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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
管理番号 1243983
審判番号 不服2010-14335  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-30 
確定日 2011-09-22 
事件の表示 特願2009-182256「電動パワーステアリング装置用モータ」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月 5日出願公開、特開2009-261244〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は,特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成11年 1月20日(優先日:平成10年 6月29日,出願番号:特願平10-182487号)に出願した特願平11-12017号の一部を平成13年 5月25日に新たな特許出願とした特願2001-157163号の一部を平成16年 8月30日に新たな特許出願とした特願2004-250287号の一部をさらに平成21年 8月 5日に新たな特許出願としたものであって,平成22年 3月25日付けで拒絶査定され,これに対し,同年 6月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされた。
一方,当審において,平成23年 4月12日付けで拒絶理由を通知し,これに対して,応答期間内である同年 6月20日に意見書とともに手続補正書が提出されたところである。
そして,この出願の請求項1?6に係る発明は,平成23年 6月20日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものと認められるところ,そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりである。
「【請求項1】
操舵トルク信号を用いて制御され,PWM(pulse width modulation)駆動されて,車両のハンドルの操作力をアシストする電動パワーステアリング装置用モータにおいて,
ヨークと,
このヨークの内壁面に固定された4極のフェライトの永久磁石で構成された界磁部と,
このヨーク内に回転自在に設けられたシャフトと,
このシャフトに固定され,コアの外周面に軸線方向に延びて形成された22個のスロットに導線が機械巻線で重巻方式により巻回されて構成された巻線を有するアマチュアと,
前記シャフトの端部に固定され,フックを有する,22個の複数個のセグメントから構成された整流子と,
この整流子の表面に当接し,前記界磁部の磁束分布の磁気的中心点に配設された4個のブラシとを備え,
前記車両の車室内にあるコラムに取付けられることを特徴とする電動パワーステアリング装置用モータ。」

2.引用例とその記載事項
当審における拒絶の理由で引用された特開昭61-169367号公報(以下「引用例1」という。)には,「電動式パワーステアリング装置」に関し,図面とともに次の事項が記載又は示されている。

(ア)「(産業上の利用分野)
本発明は電動機を用いた操舵力倍力装置により補助トルクを発生する電動式パワーステアリング装置に関する。
(従来の技術)
電動式パワーステアリング装置としては,例えば本願出願人が出願した「特願昭59-192390」や「特願昭59-241959」などがある。
この種の電動式パワーステアリング装置は電動機を動力源とする操舵力倍力装置およびその制御回路を備え,ステアリングホイールに付与される操舵トルクを検出し,この操舵トルク信号に基づいて制御回路によって電動機に補助トルクを発生させることにより,ハンドル操舵力の軽減を図っている。又,アナログ回路により構成された制御回路において,電動機のアナログ電気信号を用いてフィードバック制御することにより,速い速度で電動機制御を可能とし,適切な操舵性能の向上を図っている。」(第1頁右下欄第6行?第2頁左上欄第4行)

(イ)「第2図は本実施例の電磁型倍力装置を90°切断面で折曲させて示す縦断面図である。第2図において,(1)はステアリングコラム,(2)はステータ,(3)はケースであり,(4)と(7)は互いに同軸状に配設された入力軸および出力軸である。本実施例の電動式パワーステアリング装置は,入力軸(4)の内端部が出力軸(7)の内端部内に遊嵌される一方,これらの内端がトーションンバー(8)により連結され,入力軸(4)が軸受(9),(10)により,出力軸(7)が軸受(11),(12),(13)により,それぞれ回動自在に支承されている。さらに入力軸(4)の周囲に配設された操舵回転センサ(20)と,入出力軸(4)と(7)の嵌合部の周囲に配設された操舵トルクセンサ(24)と,出力軸(7)の周囲に配設された電動機(33),減速装置(50)および,電磁クラッチ(63)と,操舵回転センサ(20)および操舵トルクセンサ(24)からの各検出信号に基づき電動機(33)および電磁クラッチ(63)を駆動制御する制御装置(75)とを備えた構成である。」(第2頁左下欄第12行?右下欄第10行)

