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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1243967 |
審判番号 | 不服2010-5286 |
総通号数 | 143 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-03-10 |
確定日 | 2011-09-22 |
事件の表示 | 特願2003-385957「通信装置及び通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月28日出願公開、特開2005-115896〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成15年10月10日の出願であって、平成21年3月10日付け拒絶理由通知に対し、平成21年5月13日付けで手続補正がされたが、平成21年8月6日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成21年10月15日付けで手続補正がされたが、平成21年12月17日付けで拒絶査定され、これに対し、平成22年3月10日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成22年3月10日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年3月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正前及び本件補正後の本願発明 本件補正は、特許請求の範囲及び明細書についてするもので、特許請求の範囲については、 (1)本件補正前の請求項1?3に発明特定事項として記載されていた「制御部」について、「携帯電話機会社の天候サーバとインターネットで接続し、キー操作で日付を入力すると、天候に応じて顔画像の表情を変えて表示したり、その日の気分に応じて顔画像をキー操作で変化させたり、カレンダーの一部のみ拡大表示したりする」との事項を付加し、 (2)本件補正前の請求項6?8に、新たな発明特定事項として、「前記制御部は、携帯電話機会社の天候サーバとインターネットで接続し、キー操作で日付を入力すると、天候に応じて顔画像の表情を変えて表示したり、その日の気分に応じて顔画像をキー操作で変化させたり、カレンダーの一部のみ拡大表示したりする」との要件を付加するものである。 2.本件補正の適否 そこで、上記(1)(2)の補正が、特許法第17条の2第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものであるか否か検討すると、 (1)について、特許法第17条の2第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)には、「請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。」と規定されているところ、本件補正前の請求項1?3に記載された発明の解決すべき課題は、メッセージの本文を読まずに読者が瞬時に感情を理解することを可能とし、また、アミューズメント性を向上させる(本願明細書【0038】段落参照。)ことにあるのに対し、本件補正により付加された事項は、「天候」や「その日の気分」に応じて顔画像の表情を変化させることや、カレンダーの表示に関する事項を解決すべき課題としている。 よって、本件補正後の請求項1?3に記載された発明の解決すべき課題は、本件補正前の請求項1?3に記載された発明の解決すべき課題とは異なるものである。 次に(2)について、本件補正前の請求項6?8には「制御部」が発明特定事項として記載されていないから、請求項6?8についての本件補正は、「請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの」となっていない。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものであるとはいえない。 また、本件補正は、特許法第17条の2第4項第1号(請求項の削除)、第3号(誤記の訂正)及び第4号(明りょうでない記載の釈明)のいずれにも該当しない。 従って、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.独立特許要件について予備的検討 上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるが、仮に、本件補正が特許法第17条の2第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものに該当するとした場合、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。 4.