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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1244052
審判番号 不服2009-25525  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-24 
確定日 2011-09-29 
事件の表示 特願2006-136017号「超音波洗浄装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月29日出願公開、特開2007-311379号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成18年5月16日の出願であって、平成21年9月30日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年10月6日)、これに対し、同年12月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。
そして、平成23年4月27日付けで当審により拒絶理由通知がなされ、同年6月24日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年6月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書並びに図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「洗浄液に浸漬された被洗浄物を超音波洗浄する超音波洗浄装置において、前記洗浄液に超音波を印加する超音波振動子と、前記超音波振動子に接続され、前記超音波振動子の3次共振周波数を発振させる発振手段と、を具備し、前記超音波振動子は、1MHz以上の1次共振周波数によって1次共振状態で発振させる際の厚さを有し、前記超音波振動子を前記3次共振周波数によって発振させた超音波を前記洗浄液に印加し、前記洗浄液に印加される超音波の共振周波数のみが前記超音波振動子から発振されることを特徴とする超音波洗浄装置。」

3.刊行物について
(1)当審による拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-128255号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。
a)「【請求項1】洗浄用流体を貯留する内槽と、前記内槽を媒体流体に浸った状態で収容する外槽と、前記外槽に外側から約500KHz以上の超音波振動を付与する超音波励振手段とを備えた超音波洗浄装置であって、前記洗浄用流体及び前記媒体流体により前記内槽に内外から加わる圧力が互いに略等しくなるように該洗浄用流体及び媒体流体の量を調節しつつ供給・排出する供給・排出手段を有することを特徴とする超音波洗浄装置。」(段落【特許請求の範囲】。下線は当審にて付与。以下同様。)
b)「【発明の属する技術分野】本発明は、内外2槽構造にして約500KHz以上の駆動周波数を用い、例えば工業用としてシリコンウェーハ等の洗浄に供されて好適な超音波洗浄装置に関する。」(段落【0001】)
c)「すなわち、近時、ULSI(超大規模集積回路)の高集積化に伴い洗浄効率を向上させるために1MHz以上という更に高い周波数帯域の利用が進められる傾向にある。そのため、共振するように設定される内槽及び外槽の底部の厚みをより薄くする試みがなされている。他方、被洗浄物であるシリコンウェーハは大径のものに推移しつつあり、これを収容して洗浄するための槽の大型化が図られている。これらの点から、特に、機械的強度が小さな材質である石英ガラスからなる内槽に関して不都合が生じている。
つまり、図3から明らかなように、内槽101の底部及びその近傍にはその貯留した洗浄用流体105による大きな圧力が加わるから、薄く大型の槽では変形し易く、甚だしくは破壊する恐れがある。
