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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1243892
審判番号 不服2010-9214  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-28 
確定日 2011-09-20 
事件の表示 特願2005-284284号「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月12日出願公開、特開2007- 96042号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1】手続の経緯
本願は、平成17年9月29日の出願であって、平成22年1月29日付けで拒絶査定がなされ(拒絶査定の謄本送達(発送)日 平成22年2月4日)、それに対して、平成22年4月28日付けで本件審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正(前置補正)がなされたものである。

【第2】平成22年4月28日付け手続補正の却下について
[補正却下の決定の結論]
平成22年4月28日付けの手続補正を却下する。
[補正却下の決定の理由]
1.平成22年4月28日付け手続補正(以下「本件手続補正」という。)の趣旨
本件手続補正は、特許請求の範囲の全文を補正すると共に、明細書についても同趣旨の補正をするというものであるが、そのうち、特許請求の範囲の請求項1についての補正は次のとおりである。
(1)<本件手続補正前>の特許請求の範囲における請求項1
「【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップがダイボンディング材を介してダイボンディングされるアイランドと、
前記アイランドの周辺に配置されたリード端子と、
前記半導体チップと前記リード端子との間にのみ設けられたワイヤとを備えた半導体装置であって、
前記アイランドは、前記半導体チップがダイボンディングされるダイボンディング領域を有し、
前記ダイボンディング領域には、前記半導体チップの裏面の面積の10%以上の開口面積を有する1つの凹部が形成され、
前記ダイボンディング材は、前記半導体チップの裏面の全域と前記ダイボンディング領域との間に介在し、
前記凹部の開口面積が70%以下であることにより、前記アイランドの表面の平坦さが確保されていることを特徴とする半導体装置。」
(2)<本件手続補正後>の特許請求の範囲における請求項1
「【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップがダイボンディング材を介してダイボンディングされるアイランドと、
前記アイランドの周辺に配置されたリード端子と、
前記半導体チップと前記リード端子との間にのみ設けられたワイヤとを備えた半導体装置であって、
前記アイランドは、前記半導体チップがダイボンディングされるダイボンディング領域を有し、
前記ダイボンディング領域には、前記半導体チップの裏面の面積の10%以上の開口面積を有する1つの凹部が形成され、
前記ダイボンディング材は、前記半導体チップの裏面の全域と前記ダイボンディング領域との間に介在し、
平面視において、前記半導体チップの裏面の全ての角が、前記ダイボンディング領域において前記凹部が形成されていない領域に配置されており、 前記凹部の開口面積が前記半導体チップの裏面の面積の70%以下であることにより、前記アイランドの表面の平坦さが確保されていることを特徴とする半導体装置。」
(上記本件手続補正後の特許請求の範囲に記載された請求項1の発明を、以下「本願補正発明」という。なお、下線は、補正箇所を明示するために当審で加入した。)

2.本件手続補正が認められるべき要件
(1)上記の手続補正は、特許請求の範囲の請求項1で規定されているアイランドのダイボンディング領域に形成する凹部の態様に関して、上記下線部のとおりの限定事項を付加しようとするものであって、かかる補正は平成18年法律第55号附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされることにより適用される、同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号でいう特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、同条第3項で規定される事項の範囲内でされたものと認められる。
(2)更に、本件手続補正が適法なものとされるためには、当該補正後の特許請求の範囲に記載されている発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同じく特許法第126条第5項の規定に適合すること)が必要であるので、以下でこの要件の可否について検討する。

