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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1243962
審判番号 不服2010-392  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-08 
確定日 2011-09-22 
事件の表示 特願2007-501260号「圧送ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月15日国際公開、WO2005/084988、平成19年 9月 6日国内公表、特表2007-525372号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年2月1日[パリ条約による優先権主張、2004年3月3日、ドイツ連邦共和国]を国際出願日とする出願であって、平成21年9月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年1月8日に拒絶査定に対する不服の審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正(前置補正)がなされたものである。

2.平成22年1月8日付け手続補正の適否
この補正は、審査官から不明りようであると指摘された請求項2,5,6及び8について補正したものであり、明りようでない記載の釈明を目的としているので、適法なものである。

3.本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成22年1月8日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項によって特定されるものと認められ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりである。
「【請求項1】
圧送ユニットであって、バッフルポットと、該バッフルポット内に配置された燃料ポンプと、バッフルポットの底部に配置されたフィルタとが設けられており、該フィルタが、バッフルポットの底部に配置された流入開口に前置されている形式のものにおいて、バッフルポット(5)の、タンク底部(9)に向かい合った面に、通路(11)が配置されており、燃料が、バッフルポット(5)の周辺から流入開口(8)に流れることができるように、通路(11)が形成されており、該通路(11)内に、フィルタ(14)を形成する成形エレメント(13)が配置されていることを特徴とする、圧送ユニット。」

4.原査定の拒絶の理由に引用した文献
(1)本願の優先権主張日より前に頒布された、原査定で引用された刊行物1である特表平10-504086号公報(以下「引用例」という)には、貯蔵タンクから内燃機関に燃料を供給するための装置に関して、図面とともに次の技術的事項が記載されている。

(ア)「発明の利点
これに対して、請求項1に記載した特徴を有する、貯蔵タンクから内燃機関に燃料を供給するための、本発明による装置は、フィルタの環状の成形部をせき止めボックスの底部に直接配置したことによって、噴射ポンプの吸込み開口を燃料タンクの底部の近くに配置することができるので、ほとんど空のタンクにおいても、濾過された燃料を貯蔵タンクからせき止めボックス内に確実に吸込むことが保証される。しかも、フィルタとせき止めボックスとを一体的に構成したことによって、付加的な組み立て作業が省略され、ひいては製造コストが著しく低減された。」(第4頁第28行目?第5頁第8行目)

(イ)「実施例の説明
図1に示したフィード装置は、燃料貯蔵タンク1内に挿入されたせき止めボックス3を有しており、該せき止めボックス3は、このせき止めボックス3の底部8に作用する圧縮コイルばね7によってその底部8が、貯蔵タンク1の底部9に当接して保持されている。」(第6頁第7行目?同頁第11行目)

(ウ)「この場合、図2及び図3に詳しく示した、噴射ポンプ61の吸込み開口65は、燃料だけが燃料タンクの底部9に近い領域から吸い上げられるように配置されている。しかも噴射ポンプ61は、半径方向で外方に、せき止めボックス3の底部8から軸方向に突出する壁部71によって取り囲まれており、この壁部71は、半径方向内方に存在する燃科だけを吸い上げることを保証する。この吸い込まれた燃料を濾過するために、図2に示した第1実施例においては、せき止めボックス3の底部8の縁部に、せき止めボックス8から軸方向に突き出る、有利には鋭い縁部状の複数の歯を備えた3つの環状の成形部が配置されており、これらの歯は、互いにずらして配置されていて、これによってフィルタの環状の成形部67内に形成された吸込み室69のためのラビリンスフィルタを形成し、この場合、歯67の端面と壁部71の端面とは、貯蔵タンク1の底部9に気密に保持されている。」(第8頁第1行目?同頁第12行目)

上記引用例の記載事項(ア)?(ウ)及び図面に示された内容を総合すると、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という)が記載されていると認められる。

「貯蔵タンク1から内燃機関に燃料を供給するための装置であって、せき止めボックス3と、該せき止めボックス3内に配置されたフィード装置11と、せき止めボックス3の底部8に配置されたラビリンスフィルタとが設けられており、該ラビリンスフィルタが、せき止めボックス3の底部8に配置された吸込み開口65に前置されている形式のものにおいて、せき止めボックス3の、タンク底部9に向かい合った面に、吸込み室69が配置されており、燃料が、せき止めボックス3の周辺から吸込み開口65に流れることができるように、吸込み室69が形成されており、該吸込み室69の縁部に、ラビリンスフィルタを形成する成形部67が配置されていることを特徴とする、貯蔵タンク1から内燃機関に燃料を供給するための装置。」

5.対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「貯蔵タンク1から内燃機関に燃料を供給するための装置」は本願発明の「圧送ユニット」に相当する。以下同様に、「せき止めボックス3」は「バッフルポット(5)」に、「フィード装置11」は「燃料ポンプ」に、「タンク底部9」は「タンク底部(9)」に、「ラビリンスフィルタ」は「フィルタ」に、「吸込み開口65」は「流入開口(8)」に、「成形部67」は「成形エレメント(13)」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「吸込み室69」はフィルタの環状の成形部67内に形成されており、歯67の端面と壁部71の端面とで、貯蔵タンク1の底部9に気密に保持されている。そして、この壁部71は半径方向内方に存在する燃料だけを吸い上げることを保証するものである(上記4.(1)(ウ)参照)から、タンク底部9の燃料が吸込み開口65に流れる「通路」の機能を有しているといえ、本願発明の「通路(11)」に相当している。

引用発明の「吸込み室69の縁部」と本願発明の「通路(11)内」とはともに「通路」という概念で共通する。

そうすると、両者は次の点で一致し、
「圧送ユニットであって、バッフルポットと、該バッフルポット内に配置された燃料ポンプと、バッフルポットの底部に配置されたフィルタとが設けられており、該フィルタが、バッフルポットの底部に配置された流入開口に前置されている形式のものにおいて、バッフルポットの、タンク底部に向かい合った面に、通路が配置されており、燃料が、バッフルポットの周辺から流入開口に流れることができるように、通路が形成されており、該通路に、フィルタを形成する成形エレメントが配置されていることを特徴とする、圧送ユニット。」

以下の点で相違する。
相違点:「通路」について、本願発明は「成形エレメント(13)」が「通路(11)内」に配置されているのに対し、引用発明の「成形部67」は「吸込み室69の縁部」に配置されている点。

6.当審の判断
本願発明の「成形エレメント(13)」も引用発明の「成形部67」もフィルタとして機能するものであり、燃料が「流入開口(8)」や「吸込み開口65」に吸い込まれるまでの通路の経路途中にあればよいものであるので、作用効果上、「吸込み室69の縁部」としても「通路内」としても格別な差異は認められない。
そうすると、引用発明の「成形部67」が「吸込み室69」(「通路」に相当)の「縁部」に配置されるのを「吸込み室69内」とすることにより、上記相違点に係る構成とすることは当業者であれば容易に想到し得るものである。

したがって、本願発明は、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

7.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-15 
結審通知日 2011-04-21 
審決日 2011-05-09 
出願番号 特願2007-501260(P2007-501260)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西本 浩司  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 小関 峰夫
栗山 卓也
発明の名称 圧送ユニット  
代理人 久野 琢也  
代理人 星 公弘  

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