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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05B
管理番号 1243851
審判番号 不服2008-30896  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-05 
確定日 2011-09-21 
事件の表示 特願2003-107115「データ取得、データ解析、およびデータ制御のための付加可能なシステムおよびデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月21日出願公開、特開2003-330533〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成15年3月5日(優先権主張、平成14年3月6日アメリカ合衆国)の特許出願であって、同20年9月4日付けで拒絶をすべき旨の査定がされた。
これに対し、同年12月5日に本件審判の請求がなされ、同年12月26日に明細書を対象とする手続補正がなされ、同21年2月2日付けで拒絶理由が通知され、同年8月10日に手続補正がなされ、当審において同22年9月27日付けで拒絶理由が通知され、同23年3月28日に手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年3月28日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりと認められる。

「プロセス制御システムの一構成物の外部平面に、物理的に該構成物と一体化できるように締結機構が設けられたハウジングと、
前記ハウジング内に配置されたメモリと、
前記プロセス制御システムの前記構成物の状態の変化を感知し前記構成物と一体化できるように前記ハウジングの表面または外側に前記ハウジングと接続されて配置された外部センサ、及び、前記構成物とは異なる他の構成物へ該他の構成物を制御するための制御情報を送信し前記ハウジングの表面または外側に前記ハウジングと接続されて配置された制御出力部の少なくとも一つと、
前記外部センサ及び前記制御出力部の少なくとも一つと通信するように前記ハウジング内に配置された入力/出力インターフェイスと、
前記メモリと通信可能に接続し、前記入力/出力インターフェイスと通信可能に接続した前記ハウジング内に配置されたプロセッサと
を備えた付加可能デバイスを有し、
前記プロセッサは、
前記付加可能デバイスと一体化した前記構成物を制御するために前記外部センサを介して前記プロセス制御システムの前記構成物の状態の変化を感知するとき、または、前記プロセス制御システムの前記他の構成物を制御するために前記制御出力部を介して前記プロセス制御システムの前記他の構成物へ制御情報を出力するときに、通信ネットワークを介して前記プロセス制御システムの中の制御装置と通信するようにプログラムされ、
前記外部センサまたは前記制御出力部が前記ハウジングと一体となって前記構成物に付加することができるように構成されたことを特徴とする付加可能デバイスを有するシステム。」

3.刊行物記載の発明
これに対し、本願優先日前に頒布された刊行物であって、当審で通知した拒絶理由に引用された特開2001-34313号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のように記載されている。

ア.段落0008?0010
「【0008】本発明の課題は、任意のエリア内で簡便に低コストで構築でき且つ無線機の追加/移動、環境変化等によるネットワーク構成の変化や障害に対しても自動的に対応でき信頼性の高いプロセス制御システムを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明によるプロセス制御システムは、自律的に中継先を選択する中継機能を有する複数の無線端末が特定のエリア内に分散配置されて構成され、前記無線端末のいずれも直接又は他の1以上の無線端末の前記中継機能によって中継されることにより他の全ての無線端末と通信可能であると共に通信する2つの無線端末間の通信ルートがフレキシブルに決定される無線ネットワークと、 前記無線端末の1つを備え、計測または検出または表示あるいは制御の対象と接続して入出力制御を行う1以上のPIOステーションと、前記無線端末の1つを備え、前記無線ネットワークを介して前記PIOステーションに対して計測または検出または表示あるいは制御の指令を行うホストとを有する。
【0010】上記プロセス制御システムによれば、複数の無線機によりネットワークを構築するので、有線でネットワークを構築する場合のように有線ケーブルを敷設する等の工事の手間/コストが掛らない。単に、無線機を各所に配置する作業を行えば済む。更に、一旦ネットワークを構築した後でも、新たな無線機(PIOステーション)を配置したり、配置済の無線機を移動させたりするだけで、容易にシステムの拡張/変更等が行える。更に、通信障害、通信路遮断や、無線機の故障等が生じてそれまで使用可能であった通信路が使えなくなっても、これに自動的にフレキシブルに対応して中継ルートを選択する(迂回路等が使われる)ことができるので、通信不能やシステムダウンとなる可能性は極めて低く、信頼性の高いシステムを提供できる。」

