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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1244271
審判番号 不服2010-25885  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-17 
確定日 2011-09-30 
事件の表示 特願2006- 83631「バッテリフォークリフト用ドライブユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月 2日出願公開、特開2006-298361〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成18年3月24日の出願であって,平成22年8月16日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年11月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2.原査定
原査定における拒絶の理由は,以下のとおりのものと認める。
「この出願の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開2005-29117号公報
2.特開2003-247573号公報
3.米国特許第5147255号明細書
4.特開昭51-72871号公報」
上記刊行物のうち,特開2005-29117号公報を,以下,「引用例1」といい,特開2003-247573号公報を,以下,「引用例2」という。

第3.当審の判断
1.本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成22年2月4日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである(以下,「本願発明」という)。
「ドライブケース2内に,走行用モータ5のモータ軸6に嵌合するファーストギヤ11と,このファーストギヤ11に噛合するセカンドギヤ13とを備えて,このファーストギヤ11とセカンドギヤ13を介して走行用モータ5より発生する動力をキャリア21に伝達するようになるバッテリフォークリフトのドライブユニットにおいて,ドライブケース2内に備えたセカンドギヤ13の内側に空間を形成して,ここに湿式ブレーキ部31を配置し,この湿式ブレーキ部31は,セカンドギヤ13の内周に形成したディスク取付け部35に内周全周を取付けた回転自在となるインナーディスク32と,このインナーディスク32に向き合うドライブケース2側に外周全周を取付けた固定状態となるアウターディスク33と,互いに向き合ったインナーディスク32とアウターディスク33を押圧するプレッシャプレート34とから構成すると共に,アウターディスク33におけるラジアル方向への移動を制限し,かつプレッシャプレート34からの押圧と,アウターディスク33とインナーディスク32とがプレッシャプレート34の押圧により密接して発生する摩擦制動トルクのすべてを受け止める取付け用ブロック36を,ドライブケース2側に固定したことを特徴とするバッテリフォークリフト用ドライブユニット。」