因に、上記内槽101及び外槽102の板厚は一次共振を前提として設計され、それ故に薄くなるので、槽の強度を確保するために二次共振板厚とすることも考えられた。
しかし、二次共振板厚では、超音波振動の減衰が大きく、振動エネルギーが効率よく洗浄用流体に伝播しないことが判明している。
本発明は上記従来技術の欠点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、例えば石英ガラスを素材としながらも薄くかつ大型の槽の実用化を達成し、以て、極く高い周波数帯域の駆動周波数の利用と、大きな被洗浄物の洗浄を可能とした超音波洗浄装置を提供することである。
また、本発明は、更に他の効果を奏し得る超音波洗浄装置を提供する。」(段落【0013】?【0018】)
d)「図示のように、当該超音波洗浄装置は、内槽1及び外槽2を備えている。内槽1は例えば純水等からなる洗浄用流体5を貯留すると共に被洗浄物を収容し得、又、外槽2は同じく純水等からなる媒体流体6を貯留して該内槽1をこの媒体流体6に浸った状態で収容している。内槽1は、外槽2の上部に設けられた支持部2aによって支えられている。内槽1は例えば石英ガラスを素材とし、外槽2はステンレス鋼等を素材として形成されている。・・・前記外槽2の底部下面側に、振動子20が固着されている。この振動子20はPZT素子等からなり、PZT素子の場合、図示しない発振器によって所定周波数の電圧を印加され、この周波数の超音波振動を発する。駆動周波数は、本実施例の場合、1MHzに設定される。該発振器と振動子20とを、超音波励振手段と総称する。」(段落【0026】?【0032】)
e)「ここで、前述したように、洗浄用流体5及び媒体流体6は共に純水からなり、各々の比重量が等しい。よって、これら洗浄用流体5及び媒体流体6により内槽1に内外から加わる圧力が互いに等しくなる。このように内外の圧力を均衡させることで、機械的強度が小さな石英ガラスを内槽1の素材として用いようともその厚みを極く薄く設定することができ、一次共振を前提としてかなり高い駆動周波数を利用することが可能となる。
本実施例では駆動周波数は0.95MHzに設定されているから、材質を石英ガラスとする内槽1の底部の厚みは一次共振板厚として3.0mmとされている。但し、ステンレス製の外槽2は、内外から受ける圧力の差が大きいから、厚みを薄くすることはせず、例えば3.0mmに設定される。・・・当該超音波洗浄装置においては、発振器(図示せず)より印加される駆動電圧によって振動子20が作動し、超音波振動を発する。この超音波振動の縦波が外槽2の底部、媒体流体6及び内槽1の底部を経て洗浄用流体5に伝わり、該洗浄用流体5が励振される。よって、該洗浄用流体5中に浸漬されている被洗浄物、例えばシリコンウェーハが洗浄される。」(段落【0045】?【0050】)
f)「【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る超音波洗浄装置によれば、洗浄用流体及び媒体流体によって内槽に内外から加わる圧力が互いに略等しくなるようにこれら流体の量を調節することが行われる。このように内外の圧力を均衡させることで、機械的強度が小さな石英ガラス等を内槽の素材として用いようともその厚みを極く薄く設定することができ、一次共振を前提として設計してかなり高い駆動周波数を利用することが可能となり、洗浄効果が向上している。」(段落【0063】)
g)上記dの記載事項及び【図1】、【図2】の図示内容によると、振動子20が板状であり、外槽2の底部下面側に固着されていることが示されている。
h)上記eの「一次共振を前提とするかなり高い駆動周波数を利用することが可能となる。」なる記載から、振動子20が、一次共振を前提としてかなり高い駆動周波数の超音波を発することが示されている。さらに、上記dの「振動子20はPZT素子等からなり、PZT素子の場合、図示しない発振器によって所定周波数の電圧を印加され、この周波数の超音波振動を発する。」なる記載から、振動子20により発せられる超音波振動の周波数は、発振器により印加される電圧の周波数と等しいといえる。

