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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B05D
管理番号 1243698
審判番号 不服2008-25888  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-09 
確定日 2011-09-16 
事件の表示 特願2004-49807「回路パターン付き回路基板の紫外線硬化樹脂硬化乾燥方法及び回路パターン付き回路基板用紫外線硬化樹脂硬化乾燥装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年9月8日出願公開、特開2005-238073〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成16年2月25日の出願であって、平成20年9月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年10月9日に拒絶査定不服審判が請求され、平成20年11月10日付けで特許請求の範囲と明細書を対象とする手続補正がなされたものである。

2 平成20年11月10日付けの特許請求の範囲と明細書を対象とする手続補正(以下、「本件手続補正」という。)についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
本件手続補正を却下する。
〔理由〕
(1)補正後の本願発明
本件手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】回路パターンが形成され紫外線硬化樹脂が塗布された回路基板を搬送体で搬送し、搬送体から離して配置された紫外線照射ランプからの光を、外周面が可撓性を有する部材で被覆された光伝送路により伝送してその出射端から前記搬送中の回路基板に照射して紫外線照射ランプの熱が回路基板に伝わらないようにし、紫外線照射ランプと前記回路基板の間における前記光伝送路の外周に外側に突出して配置された紫外線遮光性及び断熱性のある遮蔽板で紫外線及び紫外線照射ランプの熱を遮蔽して、紫外線照射ランプからの紫外線及び熱が光伝送路の外周から前記搬送中の回路基板に照射されないようにして、前記回路基板に塗布されている紫外線硬化樹脂を光伝送路から照射される前記紫外線で硬化乾燥させることを特徴とする回路パターン付き回路基板の紫外線硬化樹脂硬化乾燥方法。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である「紫外線硬化樹脂塗布のワーク」を「回路パターンが形成され紫外線硬化樹脂が塗布された回路基板」と限定し、同請求項1に記載された発明を特定する事項である「紫外線照射ランプ」について「搬送体から離して配置された」との限定事項を付加し、同請求項1に記載された発明を特定する事項である「光伝送路」について「外周面が可撓性を有する部材で被覆された」との限定事項を付加し、同請求項1に記載された発明を特定する事項である「遮蔽板」について「光伝送路の外周に外側に突出して配置された」との限定事項及び「紫外線照射ランプの熱を遮蔽」との限定事項を付加し、同請求項1に記載された発明を特定する事項である「紫外線硬化樹脂乾燥方法」について「硬化」との限定事項及び「前記回路基板に塗布されている紫外線硬化樹脂を光伝送路から照射される前記紫外線で硬化乾燥させる」との限定事項を付加することを含むものであり、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではない。
したがって、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-50007号公報(以下、「引用例」という。)には、次の記載がある。
「【請求項1】 紫外線発生手段、及び該紫外線発生手段で発生した紫外線を紫外線硬化樹脂が塗布されたウエブに連続的に照射できるようにするためのウエブ搬送手段からなる紫外線照射装置において、該紫外線発生手段で発生した紫外線を光ファイバー中を伝播させた後に該ウエブに照射することを特徴とする紫外線照射装置。」
「【0005】【発明が解決しようとする課題】従来から使用されている管状の高圧水銀灯やメタルハライドランプは点灯すると紫外線の他に熱線を発生し、また、それ自身も800?1000℃に温度にまで発熱する。このため、熱線カットフィルターやコールドミラー等を使用してランプハウス21内の雰囲気温度を上昇させないようにしたり、ウエブに熱線が直接に照射されないように工夫している。しかしながらこのような工夫をしても、ランプハウス21の雰囲気が200℃以上の温度となってしまい、ウエブ22の変形等が生じたり、薄いプラスチックフィルムなどが溶融切断してしまう等の問題があった。…」
「【0007】この発明は以上のような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、プラスチックフィルム、紙、剥離フィルム、金属箔等の基材に塗布された紫外線硬化樹脂を連続的に硬化させる際に、基材や紫外線硬化樹脂を高い温度にさらすことなく、装置の小型化が可能な紫外線照射装置を提供することを目的とする。」
「【0009】即ち、この発明の紫外線照射装置は、紫外線硬化樹脂が塗布されたウエブを高温のランプハウスの中に従来のように連続的に通過させることなく、ウエブに対して熱的影響を与えない場所で紫外線を発生させ、発生した紫外線を光ファイバーの中を伝播させた後にウエブに照射することにより、紫外線発生に伴って発生する熱の影響をウエブが受けないようにすることを特徴とする。」
「【0014】【作用】この発明の紫外線照射装置においては、紫外線硬化樹脂が塗布されたウエブをウエブ搬送手段で一定の速度で搬送する。その際に、ウエブに対して熱的影響を与えない場所で紫外線発生手段により紫外線を発生させる。そして、発生した紫外線を光ファイバー中を伝播させて、搬送されているウエブにまで導き、光ファイバーの末端から出射する紫外線でウエブを照射する。これにより、紫外線発生手段で紫外線を発生させる際に伴って発生する熱の影響をウエブが受けないようにすることが可能となる。」
「【0016】図1は、この発明の紫外線照射装置の一つの実施例を示す概略説明図である。この実施例の紫外線照射装置においては、紫外線発生部10の中に、紫外線を発生させる高圧水銀ランプ1、その回りを囲むように配設されている集光コールドミラー2、光フィルター3、シャッター4が収容され、紫外線発生部10から集光した紫外線を、紫外線硬化樹脂が塗布されたウエブ11まで導く光ファイバー5が配設されている。光ファイバー5のウエブ側の出射末端6は、ウエブ11の搬送方向に直交する方向(幅方向)に列状に配列されている。なお、ウエブ11はロールツーロール搬送装置(図示せず)で、図中矢印の方向へ搬送される。
【0017】このような構成の紫外線照射装置尾においては、ランプ1で発生した光が、図中、点線矢印に示すように光ファイバー5に集光される。この時、赤外線など等のウエブを加熱するような不要な波長の光が光フィルターでカットされ、赤外線等の熱線は、図中波線矢印のように反射する。また、集光コールドミラーに入射した紫外線は反射して、光ファイバー5に集光されるが、赤外線等の熱線は集光コールドミラーを透過する。
【0018】集光された紫外線は、光ファイバー5に入射するまえにシャッター4を通過する。従って、シャッターの開閉によりウエブ11を瞬時に安定な紫外線で照射することができる。こうして、ウエブ11に塗布された紫外線硬化樹脂を連続的に硬化することができる。」
以上の記載及び図1によれば、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。
「紫外線硬化樹脂が塗布されたウエブを搬送手段で搬送し、ウエブに対して熱的影響を与えない場所に配置された紫外線を発生させる高圧水銀ランプから発生した紫外線を光ファイバー中を伝播させてその出射末端から搬送中のウエブに照射して、高圧水銀ランプの熱の影響をウエブが受けないようにし、ウエブに塗布されている紫外線硬化樹脂を光ファイバーから照射される紫外線で硬化させる、紫外線硬化樹脂が塗布されたウエブの紫外線硬化樹脂硬化方法。」

