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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02M |
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管理番号 | 1243689 |
審判番号 | 不服2009-2984 |
総通号数 | 143 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-02-09 |
確定日 | 2011-07-27 |
事件の表示 | 平成11年特許願第 22074号「自己推進ガスシステムにおけるガス送出制御手段」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月 8日出願公開、特開2000-220531〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件出願は、平成11年1月29日に出願されたものであって、平成20年4月11日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月14日付けで意見書及び明細書を補正する手続補正書が提出されたが、同年11月4日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、これに対し、平成21年2月9日に拒絶査定不服審判が請求され、同年3月10日付けで明細書を補正する手続補正書が提出され、同年11月9日付けで当審において書面による審尋がなされ、平成22年2月26日付けで回答書が提出され、その後、同年5月26日付けで当審において前記平成21年3月10日付けの手続補正を却下する決定がなされるとともに、同年6月11日付けで当審により拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年10月7日付けで意見書及び明細書を補正する手続補正書が提出されたものである。 第2.本願発明 本願請求項1ないし19に係る発明は、平成22年10月7日付けの手続補正に補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 高圧ガスを収容するガスシリンダと、前記ガスシリンダとエンジンとを接続して前記ガスシリンダからエンジンにガスを輸送する配管と、前記配管におけるガスの流れ及び圧力を制御する制御装置とを備え、 前記制御装置は、 前記ガスシリンダに結合される手動のバルブ又はコックと、 少なくとも一つの減圧バルブと、 ソレノイドバルブと、 高圧下にあるガスのインレット、所望の値まで減少した圧力下にあるガスのアウトレット、及び前記インレットから前記アウトレットまで形成されたガス導管が設けられたボディとを備えてなり、 これらが一体化されて単一の一体化ユニットを形成しており、 前記減圧バルブ及び前記ソレノイドバルブは、前記インレットにおいて前記ガスシリンダに、及び、前記アウトレットにおいて前記エンジンへの配管にそれぞれ取り付けられた前記ボディに接続されており、 前記一体化ユニットは、前記配管の始点の位置で、前記ガスシリンダに直接取り付けられている自己推進ガスエンジンシステム。」 第3.当審拒絶理由に引用された本件出願前に頒布された刊行物 1.特開平7-301359号公報(以下、「引用文献1」という。) (1)引用文献1の記載事項 ア.「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、加圧ガスを内蔵した容器と共に用いる弁に関し、さらに詳しく言えば、圧縮天然ガス動力車両に用いる粉砕に耐えるソレノイド作動弁に関するものである。」(段落【0001】) イ.「【0014】 【実施例】図1に示すように、圧縮天然ガスによって動力を受けるように適した車両10が概略的に示されている。車両10は1つまたはそれ以上の加圧容器またはシリンダ12を有している。各シリンダ12はシリンダ内に装着された2方向弁14を有している。各シリンダは253kg/cm^(2 )(3600psi)までの公称作業圧力に耐えるように設計されている。弁14は漏れなしにこれらの圧力を処理できるように設計されている。弁14は真鍮、鋼、ステンレス鋼、またはアルミニウムからつくられ、また、腐食に耐えるようにめっきまたはその他の表面処理をされている。」(段落【0014】) ウ.「【0016】エンジンからの指示によって、CNGは燃料ライン18にそって燃料注入装置20に流れる。