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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K |
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管理番号 | 1244415 |
審判番号 | 不服2008-21912 |
総通号数 | 143 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-08-28 |
確定日 | 2011-10-07 |
事件の表示 | 特願2002-312632「フィルビア構造を有する多層プリント配線板」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月27日出願公開、特開2003-179353〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成10年 2月26日に出願した特願平10-45398号の一部を平成14年10月28日に新たな特許出願としたものであって、平成20年 7月15日付けで拒絶査定され、これを不服として平成20年 8月28日付けで拒絶査定不服の審判が請求され、平成20年 9月29日付けで手続補正書が提出されたが、平成22年12月 6日付けで当審による補正却下の決定及び最初の拒絶理由通知がなされ、平成23年 2月14日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 本願の請求項1?7に係る発明は、平成23年 2月14日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その内、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 導体回路と層間樹脂絶縁層とがセミアディティブ法によって交互に積層された多層プリント配線板において、 前記導体回路は、層間樹脂絶縁層上に形成される無電解めっき膜と、その無電解めっき膜上に形成された電解めっき膜とからなり、 前記層間樹脂絶縁層には、開口部が設けられ、その開口部の内壁の表面に被覆された無電解めっき膜と、その無電解めっき膜によって囲まれた開口内部に充填される電解めっき膜とからなるバイアホールが形成され、 前記層間樹脂絶縁層のうち、最も外側に位置する層間樹脂絶縁層上には、半田パッドとして機能する導体パッドとバイアホールを含んだ上層の導体回路とバイアホールが形成され、 前記半田パッドとして機能する導体パッドとバイアホール上には、はんだ体が形成され、前記上層の導体回路とバイアホールを含む前記導体回路は、その厚さがバイアホール径の1/2未満でかつ25μm未満であり、 前記バイアホールは、その表面中央部に窪みを有し、その窪みは前記導体回路の厚さ以下で、かつ20μm以下の深さのものであることを特徴とする多層プリント配線板。」 2.当審拒絶理由の概要と引用刊行物及びその摘記事項 当審による平成22年12月 6日付けの最初の拒絶理由通知における拒絶の理由1は、「この出願の請求項1?7に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物1、刊行物2に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、特に、理由1のイ.は、刊行物2に係る発明において、上層の導体回路に半田パッドの機能を持たせることは周知技術を用いて適宜設定される設計的事項であるとしているところ、上記拒絶理由通知において引用した本願の出願日前に国内において頒布された下記の刊行物には、次の事項が記載されている。 (1)上記当審拒絶理由通知で引用した刊行物2である特開平7-147483号公報(以下、「刊行物1」という。)の摘記事項 (下線は当審で引いたもの。) (刊1a)「【0020】 【実施例】 〔実施例1〕まず、実施例1のプリント配線板を製造方法を図1(a)?図1(f)に基づき詳細に説明する。 工程(1):本実施例では、図1(a)に示されるように、第1層目の導体パターンC_(1) (厚さ18μm)が形成された厚さ1.0mmの銅張ガラスエポキシ基板1を出発材料とした。そして、スピンコータを用いることによって、層間絶縁層I_(1) となる感光性エポキシ樹脂(イビデン株式会社製)を基板1に厚さが26μmになるように塗布した。 工程(2):前記感光性エポキシ樹脂を75℃で30分間プリベークした後、露光・現像を行い、更に150℃で60分間の硬化処理を行った。以上の処理によって、図1(b)に示されるように、層間接続用の凹部である直径30μmのバイアホール形成用穴2を備える第1層目の層間絶縁層(厚さ20μm)I_(1) を得た。 【0021】工程(3):真空スパッタ装置(徳田製作所製:CFS-8EP)を用い、層間絶縁層I_(1 )に対するCr,Cuのスパッタリングを行った。このスパッタリングにより、図1(c)に示されるように、第1層目の金属薄層である0.1μmのCr薄層L_(1) と、第2層目の金属薄層である0.2μmのCu薄層L_(2) とからなる下地層ULを形成した。・・・ 【0022】工程(4):スピンコータによってCu薄層L_(2) 上にネガ型の液状フォトレジスト(東京応化株式会社製:OMR83)を塗布した後、その乾燥を行った。