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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1244044
審判番号 不服2008-30972  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-08 
確定日 2011-09-29 
事件の表示 平成10年特許願第 9992号「照会変換システム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月21日出願公開、特開平10-222542〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年1月22日(パリ条約による優先権主張1997年1月22日、米国)の出願であって、平成20年2月12日付けで拒絶理由通知がなされ、同年9月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「1次データベース管理システムのデータベース機能を実行するデータベース照会を使用し、少なくとも1つの2次データベース管理システムのデータベース機能を実行させるようなコンピュータシステムの使用方法において、データベース照会を変換可能な照会として認識するステップと、データベース機能が実行されるべき2次データベース管理システムを決定するステップと、データベース機能を実行する2次データベース管理システム各々に対し変換されたデータベース照会をそのデータベース照会に基づいて構築するステップと、データベース機能を実行する2次データベース管理システム各々に対してこの変換後のデータベース照会を伝送するステップとからなることを特徴とする照会変換システム。」

3.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-85094号公報(以下、「引用例1」という。)、特開平7-65032号公報(以下、「引用例2」という。)、及び特開平5-334363号公報(以下、「引用例3」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。

(引用例1)
A.「【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明は、マスターデータを有するホストコンピュータと、当該マスターデータと同一内容のローカルデータを有し、当該ホストコンピュータに接続されるローカルコンピュータとから構成されるコンピュータシステムに使用される分散データの自動整合方法であって前記マスターデータの内容を変更した場合には、前記マスターテーブルと同一内容のローカルデータがいずれのローカルコンピュータに記憶されているのかを検索し、検索されたローカルデータを変更後のマスターデータと同一内容となるように書替えることを特徴とするものである。」

B.「【0011】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明にかかる分散データの自動整合方法を実行する装置の一例を示したものである。生産ラインに配設されている装置の制御管理を行なう工程管理用ホストコンピュータ30にはデータベース32が接続されているが、このデータベース32にはその日に生産されるべき車種に関する一日分のデータ及び後述するデータリレーショナルテーブルなどのマスターデータが記憶されている。ライン管理オンライン処理部35及びライン管理バッチ処理部36は、工程管理用ホストコンピュータ30からの制御情報にオンライン処理あるいはバッチ処理を施すものである。このライン管理オンライン処理部35にはローカルデータベース38が接続されているが、このローカルデータベース38にはデータベース32に記憶されているデータAに加工が施されたデータがデータA′として1タクト分すなわち半日分記憶されている。PLC39は直接設備40の制御を行なういわゆるシーケンサーであって、これにはローカルデータベース42が接続されている。このローカルデータベース42にはローカルデータベース38に記憶されているデータA′に加工が施されたデータがデータA″として30分分だけ記憶されている。なお、これらローカルデータベース38,42に記憶されているデータはローカルデータで有る。
【0012】図2は、本発明にかかる分散データの自動整合方法を説明するための概略構成図であり、図1の構成のうち、本発明方法の実行に必要とされる部分のみを抽出して概念的に記載したものである。ホストコンピュータ45は、上述の工程管理用コンピュータ30の一部を構成するものであり、このホストコンピュータ45にはデータベース32を構成するデータベース32A,32Bがそれぞれ接続されている。データベース32Aは後述するデータリレーショナルテーブルを記憶しているものであり、データベース32BはデータAを記憶しているものである。データA′加工処理部47は、ライン管理オンライン処理部35に設けられているものであって、データAをデータA′に加工処理する部分である。データA′逆算処理部49は接続されている入力データ及び出力データのデータベース50A,50Bに基づいてデータA′をデータAに変換するものである。」