設計によっては、エンジンはコンピュータ制御ガス燃料注入エンジンからなるか、または、燃料源を選択的に変えることによって1種以上の燃料で走行できるようになっていてもよい。 【0017】2方向弁14は図2に示されている。それはガス流通路24を有する弁本体を備えている。通路24は、加圧容器12の内部に連通する第1端26から弁本体を通り、出口30,30′(図8)に連通する第2端28まで延びている。本発明の2方向弁14の利点の1つは、出口30,30′が共通の燃料充填口(30)と燃料供給口(30′)として機能することである。両者はガス流通路24に連通し、これが車両の配管を単純化している。 【0018】図2に示すように、弁本体14は、弁を加圧容器12の首部の対応する組のねじにねじ止めされるようにする外ねじ32を備えている。弾性Oリング34は、弁本体22と加圧容器12との密封をするために設けられている。 【0019】弁座36がガス流通路24内に設けられている。また、ポペット本体40、ポペット・ヘッド42、ソレノイド・コア44からなるソレノイド弁38がガス流通路24内に定置される。ポペット本体40、ポペット・ヘッド42が通路24内で滑動できる。ソレノイド・コア44はポペット・ヘッド40を常態で押し付けている戻しばね46を有している。ポペット・ヘッド40は、弁座36を密封する硬質弾性Oリング41(図7)を有している。ソレノイド・コイル48は、作動されたときに、ソレノイド・コア44をばね46に押し付けポペット本体40から遠去け、これにより後に詳述するように弁座を開かせる。」(段落【0016】ないし【0019】) エ.「【0024】図2に再び戻って、本発明の2方向弁14は、弁座36と出口30との間でガス流通路24内に定置される選択できる手動鎖錠弁50を有している。手動鎖錠弁50は、弁および燃料供給装置の圧力試験を許し、それらが約253kg/cm^(2)(3600psi)までの公称動作圧力の範囲の下で漏れがないことを保証する。手動鎖錠弁50は、ガス流通路24内の第2弁座52に密封させるように、アレン・レンチ(図示せず)のような工具を用いて締め付けられる。図示するように、ねじ付き柄53はガス流通路24に着座するように弁座52に対して弾性ガスケット54を締め付けるように回転されてもよい。」(段落【0024】) (2)上記記載事項(1)及び図面から分かること カ.上記(1)ア.ないしウ.及び図1から、圧縮天然ガス動力車両は、加圧ガスを収容するシリンダ12と、前記シリンダ12とエンジンとを接続して前記シリンダ12からエンジンにガスを輸送する燃料ライン18と、前記燃料ライン18におけるガスの流れを制御する2方向弁14を備えることが分かる。 キ.上記(1)ウ.及びエ.並びに図1及び図2から、2方向弁14は、前記シリンダ12に結合される手動鎖錠弁50と、ソレノイド弁38と、シリンダ12の内部に連通する第一端26、ガスの出口30′、及び前記第一端26から前記出口30′まで形成されたガス流通路24が設けられた弁本体22とを備え、これらが一体化されて単一の一体化ユニット(以下、「一体化ユニット」という。)を形成することが分かる。 ク.上記(1)ウ.及びエ.並びに図1及び図2から、ソレノイド弁38は、第一端26においてシリンダ12に、及び、出口30′においてエンジンへの燃料ライン18にそれぞれ取り付けられた弁本体22に接続されていることが分かる。 ケ.上記(1)ウ.並びに図1及び図2から、一体化ユニットは、燃料ライン18の始点の位置で、シリンダ12に直接取り付けられていることが分かる。 (3)引用文献1記載の発明 上記(1)及び(2)並びに図面によると、引用文献1には、 「加圧ガスを収容するシリンダ12と、前記シリンダ12とエンジンとを接続して前記シリンダ12からエンジンにガスを輸送する燃料ライン18と、前記燃料ライン18におけるガスの流れを制御する2方向弁14とを備え、 前記2方向弁14は、 前記シリンダ12に結合される手動鎖錠弁50と、 ソレノイド弁38と、 シリンダ12の内部に連通する第一端26、ガスの出口30′、及び前記第一端26から前記出口30′まで形成されたガス流通路24が設けられた弁本体22とを備えてなり、 これらが一体化されて単一の一体化ユニットを形成しており、 前記ソレノイド弁38は、前記第一端26において前記シリンダ12に、及び、前記出口30′において前記エンジンへの燃料ライン18にそれぞれ取り付けられた前記弁本体22に接続されており、 前記一体化ユニットは、前記燃料ライン18の始点の位置で、前記シリンダ12に直接取り付けられている圧縮天然ガス動力車両。」