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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1243683 |
審判番号 | 不服2010-22757 |
総通号数 | 143 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-10-08 |
確定日 | 2011-09-15 |
事件の表示 | 特願2009-209936「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月10日出願公開、特開2009-285501〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成18年11月14日に出願した特願2006-307876号(国内優先権主張、平成18年3月9日)の一部を分割して、平成21年9月11日に新たな特許出願としたものであって、 平成22年1月7日付けで拒絶理由が通知され、これに応答して同年3月19日付けで手続補正書が提出され、 平成22年4月19日付けで最後の拒絶理由通知が通知され、これに応答して同年6月21日付けで手続補正書が提出されたが、 平成22年7月7日付けで、前記平成22年6月21日付け手続補正を却下するとともに、同日付けで拒絶査定がされたため、 これを不服として平成22年10月8日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。 2.平成22年10月8日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年10月8日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1) 本願補正発明 平成22年10月8日付け手続補正により、特許請求の範囲は、 「 【請求項1】 遊技球が流下する遊技領域に、表示遊技を行う表示部を有する可変表示装置と、遊技球の入賞により前記表示遊技の表示開始条件を付与可能な始動入賞口と、を備えた遊技機において、 前記表示部の下側に設けられ、前記遊技領域から受け入れた遊技球が左右方向に転動可能な転動面を有する遊技球転動部と、 前記転動面の右側の遊技球が流下しない領域に設けられ、前記表示遊技の演出動作を行う演出装置と、を備え、 前記遊技球転動部は、前記転動面の右端縁より上方に立ち上がる乗り越え防止壁を有し、 前記乗り越え防止壁は、前記遊技球転動部と、前記転動面の右側に設けられる前記演出装置と、を当該乗り越え防止壁の壁面の上端まで仕切り、該上端の上方は開放されていることを特徴とする遊技機。 【請求項2】 前記可変表示装置は、前記表示部の上端側を後方寄りに傾斜して配設され、 前記遊技球転動部は、前記転動面の右端縁であり、かつ、前記乗り越え防止壁の後方側に沿って延出する球誘導壁を備えることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。 【請求項3】 前記遊技領域を流下する遊技球を流入可能な遊技球入口と、前記遊技球入口から流入した遊技球を前記転動面の左側から流出させる遊技球出口と、を備え、 前記乗り越え防止壁は、前記遊技球出口側から転動した遊技球を前記遊技球出口側へと戻すように転動させることを特徴とする請求項1または2に記載の遊技機。」 に補正された。(以下、この補正を「本件補正」という。) (2) 補正の目的 本件補正は、補正前の請求項1における、「演出装置」が設けられる位置を、 「転動面の右側」から「転動面の右側の遊技球が流下しない領域」に補正するものである。 本件補正は、「演出装置」が設けられる位置を技術事項として限定したものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。 (3) 引用文献に記載された事項 平成22年4月19日付け拒絶理由通知書において引用文献1として引用された特開2005-152489号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (ア)「【0046】 図1に示す一実施例の弾球遊技機1は、遊技媒体として遊技球を用いるパチンコ遊技機であって、遊技盤3の縁に配置された外レール4及び内レール5で包囲される遊技領域6が前記遊技盤3上に設けられている。前記遊技領域6の中心線上にその上部から下部に向かって順にセンター役物9、始動入賞口10、特別電動役物である大入賞口15、アウト口17が配設され、また中央左には普通図柄変動開始用ゲート19、その下側に風車22、さらにその下方左右に左袖入賞口23と右袖入賞口25、その下方に左落とし入賞口27と右落とし入賞口29が配設されている。