(ウ)「次に,上記電動機(33)は,ボルト(34)によりステアリングコラム(1)およびケース(3)に一体的に固着された筒状のステータ(2)と,このステータ(2)の内面に固着された少なくとも一対の磁石(36)と,出力軸(7)の周囲に回転可能に配設された回転子(37)とからなる。回転子(37)は,軸受(12)および(13)を介して出力軸(7)に回動可能に環装されるとともに軸受(11A)および(13A)を介してステータ(2)とケース(3)に支承される筒軸(38)を備え,この筒軸(38)の外周にはスキュー溝を有する鉄心(39),第1の多重巻線(40),第2の多重巻線(41)が順次一体的に環装され,前記磁石(36)と第2の多重巻線(41)との間には微小なエアギャップが設けられている。また,筒軸(38)には,第1の多重巻線(40)に接続する第1整流子(42)および第2の多重巻線(41)に接続する第2整流子(43)を備えている。さらに,第1整流子(42)に圧接するブラシ(44)がステータ(2)に固着されたブラシホルダ(45)に,第2整流子(43)に圧接するブラシ(46)がケースに固着されたブラシホルダ(47)にそれぞれ収納され,各ブラシ(44)および(46)に接続されるリード線が非磁性体のパイプを通じてステータ(2)の外部に取出されている。なお,磁石(36),第1の多重巻線(40),第1整流子(42)およびブラシ(44)により回転子(37)の回転数を検出する発電機(電動機回転速度センサ)(48)を構成し,この発電機(48)からは回転子(37)の回転数に比例した直流電圧が出力される。他方磁石(36),第2の多重巻線(41),第2整流子(43)およびブラシ(46)により補助トルクを発生する電動機(33)を構成している。」(第3頁右下欄第8行?第4頁左上欄第18行)

(エ)「第7図において,(76)はマイクロコンピュータであり,マイクロコンピュータ(76)には操舵トルク検出手段(77),操舵回転検出手段(82),車速検出手段(86),電動機回転速度検出手段(120)および異常検出手段(114)からの各検出信号S_(1)?S_(7)が入力されている。
操舵トルク検出手段(77)は,前記操舵トルクセンサ(24)と,この操舵トルクセンサ(24)の一次コイル(29)へマイクロコンピュータ(76)内部のクロックパルスT_(1)を分周して出力するドライブユニット(78)と,可動鉄心(25)の変位に対応して二次コイル(30)と(31)から得られた各アナログ電気信号をそれぞれ整流する整流回路(79A),(79B)および高周波分を除去するローパスフィルタ(80A),(80B)と,このローパスフィルタ(80A),(80B)からの各アナログ電気信号をディジタル信号に変換し操舵トルク検出信号S_(1),S_(2)としてマイクロコンピュータ(76)に入力するA/Dコンバータ(81)とから構成されている。」(第5頁左上欄第1行?第19行)

(オ)「マイクロコンピュータ(76)は,I/0ポート,メモリ,演算部および制御部により構成されている。また,マイクロコンピュータ(76)等を駆動する電源回路(92)は,車載のバッテリ(93)の+端子にイグニッションキーのキースイッチ(94),ヒューズ(95)を介して接続されるリレー回路(96)と,リレー回路(96)の出力側に接続された定電圧回路(97)とから構成され,リレー回路(96)の出力側のA端子からは後述する電動機駆動手段(100)および電磁クラッチ駆動手段(108)に電源が供給され,定電圧回路(97)のB端子からはマイクロコンピュータ(76)やその他の制御ユニットに電源が供給される。したがって,キースイッチ(94)が投入されると,マイクロコンピュータ(76)は,入力される各検出信号(S_(1)?S_(7))をメモリに書き込まれたプログラムに従って処理し,電動機を駆動する制御信号T_(3)・T_(4).T_(5),および電磁クラッチを駆動する電流制御信号T_(6)を,電動機駆動手段(100)および電磁クラッチ駆動手段(108)にそれぞれ出力し,電動機(33)および電磁クラッチ(63)を駆動制御する。」(第5頁左下欄第8行?右上欄第8行)

