• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1243837
審判番号 不服2008-5840  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-07 
確定日 2011-09-21 
事件の表示 特願2002- 71440「送信電力を所定電力範囲において監視するリモート端末およびその方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月15日出願公開、特開2002-330079〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成14年3月15日(パリ条約による優先権主張2001年4月2日、ヨーロッパ特許庁)の出願であって、平成19年2月8日付けで拒絶理由が通知され、同年8月15日付けで手続補正書が提出され、同年12月6日付けで拒絶査定され、これに対して平成20年3月7日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年4月2日付けで手続補正書が提出されたものである。


2.平成20年4月2日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年4月2日付け手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の請求項1に係る発明
平成20年4月2日付け手続補正(以下,「本願補正」という)は、本願補正前の平成19年8月15日付け手続補正書により補正された請求項1の内容を、
「セルラー移動電話機のようなリモート端末の送信電力を所定の電力範囲において監視する方法であって、
前記送信電力は、送信電力制御(TPC)に応じて調整され、
前記リモート端末は、前記電力範囲をカバーすることができる可変利得の増幅手段(MAGV)を備えており、
前記増幅手段のバックオフを調整するよう、該増幅手段の利得の値および該増幅手段に供給される供給電圧の値を前記TPCに応じて変更する、
前記方法。」
から、
「セルラー移動電話機のようなリモート端末の送信電力を所定の電力範囲において監視する方法であって、
前記送信電力は、送信電力制御(TPC)に応じて調整され、
前記リモート端末は、前記電力範囲をカバーすることができる可変利得の増幅手段(MAGV)を備えており、
前記増幅手段のバックオフを調整するよう、該増幅手段の利得の値および該増幅手段に供給される供給電圧の値を前記TPCに応じて変更し、
前記リモート端末は、前記送信電力および前記増幅手段の利得の値に対して前記増幅手段の供給電圧の値を与えるテーブルを備えており、前記供給電圧の変更は、前記送信電力および前記増幅手段の利得の値を用いて該テーブルを参照して、前記増幅手段のバックオフを調整するよう行われる、
前記方法。」
に、変更する補正を含むものである。

上記補正は、補正前の請求項1におけるバックオフの調整について、「前記リモート端末は、前記送信電力および前記増幅手段の利得の値に対して前記増幅手段の供給電圧の値を与えるテーブルを備えており、前記供給電圧の変更は、前記送信電力および前記増幅手段の利得の値を用いて該テーブルを参照して、前記増幅手段のバックオフを調整するよう行われる」点を限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本願補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。


(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-252914号公報(以下、「引用例」という)には、下記の事項が記載されている。