前記遊技領域6には、前記遊技領域6に打ち込まれた遊技球の自由な流下を阻止し、流下方向を調整する誘導釘Jが立設されている。」 (イ)「【0048】 前記センター役物9は表示装置(請求項5の「遊技状態を報知する電気的遊技装置」に相当する。)900と、前記表示装置900の前面外周を覆う装飾部材910とよりなる。前記表示装置900は、前記表示装置900の大部分を占める特別図柄表示部901と、前記特別図柄表示部901の左下に組み込まれた普通図柄表示部902とで構成される。前記特別図柄表示部901は、液晶,ドットマトリックス若しくはLED表示装置等からなる。本実施例では、液晶表示器(TFT-LCDモジュール)で構成される。前記普通図柄表示部45は、前記液晶表示器の一部を表示領域としている。 【0049】 前記特別図柄表示部901は、図柄を可変表示可能なものとされ、左右に並ぶ左側表示領域、中央表示領域、右側表示領域の3つに分割された特別図柄表示領域を有し、前記特別図柄表示領域に大当たりの当否判定結果用の特別図柄が表示される。前記左側表示領域には左特別図柄が、中央表示領域には中特別図柄が、右側表示領域には右特別図柄が変動表示及び停止表示可能とされ、停止表示された図柄組合せによって当否判定結果が表示され、それによって遊技者に当否判定結果(請求項5における「遊技状態」の一種)を報知する。本実施例における前記左側表示領域、中央表示領域、右側表示領域にそれぞれ表示される特別図柄は、『0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11』の12種類の図柄とされ、所定条件に起因して変動及び停止表示される。また、前記特別図柄表示部901には、前記特別図柄とは異なる画像、例えば前記特別図柄とは異なる他の図柄、キャラクター画像、背景画像、文字画像等が前記特別図柄に加えて表示可能とされ、前記他の図柄、キャラクター画像、背景画像、文字画像等が特別図柄の変動開始等の所定条件に起因して変動表示可能となっている。」 (ウ)「【0054】 前記転動通路面949は、前記転動通路空間971に進入してきた遊技球が転動する転動通路床面に相当するもので、本実施例では、前記揺動通路部(第二転動通路空間)973に設けられている。さらに本実施例では、前記転動通路面949は、前記遊技盤3の前面に対して略平行な第一転動通路面942と、前記第一転動通路面942の前方下方側にあって前記遊技盤3の前面に対して略平行な第二転動通路面943を備え、前記上側の第一転動通路面942に前記案内通路部(第一転動通路空間)975から遊技球が進入して前記第一転動通路面942を転動可能とされている。さらに、本実施例では、前記第一転動通路面942には、前記遊技盤3の前方側に、かつ前記接触防止部945との間に遊技球の転動可能な間隔をあけて遊技球落下防止壁946が、前記第一転動通路面942の水平方向中央部に所定長で形成されている。なお、前記第一転動通路面942の両端947は所定長にわたって前記遊技球落下防止壁946が存在せず、前記第一転動通路面942の両端947の前端側から前記第二転動通路面943へ遊技球が落下可能にされている。」 (エ)「【0064】 前記転動通路面用部材941は、請求項1及び4における、遊技盤に対して前後方向に組み合わされる第一区画部材又は第二区画部材に相当し、本実施例では、前方側から組み合わされる第二区画部材の一部とされている。前記転動通路面用部材941は、図7にも示すように、前記第一転動通路面942の前方下方に前記第二転動通路面943が並設され、かつ前記第一転動通路面942と前記第二転動通路面943が互いに水平方向に沿って形成された横長な部材からなり、前記第一転動通路面942の後端には略中央に、前記遊技球落下用孔913の一部を構成する略半円形の切り欠き944が形成され、前記切り欠き944の両側に前記接触防止部945が低い壁状に立設されている。前記第一転動通路面942の両端942a,942bは上方へ湾曲していて、一端(図示の例では左端)942aが前記案内通路部用部材951の下端と当接するようになっている。前記第一転動通路面942の前端には、その両端付近947を除いて前記遊技球落下防止壁946が形成され、前記遊技球落下防止壁946の無い両端付近947から遊技球が前記第二転動通路面943へ落下可能にされている。前記第二転動通路面943は、中央部943aが上方へ膨らんで湾曲した形状からなり、前記湾曲した中央部943aの両側の前端が下方へ向けた凹部943bとされ、前記凹部943bから遊技球が下方へ落下可能に構成されている。なお第二転動通路面943の両端943cは垂直壁となって、それ以上遊技球が水平方向へ転動できないようになっている。」 (オ)「【0070】 このようにしてなる前記装飾部材910は、前記表示装置900の前面外周を包囲するようにして前記遊技盤3の前面に、前記本体部材931の遊技盤取付部934をネジ止めすることにより取り付けられ、前記遊技球誘導部964の直下に前記始動入賞口10が位置するように配設される。そして、前記遊技領域6を流下する遊技球が前記装飾部材610の遊技球進入部953から進入すると、前記遊技球は、前記案内通路部(前記第一転動通路空間)975を略垂直に流下して前記揺動通路部(前記第二転動通路空間)973の前記第一転動通路面942に至り、前記第一転動通路面942における前記立体装飾部967の前方を略水平方向へ転動する。その際、前記第一転動通路面942には前記接触防止部945が前記立体装飾部967の前方に形成されているため、前記案内通路部(前記第一転動通路空間)975から前記揺動通路部(前記第二転動通路空間)973の前記第一転動通路面942に至った遊技球は、前記接触防止部945の前面に沿って前方側へ進路変更しながら水平方向へ転動することになり、前記立体装飾部967に接触するのを避けて失速することなく転動することが可能になる。また、前記第一転動通路面942の水平方向の中央に至った遊技球は、前記遊技球落下用孔965から落下し、前記遊技球誘導部964を通って前記装飾装置910の前面下部の球出口935から排出され、前記装飾装置910の下方の前記始動入賞口10へ誘導される。その際、前記第一転動通路面942の略中央部の前端には前記遊技球落下防止壁946が存在するため、前記第一転動通路面942の略中央部の前端から前記第二転動通路面943へ落下するのが低減され、前記遊技球落下用孔965から落下して前記遊技球誘導部964により前記始動入賞口10へ誘導され易くなる。また、前記第一転動通路面942の両端付近では前記遊技球落下防止壁945が存在しないため、前記第一転動通路面942から前記第二転動通路面943へ落下するのが可能である。」 (カ)「【0072】 また、前記遊技盤3の背面には、前記始動入賞口10に入球(入賞)した遊技球を検出する特別図柄変動開始スイッチ(始動入賞口センサー)が入球遊技球(入賞球)用通路に設けられており、該入球遊技球(入賞球)が検出されると、遊技の大当たりを判定するための大当たり判定用乱数が取得され、前記特別図柄柄表示部901で特別図柄の変動が開始される。そして、前記取得された大当たり判定用乱数が大当たりであったことを契機に、前記特別図柄表示部901で特別図柄が特定の図柄組み合わせで停止表示されて大当たりが表示される(請求項1における「遊技状態の報知」の一種に相当する。)と共に、大当たりまでの通常遊技に比べ遊技者にとって有利な特別遊技が実行される。」 以上、(ア)ないし(カ)の記載、および図面(特に、図3?9参照)を総合すると、引用文献1には、以下の発明が開示されていると認めることができる。 「遊技球が流下する遊技領域6に、 特別図柄表示部901を有する表示装置900と、始動入賞口10と、を備えた弾球遊技機1において、 前記特別図柄表示部901の下側に設けられ、前記遊技領域6から進入した遊技球が左右方向に転動可能な第二転動通路面943を有する揺動通路部(第二転動通路空間)973と、 前記第二転動通路面943の右側の領域を含む領域に設けられた装飾部材910と、を備え、 前記揺動通路部(第二転動通路空間)973は、前記第二転動通路面943の両端943cが、それ以上遊技球が水平方向を転動できないようにするための垂直壁となっており、 前記垂直壁は、前記揺動通路部(第二転動通路空間)973と、前記装飾部材910のうち前記第二転動通路面943の右側に設けられる部分と、を当該垂直壁の上端まで仕切っている弾球遊技機1。」 (以下、この発明を「引用発明1」という。) (4) 対比 引用発明1における「弾球遊技機1」は、本願補正発明における「遊技機」に相当する。 引用発明1における「特別図柄表示部901」及び「始動入賞口」について、 前記(カ)には「また、前記遊技盤3の背面には、前記始動入賞口10に入球(入賞)した遊技球を検出する特別図柄変動開始スイッチ(始動入賞口センサー)が入球遊技球(入賞球)用通路に設けられており、該入球遊技球(入賞球)が検出されると、遊技の大当たりを判定するための大当たり判定用乱数が取得され、前記特別図柄柄表示部901で特別図柄の変動が開始される。」と記載されているので、 引用発明1における、前記「特別図柄の変動」を行う「特別図柄表示部901」と、遊技球が入賞した場合に前記「特別図柄の変動」を開始することになる前記「始動入賞口10」は、 本願補正発明における、「表示遊技を行う表示部」と、「遊技球の入賞により前記表示遊技の表示開始条件を付与可能な始動入賞口」に相当する。 またこのため、引用発明1における「特別図柄表示部901を有する表示装置900」は、本願補正発明における「表示遊技を行う表示部を有する可変表示装置」に相当する。 