という発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が記載されている。 2.特開平7-259686号公報(以下、「引用文献2」という。) (1)引用文献2の記載事項 サ.「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、例えば自動車等のエンジンに燃料を噴射する燃料噴射装置において、特にメタンを主成分とする気体燃料を噴射する場合に有効な気体-液体燃料噴射制御装置に関する。」(段落【0001】) シ.「【0025】13は自動車に搭載されたガスボンベを示し、該ガスボンベ13内には圧縮天然ガス(CNG)等の気体燃料が、例えば200kg/cm^(2)程度の圧力をもって貯えられている。14はガスボンベ13に付設された気体用圧力レギュレータで、該気体用圧力レギュレータ14は後述の気体燃料管路16等を介して燃料噴射弁20に供給される気体燃料の圧力を、例えば7?8kg/cm^(2)とするように圧力制御している。15は気体用圧力レギュレータ14に付設された圧力センサを示し、該圧力センサ15は、例えばガスボンベ13内の気体燃料の圧力が予め設定された設定圧(例えば7?8kg/cm^(2))未満に低下すると、後述のコントロールユニット18に検出信号S_(3)を出力する。 【0026】16は一端側が気体用圧力レギュレータ14に接続され、他端側が燃料噴射弁20に接続された気体燃料管路を示し、ガスボンベ13内に貯えられた気体燃料は、気体用圧力レギュレータ14によって減圧された後、気体燃料管路16を介して燃料噴射弁20に供給される。 【0027】17は気体燃料管路16の途中に設けられた気体用弁手段としての気体用電磁弁で、該気体用電磁弁17はコントロールユニット18からの制御信号S_(4)に応じてON、OFFすることにより気体燃料管路16を開、閉するようになっている。 【0028】18は自動車に搭載されたコントロールユニットで、該コントロールユニット18は、例えばマイクロコンピュータ等によって構成されている。そして、該コントロールユニット18の入力側は、エンジンスイッチ、各種センサ、スイッチ類(図示せず)と接続されると共に前記圧力センサ15と接続され、検出信号S_(3)が入力されるようになっている。」(段落【0025】ないし【0028】) ス.「【0034】20はエンジン19に搭載された燃料噴射弁を示し、該燃料噴射弁20は、例えばエンジン19のシリンダヘッド(図示せず)に1気筒に対して1つ設けられ、エンジン19の燃焼室内に向けて、燃料タンク1内に貯えられた液体燃料またはガスボンベ13内に貯えられた気体燃料を選択的に噴射するようになっている。」(段落【0034】) (2)上記記載事項(1)及び図面から分かること タ.上記(1)サ.ないしス.並びに図1及び図2から、圧縮天然ガスを利用するエンジン19を搭載する自動車は、圧縮天然ガスを収容するガスボンベ13と、前記ガスボンベ13とエンジン19とを接続して前記ガスボンベ13からエンジン19に気体燃料である天然ガスを輸送する気体燃料管路16と、気体燃料管路16における天然ガスの圧力を制御する気体用圧力レギュレータ14とを備えることが分かる。 チ.上記(1)シ.及び図2から、気体用圧力レギュレータ14は、前記気体燃料管路16の始点の位置で、前記ガスボンベ13に直接取り付けられていることが分かる。 ツ.上記(1)シ.及び図2から、 前記気体用圧力レギュレータ14は、圧縮天然ガスの圧力が200kg/cm^(2)である入口側において前記ガスボンベ13に、及び、天然ガスの圧力が7?8kg/cm^(2)である出口側において前記エンジン19への気体燃料管路16にそれぞれ取り付けられことが分かる。 (3)引用文献2記載の発明 上記(1)及び(2)並びに図面によると、引用文献2には、 「圧縮天然ガスを収容するガスボンベ13と、前記ガスボンベ13とエンジン19とを接続して前記ガスボンベ13からエンジン19に天然ガスを輸送する気体燃料管路16と、気体燃料管路16における天然ガスの圧力を制御する気体用圧力レギュレータ14とを備え、 前記気体用圧力レギュレータ14は、圧縮天然ガスの圧力が200kg/cm^(2)である入口側において前記ガスボンベ13に、及び、天然ガスの圧力が7?8kg/cm^(2)である出口側において前記エンジン19への気体燃料管路16にそれぞれ取り付けられ、 前記気体用圧力レギュレータ14は、前記気体燃料管路16の始点の位置で、前記ガスボンベ13に直接取り付けられている圧縮天然ガスを利用するエンジン19を搭載する自動車。」