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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
管理番号 1243655
審判番号 不服2009-6917  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-02 
確定日 2011-09-15 
事件の表示 特願2006- 99112「パケット中継装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月18日出願公開、特開2007-274476〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯と本願発明
1.手続の経緯
本願は、平成18年3月31日の出願であって、平成21年2月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月22日付けで手続補正がなされ、これに対し、当審において平成23年3月28日付けで拒絶理由通知がなされ、同年5月30日に手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年5月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「セッションが確立している端末から送信されたIPパケットを前記セッションに必要な使用帯域で中継するパケット中継部(18)を有するパケット中継装置(10)において、
前記セッションを確立させるために前記端末から送信された、セッション制御情報を含むSIPメッセージを解析してビットレート及びパケットレートを特定するセッション制御情報解析部(12)と、
前記セッション制御情報解析部によって特定された前記ビットレートを、前記セッション制御情報を含むSIPメッセージに付加されるヘッダ情報量と前記パケットレートとの積を加算することによって補正する帯域補正部(14)とを備え、
前記パケット中継部は、前記帯域補正部によって補正された帯域で前記端末から送信された前記IPパケットを中継することを特徴とするパケット中継装置。」

第2.引用発明
当審で通知した拒絶理由に引用された特開2004-343457号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明はIP(Internet Protocol)ネットワークを用いて音声データの送受信を行うケーブルVoIP(Voice over Internet Protocol)システムに関する。特に、本発明は、ケーブルVoIPシステムにおいてSIP(Session Initiation Protocol)シグナリングに連動して動的QoS(Quality Of Service)を確保・開放する方法に関する。」(第2頁第40?47行目)

ロ.「【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るケーブルVoIPシステムの概略基本構成を示すブロック図である。なお、全図を通して同一の構成要素には同一の番号、符号を付して説明を行い、図中、矢印はメッセージの交換を表す。
【0018】
本図に示すように、ケーブルVoIPシステム100において、事業者のCMTS(Cable Modem Termination System)201同士がWAN(Wide Area Network)202で接続されている。
各CMTS201にはQoS(Quality Of Service)追加・削除部211が設けられ、さらに、複数の加入者宅内101、102がHFC(Hybrid Fiber Coax)203経由で接続され、CMTS201と加入者宅内101、102の各々の間で通話が行われ、QoS追加・削除部211では、通話開始と共に通話元との間にさらに、WAN202上の通話先との間にQoSを追加して通話を行い、通話終了と共に通話に追加したQoSを削除する。
【0019】
QoS追加・削除部211は、後述するように、SIPシグナリングに連動して通話に対して動的QoSの追加、削除を行う。
加入者宅内101、102の各々にはCM(Cable Modem)/MTA(Multimedia Terminal Adaptor)111が設けられ、CM/MTA111はCMとMTAが一体となった一体型のE-MTAであり、シグナリングプロトコルとして国際標準ITU-T J.112、J.122で定められるSIP(Session Initiation Protocol)が実装される。
【0020】
CM/MTA111の各々にはアナログ電話機112、パーソナルコンピュータ(PC)113が接続され、アナログ電話機112のオフフックで呼が開始し、オンフックで呼が終了し、ユーザによる通話が行われ、パーソナルコンピュータ113からユーザによるデータ送受信が行われる。
さらに、CM/MTA111では、HFC203を介して、CMTS201との間で、SIPのシグナリングに連動して、通話に対してQoSを動的に追加、削除を行い、CMTS201を介して、通話先のMTA又はProxy Serverとの間でシグナリングを行う。
【0021】
すなわち、CM/MTA111は送受信するSIPメッセージを監視し、SIPメッセージ内に含まれるSDP(Session Description Protocol)の内容を後述のように解析し、通話に必要なケーブル上り回線の帯域などを算出し、ITU-T J.112、J.122で規定されるDSA(Dynamic Service Addition)メッセージの交換をCMTS201との間で行い、QoS追加・削除部211にQoSの追加(確保)を実行させ、通話を開始する。
【0022】
さらに、CM/MTA111では通話が完了するときにもSIPシグナリングが行われるので、これを監視し、通話終了タイミングに同期してCMTS201との間でDSD(Dynamic Service Deletion)メッセージの交換を行い、先に追加したQoSをQoS追加・削除部211に削除(開放)させる。
【0023】
このようにして、CMTS201と複数の加入者宅内101、102との間では、通話先MTAに対するSIPシグナリングに対して、それぞれDSA/DSDのメッセージ交換が行われる。
【0024】
図2は図1における各加入者宅内101、102のCM/MTA111の概略構成示すブロック図である。
【0025】
本図に示すように、CM/MTA111にはRF(Radio Frequency)送受信インタフェース121が設けられ、CM/MTA111はRF送受信インタフェース121を経由してHFC203に接続される。
さらに、CM/MTA111には電話インタフェース部122が設けられ、アナログ電話機112は電話インタフェース部122を経由してCM/MTA111に接続される。
【0026】
さらに、電話インタフェース部122にはMTA処理部123が接続され、MTA処理部123は音声コーディックなどを含み、通話の音声をアナログ/ディジタル変換し、音声データの送受信を行う。
さらに、MTA処理部123にはSIPシグナリング部131が設けられ、SIPシグナリング部131は、呼の開始、終了に合せてSIPメッセージを生成し、SIPメッセージの送受信を制御する。
【0027】
さらに、CM/MTA111にはMAC(Media Access Control)/PHY(Physical Function)処理部124が設けられ、MAC/PHY処理部124はMACアドレスの制御情報の付加、削除処理等を行い、伝送媒体への送受信等を行う。
さらに、RF送受信インタフェース121、MTA処理部123、制御部124には制御部125が接続され、制御部125はQoSメッセージ交換部132を有し、CM/MTA111の全体の制御を行う。
【0028】
QoSメッセージ交換部132はSIPシグナリング部131のSIPシグナリングを監視し、SIPシグナリングに連動してDSAメッセージの交換、DSDメッセージの交換を行い、CMTS201のQoS追加・削除部211に対して、QoS追加・削除の要求を行う。」(第4頁第45行目-第6頁第22行目)