2.引用刊行物記載事項
(1)本願の出願日前に頒布された刊行物である引用例1には,車両用駆動装置に関し,図面とともに次の事項が記載されている。
1a)「【0001】
本発明は,車両のホイールを支持するホイールハブをモータの回転出力を用いて回転駆動する車両用駆動装置に関するものである。」
1b)「【0025】
以下,本発明を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。まず,本発明の第1の実施形態について説明する。図1及び図2において,車両用駆動装置1は,車両のホイール2を支持するホイールハブ3をモータ(モータシャフト10のみを図示している)の回転出力を用いて回転駆動するものである。この車両用駆動装置1は,モータの回転出力を平歯車減速機4,及び遊星歯車減速機5により減速し,その減速した回転出力を駆動シャフト6を介してホイールハブ3に伝達することによりホイールハブ3を回転駆動し,また,湿式ディスクブレーキ7によりホイールハブ3の回転を制動する。平歯車減速機4,遊星歯車減速機5,駆動シャフト6,及び湿式ディスクブレーキ7は,ハウジング8内に収納されており,ホイールハブ3は,ハウジング8の外部から駆動シャフト6に連結されている。ハウジング8は,ハウジングカバー9によりカバーされている。
【0026】
平歯車減速機4は,モータの回転出力を減速するものであり,ピニオン平歯車41と,大平歯車42とを有している。ピニオン平歯車41は,モータの回転出力を大平歯車42に伝達するものであり,モータシャフト10に連結されている。大平歯車42は,ピニオン平歯車41に噛合されており,ピニオン平歯車41の回転に応じて回転する。大平歯車42の回転出力は,ピニオン平歯車41と大平歯車42とのギア比に応じてピニオン平歯車41の回転出力を減速したものとなる。この大平歯車42は,シャフト部45及びフランジ部46が歯車部47と別部材で構成されている。また,フランジ部46には,後述のブレーキディスク71が押し付けられるストッパ48が設けられている。ストッパ48は,歯車部47に大平歯車42の回転軸方向に移動可能なように拘束されており,フランジ部46と共に回転する。」
1c)「【0028】
遊星歯車減速機5は,大平歯車42の回転出力(すなわち平歯車減速機4により減速されたモータの回転出力)を減速するものであり,太陽歯車51と,遊星歯車52と,リング歯車53と,遊星キャリア54とを有している。」
1d)「【0031】
駆動シャフト6は,遊星キャリア54の自転出力(すなわち遊星歯車減速機5により減速されたモータの回転出力)をホイールハブ3に伝達するものである。この駆動シャフト6は,遊星キャリア54と一体に形成されている。ホイールハブ3と駆動シャフト6とは,軸心周りの相互の回転を伝達するスプライン結合により連結されており,固定ボルト11がホイールハブ3の外側からリテーナプレート12を介して駆動シャフト6に螺合されていることにより,ホイールハブ3が駆動シャフト6から抜止されている。」
1e)「【0032】
湿式ディスクブレーキ7は,ホイールハブ3の回転を制動するものであり,平歯車減速機4の大平歯車42の内側に配置されており,複数枚のブレーキディスク71と,プレッシャプレート72とを有している。複数枚のブレーキディスク71は,複数枚のインナーブレーキディスク73と,複数枚のアウターブレーキディスク74とから構成されており,各インナーブレーキディスク73とアウターブレーキディスク74とが,大平歯車42の回転軸方向に交互に重ね合わせられて,ストッパ48に隣接する位置に配置されている。ストッパ48は,上述のように大平歯車42の歯車部47に軸方向に移動可能なように拘束されている。
【0033】
インナーブレーキディスク73は,ハウジングカバー9に固定されているディスク支持部材75に支持されており,アウターブレーキディスク74は,大平歯車42の歯車部47の内周面に支持されている。インナーブレーキディスク73は回転せず,アウターブレーキディスク74は大平歯車42と共に回転する。インナーブレーキディスク73及びアウターブレーキディスク74は,どちらも大平歯車42の回転軸方向に移動可能に支持されており,各インナーブレーキディスク73とアウターブレーキディスク74との間にはオイルが介在されている。なお,ディスク支持部材75は,ボルト76によりハウジングカバー9に固定されており,ディスク支持部材75と大平歯車42のシャフト部45との間には平歯車用ベアリング77が設けられている。
【0034】
プレッシャプレート72は,ブレーキディスク71をストッパ48に押し付けるものである。このプレッシャプレート72は,プレピストン85によりハウジングカバー9の外部から押圧されることにより,ストッパ48に向かって移動し,ブレーキディスク71をストッパ48に押し付けるようになっている。ハウジングカバー9と一体に形成された突出メンバー81がプレッシャプレート72に形成された孔82に挿入されており,これにより,プレッシャプレート72は,大平歯車42の回転軸方向に移動可能に支持されていると共に,プレッシャプレート72の回転が拘束されている。
【0035】
湿式ディスクブレーキ7は,プレピストン85によりプレッシャプレート72が押圧されると,プレッシャプレート72によりブレーキディスク71をストッパ48に押し付け,これにより,各インナーブレーキディスク73とアウターブレーキディスク74との間に摩擦力が生じ,この摩擦力により大平歯車42の回転を減速して,ホイールハブ3の回転を制動する。
【0036】
このような構成の車両用駆動装置1によれば,大平歯車42の内側にブレーキディスク71及びプレッシャプレート72が配置されているため,ブレーキディスク71及びプレッシャプレート72を配置するためのエリアを別途設ける必要がない。これにより,ハウジング8をコンパクトにして,平歯車減速機4,遊星歯車減速機5,及び湿式ディスクブレーキ7を組み込むことができる。また,ハウジングカバー9と一体の突出メンバー81をプレッシャプレート72の孔82に挿入することによりプレッシャプレート72の回転を拘束しているため,プレッシャプレート72の回転を拘束するための構造が簡単であり,湿式ディスクブレーキ7の組み込み作業が簡素化される。さらに,プレッシャプレート72が回転しないので,プレッシャプレート72とプレピストン85との間には摩擦がなく,摩耗が生じない。」

