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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1243707 |
審判番号 | 不服2010-8666 |
総通号数 | 143 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-04-23 |
確定日 | 2011-09-16 |
事件の表示 | 平成11年特許願第295376号「基板吸着プレート」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月27日出願公開、特開2001-118913〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本願発明 本願は、平成11年10月18日の出願であって、平成22年1月29日付けで拒絶査定がなされた後、平成22年4月23日に審判請求がなされ、同時に手続補正書が提出された後、当審の平成23年4月11日付けの拒絶の理由に対して、平成23年5月2日付けで意見書とともに明細書に関する手続補正書が提出されたものである。 本願の特許請求の範囲の請求項に係る発明は、平成23年5月2日付け手続補正書によって補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明は、次のとおりである。(以下「本願発明」という。) 「塗布工程で基板を真空吸着により固定するグラナイト製の基板吸着プレートにおいて、 前記基板吸着プレートの表面に多数の円形の凹部を形成し、 前記円形の凹部の直径を1?2mm、前記円形の凹部間の間隔を1.5?4mmとし、 前記多数の円形の凹部の一部に吸引孔を形成し、 前記基板吸着プレートの平面度を維持しながら前記基板との接触面積を減少させるようにしたことを特徴とする基板吸着プレート。」 2 引用刊行物記載の発明 これに対して、当審での平成23年4月11日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成11年5月28日に頒布された特開平11-145262号公報(以下「引用刊行物1」という。)、及び平成11年4月6日に頒布された特開平11-90301号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、以下の発明が記載されている。 (1)引用刊行物1 ア 段落【0001】 「【発明の属する技術分野】本発明は、基板を保持する方法および装置に関するものであり、特に半導体の製造過程で用いられる感光基板としてのウエハ若しくはガラス基板、或いはパターンが形成された原板としてのマスクを保持する基板保持方法、基板保持装置及びそれを用いた露光装置に関するものである。」 イ 段落【0003】 「【発明が解決しようとする課題】上記の如く従来の基板保持装置では、基板1をホルダ2にできるだけ短時間で吸着保持するために、吸着装置7が装置固有の最大の吸引力で行っていた。すなわち、吸着口4を介して基板1に対して最高の負圧力で基板1をホルダ2に吸着保持していた。しかしながら、例えばガラス基板はおよそ1.1若しくは0.7mm程度の厚さしかなく薄いため、基板1をホルダ2にあまりに大きな負圧力で吸着保持すると図5に示すように、基板1では吸着口4を塞ぐ吸着領域ではへこみ、非吸着領域であるホルダ2の平坦な領域では盛り上がってしまうという不都合があった。へこみや盛り上がり等の基板1の変形を防止するため、吸着装置7の吸引力を減らすことや、吸着口4の開口面積を小さくすることが考えられるが、何れも基板1を必要な力で保持するまでに(基板1が露光準備状態となるまでに)時間がかかるという不都合が生じる。本発明は、かかる不都合に鑑み、位置ずれが生じない必要な保持力を基板に対して与えるとともに、基板の変形を抑制できる基板保持方法及び基板保持装置を提供することを目的とするものである。さらに本発明は、そのような基板保持装置を用いた露光装置を提供することを目的とする。」 ウ 段落【0008】 「基板1は、後述するようにホルダ2に真空吸着されている。ホルダ2は、投影レンズPLの光軸AXと直交する2次元平面内でX,Y,θに移動可能な基板ステージ10に載置されている。さて、図1は上述した露光装置の基板ステージ10上で基板1を真空吸着して保持する基板保持装置の斜視図である。また、図2は、図1のA-A矢視断面図である。以下にこの基板保持装置の構成について図1及び図2を参照して説明する。図1において、基板1を保持するホルダ2の表面には吸着口4が20ヵ所(4×5ヵ所)に設けられている。