上記a?fの記載事項、上記g?hの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「洗浄用流体5中に浸漬されている被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置において、
超音波振動を発する振動子20と、
振動子20に一次共振を前提とする、約500KHz以上のかなり高い駆動周波数の電圧を印加する発振器と、を具備し、
振動子20が板状であり、外槽2の底部下面側に固着され、
発振器の駆動周波数は、例えば、1MHzに設定され、
発振器の一次共振を前提とする、約500KHz以上のかなり高い駆動周波数と等しい周波数の超音波振動を振動子20が発し、振動子20により発せられた超音波振動の縦波が洗浄用流体5に伝わり、洗浄用流体5が励振される
超音波洗浄装置。」

(2)同じく、当審による拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平4-123700号公報(以下「刊行物2」という。)には、次の発明が記載されている。
a)「〔産業上の利用分野〕
本発明は、超音波探触子に係り、例えば超音波診断装置に用いられる超音波探触子に関する。」(第1ページ左下欄第14?16行)
b)「それ故、本発明はこのような事情に基づいてなされたものであり、その目的とするところのものは、超音波振動子それ自体の厚みを薄くすることなく、高周波の超音波周波数が得られる超音波探触子を提供するものである。」(第2ページ左上欄第11?15行)
c)「〔作用〕
このように構成した超音波探触子は、超音波振動子の振動モードのうち、基本振動を除く幾つかの高調振動のうちの一を超音波の送受信として用いようとするものである。
すなわち、前述のように、超音波を送信する場合、マッチング層の厚みを超音波振動子からの音波のうち高調振動の共振周波数の一に対してその波長の1/4の厚さとなるように設定することによって、基本波および選定された高調振動の共振周波数以外の高調波振動はいわゆるマスクされ、該選定された高調振動の周波数の超音波のみが被検体側に出力されるようになる。
また、超音波を受信する場合も同様に、被検対よりのエコー信号は、マッチング層を介して振動子に達し、振動子の前記設定された高調振動のモードを励振し、電気信号に変換される。
したがって、従来、基本波が出力されていたものと比べて、より高周波の出力が得られるようになる。
そして、超音波振動子の厚さは、従来と同様基本波周波数に対して1/2波長のままでよいことから機械的強度、および耐久性は充分確保できることになる。
したがって、このようなことから、超音波振動子それ自体の厚みを薄くすることなく、高周波の超音波周波数が得られる超音波探触子を得ることができるようになる。
〔発明の実施例〕
以下、本発明の一実施例を図面を用いて具体的に説明する。
第1図は本発明による超音波探触子の一実施例を示す構成図である。
同図において、両面に電極が設けられたたとえばチタン酸ジルコン酸鉛からなる超音波振動子2がある。この超音波振動子2の厚さは、たとえば0.4mmに設定されている。
この状態における超音波振動子2は、ほぼ3.5MHzで共振するが、その3倍の高調振動である約10MHzでも共振するようになっている。・・・なお、超音波振動子2はバッキング材3に支持固定された際に、アレイ状に切断され、いわゆるリニアアレイ形の探触子を構成している。
また、超音波振動子1の主表面側、すなわち被検体に当接される側の面には、超音波振動子1の振動が効率よく被検体に伝播できるようにいわゆる音響整合層と称されるマッチング層1が形成されている。
このマッチング層1は、重金属とエポキシ樹脂の混合物からなり、被検体と超音波振動子1の中間の音響インピーダンスになるように設定されている。
そして、マッチング層1の厚さは3倍の高調振動である10MHzに対して1/4波長となるように設定されている。
このように構成された超音波探触子は、第2図(a)に示すように、超音波振動子として、厚み0.4mmのチタン酸ジルコン酸鉛を用いていることから、基本周波数3.5MHz(f_(0))の他に、高調振動による共振周波数約10MHz(3f_(0))、約17MHz(5f_(0))、・・・の振動モードが存在する。そこで、第2図(b)に示すように、マッチング層1の共振周波数(厚みが1/4波長となる周波数)を振動子の3f_(0)に合わせることにより、f_(0)、5f_(0)、7f_(0)、・・・等の共振を抑制させることができるとともに、3f_(0)を目的の超音波周波数とすることができる。
ちなみに、従来では、f_(0)を目的の超音波周波数としていたものである。
以上説明したことから明らかなように、本実施例によれば、超音波振動子1の振動モードのうち、基本振動を除く幾つかの高調振動のうちの一を超音波周波数として用いようとするものである。
このため、従来、基本波が送受信されていたものと比べて、より高周波の送受信が得られるようになる。
そして、超音波振動子の厚さは、従来と同様基本波振動モードに対して1/2波長のままでよいことから、機械的強度、および耐久性は充分確保できることになる。
したがって、このようなことから、超音波振動子それ自体の厚みを薄くすることなく、高周波の超音波周波数が得られる超音波探触子を得ることができるようになる。」(第2ページ右上欄第6行?第3ページ右上欄第13行)
d)「さらに、上述した実施例では、超音波探触子として、いわゆるリニアアレイ形のものを示したが、これに限定されず、フェイズドアレイ形、コンベックス形、あるいは単板振動子においても適用できることはいうまでもない。
〔発明の効果〕
以上説明したことから明らかなように、本発明による超音波探触子によれば、超音波振動子それ自体の厚みを薄くすることなく、高周波の超音波周波数を得ることができるようになる。」(第3ページ左下欄第5?14行)