(カ)「前記ドライブユニット(101)は,マイクロコンピュータ(76)からの回転方向信号T_(3)・T_(4)に基づいてリレー(102)又は(103),トランジスタ(105)又は(104)を駆動させるとともに,電動機制御信号T_(5)に基づきパルス幅変換(PWM変調)したパルス信号をトランジスタ(104,105)のどちらか一方のベースに出力する。したがって,電動機駆動手段(100)においては,一方のリレー(102)とトランジスタ(105)への通電,又は他方のリレー(103)とトランジスタ(104)への通電により電動機(33)の回転方向を制御するとともに,各トランジスタ(104,105)のベースに印加されるパルス信号によってトランジスタ(104,105)の通電時間制御が行われる。そして,電動機(33)には,通電時間制御に応じた電機子電圧V_(A)が印加され,ステアリングホイールに加えられる操舵トルクに対応した補助トルクを発生するように電動機(33)が制御される。」(第6頁左上欄第4行?右上欄第1行)

(キ)「ステップP_(13)においては,回転方向値号T_(3)・T_(4)および,補正された電動機制御信号T_(5)が電動機駆動手段(100)に,電磁クラッチ制御信号T_(6)が電磁クラッチ駆動手段(108)に出力される。電動機駆動手段(100)においては,回転方向信号T_(3)・T_(4)および制御信号T_(5)に基づいて電動機(33)の電機子電圧V_(A)のPWM制御が行われる。」(第7頁右下欄第11行?第18行)

(ク)摘記事項(オ)の「車載のバッテリ(93)の+端子にイグニッションキーのキースイッチ(94)」の記載からみて,上記引用例1の電動式パワーステアリング装置が車両用のものであることは明らかである。

(ケ)第2図には,「ステータ2内に出力軸7が配設されたこと」,及び,「筒軸38の端部には,第1の整流子42及び第2の整流子43と,第1の整流子42に圧接するブラシ44と第2の整流子43に圧接するブラシ46とを備えたこと」が示されている。

そして,これらの記載事項及び図示内容を総合すると上記引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「操舵トルク検出信号を用いて制御され,PWM制御されて,補助トルクを発生させてハンドル操舵力の軽減を図る車両の電動式パワーステアリング装置の電動機33において,
ステータ2と,
このステータ2の内面に固着された少なくとも一対の磁石36と,
このステータ2内に回動自在に配設された出力軸7と,
この出力軸7に環装された筒軸38と,鉄心39に環装された第1の多重巻線40,第2の多重巻線41を備える回転子37と,
前記出力軸7に配設された筒軸38の端部には,第1の整流子42及び第2の整流子43と,第1の整流子42に圧接するブラシ44と第2の整流子43に圧接するブラシ46とを備え,
ステアリングコラム1に一体的に固着された車両の電動式パワーステアリングの電動機33。」

同じく,当審における拒絶の理由で引用された実願平3-10440号(実開平4-101274号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には,「自動車に搭載する電装品等の部材装置に組み込まれるモータのアーマチュア」に関し,図面とともに次の事項が開示されている。
「4個の永久磁石を有する4極,22スロットのモータ,2刷子を有し,回転バランスが損なわれることなく性能アップが図れるものであるとともに,重ね巻巻線方式であってもよいこと。」(特に,段落【0001】,段落【0006】?【0008】,段落【0011】?【0013】,図1,図2を参照のこと。)

同じく,当審における拒絶の理由で引用された特開昭64-30879号公報(以下「引用例3」という。)には,「自動車に装備される電動式の動力舵取装置(パワーステアリング)」に関し,図面とともに次の事項が開示されている。
「操舵トルクを検出するトルクセンサ,操舵補助用のモータ及び該モータの回転力の伝動装置が,いずれも車室内に位置する舵輪軸(ステアリングコラム)の周辺に配設されること。」(特に,第1頁右下欄第1行?第3行,第2頁右上欄第19行?左下欄第16行を参照のこと。)。

