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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1244051 |
審判番号 | 不服2009-23652 |
総通号数 | 143 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-12-01 |
確定日 | 2011-09-29 |
事件の表示 | 特願2000-302221「リードフレーム積層物」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月12日出願公開、特開2002-110884〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年10月2日の出願であって、平成21年6月8日付けの拒絶理由の通知がなされ、同年7月31日付けで意見書及び手続補正書の提出がなされ、同年9月1日付けで拒絶査定がなされ、同年12月1日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けの手続補正書の提出がなされ、当審において、平成21年12月1日付けの手続補正を平成23年4月20日付の補正の却下の決定により却下するとともに、同日付けの拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の通知がなされ、これに対して、同年6月13日付けで意見書及び手続補正書の提出がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成23年6月13日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものであると認める。 「【請求項1】 隣接した複数の開口に端子部を複数配列して、複数の半導体チップを型内で一括に樹脂封止できるようにしたリードフレームと、その樹脂封止される領域の外側の全周を含む領域に貼着された粘着テープとを備え、前記リードフレームは、樹脂封止時の位置決めを行うためのガイドピン用孔を端辺沿いに有しており、前記粘着テープは、前記樹脂封止される領域の幅を超え、前記ガイドピン用孔と前記リードフレームの前記ガイドピン用孔が設けられている端辺とは他端側の端辺との間の幅よりも狭く、且つ、前記ガイドピン用孔を塞がないように貼着されているリードフレーム積層物。」(下線は、当審において付した。) なお、当該手続補正書によると、請求項1の上記下線の2箇所に「前記ガイド用孔」と記載されている。しかし、請求項1において、「ガイドピン用孔」という記載はあるものの、「前記」に対応する「ガイド用孔」の記載がないこと、補正前の発明の詳細な説明に「ガイド用孔」の記載がないこと、及び、補正の根拠とする本願明細書の【0018】の「図1?図2において、Aはガイドピン用孔13とリードフレーム10の端辺(他端側)との間の領域であり、Bは樹脂封止領域12の幅方向の領域であるが、Bの領域を超えて、Aの領域の幅の範囲内に粘着テープ20を連続して貼着するのが好ましい。」(注:下線は、当審において付した。)に「ガイドピン用孔」との記載があることに照らせば、請求項1の「前記ガイド用孔」の記載は、いずれも「前記ガイドピン用孔」の誤記であると認められるから、本願発明を上記のとおり認定した。 3.引用刊行物 (1)本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-124240号公報(当審拒絶理由における刊行物1である。以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下のとおりの事項が記載されている。 (1a)「【0027】図1に示すように、本実施形態のリードフレームは、信号接続用リード12がアウターリード部13と接続して、フレーム枠14により支持されている。また、少なくとも信号接続用リード12に接続するアウターリード部13、フレーム枠14の底面は、接着性を有した樹脂フィルム15が密着されている。図1中、破線で示した領域が樹脂フィルム15が密着された領域である。・・・・ 【0028】信号接続用リード12に連続する底面は外部接続端子になっており、信号接続用リード12部は先端に段差加工がされ、中央の開口部16が形成され、ダイパッド17が配されている。そして本実施形態のリードフレームの信号接続用リード部12をさけた領域にゲート部18を配し、樹脂成型時に溶融した封止樹脂をランナー部19から開口部16に注入する注入口となるものである。そして封止樹脂はダイパッド17上に接着される半導体素子およびその半導体素子と信号接続用リード部12とを電気的に接続する接続部材の外囲である開口部16、ゲート部18、エヤーベンド部20に充填される。・・・・」(【0027】?【0028】) (1b)「【0034】なお、リードフレームは図1に示すように、そのパターンが1つではなく、複数個、左右、上下に連続した配列になっている。・・・・」(【0034】) (1c)「【0038】本実施形態において、接着性を有した樹脂フィルム15は、ダイパッド部17の固着とともに、特にダイパッド部17の下面側および信号接続用リード部12,23の裏面側の外部端子部に樹脂封止時に封止樹脂が回り込まないようにするマスク的な役割を果たさせるためのものであり、この樹脂フィルム15の存在によって、ダイパッド部17の下面や、外部端子部の裏面に樹脂バリが形成されるのを防止することができる。