上記a?dの記載事項及び図面の図示内容を総合勘案して、超音波振動子1を単板振動子に適用した場合についてまとめると、刊行物2には、次の発明が記載されていると認められる。
「超音波振動子それ自体の厚みを薄くすることなく、高周波の超音波周波数が得られる超音波探触子を提供するために、
超音波振動子2の厚さは、基本波周波数3.5MHz(f_(0))に対して1/2波長のままの0.4mmに設定され、
高調振動による3倍の共振周波数約10MHz(3f_(0))の振動モードを超音波周波数として用いる
単板振動子である超音波振動子1。」

4.対比
本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「洗浄用流体5中に浸漬されている被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置」は、その構成及び機能からみて、本願発明の「洗浄液に浸漬された被洗浄物を超音波洗浄する超音波洗浄装置」に相当し、以下同様に、
「超音波振動を発する振動子20」は「洗浄液に超音波を印加する超音波振動子」に、
「振動子20が板状であり、外槽2の底部下面側に固着され」ることは、振動子20が一次共振を前提とする、約500KHz以上のかなり高い駆動周波数の超音波振動を発するものであり、振動子20は、一次共振周波数の超音波を発することができる板厚を有しているものといえることから、「超音波振動子は、1MHz以上の1次共振周波数によって1次共振状態で発振させる際の厚さを有」することに、
それぞれ相当する。
そして、刊行物1に記載された発明の「振動子20に一次共振を前提とする、約500KHz以上のかなり高い駆動周波数の電圧を印加する発振器」「を具備し、発振器の一次共振駆動周波数は、例えば、1MHzに設定され」と本願発明の「超音波振動子に接続され、超音波振動子の3次共振周波数を発振させる発振手段」とは、前者において、発振器は、振動子20に電気的に接続され、振動子20に電圧を印加するものであるから、両者は、「超音波振動子に接続され、超音波振動子の共振周波数を発振させる発振手段」である点で共通し、同様に、
刊行物1に記載された発明の「発振器の一次共振を前提とする、約500KHz以上のかなり高い駆動周波数と等しい周波数の超音波振動を振動子20が発し、振動子20により発せられた超音波振動の縦波が洗浄用流体5に伝わり、洗浄用流体5が励振される」ことと本願発明の「超音波振動子を3次共振周波数によって発振させた超音波を洗浄液に印加し、洗浄液に印加される超音波の共振周波数のみが超音波振動子から発振される」こととは、「超音波振動子を共振周波数によって発振させた超音波を洗浄液に印加し、洗浄液に印加される超音波の共振周波数と等しい共振周波数の超音波振動が超音波振動子から発振される」ことで共通する。

したがって、上記両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「洗浄液に浸漬された被洗浄物を超音波洗浄する超音波洗浄装置において、前記洗浄液に超音波を印加する超音波振動子と、前記超音波振動子に接続され、前記超音波振動子の共振周波数を発振させる発振手段と、を具備し、前記超音波振動子は、1MHz以上の1次共振周波数によって1次共振状態で発振させる際の厚さを有し、前記超音波振動子を前記共振周波数によって発振させた超音波を前記洗浄液に印加し、前記洗浄液に印加される超音波の共振周波数と等しい共振周波数の超音波振動が前記超音波振動子から発振される超音波洗浄装置。」

[相違点1]
発振手段により発振させる共振周波数が、本願発明では、3次共振周波数であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、一次共振駆動周波数であり、例えば、1MHzに設定されている点。