3.発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると,後者の「操舵トルク検出信号」は前者の「操舵トルク信号」に相当し,以下同様に,「PWM制御」は「PWM駆動」に,「電動式パワーステアリング装置の電動機33」は「電動パワーステアリング装置用モータ」に,「ステータ2」は「ヨーク」に,「出力軸7」は「シャフト」に,「鉄心39」は「コア」に,「第1の多重巻線40」及び「第2の多重巻線」は「巻線」に,「回転子37」は「アマチュア」に,「第1の整流子42」及び「第2の整流子43」は「整流子」に,「ブラシ44」及び「ブラシ46」は「ブラシ」に,「ステアリングコラム1」は「コラム」に相当する。
また,後者の「補助トルクを発生させてハンドル操舵力の軽減を図る車両の電動式パワーステアリング装置の電動機33」は,前者の「車両のハンドルの操作力をアシストする電動パワーステアリング装置用モータ」に相当し,後者の「このステータ2の内面に固着された少なくとも一対の磁石36」と,前者の「このヨークの内壁面に固定された4極のフェライトの永久磁石で構成された界磁部」とは,「このヨークの内壁面に固定された磁石で構成された界磁部」との概念において共通し,後者の「このステータ2内に回動自在に配設された出力軸7」は,前者の「このヨーク内に回転自在に設けられたシャフト」に相当する。
次に,後者の「この出力軸7に環装された筒軸38と,鉄心39に環装された第1の多重巻線40,第2の多重巻線41を備える回転子37」と,前者の「このシャフトに固定され,コアの外周面に軸線方向に延びて形成された22個のスロットに導線が機械巻線で重巻方式により巻回されて構成された巻線を有するアマチュア」とは,「このシャフトに設けられ,コアの外周面に巻回されて構成された巻線を備えるアマチュア」との概念において共通し,後者の「出力軸7に配設された筒軸38の端部には,第1の整流子42及び第2の整流子43と,第1の整流子42に圧接するブラシ44と第2の整流子43に圧接するブラシ46とを備え」る態様と,前者の「シャフトの端部に固定され,フックを有する,22個の複数個のセグメントから構成された整流子と,この整流子の表面に当接し,前記界磁部の磁束分布の磁気的中心点に配設された4個のブラシとを備え」る態様とは,「シャフトに設けられた整流子と,この整流子の表面に当接する複数のブラシとを備え」たという概念において共通する。
そして,後者の「ステアリングコラム1に一体的に固着された車両の電動式パワーステアリング装置の電動機33」と,前者の「車両の車室内にあるコラムに取付けられ」た「電動パワーステアリング装置用モータ」とは,「車両のコラムに取り付けられた電動パワーステアリング装置用モータ」という概念において共通する。

そうすると,両者は,
「操舵トルク信号を用いて制御され,PWM駆動されて,車両のハンドルの操作力をアシストする電動パワーステアリング装置用モータにおいて,
ヨークと,
このヨークの内壁面に固定された磁石で構成された界磁部と,
このヨーク内に回転自在に設けられたシャフトと,
このシャフトに設けられ,コアの外周面に巻回されて構成された巻線を備えるアマチュアと,
前記シャフトに設けられた整流子と,この整流子の表面に当接する複数のブラシとを備え,
前記車両のコラムに取り付けられた電動パワーステアリング装置用モータ。」
の点で,一致し,以下の各点で相違するものと認められる。

<相違点1>
本願発明では,界磁部が「4極のフェライトの永久磁石で構成され」るとともに,アマチュアが「シャフトに固定され,コアの外周面に軸線方向に延びて形成された22個のスロットに導線が機械巻線で重巻方式により巻回されて構成された巻線を有する」のに対して,引用発明では,界磁部が「少なくとも一対の磁石で構成され」るとともに,アマチュアが「シャフトに設けられ,コアの外周面に巻回されて構成された巻線を備える」ものの,スロット数及び巻線方式が特定されていない点。