・・・・」(【0038】) (1d)「【0042】図4,図5および図6に示すように、本実施形態の樹脂封止型半導体装置は、信号接続用リード部12と、半導体チップ24を支持するためのダイパッド部17を備えている。・・・・。そして、信号接続用リード部12、ダイパッド部17,半導体チップ24および金属細線25は、封止樹脂26内に封止されている。 【0043】また、信号接続用リード部12の下面側には封止樹脂26は存在せず、信号接続用リード12の下面が露出されており、この信号接続用リード部12の下面が実装基板との接続面となる。すなわち、信号接続用リード12の下面部が外部端子部27を構成している。・・・・」(【0042】?【0043】) (1e)「【0064】本発明の特徴は、半導体素子が搭載されたリードフレーム31を下金型32bに位置合わせして搭載し、リードフレーム31に封止フィルム30を密着し、モールド金型を樹脂フィルム、封止フィルム3、リードフレーム31とともに型締めし挟圧し、リードフレーム31に設けたゲート部、ランナー部の上部をふさぎ食い込ますことにより、ランナー部、ゲート部を形成させ安定した樹脂封止を可能にしたことにある。・・・・」(【0064】) (1f)図1には、樹脂フィルム15の態様として、開口部16の外側の全周を含む領域に密着された構成、開口部16の幅を超え、フレーム枠14の幅より狭くフレーム枠14の端辺と間隔を有して密着された構成、及び、隣接した複数の開口部16に信号接続用リード部12が複数配列された構成が示されている。 上記の記載によれば、次のことがいえる。すなわち、 (ア)摘記事項(1b)の「リードフレームは図1に示すように、そのパターンが1つではなく、複数個、左右、上下に連続した配列になっている。」との記載、及び、摘記事項(1e)の「本発明の特徴は、半導体素子が搭載されたリードフレーム31を下金型32bに位置合わせして搭載し、リードフレーム31に封止フィルム30を密着し、モールド金型を樹脂フィルム、封止フィルム3、リードフレーム31とともに型締めし挟圧し、リードフレーム31に設けたゲート部、ランナー部の上部をふさぎ食い込ますことにより、ランナー部、ゲート部を形成させ安定した樹脂封止を可能にしたことにある。」との記載から、リードフレーム31は、複数の半導体素子を金型内で一括に樹脂封止できるものである。 (イ)摘記事項(1a)の「そして封止樹脂はダイパッド17上に接着される半導体素子およびその半導体素子と信号接続用リード部12とを電気的に接続する接続部材の外囲である開口部16、ゲート部18、エヤーベンド部20に充填される。」との記載から、開口部16が樹脂封止される領域であると解される。 (ウ)摘記事項(1a)の「本実施形態のリードフレームは、信号接続用リード12がアウターリード部13と接続して、フレーム枠14により支持されている。少なくとも信号接続用リード12に接続するアウターリード部13、フレーム枠14の底面は、接着性を有した樹脂フィルム15が密着されている」によれば、樹脂フィルム15とリードフレームからなるリードフレーム積層物が記載されていることは明らかである。 したがって、摘記事項(1a)ないし(1e)、並びに、視認事項(1f)を本願発明の記載ぶりに則して整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されている。 「隣接した複数の開口部16に信号接続用リード12を複数配列して、複数の半導体素子を金型内で一括に樹脂封止できるようにしたリードフレーム31と、その樹脂封止される領域の外側の全周を含む領域に密着された樹脂フィルム15とを備え、前記樹脂フィルム15は、前記樹脂封止される領域の幅を超えて密着されているリードフレーム積層物。」 (2)本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-150761号公報(当審拒絶理由における刊行物2である。以下「刊行物2」という。)には、図面とともに以下のとおりの事項が記載されている。 (2a)「【0014】図1乃至図8において、11は、アウターリード12の長さが所定の短寸法、例えば0.1mm?0.3mm程度の寸法に形成してリードレス状態としたSON(small out-line non-leaded package)、QFN(quad flat non-leaded package)と呼ばれる樹脂封止型半導体装置である。・・・・ 【0015】また樹脂封止型半導体装置11は、長尺の良導電性材料の金属基板、例えば銅(Cu)板等でなる板厚が0.125mmのリードフレーム16を用いて形成されたもので、リードフレーム16には、予め長尺方向に半導体チップ17を搭載するダイパッド18やアウターリード12、インナーリードのリードおよびスプロケットホール19等を有する所定のパターンが、プレス加工やフォトエッチング加工等により形成されている。・・・・」(【0014】?【0015】) (2b)図1には、スプロケットホール19を、リードフレーム16の端辺沿いに有している構成が示されている。 (3)本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平6-21309号公報(当審拒絶理由における刊行物3である。以下「刊行物3」という。)には、図面とともに以下のとおりの事項が記載されている。 (3a)「【0002】 【従来の技術】図5は従来のQFP(Quad Flat Pacage)タイプの半導体装置を製造する場合に用いられるリードフレームの平面図である。このリードフレームは薄い金属板を打ち抜きあるいはエッチングにより形状加工したものである。