本願補正発明 本願補正発明は、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 画像を記録するための画像記録部と、 文字メッセージを会話形式で送受信する送受信部と、 前記送受信部で受信した文字メッセージ及び前記画像記録部内における前記文字メッセージに関連した画像を表示する表示部と、 キーワードと顔の表情等との関係を規定するルールが無かった場合、チャット専用画面に顔画像の表示を行うと共に、受信メッセージを表示し、前記ルールが有った場合、チャット専用画面の顔画像に変化をつけながら表示するとともに、受信メッセージを表示させる制御部と、 を備え、前記画像は、顔画像、アニメーションもしくはイラストレーションであり、顔のパーツ画像を含み、前記顔のパーツ画像は少なくとも目、眉毛、口、及び怒り筋のパターンであり、前記受信メッセージの内容に応じて顔の大きさを変え、 前記制御部は、携帯電話機会社の天候サーバとインターネットで接続し、キー操作で日付を入力すると、天候に応じて顔画像の表情を変えて表示したり、その日の気分に応じて顔画像をキー操作で変化させたり、カレンダーの一部のみ拡大表示したりすることを特徴とする通信装置。」 5.引用例 これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、倉持陽子、藤代一成、市川哲彦、C-mail:コミックを用いた電子メールコミュニケーションの可視化、情報処理学会研究報告(97-CG-85)、社団法人情報処理学会、1997年4月18日、第97巻、第34号、p.19?24(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。 (イ)「2.2 C-mailとは C-mailは相互の引用関係などを判断しながら,複数の関連あるメールを統合し,対応するcomicを自動作成する.C-mailの適用例を図2に示す.E-mail:2,E-mail:3がそれぞれ前のメールの内容を引用しているのに比べて,C-mailを適用させた後のcomicではそれらの引用がとり払われている.また,comic 1コマ目右側のキャラクタが泣いているのは,E-mail:2中にあるスマイリー“(;_;)”を反映しているためである.」(第21頁左欄第6?15行) (ロ)「3 C-mailシステム 3.1 C-mailシステムの構成 C-mailシステムをメール文処理部,comic変換部,comic表示部の大きく3つに分ける(図3参照).なお,本項では2.2項で用いた適用例をもとに説明していく(図2参照). C-mailシステムは新たに到着したメールl通ごとに次の処理を実行する: 1.メール文処理部:受け取ったメールを吹き出しに挿入するまとまりに分割し,引用関係を判断しながら,そのテーマごとに統合する. その結果,整流化されたものをメールデータベースに格納する. 図4に,図2に対応するメールデータを示す. 先頭にテーマ名,続いてそれぞれ吹き出しに挿入する文とともにFrom:とMessage-IDの情報を格納している. 2.comic変換部:メールデータベースからデータを取りだし,知識ベースを用いてcomicの構成を決定し,それをスクリプトデータベースに格納する.知識ベースには記号,スマイリー[2],その他E-mail特有の表現に対応する処理の情報が格納されている(図5参照). 図6は,図2に対応するスクリプトデータの一部を表している. 3.comic表示部:スクリプトデータベースのデータをもとに,画像データベースから必要な画像を取り出しcomicを表示する.画像データベースにはキャラクタの顔や体の画像が格納されており,2つの画像を組み合わせることでさまざまな表情・向きのキャラクタを形成できる(図7参照). なお,comic変換部・comic表示部の実現には,Comic Chatの技術を参考にしている.」(第21頁右欄第20行?第22頁右欄第6行) (ハ)「3.2 C-mailシステムの実装 現在UNIX上のX Window Systemを用いて実装を進めている. C-mailシステムが処理可能なメールかどうかはX-C-mail:で始まるヘッダー行の有無で判断している.また,このヘッダーの直後に書かれているものを,そのメールのテーマとして扱う. 処理可能なメールの着信と同時に,C-mailのメール文処理部とcomic変換部が処理を自動的に開始する.これは,各ユーザのホームディレクトリにある.forwardファイルでプログラムの起動を指定することによって行なっている.メール文処理部は,引用かあるいは新たに書き加えられた内容かを,行頭の>の有無で判断し,引用の直後に書かれている文章はその引用の返答であると認識する.comic変換部における各ユーザに対応するキャラクタの選択は,自動的に行なわれるが,ユーザが明示的に決定することもできる. またcomic形式の出力を見たいときには,ユーザがcomic表示部のみを実行し,指定されたテーマのcomicを見ることができる. 図8に,実際にcomic表示部を実行させている画面を示す.左側奥のウィンドウでcomic表示部の起動コマンドを実行し,見たいテーマ名の入力を行なうと,右側手前のcomicを表示するウインドウが出現する.その後の操作(ページの変更,ヘルプの表示など)はコマンド入力により行なう.なお,comicの詳細については次節で解説する.」