イ.段落0017?0021
「【0017】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態のプロセス制御システムの概略構成図である。
【0018】同図では、例えば、特定のエリア内に、表示機4、センサ5、接点6、SW(スイッチ)7、警報機8、バルブ9等が各々の設置場所に存在しており、また任意の場所にパソコン等の情報処理装置10を設置したものとして説明する。尚、同図は、当該プロセス制御システムが、これら表示機4?バルブ9全てを接続して成るシステムであるということを意味しているのではない。同図は、本発明のプロセス制御システムの適用例の多くを混在させて示しているものと言える。
【0019】表示機4、センサ5、接点6、SW(スイッチ)7、警報機8、及びバルブ9には、各々、PIO(プロセスI/O)ステーション1が接続されている。また、情報処理装置10には無線機2が接続されている。更に、必要に応じて中継用の無線機3が設置される。そして、これらPIOステーション1、無線機2、無線機3によって、後述する無線ネットワークが構築されて、全体として、情報処理装置10が上記無線ネットワークを介して各PIOステーション1に計測/表示/制御等の指示を行って動作するプロセス制御システムが構成される。詳しくは後述する。
【0020】・・・(略)。
【0021】図2は、PIOステーション1の構成の一例を示す図である。同図に示すPIOステーション1は、無線機11、マイコン12、入出力装置13等より成る。無線機11については後述する。入出力装置13は、プロセス入出力用I/Oインタフェースであり、DI(ディジタル入力)、DO(ディジタル出力)、AI(アナログ入力)、AO(アナログ出力)等がある。プロセスとは、上記表示機4、センサ5、接点6、SW(スイッチ)7、警報機8、バルブ9等の、測定機器、表示機器、制御機器等、入出力制御対象機器である。」

ウ.段落0039?0041
「【0039】以下、上述した無線ネットワークによるプロセス制御システムについて、様々な具体的な提案を行う。まず、プロセス制御システムの一例として電力量計測システムについて説明する。
【0040】図7に示す電力量計測システムは、例えば工場、ビル等の構内に構築される。同図に示す各PIOステーション1は、例えば工場内、ビル内等に存在する分電盤の近傍に設置される。そして、分電盤内に取り付けられた電流センサ5aに接続する。電流センサ5aは、従来のCTに代わる電流センサとして本発明の出願人が提案している分割型電流センサであり、図8に示すように、分電盤内の電力ライン(電力回路)にクランプ(回路を切断することなく非接触で取り付け)し、電流値を計測できるものである。一台のPIOステーション1に接続できる電流センサ5aの数は、入出力装置13の入出力点数で決まる。例えば32個の電流センサ5aが接続できる。また、この例では、入出力装置13はAI(アナログ入力)となる。マイコン12は、例えば情報処理装置40からの電流値読み出し命令(後述する)を含むパケットを、無線機11より受信すると、入出力装置13を介して各電流センサ5aによる検出値を入力して使用電力量や瞬時電力を計測し、これを無線機11により情報処理装置40に返信する等の処理を行う。あるいは、一定周期毎に各電流センサ5aより使用電力量や瞬時電力を計測してこれを記憶し、更に電力量積算値を算出し、情報処理装置40からの電流値読み出し命令(後述する)を含むパケットを受信すると、これら記憶してある電力量やその積算値を返信するようにしてもよい。
【0041】一方、情報処理装置40は、各PIOステーション1で計測した上記電力量等の蓄積/管理/分析を行う。ここで、情報処理装置40は、例えば図9に示す構成であり、CPU41、入力部42、表示部43、メモリ44、記憶部45、入出力インタフェース46等より成る。」

エ.段落0049
「【0049】情報処理装置40には、上記受信した計測データの蓄積/表示以外にも、分類(例えば部門毎に集計)、計測データの表/グラフ化等の機能があってもよい。上記のようにして、分電盤の各回路毎の電力量の収集/分析を行うことで、電力使用実態を把握できるようになり、これを元に省エネルギーを図ることが期待できる。そして、本発明では、このようなシステムを簡単に低コストで構築でき、更に一旦システムを構築した後でも、簡単にシステムの拡張/変更ができる。これより、随時測定場所を変えたい場合や、一時的に(短期間のみ)測定したい場合にも適している。」

ここで、段落0040の「PIOステーション1は、例えば工場内、ビル内等に存在する分電盤の近傍に設置される。そして、分電盤内に取り付けられた電流センサ5aに接続する。」、「電流センサ5aは、・・・、分電盤内の電力ライン(電力回路)にクランプ(回路を切断することなく非接触で取り付け)し、電流値を計測できる」なる記載から、電流センサ5aは、PIOステーション1の外側にPIOステーション1と接続されて配置されることは明らかである。
また、段落0009の「前記無線端末の1つを備え、前記無線ネットワークを介して前記PIOステーションに対して計測または検出または表示あるいは制御の指令を行うホスト」なる記載から、図7の実施例においては、「情報処理装置40」が「無線ネットワークを介してPIOステーションに対して計測または検出または表示あるいは制御の指令を行う」ものである。

上記記載を、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理すると、上記刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「プロセス制御システムの工場内、ビル内等に存在する分電盤の近傍に設置されるPIOステーション1と、
前記PIOステーション1内に配置されたマイコン12と、
前記プロセス制御システムの前記分電盤内の電流の変化を感知し前記分電盤内の電力ラインにクランプされ前記PIOステーション1の外側に前記PIOステーション1と接続されて配置された電流センサ5aと、
前記電流センサ5aと通信するように前記PIOステーション1内に配置された入出力装置13と、
前記入出力装置13と通信可能に接続した前記PIOステーション1内に配置されたマイコン12と
を有し、
前記マイコン12は、
分電盤の各回路毎の電力量の収集/分析を行うために前記電流センサ5aを介して前記プロセス制御システムの前記分電盤内の電流の変化を感知するとき、無線ネットワークを介して前記プロセス制御システムの中の情報処理装置40と通信するようにされ、
前記電流センサ5aが前記分電盤内の電力ラインにクランプされるように構成されたシステム。」