(あ)「【0008】送信すべきデータは、変調器376に入力され、変調された後、D/A変換器377-1、377-2によってアナログ信号に変換される。そして、該アナログ信号はローパスフィルタ378-1、378-2で信号帯域の抽出が行われた後、それぞれ、乗算器379-1、379-2に入力される。局部発振器380から出力された2つの周期波は、一方は、そのまま乗算器379-1に入力され、他方は、90°移相器381によって位相が90°シフトされて、乗算器379-2に入力される。乗算器379-1、379-2は、ベースバンド信号である、ローパスフィルタ378-1、378-2からの入力信号をIF帯域の信号に変換出力する。そして、ローパスフィルタ378-1,378-2から出力される該2つのIF帯域の信号は合波された後、利得可変増幅器(AGC増幅器)382により増幅され、更に、バンドパスフィルタ383でノイズが除去されて、乗算器384に入力される。乗算器384には、局部発振器385からも周期波が入力され、該IF帯域の信号は、乗算器384によりRF帯域の信号に変換される。そして、該RF帯域の信号はバンドパスフィルタ386によって信号帯域の抽出がされた後、再び、AGC増幅器387で増幅され、更に、バンドパスフィルタ388で帯域制限された後、増幅器389によって増幅される。このようにして生成された送信用の信号は、デュプレクサ361を介して、アンテナ360から送出される。AGC増幅器382、387の利得は、TPC信号抽出・制御信号作成部372から入力される、TPC信号抽出・制御信号作成部372が、受信データ信号から抽出された、送信電力制御信号(TPC:TransmissionPower Control signal)に基づいて生成した制御信号によって制御される。
【0009】以上、説明したように、CDMA端末は、利得可変増幅器(AGC増幅器)もしくは、可変減衰器(VATT)を用いて、送信電力制御(TPC)を行うことにより、広いダイナミックレンジを実現し、精度の良い送信電力制御を行っている。
【0010】ここで、TPC信号とは、基地局において、端末からの受信電界強度に基づいて算出される信号で、基地局が端末に対して送信電力の増減を指示する信号である。これにより、端末のTPCを精度良く行うことができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】1)PAの電力効率の問題点
図35に示す回路おいて、AGC増幅器382、387などを用いて送信電力制御(TPC)を行った場合、最終段の電力増幅器(以下、PAと略す)389の入力電力が低下する。PA386は、低出力電力時には、電力効率が著しく低下してしまう。図36は、PA389の出力電力対効率特性を示したものであるが、出力電力が大きくなればなるほど、効率が良くなることが分かる。一方、出力電力が小さい場合には、効率は非常に小さくなってしまう。このPA389の電力効率の低下によって増加する電力の損失分は、ジュール熱となってしまうため、端末の温度を上昇させてしまう。このため、連続送信が行われるW-CDMA(Wideband CDMA)で長時間通話した場合、端末の温度が上昇し、耳が暖かくなる等の障害が発生するおそれがある。したがって、PAの電力効率を改善し、放熱を施すなどの対策が必要と考えられる。」

(い)「【0023】
【発明の実施の形態】CDMAシステムにおいては、基地局から到来するTPC信号によって、端末のAGC増幅器の利得が決められる。これにより、PAへの入力電力が求まる。すなわち、PAの出力電力が求まる。そこで、PAの電力効率ないし電力付加効率が最高となるようなバイアス電圧を算定し、DC-DCコンバータを制御する。この際、消費電力が最小となるよう制御することも可能であるし、隣接チャネル漏洩電力が最小となるように制御することも可能であり、出力歪みが最小となるよう制御することも可能である。」