(第22頁右欄第7行?第23頁左欄第15行) (ニ)「5 考察 本節では, C-mailを利用することで1節で挙げたE-mailの問題点をどのくらい解決可能かを示す. 問題点1については,吹き出しの文字の大きさや,キャラクタの表情が変わることなどで,ある程度送り手のニュアンスや抑揚が表現できたと考えられる.」(第23頁右欄第10?16行) (ホ)「今後の課題としては,以下の項目が挙げられる.ここで,それぞれの項目末尾の[MP],[CT],[CD] はそれぞれメール文処理部,comic変換部,comic 表示部に関係する課題であることを示している. ・自然言語処理を用い,より柔軟なメールの統合,適切なキャラクタの表情選択,comic構成を目指す[MP],[CT] ・E-mailの内容解析をさらに進め,知識ベースを拡充する[CT] ・comicの絵の質を向上させる(コマ割りの工夫, カメラのズーム率・アングルを変える)[CT] ・画像データベースを拡充する(背景の追加.キャラクタの体に動きをつける.キャラクタの画像としてユーザの似顔絵[5]の利用)[CD] ・・・(中略)・・・ ・ comic表示部にメール送信機能をもたせることで,C-mailでcomicを見たうえでメールを送るという2段階の作業を簡略化する[CD] 6 おわりに E-mailによるコミュニケーションをcomicの形式で表現するシステムC-mailの概要を報告した.C-mailは,E-mailよりも増強されたコミュニケーションの手法であると同時に,ドキュメントの集合を効果的な2Dグラフィクスに変換することから「情報の可視化」[6]のための手法の一種であるとも位置づけることができる.」(第24頁左欄第14行?同頁右欄第8行) また、第22頁図5の「知識ベースのデータ例」には、 「(;_;) ↓ キャラクタの表情 泣き顔 #(行頭) ↓ 吹き出しの尾 楕円 (^o^) ↓ : : 」 と記載されている。 また、第22頁図6の「スクリプトデータベースのデータ例」には、 「左側 キャラクタ 名前 →boy 表情 →ノーマル 大きさ →中 吹き出し → 「C-mailシステム の完成までどのくらい かかりそうですか?」 右側 キャラクタ :」 と記載されている。 上記引用例記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「C-mailシステムは、メール文処理部,comic変換部,comic表示部に分けられ、新たに到着したメールl通ごとに処理を実行するが、メール文処理部では、受け取ったメールを吹き出しに挿入するまとまりに分割し,引用関係を判断しながら,そのテーマごとに統合し、その結果,整流化されたものをメールデータベースに格納し、 comic変換部では、メールデータベースからデータを取りだし,知識ベースを用いてcomicの構成を決定し,それをスクリプトデータベースに格納し、知識ベースには記号,スマイリー,その他E-mail特有の表現に対応する処理の情報が格納されており、例えば、スマイリー“(;_;)”に対応する情報は「キャラクタの表情 泣き顔」であり、comic表示部では、スクリプトデータベースのデータをもとに,画像データベースから必要な画像を取り出しcomicを表示し、画像データベースにはキャラクタの顔や体の画像が格納されており,2つの画像を組み合わせることでさまざまな表情・向きのキャラクタを形成でき、例えば、 「左側 キャラクタ 名前 →boy 表情 →ノーマル 大きさ →中 吹き出し → 『C-mailシステムの完成までどのくらいかかりそうですか?』」とのスクリプトデータベースのデータをもとに、表情が「ノーマル」の顔の画像と体の画像とを組み合わせ、大きさ「中」でキャラクタを表示し、また、E-mail中にあるスマイリー“(;_;) ” を反映して、キャラクタが泣いているのようにcomicを自動作成し、ユーザがcomic表示部の起動コマンドを実行し,見たいテーマ名の入力を行なうと、comicを表示するウインドウが出現し、指定されたテーマのcomicを見ることができ、キャラクタの表情が変わることなどで,ある程度送り手のニュアンスや抑揚が表現でき、キャラクタの画像として似顔絵を利用すること、及びcomic表示部にメール送信機能をもたせることで,C-mailでcomicを見たうえでメールを送るという2段階の作業を簡略化することが課題とされている、電子メールコミュニケーションの可視化のためのC-mailシステム。」 6.対比・判断 そこで、本願補正発明と、引用発明とを比較する。 引用発明の「画像データベース」は、「キャラクタの顔や体の画像が格納されて」いるから、本願補正発明の「画像を記録するための画像記録部」に相当する。 次に、電子メールコミュニケーションとは、文字メッセージを会話形式でやり取りするものであるから、引用発明の「電子メールコミュニケーションの可視化のためのC-mailシステム」において、「新たに到着したメール」を受け取る部分及び「メールを送る」部分が、本願補正発明の「文字メッセージを会話形式で送受信する送受信部」に相当する。 