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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G10K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G10K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G10K
管理番号 1243965
審判番号 不服2010-4007  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-24 
確定日 2011-09-22 
事件の表示 特願2001- 33372「情報端末、音楽データ購入方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月23日出願公開、特開2002-236489〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願の手続の経緯の概要は以下のとおりである。
出願 平成13年 2月 9日
拒絶理由通知 平成21年 5月21日
補正書 平成21年 7月27日
拒絶理由通知 平成21年 8月18日
補正書 平成21年10月26日
(この補正書は却下されている)
補正却下の決定 平成21年11月11日
拒絶査定 平成21年11月11日
審判請求 平成22年 2月24日
補正書 平成22年 2月24日
審尋 平成22年11月 4日
回答書 平成23年 1月11日

第2 平成22年2月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年2月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
平成22年2月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1は、以下のとおりである。
「【請求項1】 所定の音楽に対応する試聴用音楽データの入手要求を音楽配信センターへ送信する手段と、
前記入手要求に対応する試聴用音楽データを受信する手段と、
該受信した試聴用音楽データを記憶する手段と、
該記憶した試聴用音楽データを再生する手段と、
前記記憶した試聴用音楽データの再生終了後、当該記憶した試聴用音楽データを消去する手段と、
前記所定の音楽に対応する販売用音楽データの購入要求を前記音楽配信センターへ送信する手段と、
前記購入要求に対する販売用音楽データを受信する手段と、
該受信した販売用音楽データを記憶する手段と、
を備えたことを特徴とする情報端末。」

2.補正の適否について
(1)限定的減縮でないことについて
本件補正は、発明を特定する事項として「前記記憶した試聴用音楽データの再生終了後、当該記憶した試聴用音楽データを消去する手段」を新たに追加し、特許請求の範囲を減縮するものである。
しかし、この追加は、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではないので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する要件を満たしていないものである。
すなわち、試聴用音楽データを消去する手段は、補正前の特許請求の範囲には、何ら記載がなかった事項であるし、試聴用音楽データを消去する手段以外の発明特定事項にそのような試聴用音楽データを消去する手段が実質的に含まれているものでもないので、本件補正は、補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではない。

また、請求項を削除した結果、いずれかの請求項が繰り上がって補正後の請求項1となったものでもなく、本件補正が、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれであるともすることはできないから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号、第3号、第4号に規定するいずれの要件をも満たしていないものである。

以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号の規定に違反するものであるから、同法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(2)独立特許要件違反について(特許法第36条第6項第1号違反)
仮に、本件補正が限定的減縮に該当し、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の要件を満たすものであるとしても、以下の理由により、独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は却下すべきものである。

本件補正により補正された「前記記憶した試聴用音楽データの再生終了後、当該記憶した試聴用音楽データを消去する手段」に関して、明細書の発明の詳細な説明中に、発明の実施形態として、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。
「【0020】・・・(中略)・・・なお、試聴用音楽データを出力中に車両24の搭乗者が拒否入力手段2を押した場合、及び試聴用の音楽データの出力終了後一定時間経過内に選択入力手段1を押さなかった場合、制御手段7は記憶手段8に記憶した試聴用音楽データを消去する。」
「【0022】・・・(中略)・・・なお、試聴用音楽データを出力中に車両24の運転者が拒否入力手段2を押した場合、及び試聴用の音楽データの出力終了後一定時間経過内に選択入力手段1を押さなかった場合、制御手段7は記憶手段8に記憶した試聴用音楽データを消去する。」

上記の箇所に記載された事項は、試聴用音楽データの出力終了後一定時間内に選択入力手段が操作されなかった場合、あるいは、拒否入力手段が操作された場合に、記憶手段に記憶した試聴用音楽データを消去することである。
つまり、発明の詳細な説明には、試聴用音楽データをある条件下で消去することが記載されているのであって、試聴用音楽データの出力が終了すれば直ちに試聴用音楽データを消去することは記載されてはいないし、示唆もされていない。
しかし、本件補正によって請求項1に追加された事項である「前記記憶した試聴用音楽データの再生終了後、当該記憶した試聴用音楽データを消去する手段」には、当該手段が試聴用音楽データの再生終了後に直ちに試聴用音楽データを消去することまで含んでいる。
そうすると、補正後の請求項1に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載した以上の事項を含むことになるから、補正後の請求項1に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載したものであるとすることはできないことになる。
それゆえ、本件補正によって補正された請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものであるから、本願は独立して特許を受けることができないものである。

したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(3)独立特許要件違反について(特許法第29条第2項違反)
さらに、仮に、本件補正が限定的減縮に該当し、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の要件を満たすものであり、かつ、本件補正によって補正された請求項1の記載が、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものでないとしても、次項の3.以降に示す理由により、依然として本願は独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は却下すべきものである。

