である。(必要であれば,特開2002-169658号公報(段落【0007】,【0021】,【0044】,【0056】?【0062】)等を参照。) また,上記(4-3)において述べたように,タッチパネルによる入力インタフェースの技術分野において,ユーザが最初に押下したキーに対応する1または複数のキーを拡大表示したうえで,再度のユーザ入力(キー押下入力)を促し,再度のユーザ入力によりキーを確定することは常套手段である。 そうすると,引用発明おいて,上記(4-3)において述べた常套手段である再度のユーザ入力処理の構成を採用するにあたり,上述した通常のタッチパネル入力処理技術,つまり,指からタッチパネルのボタンから開放されると当該ボタンに対応する処理が実行される技術を考慮することにより,再度のユーザ入力において指がキーから解放されると,その情報がパネルドライバを介してCPUに通知されてキーに対応する処理が実行されるようになすことは,当業者が適宜なし得た事項に過ぎない。このとき,「指がキーから解放」,「パネルドライバ」,「キーに対応する処理が実行」は,それぞれ,本願補正発明の「第2の操作入力が終了」,「検知部」,「上記一の表示子の選択を上記制御部が決定」に相当する。 よって,引用発明において,再度のユーザ入力において指がキーから解放(第2の操作入力が終了)されると,その情報がパネルドライバを介してCPUに通知されてキーに対応する処理が実行(キーの確定)されるよう構成することは,当業者が適宜なし得た事項にすぎない。 以上判断したとおり,本願発明における上記[相違点1]乃至[相違点4]に係る発明特定事項は,いずれも当業者が容易に想到することができたものであり,上記各相違点を総合しても,想到することが困難な格別の事項は見いだせない。 また,本願発明の作用効果も,引用発明,例として引用例2を示した周知の技術事項,その他の周知事項及び設計的事項から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって,本件補正発明は,引用発明,例として引用例2を示した周知の技術事項,その他の周知事項及び設計的事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.補正却下の決定のむすび 以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 平成21年3月27日の手続補正は上記の通り却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成21年1月5日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとお りのものである。 「複数の表示子を表示する表示部と、 上記表示部の表示面に対する操作入力を検知する検知部と、 上記表示部に表示された上記複数の表示子のうち一の表示子に対する操作入力を上記検知部が検知したときに、当該一の表示子のみに関連する呈示用表示子を上記表示部に表示させ、上記表示部に表示させた当該呈示用表示子に対する操作入力を上記検知部が検知したときに、上記一の表示子の選択を決定する制御部と を具える表示装置。」 第4 引用例 引用例及びその記載事項は、前記「第2 3.(2)」に記載したとおりである。 第5 対比・判断 本願発明は,本件補正発明から前記「第2 2.」で検討した限定事項を省いたものである。そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに発明特定事項を限定したものに相当する本件補正発明が前記「第2 3.(4)」に記載したとおり,引用発明,例として引用例2を示した周知の技術事項,その他の周知事項及び設計的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明,例として引用例2を示した周知の技術事項,その他の周知事項及び設計的事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。 第6 むすび 以上のとおり,本願請求項1に係る発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は,その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-07-15 |
結審通知日 | 2011-07-19 |
審決日 | 2011-08-01 |
出願番号 | 特願2005-224384(P2005-224384) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森田 充功 |
特許庁審判長 |
手島 聖治 |
特許庁審判官 |
山本 章裕 松尾 俊介 |
発明の名称 | 表示装置、表示プログラム及び表示方法 |
代理人 | 田辺 恵基 |