次に、引用発明の「C-mailシステム」おいて、「受け取ったメールを吹き出しに挿入」するとともに、「記号,スマイリー,その他E-mail特有の表現に対応する処理の情報」を格納した「知識ベース」を用いて「comicの構成を決定し,それをスクリプトデータベースに格納し」、「スクリプトデータベースのデータをもとに,画像データベースから必要な画像を取り出しcomicを表示」する部分が、本願補正発明の「前記送受信部で受信した文字メッセージ及び前記画像記録部内における前記文字メッセージに関連した画像を表示する表示部」に相当する。 次に、本願明細書第【0027】段落に「キーワードはメッセージ中に示されるマークであり」と記載され、本願明細書第【0036】段落には、キーワードとして「顔文字」が例示されているから、引用発明において、「記号,スマイリー,その他E-mail特有の表現」が、本願補正発明の「キーワード」に相当する。 次に、引用発明において、例えば「スマイリー“(;_;)”」に対応させて「キャラクタの表情 泣き顔」との情報を格納する「知識ベース」が、本願補正発明の「キーワードと顔の表情等との関係を規定するルール」に相当する。 次に、引用発明において「メールを吹き出しに挿入」して表示することが、本願補正発明の「受信メッセージを表示」することに相当する。 次に、引用発明において「ウインドウ」が本願補正発明の「画面」に相当する。 次に、引用発明おいて、E-mail中に「キャラクタの表情」に関係しない「記号」、「その他E-mail特有の表現」が含まれている場合には、表情が「ノーマル」の顔の画像と体の画像とを組み合わせたキャラクタが表示されることは明らかである。よって、引用発明の「C-mailシステム」おいて、「知識ベース」を用いて、E-mail中に「キャラクタの表情」に関係しない「記号」、「その他E-mail特有の表現」が含まれている場合、「ノーマル」な表情のキャラクタと共に「メールを吹き出しに挿入」して「ウインドウ」に表示し、E-mail中に「スマイリー“(;_;)”」が含まれている場合、「E-mail中にあるスマイリー“(;_;)”を反映して、キャラクタが泣いているのように」、「泣き顔」の顔の画像を用いたキャラクタと共に「メールを吹き出しに挿入」して「ウインドウ」に表示する「comic変換部」及び「comic表示部」と、本願補正発明の「キーワードと顔の表情等との関係を規定するルールが無かった場合、チャット専用画面に顔画像の表示を行うと共に、受信メッセージを表示し、前記ルールが有った場合、チャット専用画面の顔画像に変化をつけながら表示するとともに、受信メッセージを表示させる制御部」とは、キーワードと顔の表情等との関係を規定するルールが無かった場合、画面に顔画像の表示を行うと共に、受信メッセージを表示し、前記ルールが有った場合、画面の顔画像に変化をつけながら表示するとともに、受信メッセージを表示させる制御部の点で一致する。 次に、引用発明において、「画像データベース」に格納された画像が「泣き顔」「ノーマル」等のキャラクタの顔の画像であることが、本願補正発明の「前記画像は、顔画像、アニメーションもしくはイラストレーションであ」ることに相当する。 また、引用発明には表示される「キャラクタ」の大きさについての記載があるから、引用発明において「キャラクタ」が「中」以外の大きさで表示される場合のあることは明らかである。よって、引用発明において、「キャラクタ」の大きさを変えること(当然、顔の大きさも変わることになる。)と、本願補正発明の「前記受信メッセージの内容に応じて顔の大きさを変え」ることとは、顔の大きさを変えることができる点で一致する。 次に、引用発明の「電子メールコミュニケーションの可視化のためのC-mailシステム」が通信装置を備えていることは明らかなことである。 すると、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 画像を記録するための画像記録部と、 文字メッセージを会話形式で送受信する送受信部と、 前記送受信部で受信した文字メッセージ及び前記画像記録部内における前記文字メッセージに関連した画像を表示する表示部と、 キーワードと顔の表情等との関係を規定するルールが無かった場合、画面に顔画像の表示を行うと共に、受信メッセージを表示し、前記ルールが有った場合、画面の顔画像に変化をつけながら表示するとともに、受信メッセージを表示させる制御部と、 を備え、前記画像は、顔画像、アニメーションもしくはイラストレーションであり、顔の大きさを変えることができることを特徴とする通信装置。」 一方、両者は次の点で相違する。 <相違点1> 本願補正発明では、「顔画像の表示」を行う画面が「チャット専用」画面であるのに対し、引用発明では「顔の画像」(本願補正発明の「顔画像」に相当する。以下同じ。)を含んだキャラクタの表示を行う「ウインドウ」(画面)がチャット専用であるとは記載されていない点。 <相違点2> 本願補正発明では「顔のパーツ画像を含み、前記顔のパーツ画像は少なくとも目、眉毛、口、及び怒り筋のパターンであ」るのに対し、引用発明では、「泣き顔」「ノーマル」といった「顔の画像」を含んでいるものの、少なくとも目、眉毛、口、及び怒り筋のパターンである顔のパーツ画像は含んでいない点。 <相違点3> 本願補正発明では、「前記受信メッセージの内容に応じて顔の大きさを変える」ものであるのに対し、引用発明では「顔の大きさを変える」ことができることは明らかであるが、受信メッセージの内容に応じて「顔の大きさを変える」とは記載されていない点。 <相違点4> 本願補正発明では、「前記制御部は、携帯電話機会社の天候サーバとインターネットで接続し、キー操作で日付を入力すると、天候に応じて顔画像の表情を変えて表示したり、その日の気分に応じて顔画像をキー操作で変化させたり、カレンダーの一部のみ拡大表示したりする」ことができるのに対し、引用発明の「comic変換部」及び「comic表示部」(制御部)では、このような機能を有していない点。 そこで上記相違点について検討すると、 <相違点1>について: 表情の選択された顔画像を含むキャラクタをチャット専用画面に表示することは、引用例の「2.1 Comic Chat」欄(第20頁右欄第6行?第21頁左欄第5行)に記載されているように、周知技術である。 よって、引用発明において、「顔の画像」(顔画像)を含んだキャラクタの表示を行う「ウインドウ」(画面)をチャット専用とすることは当業者が容易になし得たことである。 <相違点2>について: イラスト風の似顔絵を電子的に作成して表示する際、「目」、「鼻」、「口」や「輪郭」等の顔の各部位を描画する各種パーツ画像データをROMに登録しておき、これらの中から各部位毎にパーツ画像データを選択して読み出し、所望の容貌の顔画像(似顔絵像)を形成し、顔画像に喜怒哀楽などの表情変化を付与する場合、顔画像の「目」、「眉」や「口」などを所望の表情のパーツ画像データに置き換えて表現することは、例えば、特開平8-305878号公報の第【0002】段落に【従来の技術】として記載されているように、周知技術である。 また、パーツ画像として「怒り筋」を含めることも、上記特開平8-305878号公報(図3、図30の「怒りマーク」)、特開平7-336746号公報(第【0022】段落、図3、図4の「血管」)に記載されているように、周知技術である。 そして、引用発明では「キャラクタの画像として似顔絵を利用する」ことが課題として記載されているから、引用発明において「キャラクタの画像として似顔絵を利用」することとし、「目」、「眉」、「口」、及び「怒り筋」等の顔の各部位を描画する各種パーツ画像(顔のパーツ画像)データを含むようにすることは、当業者が容易になし得たことである。 <相違点3>について: メッセージの送り手の気持ちを、キャラクタの大きさを変えて表現することは、マンガやアニメーション等において普通に知られた表現方法である(例えば、特開2001-209593号公報第【0018】段落及び図5の「前面に近ずいてくる」表現参照。)から、引用発明において、「メール文」(受信メッセージの内容)に応じてキャラクタの大きさ、つまり顔の大きさを変えるようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。 <相違点4>について: 携帯電話により通信回線網を介してサーバと接続し、サーバから収集したお天気に応じてキャラクタの表情を変えて表示することは、例えば、特開2002-91971号公報(第【0072】段落、第【0139】?【0140】段落)に記載されているように、周知技術である。 また、その日の気分に応じて顔画像をタップ等の操作で変化させることも、てのひらなでしこ、学科と実地で免許皆伝!定番ソフトを乗りこなす パームウェア教習所、Palmで描いた絵日記がそのままホームページになる PicDia、Palm Magazine、第15巻、株式会社アスキー、2003年1月24日、p.64?65(特に、第65頁「2 PicDiaで新しい絵日記を描く」、「お天気や気分がアイコンで簡単に表現できる」欄の「顔のアイコンをタップして、天気の変化やその日の気分に合ったものを選択しよう。」参照。)、えにっき公開までの流れ… 、PalmOSデバイス上で絵日記を作ろう!、[online]、2002年、[平成23年7月14日検索]、インターネット<URL:http://web.archive.org/web/20020929020906/http://picdia.jp/whats/index.html>(「その日の気分設定」欄に「今日の肖像」とのタイトルで表示された画像参照。)、特開2001-249983号公報(図23)に記載されているように、周知技術である。 また、携帯電話により接続されるサーバを携帯電話機会社のサーバとすること、サーバと接続するための通信回線網としてインターネットを用いること、キー操作で日付を入力すること、カレンダーの一部のみ拡大表示することは、何れも普通に知られていることである。 よって、引用発明にこれらの周知技術を適用し、引用発明において、お天気を収集するサーバ(携帯電話機会社の天候サーバ)と通信回線網(インターネット)を介して接続し、キー操作で日付を入力すると、お天気(天候)に応じてキャラクタの表情(顔画像の表情)を変えて表示したり、その日の気分に応じて顔(顔画像)をタップ等の操作(キー操作)で変化させたり、カレンダーの一部のみ拡大表示したりする機能を「comic変換部」及び「comic表示部」(制御部)に付加することは、当業者が必要に応じ適宜なし得たことである。 