引用発明1における、「前記遊技領域6から進入した遊技球が左右方向に転動可能な第二転動通路面943」及びこれを有する「揺動通路部(第二転動通路空間)973」は、 本願補正発明における、「前記遊技領域から受け入れた遊技球が左右方向に転動可能な転動面」及びこれを有する「遊技球転動部」に相当する。 引用発明1における「前記第二転動通路面943の両端943cが、それ以上遊技球が水平方向を転動できないようにするための垂直壁となって」いる点について、 当該「それ以上遊技球が水平方向を転動できないようにするため」と、 引用文献1の図6の記載からみて、前記「垂直壁」のうち右側のものは「第二転動通路面943」の右端縁より垂直上方に立ち上がっている点から、 前記「垂直壁」は、「前記第二転動通路面943の両端943c」がなだらかに斜めに立ち上がる場合等と比較して、遊技球が乗り越えることを防止していると認められる。 よって、引用発明1における前記「垂直壁」のうち右側のものは、 本願補正発明における、「前記転動面の右端縁より上方に立ち上がる乗り越え防止壁」に相当する。 以上のことから、両者は、 <一致点> 「遊技球が流下する遊技領域に、表示遊技を行う表示部を有する可変表示装置と、遊技球の入賞により前記表示遊技の表示開始条件を付与可能な始動入賞口と、を備えた遊技機において、 前記表示部の下側に設けられ、前記遊技領域から受け入れた遊技球が左右方向に転動可能な転動面を有する遊技球転動部と、 前記転動面の右側に設けられた、所定の構成と、を備え、 前記遊技球転動部は、前記転動面の右端縁より上方に立ち上がる乗り越え防止壁を有し、 前記乗り越え防止壁は、前記遊技球転動部と、前記転動面の右側に設けられた前記所定の構成と、を当該乗り越え防止壁の壁面の上端まで仕切る遊技機。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点1> 本願補正発明における「転動面の右側」が「遊技球が流下しない領域」であるのに対し、 引用発明1における「揺動通路部(第二転動通路空間)973」の右側は遊技球が流下しない領域か否か不明である点。 <相違点2> 本願補正発明において、「前記転動面の右側」に設けられ、「遊技球転動部」と「乗り越え防止壁の壁面の上端まで仕切」られるものが、「表示遊技の演出動作を行う演出装置」であるのに対し、 引用発明1において、「揺動通路部(第二転動通路空間)973」の右側に設けられ、「揺動通路部(第二転動通路空間)973」と「垂直壁」の壁面の上端まで仕切られるものは、表示遊技の演出動作を行うか否か不明な「装飾部材910」である点。 <相違点3> 本願補正発明の「当該乗り越え防止壁の壁面の上端」について、「該上端の上方は開放されている」のに対し、 引用発明1における「垂直壁」の壁面の上端の上方は開放されているか否か不明である点。 (5) 判断 <相違点1>及び<相違点2>について、<相違点1>及び<相違点2>は密接に関連するので、あわせて判断する。 前置報告において引用文献2として引用された特開2005-323653号公報(以下「引用文献2」という。)には、 遊技球が流下する遊技領域に、変動表示ゲームを行う表示部21を有する表示装置20と、遊技球の入賞により前記変動表示ゲームを開始する条件を付与可能な始動入賞口と、を備えた遊技機において、(特に【0027】?【0028】、【0034】、【0132】) 前記表示部21の下側に設けられ、前記遊技領域から受け入れた遊技球が左右方向に転動可能なステージ481を有するステージ構成部材48と、(特に【0053】?【0055】) 装飾鎧部材44によって形成された遊技球が流下しない領域に設けられ、前記変動表示ゲームの動作演出を行う可動演出装置50であって、前記ステージ481の概ね右側に位置する第3キャラクタ部53を含むものと、(特に【0044】?【0047】、【0134】?【0136】) を備えた発明が開示されている。 前記「変動表示ゲーム」、「表示部21」、「表示装置20」、「ステージ481」、「ステージ構成部材48」及び「動作演出」は、 本願補正発明における「表示遊技」、「表示部」、「可変表示装置」、「転動面」、「遊技球転動部」及び「演出動作」に相当する。 前記「第3キャラクタ部53」及びこれを含む「可動演出装置50」は、転動面及び乗り越え防止壁との相対的な位置関係を除き、本願補正発明における「演出装置」に相当する。 よって、引用発明1における「装飾部材910」の一部であって「第二転動通路面943」と「垂直壁」の壁面の上端まで仕切られた部分に、引用文献2に開示された、「装飾鎧部材44」及び「可動演出装置50」を適用して、<相違点1>及び<相違点2>に係る構成とすることは、当業者が容易に想到しうるものである。 <相違点3>について、下記(A)又は(B)。 (A) 本願の請求項1に明記された事項ではないが、平成22年10月8日付け審判請求書に記載された作用効果bを考慮した上で、本願補正発明における「乗り越え防止壁の壁面の上端」の「上方」の「開放されている」空間を、「演出装置」が「演出動作」を行う空間であると解する。 引用文献2の全図面の記載から、前記「第3キャラクタ部53」を含む「可動演出装置50」が動作する範囲となる空間は、これらが動作した際にその他の部材と干渉しない程度に開放されていると認められる。 よって、引用発明1における「装飾部材910」の一部であって「第二転動通路面943」と「垂直壁」の壁面の上端まで仕切られた部分に、引用文献2に開示された、装飾部材とともに設けられる「可動演出装置50」を適用する際に、 当該「可動演出装置50」がその他の部材と干渉しないで動作できる程度に開放された、当該「可動演出装置50」が動作する範囲となる空間を、前記「垂直壁」の壁面の上端の上方に設定して、<相違点3>に係る構成とすることは、当業者が適宜なしうるものである。 (B) 本願補正発明における「演出動作」を行う「演出装置」は、「乗り越え防止壁」の右側に設けられたものであるが、 当該「演出装置」の「演出動作」が、「乗り越え防止壁の壁面の上端」の「上方」の「開放されている」空間で行われる点は、本願の請求項1には何ら記載されていないので、 本願補正発明における前記「開放されている」空間は、「演出装置」が「演出動作」を行う範囲であるものに限定されず、「演出装置」及びその「演出動作」とは無関係なものを含む。 よって、引用発明1における「垂直壁」の壁面の上端の上方を適宜開放して<相違点3>に係る構成とすることは、当業者が適宜なしうるものであり、その際に必然的に奏される効果も予測しうる程度のものである。 <相違点1>?<相違点3>についての判断のまとめ したがって、本願補正発明は、引用発明1及び引用文献2に開示された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、 本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。 (6) むすび 以上のとおり、本件補正は、前記改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1) 本願発明 平成22年10月8日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本出願に係る発明は、平成22年3月19日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲により特定されるとおりのものである。 そして、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「 【請求項1】 遊技球が流下する遊技領域に、表示遊技を行う表示部を有する可変表示装置と、遊技球の入賞により前記表示遊技の表示開始条件を付与可能な始動入賞口と、を備えた遊技機において、 前記表示部の下側に設けられ、前記遊技領域から受け入れた遊技球が左右方向に転動可能な転動面を有する遊技球転動部と、 前記転動面の右側に設けられ、前記表示遊技の演出動作を行う演出装置と、を備え、 前記遊技球転動部は、前記転動面の右端縁より上方に立ち上がる乗り越え防止壁を有し、 前記乗り越え防止壁は、前記遊技球転動部と、前記転動面の右側に設けられる前記演出装置と、を当該乗り越え防止壁の壁面の上端まで仕切り、該上端の上方は開放されていることを特徴とする遊技機。」 (2) 引用文献に記載された事項 平成22年4月19日付け拒絶理由通知書において引用文献1として引用された特開2005-152489号公報(引用文献1)に記載された事項及び引用文献1に開示された発明(引用発明1)は、前記2.に記載したとおりである。 (3) 対比 本願発明(補正前の請求項1に係る発明)は、前記2.で検討した本願補正発明(補正後の請求項1に係る発明)における、「演出装置」が設けられる位置である「転動面の右側の遊技球が流下しない領域」を、「転動面の右側」とするものであるから、 本願発明は、本願補正発明から、「演出装置」が設けられる位置が「遊技球が流下しない領域」である点を削除したものである。 この削除された点と、前記2.に記載した本願補正発明と引用発明1との対比を考慮すると、本願発明と引用発明1とは、 <一致点> 「遊技球が流下する遊技領域に、表示遊技を行う表示部を有する可変表示装置と、遊技球の入賞により前記表示遊技の表示開始条件を付与可能な始動入賞口と、を備えた遊技機において、 前記表示部の下側に設けられ、前記遊技領域から受け入れた遊技球が左右方向に転動可能な転動面を有する遊技球転動部と、 前記転動面の右側に設けられた、所定の構成と、を備え、 前記遊技球転動部は、前記転動面の右端縁より上方に立ち上がる乗り越え防止壁を有し、 前記乗り越え防止壁は、前記遊技球転動部と、前記転動面の右側に設けられた前記所定の構成と、を当該乗り越え防止壁の壁面の上端まで仕切る遊技機。