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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B32B |
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管理番号 | 1244037 |
審判番号 | 不服2008-23808 |
総通号数 | 143 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-09-17 |
確定日 | 2011-09-29 |
事件の表示 | 平成10年特許願第198227号「積層材」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月25日出願公開、特開2000- 25147〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年7月14日の出願であって、平成20年8月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2.原査定 原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。 「この出願の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.特開平6-286051号公報 2.特開平7-178867号公報 3.特開平10-741号公報 4.特開平7-256812号公報 5.特開平10-58585号公報」 3.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「基材フィルム層の片面に、プラズマ化学気相成長法により酸化珪素の薄膜層を形成し、 次に、上記で製膜化した酸化珪素の薄膜層の面に、印刷絵柄層を形成し、 他方、ヒ-トシ-ル性樹脂フィルム層の片面に、巻き取り式の真空蒸着法によりアルミニウムの蒸着膜層を形成し、 しかる後、上記の印刷絵柄層の面と、上記のアルミニウムの蒸着膜層の面とを対向させ、 その層間を、ポリウレタン系樹脂をビヒクルの主成分とするラミネ-ト用接着剤によるラミネ-ト用接着剤層であって、かつ、JIS規格K7113に基づいて、100?300%の範囲からなる引っ張り伸度を有するラミネ-ト用接着剤層を介して、積層することを特徴とする積層材の製造法。」 4.引用例 4-1.引用例1 原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-286051号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 (1a)「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、ポテトチップス等の油脂分の多い食品などを密封包装するための包装材料に関する。より詳しくは、優れた遮光性、酸素バリヤー性及び水蒸気バリヤー性を示す包装材料に関する。」 (1b)「【0012】図1は、この発明の包装材料の断面図であり、基材1、熱可塑性樹脂押し出し層2及びシーラント層3からなる3層タイプとなっている。ここで、基材1は基材ベース1aとその片面に形成された酸化ケイ素層1bとからなっており、この基材1の酸化ケイ素層1b上に設けることができる。また、シーラント層3はヒートシール性樹脂層3aとその片面に形成された遮光性金属層3bとからなっている。この場合、酸化ケイ素層1b及び遮光性金属層3bは熱可塑性樹脂押し出し層2側に設けられる。」 (1c)「【0013】このような層構成において、基材ベース1aは、後述する酸化ケイ素層の支持材として用いられ、包装体の外表面になるものである。基材ベース1aとしては、従来から包装材料に用いられているような基材ベース1aを使用することができ、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン等の可撓性の樹脂フィルム、好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルムを使用することができる。」 (1d)「【0014】酸化ケイ素層1bは、酸素バリヤー性と水蒸気バリヤー性を包装材料に付与するための層であり、その組成は、一酸化ケイ素を主体とする一般式SixOy(xは1又は2であり、yは0、1、2又は3である)で表されるケイ素化合物の混合物である。この酸化ケイ素層1bが存在することにより、後述する遮光性金属層3bの酸素又は水蒸気バリヤー性に問題があったとしても、包装材料全体としての酸素及び水蒸気バリヤー性を所望の値に保持することができる。 【0015】このような酸化ケイ素層1bは常法により形成することができ、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、プラズマ蒸着法或いはCVD法等により、好ましくはコストメリットの大きい真空蒸着法により形成することができる。」 (1e)「【0017】熱可塑性樹脂押し出し層2は、基材1と後述するシーラント層3とを積層する接着層であり、基材1とシーラント層3との間に溶融した熱可塑性樹脂を層状に押し出して積層するいわゆる押し出しラミネーションにより形成されるものである。」 (1f)「【0020】ヒートシール性樹脂層3aは、後述する遮光性金属層3bの支持材であり、且つ包装材料から包装体を製造する際にヒートシールができるようにするためのものである。このようなヒートシール性樹脂層3aとしては、蒸着加工適性に優れ且つヒートシール性を有する種々の樹脂フィルムの中から適宜選択することができ、例えば、キャストポリプロピレン、低密度ポリエチレン、非結晶又は低結晶ポリエステル等を使用することができる。」 (1g)「【0021】遮光性金属層3bは、この発明の包装材料で包装される食品などの内容物に光が当たらないように遮光するためのものである。なお、遮光性金属層3bが酸素及び水蒸気をバリヤーする機能を有していてもよい。このような遮光性金属層3bとしては、アルミニウム、金、銅などの金属薄膜を使用することができるが、コストなどの点からアルミニウムの薄膜が好ましい。…(中略)… 【0022】このような遮光性金属層3bは、常法により形成することができ、例えば、金属箔を接着剤によりヒートシール性樹脂層3aに貼りつけてもよく、また真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、プラズマ蒸着法或いはCVD法等によりヒートシール性樹脂層3a上に形成することができるが、好ましくはコストメリットの大きい真空蒸着法により形成することができる。」 (1h)「【0023】図1に示すこの発明の包装材料は常法により製造することができる。例えば、基材ベースとその上に真空蒸着された酸化ケイ素層とからなる印刷基材の当該酸化ケイ素層と、ヒートシール性樹脂フィルムとその上に真空蒸着されたアルミニウムなどの遮光性金属層とからなるシーラントフィルムの当該遮光性金属層との間に、溶融した熱可塑性樹脂を層状に押し出しながら基材とシーラントフィルムとを圧着する押し出しラミネーション法により製造することができる。」 (1i)「【0024】なお、図示してはいないが、この発明の包装材料には、通常、印刷層が形成される。…(中略)…酸化ケイ素層を形成した基材の酸化ケイ素層上に印刷層を形成してもよい。」 また、上記摘記(1d)の「プラズマ蒸着法或いはCVD法」との記載では、「プラズマ」が「CVD法」をも修飾しているかが明らかでないが、「プラズマCVD法」が、本願出願時の技術常識であることから(必要であれば、特開平7-178867号公報の「化学的プラズマ真空蒸着(CPVD)」及び特開平10-58585号公報の「高周波プラズマの化学気相成長法」参照。)、上記記載から「プラズマCVD法」は普通に理解できるものである。 これらの記載事項によると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「基材ベース1aの片面に、プラズマCVD法により酸化ケイ素層1bを形成し、 次に、上記酸化ケイ素層1b上に、印刷層を形成し、 他方、ヒートシール性樹脂層3aの片面に、真空蒸着法によりアルミニウムの遮光性金属層3bを形成し、 しかる後、上記の印刷層を形成した酸化ケイ素層1bの面と、上記のアルミニウムの遮光性金属層3bの面とを対向させ、 その層間を、熱可塑性樹脂押し出し層である接着層を介して、積層する、包装材料の製造法。」 4-2.引用例2 原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-256812号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 (2a)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、酸化マグネシウム薄膜層を形成してなる透明積層体に係り、とくに透明性、ガスバリア性に優れた透明積層体に関する。」 (2b)「【0035】次に本発明の第2の発明の透明積層体の構成について図2を参照し説明する。21は本発明の透明積層体であり、透明性を有する基材22の表面に酸化マグネシウムの蒸着膜からなる薄膜層23からなる積層フィルム29が形成されており、さらに接着層24を介して酸化マグネシウムの蒸着膜からなる薄膜層25、透明性を有する基材26が対称的に積層フィルム30が形成され、複合積層体を形成している。また透明積層体21には基材22の外層側に包装用材料として加工する際に感熱接着層として作用するヒートシール層31を形成している。このヒートシール層31は基材26の外層側に設けてもよく、基材22又は基材26の何れか一方の外層側に形成される。 【0036】基材22、26、酸化マグネシウム23、25、ヒートシール層31について上記第1の発明と同様であるので省略する。 【0037】積層フィルム29と積層フィルム30を接着する接着層24は直接薄膜層23或いは25に形成されるため、積層フィルムの積層時に接着材により生ずる応力で薄膜層にクラックなど損傷が生じるおそれがあるため、寸法安定性に優れた接着材が用いられる。好ましくはJIS K7127における引張破断伸びが100?600%であるウレタン系接着材であり、実用的にもウレタン系接着材が良い。 【0038】引張破断伸びが100%を下回るものは、高弾性のため寸法安定性に優れるが、粘性が低く接着力の点で問題があり実用性がなく、また600%を越えるものは、粘性が高いので接着力は十分であるが、粘性があり過ぎるため、加わる応力を緩和することが薄膜層にクラックなど損傷を生じることがある。