ハ.「【0042】
この時点でQoSが無効状態となり、この状態では通話が行われない。
図5は通話開始時のCM/MTA111におけるQoSメッセージ交換部132の動作例を示す図である。
ステップS301において、通話の開始前は通話が行われていない待機状態(アイドル状態)である。
【0043】
ステップS302において、QoSメッセージ交換部132では、SIPシグナリング部131を監視し、図3に示すINVITEメッセージに対応するACKメッセージを送信又は受信したか否かを判断する。送受信が検出されない場合には処理を終了する。
ステップS303において、上記の送受信が検出された場合には、SIPメッセージに含まれるSDP部分を解析し、QoS追加に必要な種々のパラメータ値を算出する。
【0044】
ここで、パラメータとは通話先のMTAのIPアドレス、受信ポート番号、コーディックの種類などである。
IPアドレス、ポート番号は、音声データと非音声データを区別するために使用される。
コーディックの種類は、ケーブル回線上でどれくらいの帯域を確保するか決定するために使用される。
【0045】
この決定では、QoSのパラメータとして、
(1)CMTS201が加入者宅内101、102のCM/MTA111のケーブル上り回線に割り当てる帯域の周期、
一例として、SDP内のptimeというパラメータ(RFC2327 p.22)を参照し、これが例えば20であれば周期=20msecに設定する。
【0046】
(2)CMTS201が加入者宅内101、102のCM/MTA111のケーブル上り回線に割り当てる帯域の大きさが決定される。
一例として、SDP内のAttributeというパラメータで示される音声方式を参照し、PCMU(つまりG.711μ)が指定される。
上記の2つの情報によりパケットサイズ218バイトと求まる。このパケットサイズに上り回線送信に必要なヘッダ情報(10?10数バイト程度)を加えたサイズを一定周期で割り当てるようにする。
これにより、必要な上り帯域=(218+10)*(100/20)*8=91200bps(=約90kbps)が実現される。
【0047】
ステップS304において、ステップS303で算出した値を用いて、DSA-REQメッセージを生成し、メッセージ交換を実行する。
このDSA-REQメッセージには音声データか否かを判定するためのパケット分類/識別情報、通話に適したQoSを実現するサービスフロー情報などが含まれ、さらに、必要なQoSのパラメータとして主に上記(1)の帯域の周期、(2)の帯域の大きさが含まれる。
【0048】
生成したDSA-REQメッセージをCMTS201に送信する。
ステップS305において、ステップS304でCMTS201とのQoS追加のためのメッセージ交換が成功すると、メッセージ交換に基づきCMTS201のQoS追加・削除部211はCM/MTA111に対してQoSを有効状態にする。これにより、通話のための必要な帯域を動的に確保する。」(第8頁第16行目?第9頁第12行目)