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点1> 本願発明において、「前記転動面の右側に設けられ」、「遊技球転動部」と「乗り越え防止壁の壁面の上端まで仕切」られるものが、「表示遊技の演出動作を行う演出装置」であるのに対し、 引用発明1において、「揺動通路部(第二転動通路空間)973」の右側に設けられ、「揺動通路部(第二転動通路空間)973」と「垂直壁」の壁面の上端まで仕切られるものは、表示遊技の演出動作を行うか否か不明な「装飾部材910」である点。 <相違点2> 本願発明の「当該乗り越え防止壁の壁面の上端」について、「該上端の上方は開放されている」のに対し、 引用発明1における「垂直壁」の壁面の上端の上方は開放されているか否か不明である点。 (4) 判断 <相違点1>について 引用発明1における「装飾部材910」は、「第二転動通路面943」の右側であって、「垂直壁」の壁面の上端まで仕切られた、それ以上遊技球が転動できない領域に、その一部が設けられている。 平成22年4月19日付け拒絶理由通知書において引用文献2として引用された特開2004-105513号公報(以下「引用文献3」という。)には、 表示画面4gでの表示内容に関連した演出動作を行う可動演出装置800と、表示画面4gの下側に位置する遊技球転動部980と、(特に【0042】?【0043】) を備えた弾球遊技機の発明が開示されている。 前記引用文献3には、 前記可動演出装置800が装飾も行う点と、(特に【0069】、【0092】) 前記可動演出装置800の可動演出部材810が、遊技球と衝突しないように設けられる点と、(【0111】?【0114】) 前記可動演出装置800の可動演出部材810が、前記遊技球転動部980のうちの第1転動部981の右側に位置している点と、(特に図3) が開示されている。 よって、引用発明1における「装飾部材910」の一部であって、「第二転動通路面943」と「垂直壁」の壁面の上端まで仕切られた、それ以上遊技球が転動できない部分に、 引用文献3に開示された、装飾も行う「可動演出装置800」を適用して、<相違点1>に係る構成とすることは、当業者が容易に想到しうるものである。 <相違点2>について、下記(A)又は(B) (A) 本願の請求項1に明記された事項ではないが、平成22年3月19日付け意見書に記載された作用効果bを考慮した上で、本願発明における「乗り越え防止壁の壁面の上端」の「上方」の「開放されている」空間を、「演出装置」が「演出動作」を行う空間であると解する。 引用文献3には、前記「可動演出部材810」が前記「表示画面4g」の方向に変位することにより、その上半分が、前記「表示画面4g」の前面側であって前記「第1転動部981」の両端側の上方に位置する空間に突出する点(特に【0079】、図2、8)が開示されており、 当該突出する空間は、前記「可動演出部材810」と他の部材とが干渉しない程度に開放されていると認められる。 よって、引用発明1における「装飾部材910」の一部であって、「第二転動通路面943」と「垂直壁」の壁面の上端まで仕切られた、それ以上遊技球が転動できない部分に、 引用文献3に開示された、装飾も行う「可動演出装置800」を適用する際に、 前記「可動演出装置800」の「可動演出部材810」及び前記「垂直壁」を、両者が干渉しない程度にまで近づけて、<相違点2>に係る構成とすることは、当業者が適宜なしうるものである。 (B) 前記2.(5)<相違点3>(B) と同趣旨。 <相違点1>及び<相違点2>についての判断のまとめ したがって、本願発明は、引用発明1及び引用文献3に開示された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、 本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。 (5) むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用文献3に開示された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-07-15 |
結審通知日 | 2011-07-19 |
審決日 | 2011-08-02 |
出願番号 | 特願2009-209936(P2009-209936) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 村上 恵一 |
特許庁審判長 |
立川 功 |
特許庁審判官 |
吉村 尚 秋山 斉昭 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 鈴木 秀昭 |