また、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測しうる範囲のものである。 従って、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 7.独立特許要件についての予備的検討の結び 以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正が、仮に特許法第17条の2第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものであるとしても、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成22年3月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?10に係る発明は、平成21年10月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 画像を記録するための画像記録部と、 文字メッセージを会話形式で送受信する送受信部と、 前記送受信部で受信した文字メッセージ及び前記画像記録部内における前記文字メッセージに関連した画像を表示する表示部と、 キーワードと顔の表情等との関係を規定するルールが無かった場合、チャット専用画面に顔画像の表示を行うと共に、受信メッセージを表示し、前記ルールが有った場合、チャット専用画面の顔画像に変化をつけながら表示するとともに、受信メッセージを表示させる制御部と、 を備え、前記画像は、顔画像、アニメーションもしくはイラストレーションであり、顔のパーツ画像を含み、前記顔のパーツ画像は少なくとも目、眉毛、口、及び怒り筋のパターンであり、前記受信メッセージの内容に応じて顔の大きさを変えることを特徴とする通信装置。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 [理由]5.」に記載したとおりである。」 3.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、次の点で一致する。 <一致点> 「画像を記録するための画像記録部と、 文字メッセージを会話形式で送受信する送受信部と、 前記送受信部で受信した文字メッセージ及び前記画像記録部内における前記文字メッセージに関連した画像を表示する表示部と、 キーワードと顔の表情等との関係を規定するルールが無かった場合、画面に顔画像の表示を行うと共に、受信メッセージを表示し、前記ルールが有った場合、画面の顔画像に変化をつけながら表示するとともに、受信メッセージを表示させる制御部と、 を備え、前記画像は、顔画像、アニメーションもしくはイラストレーションであり、顔の大きさを変えることができることを特徴とする通信装置。」 一方、両者は、次の点で相違する。 <相違点1> 本願発明では、「顔画像の表示」を行う画面が「チャット専用」画面であるのに対し、引用発明では「顔の画像」(本願発明の「顔画像」に相当する。以下同じ。)を含んだキャラクタの表示を行う「ウインドウ」(画面)がチャット専用であるとは記載されていない点。 <相違点2> 本願発明では「顔のパーツ画像を含み、前記顔のパーツ画像は少なくとも目、眉毛、口、及び怒り筋のパターンであ」るのに対し、引用発明では、「泣き顔」「ノーマル」といった「顔の画像」を含んでいるものの、少なくとも目、眉毛、口、及び怒り筋のパターンである顔のパーツ画像は含んでいない点。 <相違点3> 本願発明では、「前記受信メッセージの内容に応じて顔の大きさを変える」ものであるのに対し、引用発明では「顔の大きさを変える」ことができることは明らかであるが、受信メッセージの内容に応じて「顔の大きさを変える」とは記載されていない点。 そこで、上記相違点について検討すると、上記<相違点1>、<相違点2>及び<相違点3>が当業者にとって容易になし得たものであることは、上記「第2 [理由]6.」に記載したとおりである。 よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおりであるので、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 従って、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-07-22 |
結審通知日 | 2011-07-26 |
審決日 | 2011-08-09 |
出願番号 | 特願2003-385957(P2003-385957) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) P 1 8・ 121- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高瀬 勤、石井 茂和 |
特許庁審判長 |
清水 稔 |
特許庁審判官 |
安久 司郎 安島 智也 |
発明の名称 | 通信装置及び通信方法 |
代理人 | 丸山 隆夫 |