・・・・54は上記枠50に開孔されたスプロケットホールであり、自動製造工程においてリードフレームのピッチ送りおよび位置合わせに使用されるもので、ガイドピンあるいはフックが挿入される。 【0003】・・・・リードフレームを上型および下型からなる一対の樹脂封止用金型に挟み込み、・・・・」(【0002】?【0003】) 4.対比 次に、本願発明と刊行物1発明を対比する。 刊行物1発明における「開口部16」、「信号接続用リード12」、「半導体素子」、「金型」、「密着」及び「樹脂フィルム15」は、本願発明における「開口」、「端子部」、「半導体チップ」、「型」、「貼着」及び「粘着テープ」にそれぞれ相当する。 そうすると、両者は、 「隣接した複数の開口に端子部を複数配列して、複数の半導体チップを型内で一括に樹脂封止できるようにしたリードフレームと、その樹脂封止される領域の外側の全周を含む領域に貼着された粘着テープとを備え、前記粘着テープは、前記樹脂封止される領域の幅を超えて貼着されているリードフレーム積層物。」で一致し、次の点で相違する。 (相違点) 本願発明は、「リードフレームは、樹脂封止時の位置決めを行うためのガイドピン用孔を端辺沿いに有しており」、粘着テープが「前記ガイドピン用孔と前記リードフレームの前記ガイドピン用孔が設けられている端辺とは他端側の端辺との間の幅よりも狭く、且つ、前記ガイドピン用孔を塞がないように貼着されている」のに対し、刊行物1発明は、「ガイドピン用孔」を有しておらず、樹脂フィルム15の密着が「ガイドピン用孔」の設置箇所と関係しない点。 5.判断 次に、上記の相違点について、検討する。 刊行物1の摘記事項(1a)における「図1に示すように、本実施形態のリードフレームは、信号接続用リード12がアウターリード部13と接続して、フレーム枠14により支持されている。また、少なくとも信号接続用リード12に接続するアウターリード部13、フレーム枠14の底面は、接着性を有した樹脂フィルム15が密着されている。図1中、破線で示した領域が樹脂フィルム15が密着された領域である。」(【0027】)との記載、及び視認事項(1f)における、フレーム枠14の端辺と間隔を有して樹脂フィルム15を密着した態様によれば、樹脂フィルム15は、アウターリード部13、及びフレーム枠14の底面と密着される範囲であるフレーム枠内に入る幅で形成されている。 刊行物1の摘記事項(1e)の「半導体素子が搭載されたリードフレーム31を下金型32bに位置合わせして搭載し、・・・樹脂封止を可能にしたことにある。」の記載によると、樹脂封止の際に、刊行物1発明におけるリードフレーム積層物は金型に位置合わせされるものである。このような位置合わせをする場合、ガイドピンを挿入するガイドピン用孔をリードフレームの端辺沿いに設けることが周知の手段である。 例えば、刊行物2の摘記事項(2a)には、「SON(small out-line non-leaded package)、QFN(quad flat non-leaded package)と呼ばれる樹脂封止型半導体装置」(【0014】)について、「リードフレーム16には、・・・・スプロケットホール19等を有する所定のパターンが、・・・形成されている。」(【0015】)との記載があり、視認事項(2b)の「スプロケットホール19を、リードフレーム16の端辺沿いに有している構成」が示されている。刊行物3の摘記事項(3a)には、「QFP(Quad Flat Pacage)タイプの半導体装置」について、「54は上記枠50に開孔されたスプロケットホールであり、・・・・リードフレームの・・・・位置合わせに使用されるもので、ガイドピン・・・が挿入される。」(【0002】)との記載がある。このように、ガイドピン用孔としてのスプロケットホールをリードフレームに設けることが記載されている。 そうすると、刊行物1発明のリードフレーム積層物を用いて樹脂封止を行う際、金型に位置合わせするのであるから、リードフレームの一端側に沿ってガイドピン用孔を設けること、それと同時に、樹脂フィルムの密着において、ガイドピン用孔を塞がないようにすることは、ガイドピン用孔の必要性を考慮すれば、当業者が容易に採用し得る設計事項である。 また、上述したとおり、刊行物1には、樹脂フィルムを、リードフレームの端辺と間隔を空けて密着された態様が開示されているから、樹脂フィルムの密着範囲につき、ガイドピン用孔とガイドピン用孔を設けていない端辺との間の幅より狭くすることは、当業者が適宜なし得る事項である。 以上のとおりであるから、刊行物1発明において、ガイドピン用孔の設置及び樹脂フィルムの密着幅に関して相違点のように構成することは、当業者が容易に想到し得る設計的事項であり、そのことによる作用効果も当業者が予測しうるものにすぎない。 6.むすび したがって、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1発明、並びに、刊行物2及び3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-07-29 |
結審通知日 | 2011-08-02 |
審決日 | 2011-08-17 |
出願番号 | 特願2000-302221(P2000-302221) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長谷部 智寿、弘實 由美子 |
特許庁審判長 |
北村 明弘 |
特許庁審判官 |
鈴木 正紀 田中 永一 |
発明の名称 | リードフレーム積層物 |
代理人 | 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 |