4.対比・判断
本願発明は「外部センサ」と「制御出力部」の「少なくとも一つ」であることから、「外部センサ」を選択したものとして、対比する。
刊行物1発明の「工場内、ビル内等に存在する分電盤」は本願発明の「一構成物」に相当し、同様に「PIOステーション1」は「ハウジング」に、「電流の変化」は「状態の変化」に、「分電盤内の電力ラインにクランプされ」は「構成物と一体化できるよう」に、「電流センサ5a」は「外部センサ」に、「入出力装置13」は「入力/出力インターフェイス」に、「無線ネットワーク」は「通信ネットワーク」に、「情報処理装置40」は「制御装置」に、「分電盤内の電力ラインにクランプされる」は「構成物に付加することができる」に、相当する。
刊行物1発明の「マイコン12」と、本願発明の「メモリ」及び「プロセッサ」とは、「情報処理部材」である限りにおいて一致する。

そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。
「プロセス制御システムのハウジングと、
前記ハウジング内に配置された情報処理部材と、
前記プロセス制御システムの前記構成物の状態の変化を感知し前記構成物と一体化できるように前記ハウジングの外側に前記ハウジングと接続されて配置された外部センサと、
前記外部センサと通信するように前記ハウジング内に配置された入力/出力インターフェイスと、
前記入力/出力インターフェイスと通信可能に接続した前記ハウジング内に配置された情報処理部材と
を有し、
前記情報処理部材は、
前記外部センサを介して前記プロセス制御システムの前記構成物の状態の変化を感知するときに、通信ネットワークを介して前記プロセス制御システムの中の制御装置と通信するようにされ、
前記外部センサが前記ハウジングと一体となって前記構成物に付加することができるように構成されたシステム。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1:ハウジングについて、本願発明では一構造物の「外部平面に、物理的に該構成物と一体化できるように締結機構が設けられた」ものであるが、刊行物1発明では一構造物の「近傍に設置される」ものである点。
相違点2:情報処理部材について、本願発明では「メモリ」及び「メモリと通信可能に接続」した「プロセッサ」であり、制御装置と通信するように「プログラム」されるが、刊行物1発明では「マイコン12」である点。
相違点3:本願発明では「ハウジング」、「メモリ」、「外部センサ」、「入力/出力インターフェイス」、「プロセッサ」を備えた「付加可能デバイス」を有し、外部センサが「付加可能デバイスと一体化」し、「ハウジングと一体」となるものであるが、刊行物1発明では明らかでない点。
相違点4:制御装置との通信について、本願発明では「構成物を制御するため」であるが、刊行物1発明では「電力量の収集/分析を行うため」である点。

相違点1について検討する。
検知、制御機器を、対象物の「外部平面に、物理的に一体化できるように締結機構」を設けることは、取付けの安定・確実性の観点から、適宜なしうる設計的事項にすぎない。

相違点2について検討する。
「マイコン」は、一般に「メモリ」及び「メモリと通信可能に接続」した「プロセッサ」を有し、必要な「プログラム」により作動することから、本願発明のようにすることに困難性は認められない。

相違点3について検討する。
必要な部材を一体化することは、特開平3-282691号公報の第2ページ左下欄第15行?右下欄第17行、第1図、第3図に示されるごとく周知であり、これにより取扱いの利便性向上が期待される。
よって、刊行物1発明において、「ハウジング」、「メモリ」、「外部センサ」、「入力/出力インターフェイス」、「プロセッサ」を一体化し、「付加可能デバイス」とすることは、必要に応じてなしうる設計的事項にすぎない。
請求人は、意見書において、「刊行物1は、プロセスの中の構成物に既にセンサ5を有して」いるから、技術的思想が異なる旨、主張する。
しかし、刊行物1の段落0040にみられるごとく、刊行物1発明は、新たにセンサを付加するものであるから、請求人の主張は採用できない。

相違点4について検討する。
刊行物1発明においても、適切な制御が望ましいことは明らかであるから、「電力量の収集/分析」結果を「制御」に活用し、本願発明のようにすることに困難性は認められない。

また、これら相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。

5.むすび
本願発明は、刊行物1発明、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-13 
結審通知日 2011-04-19 
審決日 2011-05-09 
出願番号 特願2003-107115(P2003-107115)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二階堂 恭弘大屋 静男  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 長屋 陽二郎
菅澤 洋二
発明の名称 データ取得、データ解析、およびデータ制御のための付加可能なシステムおよびデバイス  
代理人 特許業務法人 有古特許事務所  

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