(う)「【0029】また、バイアス電圧制御部をLSI化できることから、小型化が可能である。図2は、本発明の第1の実施形態を示す構成図である。端末(MS:Mobile Station )において、受信部で受信された基地局(BS:Base Station)から送信されたTPC信号をTPC信号抽出部1において再生抽出する。ここで、BSは、MSから送信される信号の受信電界強度を測定し、他のMSからの受信電界強度を考慮し、ある一定の受信電界強度となるようMSに対して、送信電力制御(TPC)の制御用信号、すなわち該TPC信号を送信する。TPCの具体的な内容は、送信電力を上げる下げるの情報でも良いし、絶対電力または相対電力でも構わない。また、TPC信号はデータフォーマットに含まれる信号である。
【0030】TPC信号抽出部1で抽出されたTPC信号は、バイアス電圧制御部2に送られる。バイアス電圧制御部2は、TPC信号を基に、Duty可変回路5-1、5-2に制御信号を出力して、Duty可変回路5-1,5-2?出力される信号のデューティを変化させる。Duty可変回路5-1、5-2には、分周回路6-1、6-2によって生成された、発振器(不図示)から出力される発振周波数の信号を分周する事により得られた周期波が入力される。Duty可変回路5-1、5-2によってデューティが可変されたそれぞれの周期波は、それぞれDC-DCコンバータ4-1、4-2に入力される。DC-DCコンバータ4-1、4-2は、電源3から所定の電圧を入力し、それを入力される周期波のデューティの値に従った、出力電圧に変換して出力する。DC-DCコンバータ4-1、4-2から出力される電圧は、PA8の利得を制御するバイアスティー7-1、7-2に入力される。PA8は、バイアスティー7-1、7-2によって調整される利得に応じ、入力RF信号を増幅してアンテナへ送出する。
【0031】図3は、上記圧電トランス形DC-DCコンバータ4-1,4-2のの概略構成を示す図である。入力側から入力された電源電圧は、コンデンサ10及びコイル11により、整流され、コンデンサ12の両端子に印加される。Duty可変回路5-1、5-2からの制御信号は、駆動信号16として、トランジスタ13のゲートに印加され、駆動信号16の示すデューティに従ってトランジスタ13をオン/オフする。これにより、駆動信号16のデューティに応じて、コンデンサ12の両端に印加された電圧が圧電トランス14に印加される。該印加電圧は圧電トランス14によって変圧され、ブリッジダイオードからなる全波整流器15に入力され、全波整流された後、出力コンデンサ16によってフラットな波形の電圧に変換されて出力端子から出力される。以上の動作により、DC-DCコンバータ4-1、4-2は、入力電圧を駆動信号16のデューティに従った電圧に変換し出力する。
【0032】図4は、TPC信号を用いたPAに印加するバイアス電圧の制御の流れを示すフローチャートである。ステップS1で、TPC信号抽出部1が受信したTPC信号を再生抽出し、バイアス電圧制御部2が該TPC信号を基にAGC増幅器の利得(ゲイン)を確定し(ステップS2)、次に、該利得からPA8の入力電力Pin1 を算出して確定する(ステップS3)。バイアス電圧制御部2は、続いて、該利得からPA8の出力電力Pout1も確定する(ステップS4)。そして、このときのPA8の電力効率η1 を算出する。更に、バイアス電圧制御部2は、PA8の入力バイアス電圧をVin1 、出力バイアスをVout1としたとき、出力電力Pout1を一定とし、電力効率が最大となるバイアス電圧Vin2 、Vout2を求め(ステップS5)、DC-DCコンバータ4-1、4-2の制御信号を作成し(ステップS6)、該制御信号に基づきデューティ可変回路5-1、5-2を制御し、DC-DCコンバータ5-1、5-2の駆動信号のデューティを可変する。デューティが変わることにより、デューティ可変回路5-1、5-2の出力電圧が変化し(ステップS7)、その結果PA8の入力及び出力のバイアス電圧がそれぞれ、Vin2 とVout2となる(図1参照)。」

上記(あ)乃至(う)及び関連図面の記載から、引用例には、実質的に下記の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。
「基地局においてCDMA端末から送信される信号の受信電界強度を測定して受信電界強度が一定となるようにCDMA端末の送信電力を制御する方法であって、
前記送信電力は、送信電力制御に応じて調整され、
前記CDMA端末は、利得可変増幅器と電力増幅器を備えており、
前記利得可変増幅器と前記電力増幅器は、該利得可変増幅器の利得の値および該電力増幅器に供給されるバイアス電圧の値を前記送信電力制御に応じて変更する、前記方法。」


(3)対比
(3-1)本願補正発明と引用発明との対応関係について
(ア)引用発明の「CDMA端末」は、本願補正発明の「セルラー移動電話機のようなリモート端末」に相当する。
(イ)引用発明の基地局が行う受信電界強度の測定は、CDMA端末の送信電力の監視を行っているともいえるので、引用発明の「基地局においてCDMA端末から送信される信号の受信電界強度を測定して受信電界強度が一定となるようにCDMA端末の送信電力を制御する方法」は、本願補正発明の「セルラー移動電話機のようなリモート端末の送信電力を所定の電力範囲において監視する方法」に相当する。
(ウ)引用発明の「利得可変増幅器と電力増幅器」は、送信電力制御により利得が制御され、かつ、送信電力を出力する増幅手段といえるので、本願発明の「可変利得の増幅手段」ということができる。
(エ)CDMA端末は、送信電力制御(TPC)を行うことにより、広いダイナミックレンジを実現しているので、引用発明のCDMA端末の「利得可変増幅器と電力増幅器」も所定の「電力範囲をカバーすることができる」ものになっているといえる。
(オ)引用発明の「前記利得可変増幅器と前記電力増幅器」は、送信電力制御により利得可変増幅器の利得の値および電力増幅器に供給されるバイアス電圧の値を変更しているのに対し、本願発明の「増幅手段」は、送信電力制御により利得の値および供給される供給電圧の値を変更しているので、両者は、増幅手段の利得の値および増幅手段に供給される電圧の値を送信電力制御に応じて変更している点で共通している。