好ましくは、200?500%の範囲である。 【0039】この接着層24の形成方法は、ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法により積層する方法など周知の手段が用いられ、膜厚は、実用的に1.0?5.0μmの範囲である。 【0040】本発明の透明積層体21は、酸化マグネシウム薄膜層を最も適する膜厚で形成でき、物理的・機械的ストレスに耐えうる構成の積層フィルムを二枚重ね合わせた構造とすることで、Alなどの金属箔からなる包装用材料と同等のガスバリア性を有し、かつ製袋工程などの後加工における物理的・機械的ストレスを吸収・緩和することができるなど、保管時など耐環境性も含めて安定性に優れるものであり、とくに第1の発明の透明プライマー層の機能を接着層に持たせることにより同等の効果を発揮することができ、層構成の削減による透明積層体の厚さを薄くすることができる。」 5.対比 本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「基材ベース1a」、「プラズマCVD法」、「酸化ケイ素層1b」、「印刷層」、「ヒートシール性樹脂層3a」、「アルミニウムの遮光性金属層3b」、「接着層」及び「包装材料」は、それぞれ本願発明の「基材フィルム層」、「プラズマ化学気相成長法」、「酸化珪素の薄膜層」、「印刷絵柄層」、「ヒ-トシ-ル性樹脂フィルム層」、「アルミニウムの蒸着膜層」、「接着剤層」及び「積層材」に相当するから、本願発明と引用発明1とは、 「基材フィルム層の片面に、プラズマ化学気相成長法により酸化珪素の薄膜層を形成し、 次に、上記で製膜化した酸化珪素の薄膜層の面に、印刷絵柄層を形成し、 他方、ヒ-トシ-ル性樹脂フィルム層の片面に、真空蒸着法によりアルミニウムの蒸着膜層を形成し、 しかる後、上記の印刷絵柄層の面と、上記のアルミニウムの蒸着膜層の面とを対向させ、 その層間を、接着剤層を介して、積層する、積層材の製造法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1]本願発明は、「巻き取り式の」真空蒸着法によりアルミニウムの蒸着膜層を形成するのに対し、引用発明1は、真空蒸着法に関して特定していない点。 [相違点2]本願発明は、接着剤層が「ポリウレタン系樹脂をビヒクルの主成分とするラミネ-ト用接着剤によるラミネ-ト用接着剤層であって、かつ、JIS規格K7113に基づいて、100?300%の範囲からなる引っ張り伸度を有するラミネ-ト用接着剤層」であるのに対し、引用発明1は、熱可塑性樹脂押し出し層である点。 6.判断 上記相違点について検討する。 [相違点1]について; 蒸着膜層を形成する手段として、巻き取り式の真空蒸着法は、例えば、特開平7-331437号公報の段落【0005】、特開平8-74037号公報の段落【0011】及び特開平8-127096号公報の段落【0055】に記載されているとおり、周知の技術である。 そして、引用発明1の、ヒートシール性樹脂層3aの片面に、真空蒸着法によりアルミニウムの遮光性金属層3bを形成する手段として、上記周知の巻き取り式の真空蒸着法を適用し、相違点1に係る本願発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 [相違点2]について; 引用例2には、2つの基材に形成した薄膜層の面を対向させ、その層間を、JIS K7127における引張破断伸びが100?600%であるウレタン系接着材を介して、積層することにより、接着力が十分であり、かつ、積層時に接着材により生ずる応力で薄膜層にクラックなど損傷が生じることがない事項が記載されている。 ここで、基材に形成した薄膜層を積層するための接着剤として、ポリウレタン系樹脂からなるラミネート用接着剤を用いることが、例えば、特開平8-207196号公報、特開昭62-156939号公報、特開平8-58848号公報、特開平10-44298号公報、特開昭63-278834号公報及び特開平8-183829号公報に記載されているとおり、周知技術であることを考慮すると、引用発明1における接着層として、引用例2に記載された発明の接着材を適用することは、容易である。 そして、その引張破断伸び(本願発明の「引っ張り伸度」に相当。)の数値範囲を好適化することは、設計的事項にすぎない。 また、本願発明の効果も、引用発明1及び引用例2に記載された発明並びに周知技術から、当業者が予測し得た程度のものである。 7.むすび したがって、本願発明は、引用発明1及び引用例2に記載された発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 原査定は妥当である。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-07-29 |
結審通知日 | 2011-08-02 |
審決日 | 2011-08-16 |
出願番号 | 特願平10-198227 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B32B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 河原 肇 |
特許庁審判長 |
鈴木 由紀夫 |
特許庁審判官 |
佐野 健治 豊島 ひろみ |
発明の名称 | 積層材 |
代理人 | 金山 聡 |