[相違点2]
本願発明では、超音波振動子を3次共振周波数によって発振させた超音波を洗浄液に印加し、洗浄液に印加される超音波の共振周波数のみが超音波振動子から発振されるのに対して、刊行物1に記載された発明では、発振器の一次共振を前提とする、約500KHz以上のかなり高い駆動周波数と等しい周波数の超音波振動を振動子20が発し、振動子20により発せられた超音波振動の縦波が洗浄用流体5に伝わり、洗浄用流体5が励振される点。

5.当審による判断
上記相違点1?2について検討する。
刊行物2に記載された発明の「超音波振動子2の厚さは、基本波周波数3.5MHz(f_(0))に対して1/2波長のままの0.4mmに設定され」ることは、その構成及び機能からみて、本願発明の「超音波振動子は、1MHz以上の1次共振周波数によって1次共振状態で発振させる際の厚さを有」することに相当し、同様に、
「単板振動子である超音波振動子1」は「超音波洗浄装置」に相当する。
そして、刊行物2に記載された発明の「高調振動による3倍の共振周波数約10MHz(3f_(0))の振動モードを超音波周波数として用いる」と、本願発明の「超音波振動子を3次共振周波数によって発振させた超音波を洗浄液に印加」することとは、「超音波振動子を3次共振周波数によって発振させた超音波を用いる」ことで共通する。
したがって、刊行物2に記載された発明は、
「超音波振動子は、1MHz以上の1次共振周波数によって1次共振状態で発振させる際の厚さを有し、
超音波振動子を3次共振周波数によって発振させた超音波を用いる、
超音波振動子1。」と言い換えることができる。
また、超音波洗浄の技術分野において、超音波振動子を1MHz以上の1次共振周波数によって1次共振状態で発振させる際に、超音波振動子の共振周波数を、発振器により超音波振動子に印加される電圧の駆動周波数と同じ周波数となるようにすることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、刊行物1の前記3(1)eの「この振動子20はPZT素子等からなり、PZT素子の場合、図示しない発振器によって所定周波数の電圧を印加され、この周波数の超音波振動を発する。駆動周波数は、本実施例の場合、1MHzに設定される。」なる記載や、特開2004-229898号の段落【0011】、【0012】、【0016】、【0019】を参照。)。
さらに、刊行物1に記載された発明は、前記3(1)cに記載されているように、「極く高い周波数帯域の駆動周波数の利用と、大きな被洗浄物の洗浄を可能とした超音波洗浄装置を提供すること」を目的とするものである。
また、極く高い周波数帯域の駆動周波数を利用するためには、超音波振動子の板厚や、洗浄槽の板厚を薄くせざるを得ないことは、本願出願前に周知の技術的課題であり(例えば、刊行物1の前記3(1)cの「すなわち、近時、ULSI(超大規模集積回路)の高集積化に伴い洗浄効率を向上させるために1MHz以上という更に高い周波数帯域の利用が進められる傾向にある。そのため、共振するように設定される内槽及び外槽の底部の厚みをより薄くする試みがなされている。」なる記載や、特開10-192801号公報の段落【0009】?【0011】を参照。)、刊行物1に記載された発明に内在されている課題である。
そのうえ、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とは、共に、超音波振動子は、1MHz以上の1次共振周波数によって1次共振状態で発振させる際の厚さを有する点で共通するものである。
これらのことから、刊行物1に記載された発明において、超音波振動子それ自体の厚みを薄くすることなく、高周波の超音波周波数が得られる超音波探触子を提供するために、刊行物2に記載された発明に倣って、発振器を3次共振周波数で発振させること、そして、その際に、上記周知の技術事項を適用して、振動子20にも発振器と同じ3次共振周波数の超音波を発するようにすることは当業者が容易になし得たことである。
また、本願発明の奏する効果についてみても、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
よって、本願発明は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-20 
結審通知日 2011-07-26 
審決日 2011-08-12 
出願番号 特願2006-136017(P2006-136017)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五十嵐 康弘石川 貴志  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 青木 良憲
長崎 洋一
発明の名称 超音波洗浄装置  
代理人 柳瀬 睦肇  

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