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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 D06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 D06F
管理番号 1243713
審判番号 不服2010-24779  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-04 
確定日 2011-09-16 
事件の表示 特願2005-12671号「乾燥機能付洗濯機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月 3日出願公開、特開2006-198149号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成17年1月20日の出願であって、平成22年7月26日付けで拒絶査定がなされ(発送:同年8月3日)、これに対し、平成22年11月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成22年11月4日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の結論]
平成22年11月4日付け手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
平成22年11月4日付け手続補正(以下「本件補正」という。)により特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。

「【請求項1】
貯水用の水槽、該水槽の内部に回転可能に設けた回転槽、温風発生手段により生成した温風を前記水槽および回転槽内に循環供給する循環経路を備え、洗い、すすぎ、脱水および前記温風による乾燥行程を実行可能としたものにおいて、
前記洗い行程を給水、洗い、排水の順に実行するとともに、その給水開始前に予熱動作を行なうようにし、
前記予熱動作として、洗濯物を収容した前記回転槽を洗濯物が遠心作用を受けて移動する回転速度で回転駆動しつつ、前記温風発生手段による温風を供給して前記洗濯物や水槽等を予め加熱するようにした後に前記給水を開始するようにしたことを特徴とする乾燥機能付洗濯機。」

上記補正は、「洗い行程」に関し「給水、洗い、排水の順に実行する」との限定を付加し、「回転槽の回転駆動」に関し「回転槽を洗濯物が遠心作用を受けて移動する回転速度で回転駆動しつつ」との限定を付加するものであって、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶理由にて引用された刊行物である特開2000-325694号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図面と共に以下の記載がある。

ア.「【0041】本実施形態の回転ドラム5の回転軸6は、後方が低くなるように水平方向に対して僅かに傾いた状態で設けられている。この傾きは5?30゜がよく、また図5に示す従来技術のようにほぼ水平であってもよい。
【0042】また、乾燥工程の際に循環ダクト20を冷却するための冷却装置として、冷却用給水路28とその給水弁29が設けられている。該冷却用給水路28は水道蛇口に接続された給水路12より分岐しており、ヒータ22よりも空気流の上流側で循環ダクト20に連通している。故に、冷却用給水路28からの水は循環ダクト20を流下して吸気口20aより水槽2内へ落ちる。
【0043】本実施形態のドラム式洗濯機の運転では、先ず洗濯物に含水させるための含水工程と水槽内の水を温めるための加温工程とを行った後、従来技術と同様に洗い工程、すすぎ工程、脱水工程、及び乾燥工程を行う。前記含水工程の前に、洗濯物量を検知して該洗濯物の量に応じた水位、或いは洗い、すすぎ、脱水、乾燥工程のチャートを決定してもよい。」(段落【0041】?【0043】)

イ.「【0045】上記含水工程について説明する。該含水工程では、先ず冷却用給水路28の給水弁29が開いて水槽2へ水を供給する。洗い水位Hよりも低い位置に設定された第1水位H1まで水が溜まったことを水位センサ23が検知すると、給水弁29は閉じる。含水工程での給水は、図3に示すように給水ノズル15と連通する専用の給水路12c及び給水弁13cを設け、給水弁13cを開いて回転ドラム5内の洗濯物に直接噴射してもよい。」(段落【0045】)

ウ.「【0049】上記含水工程が終了すると、次の加温工程では温風供給手段であるファン21及びヒータ22が作動し水槽2の吹出口20bより温風が吹き出す。温風によって水槽2内の水が温められ、所定の温度になったことを温度センサ26が検知すると、ファン21及びヒータ22は停止する。
【0050】この後に続く洗い工程では、従来技術と同様に第1給水路12aより洗剤ケース14へ給水することで水槽2には所定水位Hまで洗濯液が供給される。このとき、洗濯液は加温工程で温められた水槽2内の水と合わさって洗いに好適な温度となる。
【0051】上記加温工程で温風供給手段が稼働してから水槽2内へ所定温度の温風が供給されるまでは、一定の時間、例えば10?30分を要するため、温風供給手段の稼働開始は含水工程の給水開始と同時、或いは所定時間経過後、或いはそれに先行して稼働させてもよい。これによって、含水工程と加温工程が終了するまでの時間を短縮することができる。」(段落【0049】?【0051】)

エ.「【0054】尚、上記含水工程及び加温工程では回転ドラム5を回転させるとよい。これによって、含水工程では洗濯物を短時間で効率よく含水させることができる。また、加温工程では洗濯物の温風に対する接触面積が大きくなるので、短時間で水を温めることができる。」(段落【0054】)

オ.「【0058】次に、冷却用給水路28を用いた乾燥工程について説明する。該乾燥工程では、温風供給手段が作動すると共に給水弁29が開き、水は冷却用給水路28より循環ダクト20へ散水される。この水は、水槽2内へ落ちて排水口2bより排出される。
【0059】温風供給手段の作動により吹出口20bより吹き出した温風は、洗濯物の水分を吸収して吸気口20aより循環ダクト20へ吸引され、上昇してファン21に至る。このとき、上昇する空気流は冷却用給水路28より散水されている水に接触して冷却されることにより空気流中の湿気は結露し除湿される。除湿された空気流はヒータ22で再び加熱されて吹出口20bより吹き出す。結露によって生じた水は、冷却用給水路28からの水と共に下降し、吸気口20a及び水槽2を通り排出される。
【0060】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のドラム式洗濯機は、含水工程で洗濯物に洗剤を含まない洗濯水を含水させこの含水した洗濯物を温風で加温するので、温風と洗濯水とは洗濯水のみを加温する場合のように水面で接触するだけなく、洗濯物に含水されることにより洗濯物の表面及び隙間などでも接触する。故に、洗濯水は温風との接触面積が多くなり効率よく温めることができる。」(段落【0058】?【0060】)