3.引用例、その記載事項及び引用発明
(1)原査定の拒絶理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭54-87178号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。
イ 「半導体ペレツトを導電ペーストを介して電極板に接着するものにおいて、電極板の半導体ペレツト直下に半導体ペレツトの接着面より小さい凹部を形成したことを特徴とする半導体ペレツトと電極板との接着部構造。」(第1頁左下欄第5?9行)
ロ 「従来の導電ペーストを用いた半導体ペレツトと電極板との接着部構造は、第1図に示す如く電極板1の平面上に例えぱAgペースト層2を介して半導体ペレツト3を載置接着したものとなつていた。この構造の接着部は、接着時に半導体ペレツト3上から重錘によりAgペースト層に加える押圧力及び半導体ペレツトの位置出しのためのスクラブ又はこすりつけにより半導体ペレツトと電極板との間のAgペースト層が薄くなり、ワイヤボンデイングより生じる加熱ストレスの如き横方向からの剪断力に対して機械的強度が弱いという欠点があつた。更に、半導体ペレツトと電極板との間から逃げたAgペーストが半導体ペレツトの側面に付着して半導体装置の特性を劣化するおそれもあった。」(第1頁左下欄第13行?同右下欄第7行)
ハ 「本発明は電極板の半導体ペレツト直下に半導体ペレツトの接着面より小さい凹部を形成した・・・ことにより、接着時に導電ペースト層に押圧力が加わつたり・・・しても半導体ペレツトと電極板との間に存在する導電ペースト層の厚さは凹部の深さより大きいものとなり、剪断力に対する機械的強度の低下を未然に防止することが出来る。」(第1頁左下欄第11?19行)
ニ 「本発明において大切な事は、凹部の容積よりも多い導電ペーストを用いて半導体ペレツトと電極板とを接着することである。
以下本発明を実施例として示した第2図により詳細に説明する。
図において、21は一方の面に凹部211を有する電極板、22は電極板21の凹部211上に導電ペースト(例えぱ銀ペースト)層23により接着した半導体ペレツトで、凹部211は半導体ペレツト22の接着面より小さくされている。24及び25はリード片、26及び27は半導体ペレツト22とリード片24及び25とを接続するボンデイングワイヤ、28はモールドレジンである。」(第1頁右下欄第19行?第2頁左上欄第12行)
ホ 「この半導体装置は、(1)帯状金属板にプレス加工を施して凹部を持つ電極板、リード片となる部分を多数個連続して形成し、(2)各電極板上に導電ペーストを介して半導体ペレツトを載置して接着し、(3)半導体ペレツトとリード片とをワイヤボンデイングし、(4)半導体ペレツト及び、リード片のワイヤボンデイングした側をレジンモールドし、(5)しかる後個々の半導体装置に分離することにより、製造される。」(第2頁左上欄第13行?同右上欄第1行)
ヘ 引用例の第2図には、ワイヤボンデイングは、半導体ペレツトとリード片との間のみにおいて行われていることが示されている。

【引用例に記載されている発明】
上記イ?ヘの記載事項からみて、上記引用例には、
「半導体ペレツトを導電ペーストを介して電極板に接着するものにおいて、電極板の半導体ペレツト直下に半導体ペレツトの接着面より小さい凹部を形成した、半導体ペレツトと電極板との接着部構造を備える半導体装置であって、
(1)帯状金属板にプレス加工を施して凹部を持つ電極板、リード片となる部分を多数個連続して形成し、(2)各電極板上に凹部の容積よりも多い導電ペーストを介して半導体ペレツトを載置して接着し、(3)半導体ペレツトとリード片との間のみをボンデイングワイヤで接続(ワイヤボンデイング)し、(4)半導体ペレツト及び、リード片のワイヤボンデイングした側をレジンモールドし、(5)しかる後個々の半導体装置に分離することにより、製造される半導体装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

4.発明の対比
(1)本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「半導体ペレツト」は、本願補正発明の「半導体チップ」に、以下同様に「導電ペースト」は「ダイボンディング材」に、「電極板」は「アイランド」に、「リード片」は「リード端子」に、「ボンデイングワイヤ」は「ワイヤ」に、「半導体ペレツトの接着面」は「ダイボンディング領域」に、にそれぞれ相当している。
そして、本願補正発明の「前記ダイボンディング材は、前記半導体チップの裏面の全域と前記ダイボンディング領域との間に介在」すること、及び、「平面視において、前記半導体チップの裏面の全ての角が、前記ダイボンディング領域において前記凹部が形成されていない領域に配置されて」いることについては、引用発明で明確な言及はなされていないけれども、「凹部の容積よりも多い導電ペースト」を用いて半導体ペレツトと電極板とを接着することによって、導電ペーストが半導体ペレツトの裏面の全域に介在するようになりうることは当然考えられるし、半導体ペレツトの接着面より小さい凹部であれば、半導体ペレツトの裏面の全ての角が、凹部の領域から外れるのが普通であり(本願明細書【0013】で、先行技術を開示する文献とされている、特開2000-269402号公報参照)、引用発明は、このような通常の態様の半導体装置を含むものと認められる。
(2)上記の対比から、本願補正発明と引用発明との間の一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]「半導体チップと、
前記半導体チップがダイボンディング材を介してダイボンディングされるアイランドと、
前記アイランドの周辺に配置されたリード端子と、
前記半導体チップと前記リード端子との間にのみ設けられたワイヤとを備えた半導体装置であって、
前記アイランドは、前記半導体チップがダイボンディングされるダイボンディング領域を有し、
前記ダイボンディング領域には、1つの凹部が形成され、
前記ダイボンディング材は、前記半導体チップの裏面の全域と前記ダイボンディング領域との間に介在し、
平面視において、前記半導体チップの裏面の全ての角が、前記ダイボンディング領域において前記凹部が形成されていない領域に配置されている、
半導体装置。」である点。