という発明(以下、「引用文献2記載の発明」という。)が記載されている。 3.特開昭63-41651号公報(以下、「引用文献3」という。) (1)引用文献3の記載事項 ナ.「産業上の利用分野 本発明は、圧縮天然ガス(CNG)等の高圧ガスを所定圧力に減圧するガス燃料用レギュレータの安全装置に関する。 従来の技術 近年、石油に対する代替エネルギー源として天然ガスが見直され、これを自動車用燃料として活用しようという動きが特に天然ガス産出国で活発化している。天然ガスは沸点の低いメタンを主成分としており、この点が比較的沸点の高いプロパン、ブタン等を主成分とする石油ガスとの主な相違点である。そのため、天然ガスを自動車用燃料とする場合には、従来から自動車用燃料として一部で使用されているLPG(液化石油ガス)のように常温下で液体貯蔵することが困難であり、圧縮天然ガス(Compressed Natural Gas:以下略してCNGという)として貯蔵して用いるのが一般的である。」(第2ページ右下欄第2ないし19行) ニ.「第3図において、高圧レギュレータは燃料遮断弁9の取付けられた高圧側ボディ11と減圧のための各部材の取付けられた低圧側ボディ13とから構成される。高圧側ボデイ11には燃料遮断室17が形成され、この燃料遮断室17は、図示しない高圧ボンベからの高圧配管に接続される第1高圧ガス通路19と低圧側ボディ13内に形成された減圧室21に通じる第2高圧ガス通路23とに導通している。」(第2ページ左上欄第15行ないし右上欄第3行) ヌ.「第1図は本発明に係るガス燃料用レギュレータの安全装置の一部破断正面図であり、高圧レギュレータ1の断面構造は、第3図に示す従来装置と概略同様であるので、高圧レギュレータ1の詳細構造については、本実施例においてはその説明を省略することにする。」(第3ページ右上欄第18行ないし左下欄第3行) ネ.「またこのレギュレータ1には、例えばソレノイド弁等から構成される燃料遮断弁9が取付けられており、燃料の供給を必要としないようなとき、例えばイグニッションキーオフ時には、燃料遮断弁9により燃料通路が遮断される仕組となっている。 一方、安全弁60が設けられている通路61より分岐された通路63には圧力センサ64が銅製ワッシャー65のシールのもとに通路63の端部にねじ込まれている。66はマイクロコンピュータ等から構成される制御回路に接続するためのコネクタである。 第2図を参照すると、高圧レギュレータ1を中心とした燃料供給系の概略構成図が示されている。71は高圧ガスボンベであり、CNGが例えば200Kg/cm^(2)の高圧で充填されている。高圧ボンベ71内のCNGは、シリンダ弁72、高圧配管73を介して高圧レギュレータ1に導入され、この高圧レギュレータにより例えば4Kg/cm^(2)に減圧される。 圧力センサ64は制御回路70に接続されており、高圧レギュレータ1の減圧室21内の圧力が、例えば圧力センサ64の設定圧力である10Kg/cm^(2)以上になった場合には、圧力センサ64から制御回路70に信号が出力され、制御回路70はリレー74を介して燃料遮断弁9の電磁コイルに通電し、高圧燃料通路を遮断する。」(第3ページ左下欄第15行ないし右下欄第20行) ノ.「高圧レギュレータ1は通路75を介して低圧レギュレータ76に接続されており、燃料圧力はこの低圧レギュレータ76により例えば大気圧に減圧される。低圧レギュレータ76は通路77を介して混合器80に接続されており、アクチュエータ78の開度に応じて低圧燃料ガスが混合器80のベンチュリ一部79に供給される。混合器80はエンジン81の吸気管82に接続されており、混合器80により混合されたガスと空気との混合気がエンジン81の燃焼室に供給される。吸気管82内の吸気圧力は、導管83を介して吸気圧センサ84により検知され、制御回路70に人力される。85はディストリビュータであり、点火進角信号が制御回路70に入カされる。」(第4ページ左上欄第13行ないし右上欄第6行) (2)上記記載事項(1)及び図面から分かること ハ.上記(1)ナ.ないしノ.及び図1ないし図3から、圧縮天然ガスを燃料とした自動車は、圧縮天然ガスを収容する高圧ボンベ71と、前記高圧ボンベ71とエンジン81とを接続して前記高圧ボンベ71からエンジン81に天然ガスを輸送する高圧配管73、通路75及び通路77と、前記高圧配管73、通路75及び通路77における天然ガスの流れ及び圧力を制御するソレノイド等から構成される燃料遮断弁9及び高圧レギュレータ1とを備えることが分かる。 