ニ.「【0053】
図7は本発明の第1の変形例に係るケーブルVoIPシステムの概略基本構成を示すブロック図である。
本図に示すように、図1ではCMとMTAが一体となったE-MTAと比較して、本発明はCMとMTAが独立しているS-MTAにも応用できる。
CMTS201にHFC203経由で接続される複数の加入者宅内151、152の各々にはCM(Cable Modem)141が設けられる。
【0054】
CM141にはハブ142を経由してMTA143、パーソナルコンピュータ144のように複数の外部機器が接続される。
さらに、MTA143、パーソナルコンピュータ144には、SIPシグナリング部131がそれぞれ設けられる。
さらに、MTA143にはアナログ電話機145が接続され、パーソナルコンピュータ144にはヘッドセット(HeadSet)146が接続される。
【0055】
図8は図7における各加入者宅内151、152のCM141の概略構成示すブロック図である。
本図に示すように、図2と比較して、CM141の構成はMTA処理部123を除いて同様の構成である。
制御部125のQoSメッセージ交換部132では、外部機器であるMTA143、パーソナルコンピュータ144が送受信するSIPメッセージを検出し、外部機器と通話先の機器双方のQoSパラメータ値をSDPから算出する。
【0056】
この場合、MTA143、パーソナルコンピュータ144の双方が受信する場合には、図1におけるCM/MTA111一体型の場合と同様に、通信先から受信したSDPの参照、QoSの追加を繰り返し、MTA143、パーソナルコンピュータ144の双方が送信する場合には、図1におけるCM/MTA111一体型の場合と同様に、通信先へ送信したSDPの参照、QoSの追加を繰り返す。
【0057】
これに対して、MTA143、パーソナルコンピュータ144の一方が受信し、他方が送信する場合には、以下のように、送信、受信される各々のSDPを参照して、QoSの追加を行う。これは、一体型のCM/MTA111、ではSDPを自分で作成、送信するので、その中身を自分が知っているが、独立型のCM141ではSDPを自分では作らず、送られてくるSDPを調べるためである。
【0058】
図9は通話開始時に外部機器が送受信を行う場合のCM/MTA141におけるQoSメッセージ交換部132の動作例を示す図である。
【0059】
本図に示すように、ステップS321において、通話の開始前は通話が行われていない待機状態(アイドル状態)である。
ステップS322において、QoSメッセージ交換部132では、SIPシグナリング部131を監視し、図3に示すINVITEメッセージに対応するACKメッセージを送信したか否かを判断する。送信が検出されない場合にはステップS326に進む。
【0060】
ステップS323において、上記の送信が検出された場合には、SIPメッセージに含まれるSDP部分を解析し、QoS追加に必要な種々のパラメータ値を算出する。パラメータ値の算出は前述と同様であるので、説明を省略する。
ステップS324において、ステップS303で算出した値を用いて、DSA-REQメッセージを生成し、メッセージ交換を実行する。
【0061】
生成したDSA-REQメッセージをCMTS201に送信する。
ステップS325において、ステップS324でCMTS201とのQoS追加のためのメッセージ交換が成功すると、メッセージ交換に基づきCMTS201のQoS追加・削除部211はCM141に対してQoSを有効状態にする。
ステップS326において、QoSメッセージ交換部132では、SIPシグナリング部131を監視し、図3に示すINVITEメッセージに対応するACKメッセージを受信したか否かを判断する。受信が検出されない場合には処理を終了する。
【0062】
ステップS327において、上記の受信が検出された場合には、SIPメッセージに含まれるSDP部分を解析し、QoS追加に必要な種々のパラメータ値を算出する。パラメータ値の算出は前述と同様であるので、説明を省略する。
ステップS328において、ステップS327で算出した値を用いて、DSA-REQメッセージを生成し、メッセージ交換を実行する。
【0063】
生成したDSA-REQメッセージをCMTS201に送信する。
ステップS329において、ステップS328でCMTS201とのQoS追加のためのメッセージ交換が成功すると、メッセージ交換に基づきCMTS201のQoS追加・削除部211はCM141に対してQoSを有効状態にする。
このようにして、一体型だけでなく独立型のMTAでも、シグナリングプロトコルとしてSIPを実装したMTAで通話に要求されるケーブル回線の帯域をMTAの動作に同期させて自動的にQoSを確保・開放することが可能になる。」(第9頁第39行目?第11頁第10行目)