C.「【0013】本発明の分散データの自動整合方法を実行する装置の概略の構成は以上のとおりであるが、次に、この方法によってどのようにデータの整合性がとられるのかを図3以降に示すフローチャートなどによって説明する。
【0014】図3は、データリレーショナルテーブルの一例を示したものであって、このテーブルは、どのプログラムあるいはデータがどこに記憶されているのかを示しているものである。たとえば、マスターデータであるScheduleAは、工程管理用ホストコンピュータ30に記憶されているものであり、リレーションデータであるScheduleA′は工程管理用ホストコンピュータ30の下位のコンピュータであるサポートホストコンピュータや組み立て指示ホストコンピュータやPLC#1にそれぞれ記憶されており、ScheduleA″はPLC#2にそれぞれ記憶されているということを示している。
【0015】図4に示してあるフローチャートは、マスターデータが変更された場合にローカルデータをマスターデータに合わせるための処理を示したものである。この処理はホストコンピュータ45によって行なわれるものである。
【0016】マスターデータの変更が行なわれると、ホストコンピュータ45はデータリレーショナルテーブル(RT)を参照して、変更されたマスターデータと同一のデータがどの場所にあるのか、また、そのデータに加工や切り分けが行なわれていないかなどを把握する(S1,S2)。もし、加工処理がおこなわれていれば、加工処理を再実行してRTよりリレーションデータの所在を把握する(S3?S5)。つぎに、すべてのリレーショナルデータのデータの切り分けをおこなって、全てのリレーショナルデータの再転送を全てのデータを完了するまで行なう(S6,S7)この処理によってマスターデータが変更された場合には、その変更の対象とされたデータが変更後のデータに自動的に変更されることになる。このとき、対象となるデータが既に加工処理された後のものであっても、この変更が行なわれることになる。」

上記A?Cの記載及び関連する図面を参照すると、引用例1には、実質的に、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。)
「マスターデータを記憶するデータベースが接続されるホストコンピュータのマスターデータ変更機能を使用し、ローカルデータを記憶するローカルデータベースが接続される少なくとも1つのローカルコンピュータのローカルデータ変更機能を実行させるようなコンピュータシステムの使用方法において、マスターデータの変更を認識するステップと、ローカルデータ変更機能が実行されるべきローカルコンピュータを決定するステップと、ローカルデータ変更機能を実行するローカルコンピュータの各々のローカルデータを変更後のマスターデータと同一内容となるように書替えるステップとからなるコンピュータシステム。」

(引用例2)
D.「【0008】第2のサーバ計算機は、標準形式SQLを予め定められた固有形式のSQLに変換するための第1の変換ルーチンが各DBMSに対応してそれぞれ登録された第1の変換ルーチン登録手段と、DBMSからのデータベース問い合わせの結果データを標準形式に変換するための第2の変換ルーチンが各DBMSに対応してそれぞれ登録された第2の変換ルーチン登録手段と、上記各DBMSにより管理されるデータベース、同DBMSに対応する第1の変換ルーチン、同DBMSに対応する第2の変換ルーチン、及び同DBMSが搭載されている第1のサーバ計算機のネットワークアドレスを指定する情報が登録された複数のエントリからなる変換規則管理テーブルとを有し、クライアント計算機から送信された標準形式SQLを受信した場合には、当該SQLの指定するデータベース名のデータベースを管理するDBMSに対応した第1の変換ルーチンを用いて固有形式SQLへの変換を行って、そのDBMSを搭載した第1のサーバ計算機に送信し、この固有形式SQLの実行結果として、送信先の第1のサーバ計算機から返される固有形式の結果データを、そのDBMSに対応した第2の変換ルーチンを用いて標準形式のデータに変換して、データベース問い合わせ元のクライアント計算機に返す構成をとる。」

(引用例3)
E.「【0009】
【課題を解決するための手段】上記第1の目的は、本発明によれば、検索結果が蓄積される蓄積部と、アプリケーションプログラムから渡された、標準形式で記述されたデータベース検索条件をデータベースに固有の形式に変換する検索条件変換部と、変換されたデータベース検索条件に基づき前記データベースに固有の検索手続きにより前記データベースを検索する検索手続き生成部と、検索結果のうち、前記データベースに固有な形式を標準形式に変換した後、検索結果を前記蓄積部に蓄積する形式変換部とを含むデータベースインタフェースとを有し、前記アプリケーションプログラムは、前記蓄積部に蓄積された検索結果を利用することを特徴とするデータベース検索システムによって達成される。」