[相違点]本願補正発明では、凹部の開口面積を「前記半導体チップの裏面の面積の10%以上」とし、また、「前記凹部の開口面積が前記半導体チップの裏面の面積の70%以下であることにより、前記アイランドの表面の平坦さが確保されている」としているのに対して、引用発明では、「半導体ペレツトの接着面より小さい」凹部とするにとどまり、半導体ペレツト(半導体チップ)の裏面と凹部開口との面積比に係る具体的な数値、並びに、電極板(アイランド)の平坦性に関する言及はない点。

5.当審の判断
上記の[相違点]を検討すると、
引用発明は、従来の接着部構造に係る「加熱ストレスの如き横方向からの剪断力に対して機械的強度が弱いという欠点」に対処して、「半導体ペレツトと電極板との間に存在する導電ペースト層の厚さは凹部の深さより大きいもの」にしようとするものであって、当該凹部の開口面積が小さすぎれば、上記の剪断力に抗しうるに十分な機械的強度を実現することは難しいと解される(記載事項ロ、ハ参照)。一方、凹部の開口面積が半導体ペレツト裏面の面積と殆ど変わらないほどに大きければ、「凹部の容積よりも多い導電ペースト」を用いて半導体ペレツトと電極板とを接着する際に、Agペースト層に加えられた押圧力で「半導体ペレツトと電極板との間から逃げたAgペーストが半導体ペレツトの側面に付着して半導体装置の特性を劣化するおそれ」を回避することが難しくなるとも解される(記載事項ニ、ロ参照)。
そうすると、引用発明では「半導体ペレツトの接着面より小さい」凹部とするにとどまるとしても、上述のとおり、凹部開口面積の適切な下限や上限を考慮する必要があることは明らかであるし、本願補正発明で指摘されている下限の10%、上限の70%という数値も、当業者にとって、到底想到しがたいというほどのものではない。特に、上限の70%という数値は、半導体ペレツト裏面の平面形状が矩形状であって、凹部開口の形状もこれと相似であれば、一辺の長さあたりでは約83.6%とすることになり、上限の値として常識的な範囲を超えるようなものとは認め難い。
しかも、電極板(アイランド)の平坦性を保持するという技術課題も、当該技術分野においては一般的なものであって(同じく、本願明細書で先行技術を開示する文献とされている、特開2000-269401号公報【0004】等の記載参照)、凹部の開口面積や深さを、電極板の平坦性の確保につながる機械的強度を考慮して設定することが、当業者にとって格別想到しがたい設計事項ともいえない。
したがって、本願補正発明は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

6.独立特許要件の欠如に伴う本件手続補正の却下
上記検討から明らかなように、本願補正発明は、上記引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件手続補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同第126条第5項の規定に違反することになり、同第159条第1項において一部読み替えて準用する同第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

【第3】本願の発明について
1.本願の発明
平成22年4月28日付けの本件手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の発明は、本件手続補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップがダイボンディング材を介してダイボンディングされるアイランドと、
前記アイランドの周辺に配置されたリード端子と、
前記半導体チップと前記リード端子との間にのみ設けられたワイヤとを備えた半導体装置であって、
前記アイランドは、前記半導体チップがダイボンディングされるダイボンディング領域を有し、
前記ダイボンディング領域には、前記半導体チップの裏面の面積の10%以上の開口面積を有する1つの凹部が形成され、
前記ダイボンディング材は、前記半導体チップの裏面の全域と前記ダイボンディング領域との間に介在し、
前記凹部の開口面積が70%以下であることにより、前記アイランドの表面の平坦さが確保されていることを特徴とする半導体装置。 」

2.引用例、その記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項及び引用発明は、上記【第2】の3.に記載したとおりである。

3.対比・判断
上記の本願請求項1の発明と、上記の【第2】で検討した本願補正発明とを比較すると、上記【第2】の2.(1)で指摘したところから明らかなように、本願請求項1の発明の構成に、上記下線部の限定事項を加えたものが本願補正発明にあたる。
そうすると、本願請求項1の発明を更に限定した発明である本願補正発明が、上記【第2】の3.以下に記載したとおり、上記の引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願請求項1の発明も本願補正発明と同じく、上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4.むすび
上記のとおり、本願請求項1に係る発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願請求項2以下に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-08 
結審通知日 2011-07-14 
審決日 2011-07-27 
出願番号 特願2005-284284(P2005-284284)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷部 智寿弘實 由美子  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 栗山 卓也
小関 峰夫
発明の名称 半導体装置  
代理人 稲岡 耕作  
代理人 川崎 実夫  

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