ヒ.上記(1)ニ.ないしネ.並びに図1及び図3から、、ソレノイド等から構成される燃料遮断弁9及び高圧レギュレータ1とが一体化されて単一の一体化ユニットを形成していることが分かる。 (3)引用文献3記載の発明 上記(1)及び(2)並びに図面によると、引用文献3には、 「圧縮天然ガスを収容する高圧ボンベ71と、前記高圧ボンベ71とエンジン81とを接続して前記高圧ボンベ71からエンジン81に天然ガスを輸送する高圧配管73、通路75及び通路77と、前記高圧配管73、通路75及び通路77における天然ガスの流れ及び圧力を制御するソレノイド等から構成される燃料遮断弁9及び高圧レギュレータ1とを備え、 ソレノイド等から構成される燃料遮断弁9及び高圧レギュレータ1とが一体化されて単一の一体化ユニットを形成した圧縮天然ガスを燃料とした自動車。」という発明(以下、「引用文献3記載の発明」という。)が記載されている。 第4.対比 本願発明と引用文献1記載の発明を対比すると、引用文献1記載の発明における「加圧ガス」、「シリンダ12」、「燃料ライン18」、「2方向弁14」、「手動鎖錠弁50」、「ソレノイド弁38」、「ガス流通路24」、「弁本体22」及び「圧縮天然ガス動力車両」は、それらの機能や技術的意義からみて、本願発明における「高圧ガス」、「ガスシリンダ」、「配管」、「制御装置」、「手動のバルブ又はコック」、「ソレノイドバルブ」、「ガス導管」、「ボディ」及び「自己推進ガスエンジンシステム」にそれぞれ相当する。 また、引用文献1記載の発明における「シリンダ12の内部に連通する第一端26」は、「ガス流通路24」の第一端が、加圧された「シリンダ12」の内部と接続され、ガス流通路24におけるガスの流入口となるものであるから、本願発明における「高圧下にあるガスのインレット」に相当し、引用文献1記載の発明における「ガスの出口30′」は、出口がガス流通路24におけるガスの流出口となるものであるから、本願発明における「ガスのアウトレット」に相当する。 したがって、本願発明と引用文献1記載の発明は、 「高圧ガスを収容するガスシリンダと、前記ガスシリンダとエンジンとを接続して前記ガスシリンダからエンジンにガスを輸送する配管と、前記配管におけるガスの流れを制御する制御装置とを備え、 前記制御装置は、 前記ガスシリンダに結合される手動のバルブ又はコックと、 ソレノイドバルブと、 高圧下にあるガスのインレット、ガスのアウトレット、及び前記インレットから前記アウトレットまで形成されたガス導管が設けられたボディとを備えてなり、 これらが一体化されて単一の一体化ユニットを形成しており、 前記ソレノイドバルブは、前記インレットにおいて前記ガスシリンダに、及び、前記アウトレットにおいて前記エンジンへの配管にそれぞれ取り付けられた前記ボディに接続されており、 前記一体化ユニットは、前記配管の始点の位置で、前記ガスシリンダに直接取り付けられている自己推進ガスエンジンシステム。」 という点で一致し、次の点で相違している。 (相違点) 本願発明においては、ガスの流れ及び圧力を制御する制御装置を構成する減圧バルブが、配管の始点の位置において、手動のバルブ又はコック、ソレノイドバルブ、及び、インレットにおいてガスシリンダに、アウトレットにおいてエンジンへの配管にそれぞれ取り付けられるガス導管が設けられたボディとともに一体化ユニットとして形成され、ボディに接続された減圧バルブがガス導管のアウトレットにおけるガスの圧力を所望の値まで減少させるものであるのに対して、引用文献1記載の発明においては、手動のバルブ又はコック、ソレノイドバルブ、及び、インレットにおいてガスシリンダに、アウトレットにおいてエンジンへの配管にそれぞれ取り付けられるガス導管が設けられたボディが一体化ユニットを形成しているものの、ガスの圧力を制御する減圧バルブに関する事項が不明である点(以下、「相違点」という。)。 第5.当審の判断 上記相違点について検討する。 本願発明と引用文献2記載の発明を対比すると、引用文献2記載の発明における「圧縮天然ガス」、「ガスボンベ13」、「天然ガス」、「気体燃料管路16」、「気体用圧力レギュレータ14」及び「圧縮天然ガスを利用するエンジン19を搭載する自動車」は、それらの機能や技術的意義からみて、本願発明における「高圧ガス」、「ガスシリンダ」、「ガス」、「配管」、「少なくとも一つの減圧バルブ」及び「自己推進ガスエンジンシステム」にそれぞれ相当する。 