(3)対比
本願補正発明と引用例記載の発明とを対比する。
引用例記載の発明の「搬送手段」、「高圧水銀ランプ」、「光ファイバー」、「伝播」、「出射末端」及び「紫外線硬化樹脂硬化方法」は、それぞれ本願補正発明の「搬送体」、「紫外線照射ランプ」、「光伝送路」、「伝送」、「出射端」及び「紫外線硬化樹脂硬化乾燥方法」に相当する。
また、引用例記載の発明の「ウエブ」は搬送手段で搬送され、搬送中に紫外線が照射されるので、引用例記載の発明の「ウエブに対して熱的影響を与えない場所に配置された」は、本願補正発明の「搬送体から離して配置された」に相当する。
さらに、本願補正発明の「回路パターンが形成され紫外線硬化樹脂が塗布された回路基板」と引用例記載の発明の「紫外線硬化樹脂が塗布されたウエブ」は、共に、紫外線硬化樹脂が塗布された基材であるということができ、引用例記載の発明の「高圧水銀ランプの熱の影響を」「受けない」は、本願補正発明の「紫外線照射ランプの熱が」「伝わらない」に相当するといえるから、本願補正発明と引用例記載の発明とは、
「紫外線硬化樹脂が塗布された基材を搬送体で搬送し、搬送体から離して配置された紫外線照射ランプからの光を、光伝送路により伝送してその出射端から搬送中の基材に照射して紫外線照射ランプの熱が基材に伝わらないようにし、基材に塗布されている紫外線硬化樹脂を光伝送路から照射される紫外線で硬化乾燥させる基材の紫外線硬化樹脂硬化乾燥方法」
である点で一致し、次の点で相違する。
《相違点1》
紫外線硬化樹脂が塗布された基材が、本願補正発明では、回路パターンが形成され紫外線硬化樹脂が塗布された回路基板であるのに対して、引用例記載の発明では、紫外線硬化樹脂が塗布されたウエブである点。
《相違点2》
本願補正発明では、光伝送路の外周面が可撓性を有する部材で被覆されているのに対して、引用例記載の発明では、そのように特定されていない点。
《相違点3》
本願補正発明では、紫外線照射ランプと基材の間における光伝送路の外周に外側に突出して配置された紫外線遮光性及び断熱性のある遮蔽板で紫外線及び紫外線照射ランプの熱を遮蔽して、紫外線照射ランプからの紫外線及び熱が光伝送路の外周から搬送中の基材に照射されないようにしているのに対して、引用例記載の発明では、そのように特定されていない点。