上記記載事項1aないし1e及び図面の記載によれば,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「モータの回転出力を,平歯車減速機4及び遊星歯車減速機5により減速し,遊星歯車減速機5の遊星キャリア54と一体に形成される駆動シャフト6を介して,ホイールハブ3に伝達する車両用駆動装置であって,ハウジング8及びハウジングカバー9の内側に平歯車減速機4,遊星歯車減速機5,駆動シャフト6及び湿式ディスクブレーキ7が収納され,平歯車減速機4は,モータシャフト10に連結されるピニオン平歯車41とこれに噛合される大平歯車42からなり,湿式ディスクブレーキ7は,大平歯車42の内側に配置され,インナーブレーキディスク73及びアウターブレーキディスク74から構成されるブレーキディスク71とプレッシャプレート72とを有し,インナーブレーキディスク73は,ハウジングカバー9に固定されるディスク支持部材75に内周側が支持されて回転せず,アウターブレーキディスク74は,大平歯車42の歯車部に外周側が支持されて大平歯車42と共に回転し,プレッシャプレート72が大平歯車42のフランジ部に設けられるストッパ48に向かって押圧されると,ブレーキディスク71がストッパ48に押し付けられるように構成された車両用駆動装置。」

(2)本願の出願日前に頒布された刊行物である引用例2には,車両のブレーキ装置に関し,図面とともに次の事項が記載されている。
2a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,フォークリフト等産業車両のブレーキ装置に関する。」
2b)「【0006】図5に示すものは,バッテリフォークリフト用の湿式多板ブレーキで,ブレーキカバー300 内に,ブレーキハブ301 側に回転不能に係合した複数の第1ブレーキ板302 と該第1ブレーキ板302 と互い違いに配置されて前記ブレーキカバー300 側に回転不能に係合した複数の第2ブレーキ板303 とからなる油圧駆動の制動部を収装すると共に,前記ブレーキハブ301 とホイールハブ304 との間にファイナルギヤ(遊星歯車機構)305 を介装している。」
2c)「【0017】図示のように,アクスルハウジング1内を貫通するアクスルシャフト2の端部に,前記アクスルハウジング1の端部外周にベアリング3を介して回動自在に嵌合したホイールハブ4がボルト5で結合されている。ホイールハブ4の裏面にはブレーキハブ6がボルト7で結合され,このボルト7を利用して図示しないタイヤのホイールが取り付けられるようになっている。また,前記ブレーキハブ6の外周には,複数枚(図中では5枚)のフリクションプレート(第1ブレーキ板)8がスプライン嵌合している。
【0018】前記ブレーキハブ6及びフリクションプレート8の外周を覆うようにして前記アクスルハウジング1の中央部寄りにはブレーキカバー9がフレームサポート10と共にボルト11で結合されている。このブレーキカバー9は,板状のフロントカバー9Aと筒状のセンターカバー9Bと環状凹部9cを備えたエンドカバー9Cとに3分割され,ボルト12a,12bで一体化されている。
【0019】そして,前記センターカバー9Bの内周に前記フリクションプレート8と互い違いに配置されて複数枚(図中では6枚)のメーティングプレート(第2ブレーキ板)13がスプライン嵌合している。また,前記エンドカバー9Cの環状凹部9cには,前記フリクションプレート8とメーティングプレート13とを圧接し得るサービスブレーキピストン14と,該サービスブレーキピストン14の背面でかつ外側(外径側)側に位置して車両の駐車時には圧縮ばね15の力で前記サービスブレーキピストン14を介して前記フリクションプレート8とメーティングプレート13とを圧接し得るパーキングブレーキピストン16とが収装される。」
2d)「【0021】このように構成されるため,車両走行中の制動時は,運転者の主ブレーキ操作により油室20aにポートP1より油圧が供給されることで,サービスブレーキピストン14が図中左方へ摺動して前記フリクションプレート8とメーティングプレート13とが圧接され,制動される。この際,パーキングブレーキピストン16は,エンジンの稼働に伴い油室20bにポートP2より油圧が供給されているので,圧縮ばね15の力に抗して図中右方へ摺動され,非作動状態となる。
【0022】一方,車両の駐車時は,エンジンの稼働停止及び/又は運転者のパーキングブレーキ操作により油室20b内の油圧がポートP2より排出される。これにより,圧縮ばね15の力でパーキングブレーキピストン16がサービスブレーキピストン14と共に図中左方へ摺動し,前記フリクションプレート8とメーティングプレート13とが圧接されて制動される。」