上記引用例2,3の記載を参照すると、次の技術が周知技術であったと認められる。
「データベース照会を行うに際し、照会を行うための検索式を各データベースに固有の形式に変換すること。」

4.対比
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。

(あ)引用例1記載の発明における「マスターデータを記憶するデータベースが接続されるホストコンピュータ」は、本願発明における「1次データベース管理システム」に相当する。
また、本願発明における「データベース照会」には、本願の段落【0018】に「照会機能は、更新、検索、作成、およびデータベース30のデータ削除が含まれる。」と記載されているように、データベースを更新すること、すなわち、データベース内のデータを変更することが含まれるものである。
よって、引用例1記載の発明において、上記ホストコンピュータの「マスターデータ変更機能」を使用することは、本願発明において、上記1次データベース管理システムの「データベース機能を実行するデータベース照会」を使用することに含まれるものである。

(い)引用例1記載の発明における「ローカルデータを記憶するローカルデータベースが接続される少なくとも1つのローカルコンピュータ」は、本願発明における「少なくとも1つの2次データベース管理システム」に相当する。
そして、上記(あ)で述べたように、本願発明における「データベース照会」には、データベース内のデータを変更することが含まれるものであり、さらに、「データベース機能」を実行することには、上記「データベース照会」を実行することが含まれるものであるから、引用例1記載の発明において、上記ローカルコンピュータの「ローカルデータ変更機能」を実行させることは、本願発明において、上記2次データベース管理システムの「データベース機能」を実行させることに含まれるものである。

(う)上記(あ)で述べたように、本願発明における「データベース照会」には、データベース内のデータを変更することが含まれるものである。
よって、引用例1記載の発明における「マスターデータの変更を認識するステップ」と、本願発明における「データベース照会を変換可能な照会として認識するステップ」とは、「データベース照会を認識するステップ」である点において、共通するものである。

(え)上記(い)で述べたように、引用例1記載の発明において「ローカルデータ変更機能」を実行させることは、本願発明において「データベース機能」を実行させることに含まれるものである。
よって、引用例1記載の発明における「ローカルデータ変更機能が実行されるべきローカルコンピュータを決定するステップ」は、本願発明における「データベース機能が実行されるべき2次データベース管理システムを決定するステップ」に含まれるものである。

(お)引用例1記載の発明における「ローカルデータ変更機能を実行するローカルコンピュータの各々のローカルデータを変更後のマスターデータと同一内容となるように書替えるステップ」では、ホストコンピュータからローカルコンピュータに対して、上記「ローカルデータを変更後のマスターデータと同一内容となるように書替える」ための照会データが伝送されるものと解される。
よって、引用例1記載の発明における「ローカルデータ変更機能を実行するローカルコンピュータの各々のローカルデータを変更後のマスターデータと同一内容となるように書替えるステップ」と、本願発明における「データベース機能を実行する2次データベース管理システム各々に対してこの変換後のデータベース照会を伝送するステップ」とは、「データベース機能を実行する2次データベース管理システム各々に対してデータベース照会を伝送するステップ」である点において、共通するものである。

(か)上記(あ)で述べたように、本願発明における「データベース照会」には、データベース内のデータを変更することが含まれるものであり、引用例1記載の発明のシステムは、「照会システム」と呼び得るものである。
一方、本願発明の「照会変換システム」は、「照会」動作を行っていることには変わりなく、やはり「照会システム」と呼び得るものである。

以上の(あ)?(か)の事項を踏まえると、本願発明と引用例1記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。

(一致点)
本願発明と引用例1記載の発明とは、ともに、
「1次データベース管理システムのデータベース機能を実行するデータベース照会を使用し、少なくとも1つの2次データベース管理システムのデータベース機能を実行させるようなコンピュータシステムの使用方法において、データベース照会を認識するステップと、データベース機能が実行されるべき2次データベース管理システムを決定するステップと、データベース機能を実行する2次データベース管理システム各々に対してデータベース照会を伝送するステップとからなる照会システム。」
である点。