また、引用文献2記載の発明における「圧縮天然ガスの圧力が200kg/cm^(2)である入口側」及び「天然ガスの圧力が7?8kg/cm^(2)である出口側」は、入口側の圧縮天然ガスの圧力が200kg/cm^(2)という高圧状態から、出口側の天然ガスの圧力が7?8kg/cm^(2)まで減少するものであるから、本願発明における「高圧下にあるガスのインレット」及び「所望の値まで減少した圧力下にあるガスのアウトレット」に相当する。 よって、引用文献2記載の発明は、本願発明の発明特定事項の用語を用いて表現すると、 「高圧ガスを収容するガスシリンダと、前記ガスシリンダとエンジンとを接続して前記ガスシリンダからエンジンにガスを輸送する配管と、配管におけるガスの圧力を制御する少なくとも一つの減圧バルブとを備え、 前記少なくとも一つの減圧バルブは、高圧下にあるガスのインレットにおいて前記ガスシリンダに、及び、所望の値まで減少した圧力下にあるガスのアウトレットにおいて前記エンジンへの配管にそれぞれ取り付けられ、 前記少なくとも一つの減圧バルブは、前記配管の始点の位置で、前記ガスシリンダに直接取り付けられている自己推進ガスエンジンシステム。」という発明であるといえる。 また、本願発明と引用文献3記載の発明を対比すると、引用文献3記載の発明における「圧縮天然ガス」、「高圧ボンベ71」、「天然ガス」、「高圧配管73、通路75及び通路77」、「ソレノイド等から構成される燃料遮断弁9」、「高圧レギュレータ1」及び「天然ガスを燃料とした自動車」は、それらの機能や技術的意義からみて、本願発明における「高圧ガス」、「ガスシリンダ」、「ガス」、「配管」、「ソレノイドバルブ」、「減圧バルブ」及び「自己推進ガスエンジンシステム」にそれぞれ相当する。 よって、引用文献3記載の発明は、本願発明の発明特定事項の用語を用いて表現すると、 「高圧ガスを収容するガスシリンダと、前記ガスシリンダとエンジンエンジンとを接続して前記ガスシリンダからエンジンにガスを輸送する配管と、配管におけるガスの流れ及び圧力を制御するソレノイドバルブ及び減圧バルブとを備え、 ソレノイドバルブ及び減圧バルブとが一体化されて単一の一体化ユニットを形成した自己推進ガスエンジンシステム。」という発明であるといえ、この引用文献3記載の発明から、「自己推進ガスエンジンシステムにおいて、ソレノイドバルブと減圧バルブとを近接して設けて一体化ユニットを形成する。」という技術思想(以下、「引用文献3記載の技術思想」という。)を導き出すことができる。 引用文献1記載の発明、引用文献2記載の発明及び引用文献3記載の技術思想はいずれも自己推進ガスエンジンシステムに関するものであること、及び、引用文献1には、減圧バルブについての具体的な記載はないものの、ガスシリンダからエンジンに至るまでの配管のいずれかの場所に減圧バルブを設けることは明らかであることから、引用文献3の技術思想を参酌しつつ引用文献1記載の発明に引用文献2記載の発明を適用することにより、引用文献1記載の発明のソレノイドバルブが取り付けられたボディのガス導管に、引用文献2記載の発明の減圧バルブを接続するようにして、「ガスの圧力を制御する減圧バルブが、ガスシリンダの始点の位置において、手動のバルブ又はコック、ソレノイドバルブ、及び、ガス導管が設けられたボディととともに一体化ユニットとして形成され、ボディに接続された減圧バルブがガス導管のアウトレットにおけるガスの圧力を所望の値まで減少させるもの」として、本願発明の相違点に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明の作用効果も、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の発明及び引用文献3記載の技術思想から当業者が予測できる範囲のものである。 第6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の発明及び引用文献3記載の技術思想に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-02-17 |
結審通知日 | 2011-02-22 |
審決日 | 2011-03-11 |
出願番号 | 特願平11-22074 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F02M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山本 信平、水野 治彦 |
特許庁審判長 |
深澤 幹朗 |
特許庁審判官 |
西山 真二 中川 隆司 |
発明の名称 | 自己推進ガスシステムにおけるガス送出制御手段 |
代理人 | 三枝 英二 |