引用例のMTA(Multimedia Terminal Adaptor)は、通話の音声をアナログ/ディジタル変換し、音声データの送受信を行うものであるが、引用例のシステムは「IPネットワークを用いて音声データの送受信を行うケーブルVoIPシステム」(上記摘記事項イ.段落【0001】)であることから明らかなように、MTAから送信される音声データは「IPパケット」であり、
また、引用例のCM(Cable Modem)は、MTAから送信されたIPパケットを電話インタフェース部を介して受信し、該受信したIPパケットをRF送受信インタフェース部を介してHFC203へ送信していることから、引用例のCMはMTAから送信されたIPパケットを中継する装置といえるものであり、
また、IPパケットの中継はSIPシグナリングに連動して確保されたQoSで行われているが、QoSの有効状態とは、「通話のための必要な帯域」が「確保」された状態(上記摘記事項ハ.段落【0048】)のことであるから、IPパケットの中継は通話に必要な帯域で行われるものであり、
また、CMの「制御部」が、CM全体の制御を行っているから、
以上を総合すると、
引用例には、「通話が確立しているMTAから送信されたIPパケットを前記通話に必要な帯域で中継する制御部を有するCM」が開示されていると認められる。
また、上記摘記事項ハ.段落【0042】-【0046】、ニ.段落【0055】によれば、引用例の「QoSメッセージ交換部」は、MTAが送受信する「SIPメッセージ」を「解析」し、「帯域の周期」及び「帯域の大きさ」を特定していると認められる。
また、上記摘記事項ハ.段落【0042】-【0048】によれば、引用例の「QoSメッセージ交換部」は、「SIPメッセージ」を「解析」して得られた「パケットサイズに上り回線送信に必要なヘッダ情報(10?10数バイト)を加えたサイズ」と、帯域の周期の逆数の積をとることで、帯域を割り当てていると認められる。
また、引用例のCMの制御部は、該割り当てられた帯域でMTAから送信されたパケットを中継していると認められる。

したがって、上記の摘記事項、及びこの分野の技術常識より、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「通話が確立しているMTA(Multimedia Terminal Adaptor)から送信されたIPパケットを前記通話に必要な帯域で中継する制御部を有するCM(Cable Modem)において、
前記MTAから送信された、SIPメッセージを解析して帯域の大きさ及び帯域の周期を特定するQoSメッセージ交換部と、
前記QoSメッセージ交換部によって解析されたパケットサイズに上り回線送信に必要なヘッダ情報を加えたサイズと、帯域の周期の逆数の積をとることで、帯域を割り当てるQoSメッセージ交換部とを備え、
前記制御部は、前記QoSメッセージ交換部によって割り当てられた帯域で前記MTAから送信された前記IPパケットを中継するCM。」