(相違点)
本願発明においては、「データベース照会を認識するステップ」が「データベース照会を変換可能な照会として認識するステップ」であるとともに、「データベース機能を実行する2次データベース管理システム各々に対し変換されたデータベース照会をそのデータベース照会に基づいて構築するステップ」が設けられ、さらに、「データベース機能を実行する2次データベース管理システム各々に対してデータベース照会を伝送するステップ」が「データベース機能を実行する2次データベース管理システム各々に対してこの変換後のデータベース照会を伝送するステップ」であって、本願発明のシステムは「照会変換システム」と呼び得るものであるのに対し、引用例1記載の発明は、そのようなものではない点。

5.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
上記引用例2,3の記載に見られるように、一般に、データベースシステムにおいて、「データベース照会を行うに際し、照会を行うための検索式を各データベースに固有の形式に変換すること」は、周知技術にすぎない。
そして、データベースシステムに種々の形式のものがあることは、周知のことであるから、引用例1記載の発明における「ホストコンピュータ」と各「ローカルコンピュータ」とが異なる形式のデータベースシステムを構築していることも、当然、あり得ることであって、そのように、引用例1記載の発明において、「ホストコンピュータ」と各「ローカルコンピュータ」とが異なる形式のデータベースシステムを構築している場合、上記周知技術を適用することにより、「ホストコンピュータ」側から各「ローカルコンピュータ」側に対してデータベース照会を行うときに、上記各「ローカルコンピュータ」に適合したデータベース照会に変換して行うようにすること、すなわち、「データベース機能を実行する2次データベース管理システム(ローカルコンピュータ)各々に対し変換されたデータベース照会をそのデータベース照会に基づいて構築するステップ」を設けるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
ここで、「ホストコンピュータ」と各「ローカルコンピュータ」とが異なる形式のデータベースシステムを構築している場合に「ホストコンピュータ」側から各「ローカルコンピュータ」側に対してデータベース照会を行うことができるのは、該データベース照会が上記各「ローカルコンピュータ」に適合したデータベース照会に変換され得るものであることが前提であり、データベース照会が変換される場合には、変換を行うプログラム等は、当然、対象となるデータベース照会が変換できる照会(照会命令)であることを判断(認識)していることになる。
よって、「データベース照会を変換可能な照会として認識するステップ」は、「データベース照会を行うに際し、照会を行うための検索式を各データベースに固有の形式に変換すること」が行われる場合に、当然含まれるステップにすぎない。
さらに、上記のようにデータベース照会の変換を行うようにした場合、「ホストコンピュータ」側から各「ローカルコンピュータ」側に対して伝送される「データベース照会」は「変換後のデータベース照会」となることは当業者にとって明らかである。
以上のことから、引用例1記載の発明において、「データベース照会を認識するステップ」を「データベース照会を変換可能な照会として認識するステップ」とし、「データベース機能を実行する2次データベース管理システム各々に対し変換されたデータベース照会をそのデータベース照会に基づいて構築するステップ」を設け、さらに「データベース機能を実行する2次データベース管理システム各々に対してデータベース照会を伝送するステップ」を「データベース機能を実行する2次データベース管理システム各々に対してこの変換後のデータベース照会を伝送するステップ」とし、全体のシステムを「照会変換システム」とすることは、上記周知技術を参酌することにより、当業者が適宜になし得ることである。

(本願発明の作用効果について)
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1記載の発明及び上記周知技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-05-06 
結審通知日 2011-05-09 
審決日 2011-05-20 
出願番号 特願平10-9992
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 紀田 馨  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 本郷 彰
岩崎 伸二
発明の名称 照会変換システム  
代理人 朝日 伸光  
代理人 越智 隆夫  
代理人 加藤 伸晃  
代理人 岡部 正夫  
代理人 臼井 伸一  

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