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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1244056 |
審判番号 | 不服2010-6301 |
総通号数 | 143 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-03-23 |
確定日 | 2011-09-29 |
事件の表示 | 特願2004- 81586「研磨用組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月29日出願公開、特開2005-268667〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成16年3月19日の特許出願であって、同21年8月5日付けで拒絶の理由が通知され、同21年10月9日に意見書とともに特許請求の範囲及び明細書について手続補正書が提出されたが、同21年12月15日付けで拒絶をすべき旨の査定がされた。これに対し、平成22年3月23日に本件審判の請求がされるとともに特許請求の範囲及び明細書について再度手続補正書が提出され、同23年2月15日付けで当審から拒絶の理由が通知され、同23年4月25日に意見書の提出とともに特許請求の範囲及び明細書についてさらに手続補正書が提出され、同23年5月11日付けで当審から再度の拒絶の理由が通知され、同23年7月15日に意見書の提出とともに特許請求の範囲及び明細書についてさらに手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成23年7月15日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。 「 【請求項1】 研磨パッドによる単結晶シリコンウエハの中心部を含む表面の研磨に使用され、コロイダルシリカ、及び水酸化テトラメチルアンモニウムのみからなるアルカリ化合物を含有する研磨用組成物であって、 前記コロイダルシリカは、BET法に基づいて算出された平均一次粒子径をD_(SA)で表し、レーザー光回折法に基づいて測定された平均二次粒子径をD_(N4)で表したとき、D_(SA)及びD_(N4)の間に、D_(SA)≦D_(N4)の関係が成立し、かつ、D_(N4)が28nm以下である研磨用組成物。」(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。) 第3 引用刊行物記載の発明及び事項 これに対して、当審での平成23年5月11日付けの拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-118815号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の発明、あるいは事項が記載されている。 1 刊行物1記載の事項 刊行物1には、「半導体ウェーハエッジ研磨用研磨組成物」に関して、表1及び表2とともに以下の事項が記載されている。 ア 特許請求の範囲の請求項1 「【請求項1】BET法により測定した比表面積より真球換算で算出した平均一次粒子径Aが8?50nmであり、マイクロトラックUPAによるレーザー散乱法で測定した平均二次粒子径Bが12?200nmの範囲にあり、かつ前記平均一次粒子径Aと平均二次粒子径Bの比B/Aが1.4から12の範囲にあって、更に溶液全体に対する濃度が2?30重量%である酸化珪素粒子のコロイド溶液であり、かつ、25℃における酸解離定数の逆数の対数値が8.0?12.5の弱酸および強塩基を組み合わせた緩衝溶液を含むことによって、pH8?11の間で緩衝作用を有することを特徴とする半導体ウェーハエッジ研磨用研磨組成物。」 イ 段落【0002】?段落【0003】 「【従来の技術】シリコン単結晶等半導体素材を原材料としたIC、LSIあるいは超LSI等の電子部品は、シリコンあるいはその他の化合物半導体の単結晶のインゴットを薄い円板状にスライスしたウェーハに多数の微細な電気回路を書き込み分割した小片状の半導体素子チップを基に製造されるものである。インゴットからスライスされたウェーハは、ラッピング、エッチング、更にはポリッシングという工程を経て、少なくともその片面が鏡面に仕上げられた鏡面ウェーハに加工される。ウェーハは、・・・(中略)・・・半導体素子チップに分割されるまではウェーハは最初の円板状の形状を保ったまま加工されるのであり、各加工程の間には洗浄、乾燥、搬送等の工程が入る。その間ウェーハの外周側面エッジの形状が切り立ったままでかつ未加工の粗な状態の面であると、・・・(中略)・・・その後の工程でそれが散逸して精密加工を施した面を汚染し、製品の歩留まりや品質に大きな影響を与えたりすることが多い。これを防止するために、ウェーハ加工の初期段階でエッジ部分の面取り(べべリング)を行ない更にその部分を鏡面仕上げ(エッジポリッシング)することが一般に行なわれている。 