(3-2)本願補正発明と引用発明の一致点について
上記の対応関係から、本願補正発明と引用発明は、下記の点で一致する。
「セルラー移動電話機のようなリモート端末の送信電力を所定の電力範囲において監視する方法であって、
前記送信電力は、送信電力制御に応じて調整され、
前記リモート端末は、前記電力範囲をカバーすることができる可変利得の増幅手段を備えており、
該増幅手段の利得の値および該増幅手段に供給される電圧の値を前記送信電力制御に応じて変更する、
前記方法。」

(3-3)本願補正発明と引用発明の相違点について
本願補正発明と引用発明は、下記の点で相違する。
(相違点1)
本願補正発明では、送信電力制御に応じて変更される電圧の値は増幅手段に供給される供給電圧の値であり、また調整対象は「前記増幅手段のバックオフ」であるのに対し、引用発明では、送信電力制御に応じて変更される電圧の値はバイアス電圧の値であり、また調整対象にバックオフは含まれていない点。

(相違点2)
本願補正発明では、「前記リモート端末は、前記送信電力および前記増幅手段の利得の値に対して前記増幅手段の供給電圧の値を与えるテーブルを備えており、前記供給電圧の変更は、前記送信電力および前記増幅手段の利得の値を用いて該テーブルを参照して、前記増幅手段のバックオフを調整するよう行われる」としているのに対し、引用発明はそのような構成とはなっていない点。


(4)当審の判断
(4-1)相違点1について
電力増幅器において、供給電圧によって出力電力の飽和点が決定されること、飽和点に対するバックオフが小さいほど電力効率が高くなることは、周知技術である。

引用発明は、電力効率を高くすることを目的にバイアス電圧の値が変更されるものであり、また、引用例の【図2】には、電力増幅器8の出力側にbias tee7-1を介してバイアス電圧が供給される構成が記載されているので、引用発明の「バイアス電圧」は、本願補正発明の「供給電圧」に相当したものであるということができる。

また、CDMAシステムでは、電力増幅器の非線形歪みを低く抑える必要があり、そのために、電力増幅器の電力効率を劣化させても大きなバックオフを取らなければならないということは、例えば、特開平10-178414号公報(段落【0013】乃至【0014】)、特開平10-294716号公報(段落【0010】)に記載されているように周知技術である。
よって、引用発明では、電力効率が最高となるようにするためバックオフを小さくする必要がある一方、電力増幅器はCDMA端末に備えられていることを考慮した場合、電力効率の高効率化だけではなく、電力増幅器の非線形歪みを低く抑えなければならず、設計段階においてそのためのバックオフを確保することは、上記周知技術から当業者が当然に考慮しなければならない設計的事項というべきである。

してみると、引用発明の電力増幅器はバックオフを確保する必要性があることから、引用発明において送信電力制御に応じてバックオフを調整するように相違点1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

(4-2)相違点2について
電力増幅器において、送信電力の値に対して該送信電力に対応した供給電圧の値を与えるテーブルを備えることは、例えば、特開平11-251934号公報の段落【0011】に記載されているように周知技術である。