3.本願補正発明
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、以下のとおりである(再掲)。
「【請求項1】 所定の音楽に対応する試聴用音楽データの入手要求を音楽配信センターへ送信する手段と、
前記入手要求に対応する試聴用音楽データを受信する手段と、
該受信した試聴用音楽データを記憶する手段と、
該記憶した試聴用音楽データを再生する手段と、
前記記憶した試聴用音楽データの再生終了後、当該記憶した試聴用音楽データを消去する手段と、
前記所定の音楽に対応する販売用音楽データの購入要求を前記音楽配信センターへ送信する手段と、
前記購入要求に対する販売用音楽データを受信する手段と、
該受信した販売用音楽データを記憶する手段と、
を備えたことを特徴とする情報端末。」

4.引用刊行物
原査定の拒絶理由に引用された特開2000-339852号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。

(1)「【0002】
【従来の技術】近年インターネットなどのネットワーク技術の発展に伴い、様々な情報をネットワークを介して送信する技術か提案されている。例えば、楽曲や映像を所定のサンプリング周期でサンプリングしてデジタル信号に変換し、これをネットワークを介して配信することが可能となっている。視聴者は、家庭に居ながらにし、最新の楽曲や映像を手に入れることができる。この場合、有料で配信される情報については、予めその一部がサンプルデータとして用意されており、視聴者は、このサンプルをダウンロードして鑑賞してから、購入を決定することが行なわれている。
【0003】また、CD-ROMの製造コストの低さに着目し、様々な画像や楽曲などの一部をサンプルとしてCD-ROMに記録し、このCD-ROMを配布することも行なわれている。配布を受けた視聴者は、サンプルを見たり聞いたりして、気に入った場合には、料金を支払い、ネットワークから元の画像や楽曲などの情報を取得することになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる情報配信のシステムでは、最終的に配信されるデータに対してサンプル用のデータを別に作成しなければならないという問題があった。この場合のサンプルは、楽曲であれば、イントロ以下の数十秒間の楽曲を含んだデータであったり、サンプリング周波数を低減して音質を低くしたデータであったりするが、いずれにせよ、元のデータとは別に作成しなければならない。また、視聴者の側からすると、サンプルデータをネットワークからダウンロードして鑑賞し、購入を決定した後、再度ネットワークを介して原情報を入手することになり、同じ楽曲に対して2度、ダウンロードの手間をとらなくてはならないという問題があった。」

(2)上記(1)には、(ア)デジタル信号に変換された楽曲をネットワークを介して家庭に配信すること、(イ)視聴者はサンプルデータをダウンロードして鑑賞してから購入を決定すること、(ウ)購入を決定した後に再度ネットワークを介して原情報(原楽曲)を入手することが、直接的に記載されている。
上記(1)には、直接的な記載はないものの、技術常識を踏まえれば、(エ)ネットワークを介して視聴者にサンプルデータや原楽曲を届けるためには、そのための配信設備を備えられていること、(オ)視聴者側の情報端末には、試聴用音楽データや販売用音楽データを受信する手段を備えていること、(カ)視聴者側の情報端末には、音楽データを受信するための要求を送信する手段を備えていること、(キ)受信した音楽データをいったん記憶して再生することがごく普通に行われていることから、視聴者側の情報端末には、音楽データを記憶する手段と記憶した音楽データを再生する手段とを備えていることを、上記(1)に記載された技術事項から読み取ることができる。

(3)以上を総合すると、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「試聴用音楽データの入手要求を配信設備へ送信する手段と、
前記入手要求に対応する試聴用音楽データを受信する手段と、
該受信した試聴用音楽データを記憶する手段と、
該記憶した試聴用音楽データを再生する手段と、
販売用音楽データの購入要求を前記配信設備へ送信する手段と、
前記購入要求に対する販売用音楽データを受信する手段と、
該受信した販売用音楽データを記憶する手段と、
を備えた情報端末。」

5. 対比・判断
(1)本願補正発明と引用発明との対比
試聴用音楽データの入手のためには、その音楽が何であるかの特定ができなければ入手ができないから、明記されないまでも、引用発明は、その音楽を特定するための「所定の音楽に対応する」試聴用音楽データの入手要求を送信するものととらえることが相当である。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。
[一致点]
「 所定の音楽に対応する試聴用音楽データの入手要求を音楽配信センターへ送信する手段と、
前記入手要求に対応する試聴用音楽データを受信する手段と、
該受信した試聴用音楽データを記憶する手段と、
該記憶した試聴用音楽データを再生する手段と、
前記所定の音楽に対応する販売用音楽データの購入要求を前記音楽配信センターへ送信する手段と、
前記購入要求に対する販売用音楽データを受信する手段と、
該受信した販売用音楽データを記憶する手段と、
を備えたことを特徴とする情報端末。」