【0003】上述のエッジポリッシングは、一般的には回転可能なドラムの表面に、合成樹脂発泡体、合成皮革あるいは不織布等からなるポリッシングパッドを貼付した研磨加工機に、工作物であるべべリングを施したシリコンウェーハ等のエッジ部分を回転させつつ傾斜押圧し、コロイダルシリカを主成分とした研磨用組成物溶液を供給しつつ、エッジ部分の研磨加工を行なう方法で行われる。しかして、この際用いられる研磨用組成物はウェーハの表面ポリッシングに用いられるものと同等のものが用いられる。」 ウ 段落【0004】 【0004】研磨用組成物としては、アルカリ成分を含んだ溶液に微細なコロイド状酸化珪素微粒子を分散した溶液が一般的に使用される。・・・(後略)」 エ 段落【0005】 「【0005】このような加工においては、コロイダルシリカの形状は重要なファクターとなる。すなわち、被加工物表面はアルカリによって腐食され薄層が形成されてゆくのであるが、この薄層の除去速度はコロイダルシリカの形状によって大きく変化する。コロイダルシリカの粒子径を大きくすれば、除去速度は速くなるが、研磨面にスクラッチが発生しやすくなる。ゆえに、その粒子は適度なサイズを有し、容易に破壊したり、あるいは高次に凝集してゲル化するものであってはならない。すなわち、酸化珪素粒子はアルカリにより形成された浸蝕層を機械的作用により効果的に除去してゆくものである。従って、除去後の新しい研磨面に何らかの影響を与えるようなものであってはならないのである。」 オ 段落【0008】?【0009】 「【0008】(前略)・・・研磨用組成物溶液として、微細な酸化珪素の砥粒を含むコロイド、即ちコロイダルシリカの水溶液であって、平均一次径が8?50nm、平均二次粒子径が12?200nmであり、かつ平均一次粒子径と平均二次粒子径の比、平均二次粒子径/平均一次粒子径が1.4?12の間にある酸化珪素粒子を2?30重量%を含むコロイド溶液からなり、pHが8?11の間でpHを緩衝する作用を有する研磨用組成物を用いることにより、シリコンウェーハ等の半導体ウェーハのエッジ部分の鏡面研磨加工が効果的に行なえることを見出し、・・・(中略)・・・上述の目的は、BET法により測定した比表面積より真球換算で算出した平均一次粒子径Aが8?50nmであり、マイクロトラックUPAによるレーザー散乱法で測定した平均二次粒子径Bが12?200nmの範囲にあり、かつ前記平均一次粒子径Aと平均二次粒子径Bの比B/Aが1.4から12の範囲にあって、・・・(後略)」 カ 段落【0015】 「本発明の緩衝作用を有する研磨用組成物溶液の形成に使用する・・・(中略)・・・また、強塩基としては、アルカリ金属の水酸化物、四級アンモニウム、アンモニウムなどが使用できる。・・・(後略)」 キ 段落【0020】 「実施例および比較例で用いた研磨用組成物は、平均一次粒子径17nm、平均二次粒子径28nmの試作品の酸化珪素微粒子、及び、平均一次粒子径18nm、平均二次粒子径180nmのヒュームドシリカのいずれかを用いた。・・・(後略)」 ク 段落【0022】の表1及び段落【0023】の表2 摘記事項キの記載を参酌すると、表1の実施例1ないし3及び表2の実施例5ないし7には、酸化珪素微粒子の一次粒子径を17nm、二次粒子径を28nmとすることが記載されている。 2 刊行物1記載の発明 上記摘記事項ウ及びカより、刊行物1記載の研磨組成物は、アルカリ化合物を含有することが理解される。 また、上記摘記事項クより、コロイダルシリカの平均一次粒子径Aは17nm、平均二次粒子径Bは28nmであり、したがって両者の比、B/Aは1.65であるということができる。 そこで、以上の摘記事項アないしクを考慮し、本願発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認める。 「ポリッシングパッドによるシリコン単結晶等半導体素材を原材料としたウェーハのエッジ部の研磨に使用され、コロイダルシリカ、及びアルカリ化合物を含有する研磨組成物であって、 前記コロイダルシリカは、BET法に基づいて算出された平均一次粒子径をAで表し、レーザー散乱法に基づいて測定された平均二次粒子径をBで表したとき、B/Aが1.65であり、かつ、Bが28nmである研磨組成物。」(以下、「刊行物1発明」という。) 第4 対比 本願発明と刊行物1発明とを対比すると以下のとおりである。 刊行物1発明の「ポリッシングパッド」が本願発明の「研磨パッド」に相当することは、明らかであり、以下同様に、「シリコン単結晶等半導体素材を原材料としたウェーハ」は「単結晶シリコンウエハ」に、「研磨組成物」は「研磨用組成物」に、「レーザー散乱法」は「レーザー光回折法」に、「A」は「D_(SA)」に、「B」は「D_(N4)」にそれぞれ相当することも明らかである。 そして、刊行物1発明においては、D_(N4)/D_(SA)が1.65(B/Aが1.65)であるから、これはD_(SA)<D_(N4)の関係が成立する限りにおいて本願発明と共通している。 