第3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
SIPシグナリングを用いたVoIPシステムでは、SIPメッセージの交換によってセッションを確立し、その状態において通話を行うものであるから、
引用発明の「通話が確立している」状態は、本願発明の「セッションが確立している」状態に相当し、また、引用発明の「通話に必要な帯域」は、本願発明の「セッションに必要な帯域」に相当する。
また、引用発明の「MTA」は、「端末」とよべるものである。
また、引用発明の「帯域の大きさ」は、セッションに使用される帯域の大きさを意味しているから、本願発明の「使用帯域の大きさ」と技術的に同義である。
また、引用発明の「制御部」は、その機能からして、本願発明の「パケット中継部」に相当する。
また、引用発明の「CM」は、上記「第2.引用発明」で述べたとおり、IPパケットを中継する装置であるから、「パケット中継装置」ともよべるものである。
また、引用発明の「SIPメッセージ」は、セッションを確立するためにMTAのSIPシグナリング部から送信されるものであり、
SIPメッセージとして引用例に記載されているINVITE、200OKや、ACKは、セッションを制御するための情報であるから、
引用発明の「SIPメッセージ」は、「セッションを確立させるために前記端末から送信された」ものであり、かつ「セッション制御情報を含む」ものである。
また、引用発明の「帯域の大きさ」は、本願発明の「ビットレート」に相当する。
また、引用発明の「帯域の周期」は、一例として、SDP内のptimeが挙げられているように(上記摘記事項ハ.段落【0045】)、パケット周期であって、「sec/packet」として表現されるものであり、一方、本願発明の「パケットレート」は、「packet/sec」として表現されるものであるから、引用発明の「帯域の周期の逆数」は、本願発明の「パケットレート」に相当する。
また、引用発明の「ヘッダ情報」は、「バイト」を単位とするものであるから、本願発明の「ヘッダ情報量」と技術的に同義である。
また、パケットサイズ(1パケットあたりのサイズ)と、パケットレート(1秒あたりのパケット数)との積が、ビットレートであることは技術常識であるから、
引用発明の「パケットサイズに上り回線送信に必要なヘッダ情報を加えたサイズと、帯域の周期の逆数の積をとる」ことは、ビットレートに、ヘッダ情報量とパケットレートとの積を加算することに相当し、
また、当該動作は、加算される前の状態であるQoSメッセージ交換部によって解析されたビットレートを「補正」しているとよべる動作である。
また、引用発明の、SIPメッセージを解析する「QoSメッセージ交換部」と、本願発明の「セッション制御情報解析部」とは、両者ともある機能を実現する「機能部」である点で一致し、これを「第1機能部」と称することができる。
また、引用発明の、必要な帯域を割り当てる「QoSメッセージ交換部」と、本願発明の「帯域補正部」とは、両者ともある機能を実現する「機能部」である点で一致し、これを「第2機能部」と称することができる。

よって、両者は以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
「セッションが確立している端末から送信されたIPパケットを前記セッションに必要な使用帯域で中継するパケット中継部を有するパケット中継装置において、
前記セッションを確立するために前記端末から送信された、セッション制御情報を含むSIPメッセージを解析してビットレート及びパケットレートを特定する第1機能部と、
前記第1機能部によって特定された前記ビットレートを、ヘッダ情報量と前記パケットレートとの積を加算することによって補正する第2機能部とを備え、
前記パケット中継部は、前記第2機能部によって補正された帯域で前記端末から送信された前記IPパケットを中継するパケット中継装置。」

(相違点1)
「ヘッダ情報量」について、本願発明は「セッション制御情報を含むSIPメッセージに付加されるヘッダ情報量」と限定されているのに対して、引用発明は、「セッション制御情報を含むSIPメッセージに付加されるヘッダ情報量」であるか明らかではない点。

(相違点2)
「第1機能部」及び「第2機能部」について、本願発明はSIPメッセージの解析を「セッション制御情報解析部」が、帯域の補正を「帯域補正部」がそれぞれ行っているのに対して、引用発明はSIPメッセージの解析も、帯域の補正も、「QoSメッセージ解析部」が行っている点。

4.当審の判断
まず、相違点1について検討する。
引用発明の「ヘッダ情報量」は、「上り回線送信に必要な」(上記摘記事項ハ.段落【0046】)ものであるから、MTAからパケット中継装置を介して相手側のMTAへSIPメッセージを送信(上り回線送信)する場合においても、当然ながら、当該SIPメッセージには「上り回線送信に必要なヘッダ情報」が付加されていると認められる。したがって、引用発明において、「ヘッダ情報量」は、「SIPメッセージに付加されるヘッダ情報量」ともいえるものであり、また、「SIPメッセージ」は「セッション制御情報を含む」ものであるから、「ヘッダ情報量」に「セッション制御情報を含むSIPメッセージに付加される」との限定がなされた相違点1は、実質的な相違点であるとは言えない。
次に、相違点2について検討する。
複数の機能を実現する装置において、それぞれの機能ごとに別個の機能部を用意するか、複数の機能を1つの機能部で実現するかは、当業者が適宜決定し得る設計事項にすぎないから、引用発明の「QoSメッセージ解析部」を、機能ごとに別個の機能部とし、それぞれ「セッション制御情報解析部」、「帯域補正部」と称することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本願発明が奏する効果も引用発明から容易に予測出来る範囲内のものである。

第5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-14 
結審通知日 2011-07-19 
審決日 2011-08-03 
出願番号 特願2006-99112(P2006-99112)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 倉山 徹男  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 宮田 繁仁
新川 圭二
発明の名称 パケット中継装置  
代理人 有我 軍一郎  

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