カ.洗濯工程として段落【0050】(摘記事項ウ)には、給水しか記載されていないが、洗濯工程が、給水、洗い、排水の順に実行させることは、自明な事項である。

キ.加温工程において温風により洗濯物に含水された洗濯水および水槽底部に溜まった洗濯水が加熱される際、同時に洗濯物、水槽も温風により加熱されることは、自明の事項である。

以上の事項と図面の記載を総合すると、引用刊行物には、次の発明(以下「引用刊行物記載の発明」という。)が、記載されているものと認められる。

「水槽2、該水槽2内に回転可能に設けた回転ドラム5、温風供給手段であるファン21及びヒータ22より供給される温風を前記水槽2および回転ドラム5内に循環供給する循環ダクト20を備え、洗い、すすぎ、脱水および前記温風による乾燥工程を行うものにおいて、
前記洗い工程を、給水、洗い、排水の順に実行するとともに、前記洗い行程の給水開始前に加温工程を行うようにし、
前記加温工程として、洗濯物を収容した前記回転ドラム5を回転させつつ、前記温風供給手段であるファン21及びヒータ22による温風を供給して前記洗濯物や水槽や洗濯水を加熱した後に前記洗い工程の給水を開始するドラム式洗濯機。」

3.発明の対比・判断
本願補正発明と引用刊行物記載の発明を対比すると、引用刊行物記載の発明の「水槽2」は本願補正発明の「貯水用の水槽」に相当し、以下同様に「水槽2内に」は「水槽の内部に」に、「回転ドラム5」は「回転槽」に、「温風供給手段であるファン21及びヒータ22」は「温風発生手段」に、「供給される」は「生成した」に、「循環ダクト20」は「循環経路」に、「工程」は「行程」に、「行うもの」は「実行可能としたもの」に、「前記洗い行程の給水」は「その給水」または「前記給水」に、「加温工程」は「予熱動作」に、「洗濯物や水槽や洗濯水」は「洗濯物や水槽等」に、「加熱した後」は「予め加熱するようにした後」に、「ドラム式洗濯機」は「乾燥機能付洗濯機」に、各々相当する。

また、引用刊行物記載の発明は、加温工程において「洗濯物を収容した回転ドラム5を回転させ」るものであるから、収容された洗濯物には、回転ドラムの回転に伴って(力の大きさは回転速度により異なるが)、必然的に遠心力が移動力として作用することは技術常識である。
そうすると、引用刊行物記載の発明の「洗濯物を収容した前記回転ドラム5を回転させつつ」は、本願補正発明の「洗濯物を収容した前記回転槽を洗濯物が遠心作用を受けて移動する回転速度で回転駆動しつつ」に相当する。

よって、両者は、
「貯水用の水槽、該水槽の内部に回転可能に設けた回転槽、温風発生手段により生成した温風を前記水槽および回転槽内に循環供給する循環経路を備え、洗い、すすぎ、脱水および前記温風による乾燥行程を実行可能としたものにおいて、
前記洗い行程を給水、洗い、排水の順に実行するとともに、その給水開始前に予熱動作を行なうようにし、
前記予熱動作として、洗濯物を収容した前記回転槽を洗濯物が遠心作用を受けて移動する回転速度で回転駆動しつつ、前記温風発生手段による温風を供給して前記洗濯物や水槽等を予め加熱するようにした後に前記給水を開始するようにした乾燥機能付洗濯機。」
の点で一致し、実質的な相違点を有するものではない。

したがって、本願補正発明は、引用刊行物に記載された発明であると認められ、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結び
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成22年1月22日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
貯水用の水槽、該水槽の内部に回転可能に設けた回転槽、温風発生手段により生成した温風を前記水槽および回転槽内に循環供給する循環経路を備え、洗い、すすぎ、脱水および前記温風による乾燥行程を実行可能としたものにおいて、
前記洗い行程における給水前に、洗濯物を収容した前記回転槽を回転駆動し、且つ前記温風発生手段による温風を供給して前記洗濯物や水槽等を予め加熱する予熱動作を行なうことを特徴とする乾燥機能付洗濯機。」

2.引用刊行物とその記載事項
原査定で引用された引用刊行物とその記載事項は、前記の「第2.2」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から「洗い行程」に関し「給水、洗い、排水の順に実行する」との限定を削除し、「回転槽の回転駆動」に関し「回転槽を洗濯物が遠心作用を受けて移動する回転速度で回転駆動しつつ」との限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.3」において検討したとおり、引用刊行物に記載された発明であるから、本願発明も同様の理由により、引用刊行物に記載された発明である。

4.結び
以上のとおり、本願発明は引用刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。

したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-08 
結審通知日 2011-07-12 
審決日 2011-08-02 
出願番号 特願2005-12671(P2005-12671)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (D06F)
P 1 8・ 113- Z (D06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石川 貴志  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 前田 仁
佐野 遵
発明の名称 乾燥機能付洗濯機  
代理人 佐藤 強  
代理人 佐藤 強  
代理人 佐藤 強  

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