<相違点2>
整流子が,本願発明では,22個のスロットに対して,「シャフトの端部に固定され,フックを有する22個の複数個のセグメントから構成された」のに対して,引用発明では,シャフトに設けられたものの,それ以上の特定がない点。

<相違点3>
整流子に当接するブラシが,本願発明では,「4極」の界磁部に対して「界磁部の磁束分布の磁気的中心点に配設された4個のブラシ」であるのに対して,引用発明では,そのような特定がない点。

<相違点4>
電動パワーステアリング装置用モータが,車両のコラムに取り付けられるに際し,本願発明では,「車室内にあるコラム」に取付けられるのに対して,引用発明では,コラムに取り付けられる箇所が,「車室内」であるか否か明らかでない点。

4.相違点の検討・当審の判断
まず,操舵トルクセンサを用いてPWM駆動する電動パワーステアリング装置において,低騒音化とトルクリップルの低減は,本願の原出願の優先権主張の日前に周知の課題に過ぎない(必要があれば,特開平2-188019号公報第1頁右下欄第15行?第2頁左上欄第6行,第3頁左下欄第18行?右下欄第1行,特開平8-336293号公報の段落【0001】,【0006】,【0008】を参照のこと。)

<相違点1について>
上記引用例2には,自動車の電装品に適用されるモータに関して,回転バランスを改善するために,4個の永久磁石を有する4極,22スロットのブラシ付きモータ及び重ね巻巻線方式が開示されている。
そして,永久磁石をフェライトとすること及び機械巻線とすることは,いずれも慣用手段に過ぎないことから,上記相違点1における本願発明の構成とすることは,上記慣用手段に鑑みて,引用発明に,上記引用例2に開示された事項を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点2について>
「フックを有する複数個のセグメントから構成された整流子」は,電動機において,本願の原出願の優先権主張の日前に周知技術に過ぎない(必要があれば,特開平9-182385号公報の図1,図2を参照のこと。)。
そして,整流子のセグメント数をスロット数と同じにすることも常套手段である(必要があれば,特開平8-266028号公報の段落【0026】,【0032】,特開平4-359655号公報の段落【0007】を参照のこと。)から,上記相違点2における本願発明の構成とすることは,上記常套手段に鑑みて,引用発明に,上記周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点3について>
「4極」の界磁部に対して,「界磁部の磁束分布の磁気的中心点に配設された4個のブラシ」を有し,重ね巻方式とすることは,電動機において,本願の原出願の優先権主張の日前に周知技術に過ぎない(必要があれば,特開平8-294259号公報の段落【0002】?【0004】,図3,実願昭56-193092号(実開昭58-100471号)のマイクロフィルムの第2頁第11行?第5頁第18行,第8頁第8行?第10行,第1図,第2図を参照のこと。)から,上記相違点3における本願発明の構成は,上記周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点4について>
上記引用例3には,電動パワーステアリングのモータが「車室内の舵輪軸(ステアリングコラム)」周辺に取り付けられることが開示されており,引用発明において,車両のコラムに取付けられた電動パワーステアリング用モータを「車室内」に取り付けることは,上記引用例3に開示された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

そして,上記相違点1?4を併せ備える本願発明の作用効果を検討してみても,引用発明,上記引用例2,3に開示された事項,上記周知技術,上記慣用手段,及び,上記常套手段から予測しうる程度のものであって格別のものとはいえない。

したがって,本願発明は,上記引用例2,3に開示された事項,上記周知技術,上記慣用手段,及び,上記常套手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから,本願発明(請求項1に係る発明)は,引用発明,上記引用例2,3に開示された事項,上記周知技術,上記慣用手段,及び,上記常套手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると,このような特許を受けることができない発明を包含する本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-20 
結審通知日 2011-07-26 
審決日 2011-08-08 
出願番号 特願2009-182256(P2009-182256)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 牧 初  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 藤井 昇
神山 茂樹
発明の名称 電動パワーステアリング装置用モータ  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 上田 俊一  
代理人 古川 秀利  
代理人 吉田 潤一郎  
代理人 曾我 道治  
代理人 大宅 一宏  
代理人 梶並 順  

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