そこで、最初に、本願補正発明の送信電力、利得及び供給電圧の関係について検討する。
本願明細書には、段落【0046】に、
「一例として、新しい利得の値は新しい出力電力の値に依存しており、処理手段はさらに、送信電力のそれぞれの値および利得のそれぞれの値について増幅手段の供給電圧の値を提供するアレイ(メモリ)を備えると考えることができる。」
と記載され、段落【0076】に、
「この場合、本発明による電力増幅段の動作原理は次のとおりである。電力情報アイテムTPCの受信とテンポを合わせて、段ETNEは、信号CTPGを配信し、必要とされる新しい送信電力に応じて利得の値を調節する。さらに、段ETNEは、必要とされる送信電力の各値および利得の各値について供給電圧Vsuppの値を提供するテーブルを記憶したメモリMM1を備える。したがって、チョップ供給源ALMが、バッテリの電圧を考慮してこの電圧Vsuppを配信するように、段ETNEは、チョップ供給源ALMに制御信号CTPALを配信する。こうするのは、増幅手段のバックオフを最小限に抑えるためである。」
と記載されているので、利得の値は送信電力の値によって決定されるものと認められる。よって、本願補正発明の供給電圧の値は、送信電力の値と利得の値によりテーブルから提供されるものではあるが、利得の値は送信電力の値によって決定されるものであるから、送信電力の値または利得の値のどちらか一方が与えられれば提供され得る値であるといえる。

次に、引用例に記載された送信電力、利得及びバイアス電圧の関係について検討する。
引用例の上記(う)には、TPCの内容が、「送信電力を上げる下げるの情報でも良いし、絶対電力または相対電力でも構わない。」点、バイアス電圧制御部2が、「該TPC信号を基にAGC増幅器の利得(ゲイン)を確定」する点、「該利得からPA8の出力電力Pout1も確定」する点、「出力電力Pout1を一定とし、電力効率が最大となるバイアス電圧Vin2 、Vout2を求め」る点が記載されている。よって、引用例には、送信電力制御(TPC)により送信電力が与えられると、利得が決定され、当該利得に基づいてバイアス電圧の値が決定されることが記載されているので、引用発明では、送信電力と利得の少なくともどちらか一方が与えられればバイアス電圧の値が得られるものといえる。

してみると、引用発明において、上記周知技術を採用し、送信電力の値及び利得の値に対応したバイアス電圧の値を与えるテーブルを備えることで、相違点2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

(4-3)本願補正発明の作用効果について
また、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。


(5)むすび
よって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本願補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


3.補正却下の決定を踏まえた検討
(1)本願発明
平成20年4月2日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、平成19年8月15日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。
「セルラー移動電話機のようなリモート端末の送信電力を所定の電力範囲において監視する方法であって、
前記送信電力は、送信電力制御(TPC)に応じて調整され、
前記リモート端末は、前記電力範囲をカバーすることができる可変利得の増幅手段(MAGV)を備えており、
前記増幅手段のバックオフを調整するよう、該増幅手段の利得の値および該増幅手段に供給される供給電圧の値を前記TPCに応じて変更する、
前記方法。」


(2)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。


(3)対比・判断
本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明におけるバックオフの調整について、「前記リモート端末は、前記送信電力および前記増幅手段の利得の値に対して前記増幅手段の供給電圧の値を与えるテーブルを備えており、前記供給電圧の変更は、前記送信電力および前記増幅手段の利得の値を用いて該テーブルを参照して、前記増幅手段のバックオフを調整するよう行われる」点の限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要素を全て含み、さらに特定の点に限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-13 
結審通知日 2011-04-20 
審決日 2011-05-09 
出願番号 特願2002-71440(P2002-71440)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04B)
P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 敬介石田 昌敏山中 実  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 飯田 清司
久保 正典
発明の名称 送信電力を所定電力範囲において監視するリモート端末およびその方法  
代理人 岡田 次生  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