吸着口4は、基板1への吸着力を高めるために数が多ければ多いほど望ましく、また均一に分布させることが望ましい。配管15は、ホルダ2の一側面2aでチューブ9cの一端と接続され、ホルダ2の側面2aと対向する側面2bで圧力弁3と接続されている。チューブ9cの他端は切換装置6に接続されている。切換装置6は、チューブ9aを介して吸着装置7と接続され、チューブ9bを介して圧空装置8と接続されている。切換装置6は、空気の通過口を選択的に切り換える切換弁(不図示)を有し、基板1をホルダ2上に保持する時には、配管15に接続しているチューブ9cと吸着装置7に接続されているチューブ9aとを中継するように弁を切換える。一方、基板1をホルダ2から離脱させる時は、配管15に接続しているチューブ9cと圧空装置8に接続されたチューブ9bとを中継するように弁を切換える。切換装置6は、ホルダ2の外側に設けているが、ホルダ2の内部に設けてもよい。ところで、ホルダ2表面には吸着口4以外に基板1を受け渡すための機構(不図示)が配置された穴5が設けられており、吸着口4はホルダ表面上に穴5を避けて配置される。また、図2に示されているように、吸着口4はそれぞれホルダ2の中を通る配管15と接続されており、この配管15を介して基板1に負圧を与えるために吸気が行われる。吸着装置7は、例えば真空ポンプであり、所定の吸引力で吸気をホルダ2に複数設けられた吸着口4、配管15及びチューブ9a、9cを介して基板1に対して負圧をかける。また圧空装置8は、例えばコンプレッサーであり、吸着口4、配管15、チューブ9b、9cを介して空気を送出し、基板1に圧力(正圧)を加える。・・・」 エ 段落【0010】 「【発明の効果】以上のように本発明によれば、ホルダ上に吸着保持された基板の位置ずれが生じることがない状態に短時間で到達するとともに、基板の変形を抑制することができ、総合重ね合わせ精度の低下を防止することができる。」 オ ここで、図面の図1を参照すると、吸着口4は、その形状が長方形であることが見て取れる。 また、上記摘記事項イにおける「基板の変形を抑制できる基板保持方法及び基板保持装置を提供すること」という発明の目的、及び上記摘記事項エにおける「基板の変形を抑制することができ」るという発明の効果からみて、ホルダ2による基板1の吸着により基板1の平面度が維持され、したがって、ホルダ2の平面度も維持されながら基板1との接触面積も吸着口4の存在により減少していることは明らかである。 以上ア?エの記載事項、及びオの認定事項から、引用刊行物1には、「露光工程で基板1を真空吸着により保持するホルダ2において、前記ホルダ2の表面に4×5=20カ所の長方形の吸引口4を形成し、前記20カ所の吸引口4は、配管15、チューブ9a、9b、9cを介して吸着装置7及び圧空装置8に接続され、前記ホルダ2の平面度を維持しながら基板1との接触面積を減少させるようにした基板1を真空吸着により保持するホルダ2。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (2)引用刊行物2 カ 段落【0001】 「【発明の属する技術分野】この発明はノズルから吐出する塗工液をプラズマディスプレイパネル等の基板等に塗布する際に、基板等を吸着保持するに用いて好適な吸着機構付定盤に関する。」 キ 段落【0007】 「上記のようなノズル塗布装置において、被塗工物である基板は、塗工時において高い平面度が要求されるため、例えば図7に示されるように、負圧が印加される複数の吸着孔1が形成されたみかげ石等の定盤2上に、基板を負圧により吸着保持して、その平面度を高く維持するようにしている。」 以上カ、キの記載事項から、引用刊行物2には、「複数の吸着孔1が形成された定盤2をみかげ石で構成すること。」が記載されていると認められる。 3 対比 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明の「保持する」、「基板1を真空吸着により保持するホルダ2」、「吸引口4」は、それぞれ、本願発明の「固定する」、「基板吸着プレート」、「凹部」に相当する。 引用発明の「4×5=20カ所」が、「多数」と言えるものであることは明らかである。 引用発明の「吸引口4は、配管15、チューブ9a、9b、9cを介して吸着装置7及び圧空装置8に接続され」ることは、本願発明の「凹部に吸引孔を形成」することに相当する。 以上の点から、両者は「基板を真空吸着により固定する基板吸着プレートにおいて、 前記基板吸着プレートの表面に多数の凹部を形成し、 前記多数の凹部に吸引孔を形成し、 前記基板吸着プレートの平面度を維持しながら前記基板との接触面積を減少させるようにした基板吸着プレート。」で一致し、以下の点で相違している。 <相違点1> 基板吸着プレートが用いられる用途に関して、本願発明では、「塗布工程」であるとしているのに対して、引用発明では、露光工程である点。 <相違点2> 基板吸着プレートの材質に関して、本願発明では、「グラナイト製」としているのに対して、引用発明では、ホルダ2の材質に関して不明な点。 <相違点3> 基板吸着プレートに設けられる凹部の形状及び寸法に関して、本願発明では、形状を「円形」であると特定し、また、寸法を「円形の凹部の直径を1?2mm、円形の凹部間の間隔を1.5?4mm」と特定しているのに対して、引用発明では、凹部に相当する吸着口4の形状は長方形で、寸法については不明な点。 <相違点4> 吸引孔を形成する凹部に関して、本願発明では、凹部の「一部」に吸引孔を形成しているのに対して、引用発明では、すべての吸引口4が吸引されるものである点。 4 当審の判断 上記相違点について検討する。 (1)<相違点1>について 露光工程で用いられる基板吸着プレートを塗布工程に用いることは、例示するまでもなく従来慣用されていることであるから、引用発明を塗布工程に用いることは、当業者にとって格別困難なことではない。 (2)<相違点2>について 基板吸着プレートをみかげ石、すなわちグラナイトで構成することは引用刊行物2に記載されたように、従来周知の事項である。してみれば、引用発明においても、そのホルダ2をグラナイト製とすることは、当業者にとって格別困難なことではない。 (3)<相違点3>について 凹部の形状を、引用発明の長方形に代えて円形としても、そのことによる作用ないし効果に違いが認められず、また、凹部の形状として円形のものは一般的にいろいろな技術分野で知られているものであることからすれば、引用発明において、凹部に相当する吸着口4の形状を長方形に代えて円形とすることは、当業者が容易になし得たものである。 また、凹部の直径を1?2mmと、凹部間の間隔を1.5?4mmと特定することは、そのことによる特別な効果、又は、臨界的な効果が下記(5)で言及しているとおり、格別見当たらないことからすれば、凹部の直径、及び凹部間の間隔の限定は、単なる設計的事項に過ぎない。 (4)<相違点4>について 凹部に設けられる吸引孔を、すべての凹部ではなくその一部に設けられるものとしても、そのことにより、基板吸着プレートを製造し易くはなるものの、基板を吸引する凹部の数が減ることから各凹部に加えられる吸引力を強くしなければ全体として基板に対して同じ吸引力を得ることができないことを考え合わせると、凹部に設けられる吸引孔を凹部の一部とすることは、単なる設計的事項であると考えざるを得ない。 (5)<作用ないし効果>について 引用発明によってもたらされる作用ないし効果は、摘記事項イ、エから、ホルダ2により基板1を吸着した時に基板1の変形を抑制するものである以上、当該ホルダ2を露光装置に代えて塗布装置に用いた場合に、基板1が変形しないものであるから塗布ムラが少ないことは予想されるものである。また、剥離性についても、真空吸着した基板を剥離し易いものとすることは、従来から知られている技術課題である。したがって、剥離性や塗布ムラの向上が特別な効果であるとすることはできない。 そして、凹部の直径を1?2mmと特定し、凹部間の間隔を1.5?4mmと特定することについては、本願図面の図3の実験結果を参照しても、剥離性については凹部の直径1?2mm、凹部間の間隔を1.5?4mmの範囲内で良好な結果が得られてはおらず、塗布ムラについても、凹部の直径が3mm以下で間隔が4mm以下である場合に良好な結果が得られる傾向があるけれども、凹部の直径が小さく、また、凹部間の間隔が小さければプレート表面での凹部の分布の割合が高くなって、それだけ基板にかかる負荷が小さくなり、基板の変形が少なくなることは予想される効果でしかない。 したがって、凹部の直径を1?2mmと、凹部間の間隔を1.5?4mmと特定したことによる効果を格別な作用ないし効果とすることはできない。 5 むすび したがって、本願発明は、引用刊行物1に記載された発明、及び周知の事項、慣用されている事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-07-15 |
結審通知日 | 2011-07-20 |
審決日 | 2011-08-02 |
出願番号 | 特願平11-295376 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 沼生 泰伸 |
特許庁審判長 |
野村 亨 |
特許庁審判官 |
長屋 陽二郎 刈間 宏信 |
発明の名称 | 基板吸着プレート |
代理人 | 阿部 龍吉 |
代理人 | 韮澤 弘 |
代理人 | 青木 健二 |
代理人 | 片寄 武彦 |
代理人 | 菅井 英雄 |
代理人 | 米澤 明 |
代理人 | 内田 亘彦 |