また,引用例2に記載された車両のブレーキ装置について,以下の事項が理解される。
2e)サービスブレーキピストン14の押圧力と,メーティングプレート13とフリクションプレート8がサービスブレーキピストン14の押圧により密接して発生する摩擦制動トルクのすべてが,フロントカバー9A及びセンターカバー9Bで受け止められる。
2f)メーティングプレート13はセンターカバー9Bの内周にスプライン嵌合しているため,センターカバー9Bは,メーティングプレート13のラジアル方向への移動を制限している。

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ハウジング8及びハウジングカバー9」,「モータ」,「モータシャフト10」,「ピニオン平歯車41」,「大平歯車42」,「遊星キャリア54」,「駆動装置」,「湿式ディスクブレーキ7」,「アウターブレーキディスク74」,「インナーブレーキディスク73」及び「ストッパ48」は,それぞれ本願発明の「ドライブケース」,「走行用モータ」,「モータ軸」,「ファーストギヤ」,「セカンドギヤ」,「キャリア」,「ドライブユニット」,「湿式ブレーキ部」,「アウターディスク」,「インナーディスク」及び「取付け用ブロック」に相当する。
引用発明は,プレッシャプレート72により,インナーブレーキディスク73及びアウターブレーキディスク74から構成されるブレーキディスク71が大平歯車42のフランジ部に設けられるストッパ48に押し付けられるものであるから,本願発明における「プレッシャプレートからの押圧と,アウターディスクとインナーディスクとがプレッシャプレートの押圧により密接して発生する摩擦制動トルクを受け止める取付け用ブロック」との要件を備える。
したがって,本願発明と引用発明は,本願発明の表記にしたがえば,
「ドライブケース内に,走行用モータのモータ軸に嵌合するファーストギヤと,このファーストギヤに噛合するセカンドギヤとを備えて,このファーストギヤとセカンドギヤを介して走行用モータより発生する動力をキャリアに伝達するようになる車両のドライブユニットにおいて,ドライブケース内に備えたセカンドギヤの内側に空間を形成して,ここに湿式ブレーキ部を配置し,この湿式ブレーキ部は,インナーディスクと,このインナーディスクに向き合うアウターディスクと,互いに向き合ったインナーディスクとアウターディスクを押圧するプレッシャプレートとから構成すると共に,プレッシャプレートからの押圧と,アウターディスクとインナーディスクとがプレッシャプレートの押圧により密接して発生する摩擦制動トルクを受け止める取付け用ブロックを備える車両用ドライブユニット。」
の点で一致し,次の点で相違する。
なお,引用発明の「モータシャフト10に連結されるピニオン平歯車41」における「連結」は,本願発明の「モータ軸に嵌合するファーストギヤ」における「嵌合」と実質的な差異はないというべきである。