[相違点]
本願補正発明は、記憶した試聴用音楽データの再生終了後、当該記憶した試聴用音楽データを消去する手段を備えるのに対して、
引用発明は、そのような試聴用音楽データを消去する手段を備えていない点。

(2)相違点に対する判断
試聴用音楽データは、販売用音楽データを受信すれば不要となるものであり、販売用音楽データを受信しない場合であっても、不要となった試聴用音楽データを保存し続けて音楽データの保存領域を無用に使用することも妥当ではない。
音楽データの保存領域を無用に使用することを許容して、試聴用音楽データを消去しないという方策も取り得るが、試聴用音楽データを消去しなければ保存領域を無用に使用し続けることが明らかであるから、引用発明において、記憶した試聴用音楽データの再生終了後、不要になった当該記憶した試聴用音楽データを適切なタイミングで消去するための手段を備えるようにすることに、何ら格別の困難性があるとすることはできない。

また、仮に、音楽データの消去が音楽データの不法な利用を抑制するためのものであるとしたら、そのようなことは周知(例えば、審尋において示した特開平10-108161号公報や特開平11-252530号公報を参照。)のことであり、その必要性は、音楽データが試聴用であると販売用であるとを問わないことであるから、引用発明において、記憶した試聴用音楽データの再生終了後に、当該記憶した試聴用音楽データを消去する手段を設けることに何ら格別の困難性はない。

なお、試聴用音楽データを消去する理由、あるいは消去することによる効果は、本願の明細書中に何ら記載されていないが、審判請求人は、回答書において、「本願発明は、試聴用音楽データに限り、再生終了後、当該記憶した試聴用音楽データを消去することで、ユーザが自由に記憶した試聴用音楽データを再生することが出来なくなり、販売用音楽データの必要性を明確にすることが出来るという優れた効果を奏します。」と主張している。
しかし、本願の明細書の段落【0021】に、「なお音楽配信センターから送信される音楽データにおいて、1つの音楽を帯域分割などした形で複数のファイルに分割して符号化して保存しておき、試聴用音楽データの配信時には帯域分割した1部のファイルのみを転送し、購入時に残りファイルを転送するようにするのがよい。このようにすれば試聴時における配信ファイル容量を、1音楽に要する符号量より小さくすることにより、試聴時における無線通信時間を短縮することが可能となる。また、試聴用音楽データの音質を劣化させることにより、音楽の不当保存に対する損害を最小限に抑えることが可能となる。」と記載されているように、試聴用音楽データは、販売用音楽データよりも音質が劣化したものととらえることができるから、試聴用音楽データが消去されずに残っていたからといって、販売用音楽データの必要性が減じるものでもないから、審判請求人の主張を首肯することはできない。
仮に、試聴用音楽データの音質と販売用音楽データの音質とが変わらないものであったとしても、上記したように、音楽データの保存領域の観点から、あるいは、音楽データの不法な利用の抑制の観点から、試聴用音楽データを消去することに格別の困難性はないものであって、審判請求人が主張する効果は、これに付随して自ずと生まれる効果であって、格別のものではない。

したがって、仮に、本件補正が適法であったとしても、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は却下すべきものである。

6.まとめ
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号の規定に違反するものであり、また、仮にその違反がなくとも、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明の認定
平成22年2月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成21年7月27日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「【請求項1】 所定の音楽に対応する試聴用音楽データの入手要求を音楽配信センターへ送信する手段と、
前記入手要求に対応する試聴用音楽データを受信する手段と、
該受信した試聴用音楽データを記憶する手段と、
該記憶した試聴用音楽データを再生する手段と、
前記所定の音楽に対応する販売用音楽データの購入要求を前記音楽配信センターへ送信する手段と、
前記購入要求に対する販売用音楽データを受信する手段と、
該受信した販売用音楽データを記憶する手段と、
を備えたことを特徴とする情報端末。」

2.引用刊行物
原審拒絶理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記第2 4.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明の限定事項である構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2 5.に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.まとめ
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-20 
結審通知日 2011-07-26 
審決日 2011-08-09 
出願番号 特願2001-33372(P2001-33372)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G10K)
P 1 8・ 121- Z (G10K)
P 1 8・ 572- Z (G10K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨澤 直樹  
特許庁審判長 吉村 博之
特許庁審判官 板橋 通孝
溝本 安展
発明の名称 情報端末、音楽データ購入方法  
代理人 佐伯 義文  
代理人 佐伯 義文  
代理人 大房 直樹  
代理人 志賀 正武  
代理人 志賀 正武  
代理人 志賀 正武  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 大房 直樹  
代理人 大房 直樹  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 佐伯 義文  

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