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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1243886
審判番号 不服2010-3195  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-15 
確定日 2011-09-21 
事件の表示 特願2002-217117「有機電界発光表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月11日出願公開、特開2003-197368〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願 :平成14年 7月25日
(優先日 平成13年12月26日 大韓民国)
拒絶理由 :平成18年 1月20日(起案日)
意見及び手続補正:平成18年 4月24日
拒絶理由 :平成18年10月30日(起案日)
意見及び手続補正:平成19年 4月27日
拒絶理由 :平成20年10月31日(起案日)
意見及び手続補正:平成21年 2月12日
拒絶査定 :平成21年10月 8日(起案日)
審判請求 :平成22年 2月15日
手続補正 :平成22年 2月15日
審尋 :平成22年12月15日(起案日)
回答 :平成23年 3月17日

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成22年2月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正
平成22年2月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は,本件補正前の特許請求の範囲の記載を以下のとおり補正することを含むものである。

(1) 補正事項1
本件補正前の請求項1の「前記漸進的な濃度勾配は,前記封止層の厚さ方向に沿って外部光の入射方向から離れるほど前記第1成分の含量は次第に減少し,前記第2成分の含量は次第に増加するように分布されて」という発明特定事項を「前記漸進的な濃度勾配は,前記封止層の厚さ方向に沿って前記第1電極部から離れるほど前記第1成分の含量は次第に増加し,前記第2成分の含量は次第に減少するように分布されて」という発明特定事項とする。

(2) 補正事項2
本件補正前の請求項6の「前記基板の上面に形成されて外光を吸収する外光吸収膜」を「前記基板の上面に形成された膜」とする。

2 検討
補正事項1は,請求項1に係る発明の構成を変更するものではないから,特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当しない。また,補正事項2は,請求項6に係る発明の「前記基板の上面に形成されて外光を吸収する外光吸収膜」を「前記基板の上面に形成された膜」に拡張するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当しない。
したがって,本件補正は,平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的としないものである。また,本件補正が「請求項の削除」(第1号),「誤記の訂正」(第3号)及び「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」(第4号)のいずれにも該当しないことは明らかである。
そうしてみると,本件補正は,改正前特許法第17条の2第4項に違反してなされたものである。

また,「前記封止層の厚さ方向に沿って前記第1電極部から離れるほど前記第1成分の含量は次第に増加し,前記第2成分の含量は次第に減少するように分布されて」という構成を備えた封止層は,願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載されたものではない。
すなわち,当初明細書等に記載された「発明の実施の形態」のうち,濃度勾配を有する封止層が第2電極部に接触しているものは,【0023】ないし【0031】(図1ないし4)の態様のものであるところ,係る態様の封止層は,「前記封止層の厚さ方向に沿って前記第1電極部から離れるほど前記第1成分の含量は次第に減少し,前記第2成分の含量は次第に増加するように分布されて」という構成を備えたものであり,「前記封止層の厚さ方向に沿って前記第1電極部から離れるほど前記第1成分の含量は次第に増加し,前記第2成分の含量は次第に減少するように分布されて」という構成を備えた封止層ではない(必要ならば「第3 本願発明」を参照。)。
したがって,本件補正は,改正前特許法第17条の2第3項に違反してなされたものである。

3 備考
補正事項1に関し,請求人は,「本願請求項1における補正は,外部光の入射方向が不明瞭であることに起因して認定された新規事項の追加に基づく拒絶理由に対応して行ったものであり,明瞭でない記載の釈明を目的とするものであると言えると思料する。」と主張する。しかしながら,本件補正前の請求項1に係る発明は,それが願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであるか否かは措くとしても明りょうなものであるから,請求人の主張は採用できない。補正事項2に関しても同様である。

4 小括
したがって,本件補正は改正前特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
1 本願発明
平成22年2月15日付けの手続補正は却下されたので,本願の特許請求の範囲の請求項1は平成21年2月12日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1となるところ,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,下記のものである。なお,「前記第1電極部,前記有機電界発光部,前記第2電極層」は「前記第1電極部,前記有機電界発光部,前記第2電極部」の誤記と認定した。



基板と,
前記基板の上面に所定パターンで形成されて透明な導電性材質よりなる第1電極部と,
前記第1電極部の上部に所定のパターンの有機膜が積層されてなる有機電界発光部と,
前記第1電極部と対応するように前記有機電界発光部の上面に形成された第2電極部と,
前記第1電極部,前記有機電界発光部,前記第2電極部を覆って保護するように形成されるとともに,誘電性物質である第1成分と,Fe,Co,V,Ti,Al,Ag,Ptよりなる群から選択された一つ以上の第2成分とを含んでなる封止層とを備え,
前記第1成分と前記第2成分はその厚さ方向に互いに反対の漸進的な濃度勾配を有し,
前記漸進的な濃度勾配は,前記封止層の厚さ方向に沿って外部光の入射方向から離れるほど前記第1成分の含量は次第に減少し,前記第2成分の含量は次第に増加するように分布されて,
前記封止層の前記第2成分の含量が多い側が前記第2電極部に接触していることを特徴とする有機電界発光表示装置。