また、刊行物1発明においては、D_(N4)(B)は28nmであり、本願発明においては、D_(N4)が28nm以下であるから、両者はD_(N4)が28nmである点において共通している。 したがって、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致しているということができる。 <一致点> 「研磨パッドによる単結晶シリコンウエハの研磨に使用され、コロイダルシリカ、及びアルカリ化合物を含有する研磨用組成物であって、 前記コロイダルシリカは、BET法に基づいて算出された平均一次粒子径をD_(SA)で表し、レーザー光回折法に基づいて測定された平均二次粒子径をD_(N)4で表したとき、D_(SA)<D_(N4)の関係が成立し、かつ、D_(N4)が28nmである研磨用組成物。」 そして、本願発明と刊行物1発明とは、以下の2点で相違している。 1 <相違点1> 本願発明の研磨用組成物は、単結晶シリコンウエハの中心部を含む表面の研磨に使用されるものであるのに対し、刊行物1発明の研磨用組成物は、単結晶シリコンウエハのエッジ部の研磨に使用されるものである点。 2 <相違点2> 本願発明は、アルカリ化合物が水酸化テトラメチルアンモニウムのみからなるのに対し、刊行物1発明のアルカリ化合物は、そのような特定がされていない点。 第5 相違点の検討 1 <相違点1>について まず、コロイダルシリカを含む研磨用組成物を単結晶シリコンウエハの中心部を含む表面の研磨に使用することは、例えば、特開2002-226836号公報(段落【0001】、段落【0018】、図1等参照)、特開平8-267358号公報(段落【0001】、段落【0013】、図1等参照)、特開平9-7987号公報(段落【0001】、段落【0010】、図8等参照)に示されるように、これまで広く行われている周知の事項である。 そして、刊行物1発明の研磨用組成物を、シリコンウエハのエッジ部の研磨のみならず、シリコンウエハの中心部を含む表面の研磨に使用することは、そもそも、当業者が自然に試みようとすることであるし、そのようにシリコンウエハのエッジ部と中心部を含む表面とで同じ研磨用組成物を用いることは、例えば、特開平11-315273号公報(【0003】段落参照)、上記刊行物1(上記摘記事項第3の1のイ参照)に示されるように従来周知の事項である。 これに関し、審判請求人は、平成23年7月15日に提出した意見書にて、「本願発明は、」「コロイダルシリカを用いた単結晶シリコンウエハ上面部の平面研磨において、繰り返し研磨を行っても研磨パッドの目詰まりに起因する研磨速度の著しい低下を抑制することができるという効果が生ずる。」旨主張している。 しかしながら、研磨用組成物において、(一次)粒子が凝集すると研磨パッドの目詰まりを惹き起こし研磨効率の低下等につながることは、例えば、特開2002-75929号公報(段落【0004】参照)、特開2003-127063(段落【0004】参照)に示されるように従来周知の技術的事項である。そして、刊行物1発明のようなウエハのエッジ部の研磨用パッド(ポリッシングパッド)においても、粒子による目詰まりを惹き起こすこと、及びそれを防止する必要があることは、当業者が当然に配慮する事項であることと考えられ、請求人の主張する本願発明のかかる効果は格別なものということはできない。 そうしてみると、刊行物1発明に上記従来周知の事項を適用して、刊行物1発明における研磨用組成物を単結晶シリコンウェハの中心部を含む表面の研磨に適用しようと試みることは、当業者が容易に想到し得るものというのが相当である。 2 <相違点2>について シリコンウエハの中心部を含む表面の研磨に使用される研磨組成物において、アルカリ化合物として水酸化テトラメチルアンモニウムのみを含有することは、例えば、特開2002-226836号公報(段落【0021】?【0023】参照)、特開平11-279534号公報(【特許請求の範囲】参照)に示されるように、従来周知の事項である。そして、かかる従来周知の事項を、刊行物1発明に適用して相違点2に係る発明特定事項を本願発明のものとすることは、当業者が容易に想到し得るところである。 3 したがって、本願発明は、刊行物1発明及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることがないものである。 したがって、本願は、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-07-29 |
結審通知日 | 2011-08-02 |
審決日 | 2011-08-16 |
出願番号 | 特願2004-81586(P2004-81586) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼辻 将人 |
特許庁審判長 |
野村 亨 |
特許庁審判官 |
刈間 宏信 長屋 陽二郎 |
発明の名称 | 研磨用組成物 |
代理人 | 恩田 誠 |
代理人 | 恩田 博宣 |