(4)相違点の検討
そこで、上記各相違点について検討する。
《相違点1について》
本願補正発明は、回路パターンが形成され紫外線硬化樹脂を塗布した回路基板の紫外線硬化樹脂硬化乾燥方法において、紫外線照射ランプからの熱による回路基板の反りや歪みを防止するために(本願明細書の段落【0003】、【0004】参照。)、搬送体から離して配置された紫外線照射ランプからの光を、光伝送路により伝送してその出射端から搬送中の回路基板に照射して、紫外線照射ランプの熱が基材に伝わらないようにしたものであるところ、引用例記載の発明は、回路パターンが形成され紫外線硬化樹脂を塗布した回路基板ではないものの、紫外線硬化樹脂が塗布されたウエブの紫外線硬化樹脂を硬化させる際に、紫外線照射ランプ(高圧水銀ランプ)の熱によるウエブの変形等が生じないようにするために、本願補正発明と同じ上記事項を備えているものである。
一方、回路パターンが形成され紫外線硬化樹脂を塗布した回路基板に紫外線を照射することにより、紫外線硬化樹脂を硬化乾燥させる、回路パターン付き回路基板の紫外線硬化樹脂硬化乾燥方法自体は、従来から広く知られているから、引用例記載の発明である紫外線硬化樹脂硬化乾燥方法を、回路パターン付き回路基板の紫外線硬化樹脂硬化乾燥に用いることは、当業者であれば容易に想到し得たことであり、相違点1に係る本願補正発明の事項とすることに格別の困難性は認められない。

《相違点2について》
光ファイバーから成る光伝送路の外周面を、可撓性を有する部材で被覆して補強することは一般に行われていることであり、引用例1記載の発明において、光ファイバーから成る光伝送路の外周面を、可撓性を有する部材で被覆して相違点2に係る本願補正発明の事項とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

《相違点3について》
引用例記載の発明も、紫外線照射ランプ(高圧水銀ランプ)の熱の影響をウエブが受けないようにしているから、引用例記載の発明において、紫外線照射ランプからの紫外線や熱が光伝送路の外周から搬送中の基材に照射されないように、それらを遮蔽する遮蔽板を設けて相違点3に係る本願補正発明の事項とすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。

しかも、全体として本願補正発明が奏する効果も、引用例記載の発明から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)まとめ
以上のとおり、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件手続補正は却下されたので、本願の請求項1ないし請求項4に係る発明は、平成20年2月8日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。
「【請求項1】搬送体で搬送される紫外線硬化樹脂塗布のワークに、紫外線照射ランプの光を光伝送路により伝送してその出射端からワークに照射して紫外線照射ランプの熱がワークに伝わらないようにし、紫外線照射ランプとワークの間に配置された紫外線遮光性及び断熱性のある遮蔽板で紫外線を遮蔽して紫外線が光伝送路の外からワークに照射されないようにすることを特徴とする紫外線硬化樹脂乾燥方法。」
(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明1」という。)

(2)引用例の記載事項
原査定の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記2(2)に記載したとおりである。

(3)対比・検討
本願発明1と引用例記載の発明とを対比する。
引用例記載の発明の「紫外線硬化樹脂が塗布されたウエブ」、「搬送手段」、「高圧水銀ランプ」、「光ファイバー」、「伝播」、「出射末端」及び「紫外線硬化樹脂硬化方法」は、それぞれ本願発明1の「紫外線硬化樹脂塗布のワーク」、「搬送体」、「紫外線照射ランプ」、「光伝送路」、「伝送」、「出射端」及び「紫外線硬化樹脂乾燥方法」に相当する。
また、引用例記載の発明の「高圧水銀ランプの熱の影響を」「受けない」は、本願発明1の「紫外線照射ランプの熱が」「伝わらない」に相当するといえるから、本願発明1と引用例記載の発明とは、
「搬送体で搬送される紫外線硬化樹脂塗布のワークに、紫外線照射ランプの光を光伝送路により伝送してその出射端からワークに照射して紫外線照射ランプの熱がワークに伝わらないようにする紫外線硬化樹脂乾燥方法」
である点で一致し、次の点で相違する。
《相違点》
本願発明1では、紫外線照射ランプとワークの間に配置された紫外線遮光性及び断熱性のある遮蔽板で紫外線を遮蔽して紫外線が光伝送路の外からワークに照射されないようにするのに対して、引用例記載の発明では、そのように特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
引用例記載の発明も、紫外線照射ランプ(高圧水銀ランプ)の熱の影響をワーク(ウエブ)が受けないようにしているから、引用例記載の発明において、光が光伝送路の外からワークに照射されないように、紫外線遮光性や断熱性のある遮蔽板により光を遮蔽するようにして相違点に係る本願発明1の事項とすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。

そして、本願発明1が奏する効果も、引用例記載の発明から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明1は、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-13 
結審通知日 2011-07-19 
審決日 2011-08-01 
出願番号 特願2004-49807(P2004-49807)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B05D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横島 隆裕  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 鳥居 稔
亀田 貴志
発明の名称 回路パターン付き回路基板の紫外線硬化樹脂硬化乾燥方法及び回路パターン付き回路基板用紫外線硬化樹脂硬化乾燥装置  
代理人 小林 正治  

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