2 新規事項違反
当初明細書等に記載された「発明の実施の形態」のうち,濃度勾配を有する封止層が第2電極部に接触しているものは,【0023】ないし【0031】(図1ないし4)の態様のもの(以下「実施態様」という。)である。
ここで,図1は有機電界発光表示装置の断面図,図2は封止層の厚さによる濃度勾配を示すグラフであるところ,発明の詳細な説明には,
「【0067】一方,前述したように外部光を吸収する有機電界発光表示装置の封止層,第2電極部または外光吸収膜は次のような工程を通じて製造できる。【0068】まず,基板の上面に第1電極部と有機電界発光部及び第2電極部を順次に形成した後,前記基板を真空蒸着器内に蒸着ボートと対向するように固定する段階を行う。・・・【0069】次いで,金属と誘電性物質の混合物が入っている蒸着ボートの温度を変化させつつ真空熱蒸着を実施する。この時,蒸着ボートの温度を変化させるためには蒸着ボートに印加される電圧を徐々に高める方法を使用する。【0070】経時的に蒸着温度を徐々に高めれば誘電性成分のSiOが先に蒸着され,これより高い温度では誘電性成分と金属成分との2つの成分が同時に蒸着され,最終的に最も高い温度ではこれ以上の誘電性成分が残らず,純粋に金属成分だけが蒸着される。その結果,図2に示されたようにSiOは外部光入射方向から離れるほど次第に減少する分布で存在し,金属成分は外部光の入射方向から離れるほど次第に増加する分布で存在する封止層を形成できる。」
と記載されている。
そうしてみると,当初明細書等に記載された封止層の構成は「前記第1成分の含量が多い側が前記第2電極部に接触している」構成,すなわち実施態様の有機電界発光表示装置は背面発光型であって外光は図1の下側から入射すると解釈するのが妥当であり,また,このような解釈は,基板及び第1電極部が透明であることにもよく整合する。
他方,実施態様の封止層が「前記封止層の前記第2成分の含量が多い側が前記第2電極部に接触している」,すなわち,実施態様の有機電界発光表示装置は前面発光型であって外光は図1の上側から入射すると解釈すると,以下のような不都合が生じる。
(1) 第2電極部80は「前記第1電極部60と直交する方向に形成される多数のストライプ状の電極よりなりうる」(段落0028)ものであるところ,封止層の第2成分の含量が多い側が第2電極部に接触すると電極間で短絡ないしクロストークが発生する。
(2) 封止層の第2電極部に接触する側は第1電極部にも接触する(図1)ところ,封止層の第2電極部に接触する側が第2成分の含量が多い側ならば,第1電極部と第2電極部が短絡したり,抵抗率が低下する。
(3) 有機電界発光部から発生する前面への光は封止部によって遮光(反射又は吸光)されるから,段落【0012】に記載された場合と同様に実質的な輝度減少を誘発する。
(4) 基板及び第1電極部が透明であるから,段落【0006】ないし【0007】に記載された場合と同様に,特に太陽光に露出された室外では背景が透過して見えることにより相対的に輝度とコントラストが急激に低下する。

以上勘案すると,当初明細書等には,封止層の前記第2成分の含量が多い側が前記第2電極部に接触している有機電界発光表示装置の構成は明示的に記載されていないばかりか示唆もされていないものである。さらに,当該構成が,本願の出願時に当初明細書等に接した当業者に自明な事項であったともいえない。したがって,封止層の構成について「前記第2成分の含量が多い側が前記第2電極部に接触している」とする補正(平成21年2月12日付け手続補正では請求項1は補正されていないので,平成19年4月27日付け手続補正)は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものではない。

3 小括
以上のとおり,平成19年4月27日付けでした手続補正及び請求項1について補正内容を維持する平成21年2月12日付けでした手続補正は,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

第4 まとめ
したがって,原査定を取り消すべき理由を見いだすことはできず,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-13 
結審通知日 2011-04-19 
審決日 2011-05-09 
出願番号 特願2002-217117(P2002-217117)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (H05B)
P 1 8・ 561- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 里村 利光井亀 諭  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 伊藤 幸仙
樋口 信宏
発明の名称 有機電界発光表示装置  
代理人 渡邊 隆  
代理人 村山 靖彦  
代理人 佐伯 義文  

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