[相違点1]
本願発明は,バッテリフォークリフト用のドライブユニットであるのに対して,引用発明は,車両の具体的な種別が特定されていない点。
[相違点2]
本願発明は,インナーディスクが,セカンドギヤの内周に形成したディスク取付け部に内周全周を取付けられて回転自在とされ,アウターディスクが,ドライブケース側に外周全周を取付けられて固定状態とされるのに対して,引用発明は,インナーブレーキディスク73が,ハウジングカバー9に固定されるディスク支持部材75に内周側を支持されて回転せず,アウターブレーキディスク74が,大平歯車42に外周側を支持されて回転自在とされる点。
[相違点3]
本願発明の取付け用ブロックは,ドライブケース側に固定され,アウターディスクにおけるラジアル方向への移動を制限し,摩擦制動トルクのすべてを受け止めるのに対して,引用発明のストッパ48は,大平歯車42側に設けられており,アウターブレーキディスク74のラジアル方向への移動を制限するものではなく,また,摩擦制動トルクのすべてを(直接)受け止めるとまではいえない点。

相違点1について検討する。引用発明の駆動装置をバッテリフォークリフトに用いることは,単なる用途の限定に過ぎないというべきである。また,引用例2には,湿式多板ブレーキをバッテリフォークリフトに採用することが記載されており(記載事項2a及び2b参照),相違点1は,引用例2を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たということもできる。
相違点2について検討する。引用例2には,車両用湿式多板ブレーキのインナーディスク(フリクションプレート8)を回転側の部材(ブレーキハブ6)に設け,アウターディスク(メーティングプレート13)を車体側,すなわち非回転側の部材(センターカバー9B)に設けることが記載されている(記載事項2c及び2d参照)。インナーディスクを固定側(非回転側)としアウターディスクを回転側とするか,インナーディスクを回転側としアウターディスクを固定側(非回転側)とするかは,当業者が任意に選択可能な事項であり,引用発明において,インナーブレーキディスクを回転側の部材である大平歯車側に取り付け,アウターブレーキディスクを非回転側の部材であるハウジングカバー側に取り付けるように変更することに格別の困難があったとは考えられず(例えば,大平歯車側の形状は引用例1の実施形態のものに限定されるものではないから,大平歯車側の形状を適宜設計することで,インナーブレーキディスクの内周を大平歯車側に取り付けることができる),相違点2は,引用例2を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。
相違点3について検討する。引用例2において,固定側(非回転側)の部材であるフロントカバー9A及びセンターカバー9Bは,サービスブレーキピストン14の押圧力と,メーティングプレート13とフリクションプレート8がサービスブレーキピストン14の押圧により密接して発生する摩擦制動トルクのすべてを受け止める作用を奏し,センターカバー9Bは,メーティングプレート13のラジアル方向への移動を制限する作用を奏する(事項2e及び2f参照)。この「フリクションプレート8」,「メーティングプレート13」,「サービスブレーキピストン14」は,それぞれ本願発明の「インナーディスク」,「アウターディスク」,「プレッシャプレート」に相当するから,引用例2の「フロントカバー9A,センターカバー9B」は,本願発明の「取付け用ブロック」と同等な機能をもつといえる。引用発明において,アウターブレーキディスクを非回転側の部材であるハウジングカバー側に取り付けるように変更する際に,アウターブレーキディスクのラジアル方向への移動を制限し,摩擦制動トルクのすべてを受け止める機能を持つ部材をハウジングカバー側に設けること,すなわち相違点3も,引用例2を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。
以上のことから,本願発明は,その出願前に,引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,その出願前に引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,原査定は妥当であり,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-02 
結審通知日 2011-08-03 
審決日 2011-08-17 
出願番号 特願2006-83631(P2006-83631)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三澤 哲也  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 小関 峰夫
田口 傑
発明の名称 バッテリフォークリフト用ドライブユニット  
代理人 佐藤 嘉明  

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