この後、プリベーク、露光・現像及びポストベークを行うことによって、図1(d)に示されるように、チャンネル状のめっきレジスト(厚さ4μm,L/S=20μm/20μm)3を形成した。 工程(5):・・・Cu薄層L_(2) の表面を活性化させた。 【0023】工程(6):基板1を水洗した後、下記の硫酸銅電解めっき浴による電解銅めっきを実施した。そして、めっきレジスト3から部分的に露出しているCu薄層L_(2 )上に、図1(e)に示されるような厚さ3.0μmのCuめっき層L_(3) を析出させた。・・・ 【0024】工程(7):基板1を水洗した後、下記の硫酸ニッケル電解めっき浴による電解ニッケルめっきを実施した。そして、Cuめっき層L_(3) 上に、密着層としての厚さ1.0μmのNiめっき層L_(4) を析出させた。・・・ 【0025】工程(8):専用のレジスト剥離液(東京応化株式会社製)を用いて、基板1からめっきレジスト3を剥離した。この後、Cuを溶解し得るエッチャントとしてNH_(3) (4.5N)+CuCl_(2) (150g/l)を用いて、Cu薄層L_(2 )をエッチングした。処理時における温度は25℃とし、時間は15秒とした。更に、Crを溶解し得るエッチャントとして50%のHCl水溶液を用いて、Cr薄層L_(1) をエッチングした。処理時における温度は25℃とし、時間は25秒とした。その結果、図1(f)に示されるように、Cr薄層L_(1) ,Cu薄層L_(2) ,Cuめっき層L_(3) 及Niめっき層L_(4) の合計4層からなる導体パターンC_(2) を得た。 工程(9):前記工程(2)から工程(8)を繰り返し行い、最終的に図2に示されるような、基板1上に6層の導体パターンC_(1) ?C_(6) と5層の層間絶縁層I_(1) ?I_(5) とを持つ多層構造のプリント配線板4を得た。」 (刊1b)「【0016】銅めっき層の下地層を形成する方法は、上記の薄膜法に限るものではなく、第1層目の層間絶縁層表面に無電解めっき用接着剤を形成し、その表面を酸によって粗化するか、或いは層間絶縁層表面を化学的手段や機械的手段によって粗化し、次いで無電解めっき触媒(パラジウムなど)を付加した後に、無電解めっき処理を施す方法であってもかまわないが、無電解めっきの密着性や緻密性を考慮するとスパッタリングが好ましい。」 (刊1c)「【0002】 【従来の技術】近年、電子工業の進歩に伴い、電子機器の小型化や高速化が求められ、この要求に答えるためにプリント配線板に複数個のICやLSI等を直接実装する技術(所謂MCM技術)が注目されてきている。従って、この様なプリント配線板に対して、導体パターンのファイン化等といった高密度化が要求されている。プリント配線板を製造するときのファインな導体パターンの形成方法の一つとしては、例えば以下に述べるようなセミアディティブ法が知られている。このプロセスでは、まずスパッタリング等によって、層間絶縁層上に下地層としての極薄い導体層が形成される。次いでこの下地層上にはめっきレジストが形成される。次いでこのめっきレジストによってマスキングされていない部分には銅めっきが施される。この後、めっきレジストの剥離及び下地層のエッチングを経ることによって、所望のファインな導体パターンが形成されるのである。」 (刊1d)図1の(a)?(f)には、プリント配線板の製造工程を説明するための部分概略断面図が、また図2には、図1の製造工程により作成されたプリント配線板を示す部分概略断面図が示され下記の点が看取できる。 ア.上記(刊1a)の記載を参酌すれば、Cr薄層L_(1) ,Cu薄層L_(2) ,Cuめっき層L_(3) 及Niめっき層L_(4) の合計4層からなる導体パターンC_(2)?C_(6)が、層間絶縁層I_(1)?I_(5)の上面に設けられており、図2において、最も外側に位置する層間絶縁層I_(5)の上には、導体パターンC_(6)が形成されていること。 イ.図1の(c)から、層間絶縁層I_(1)上の全面及びバイアホール形成用穴の内壁の表面に、スパッタリングにより、第1層目の金属薄層である0.1μmのCr薄層L_(1) と、第2層目の金属薄層である0.2μmのCu薄層L_(2) とからなる下地層ULが被覆形成されていること ウ.図1(e),(f)、図2から、バイアホール形成用穴の内壁の表面に被覆形成された、導体パターンとしての金属層と、その金属層によって囲まれた開口内部に電解銅めっきによる銅めっき層が充填されていること。 エ.バイアホール形成用穴2に充填された導体パターンにおいて、バイアホール形成用穴2直上の導体パターンC_(2)?C_(6)上面が当該導体パターンC_(2)?C_(6)の厚さよりも浅い窪みを有していること。 3.当審の判断 (1)刊行物1に記載の発明 上記摘記事項(刊1a)、(刊1d)を整理すると、刊行物1には、 「基板1上に6層の導体パターンと5層の層間絶縁層とを持つ多層構造のプリント配線板において、 ア.感光性エポキシ樹脂からなる層間絶縁層を基板1に厚さが26μmになるように塗布し、 イ.プリベーク、露光・現像及び硬化処理により層間接続用の凹部である直径30μmのバイアホール形成用穴2を形成した厚さ20μmの層間絶縁層を形成し、 ウ.前記層間絶縁層上の全面及びバイアホール形成用穴の内壁の表面に、スパッタリングにより、第1層目の金属薄層である0.1μmのCr薄層L_(1) と、第2層目の金属薄層である0.2μmのCu薄層L_(2) とからなる下地層ULを形成し、 エ.次に、Cu薄層L_(2)上にチャンネル状のめっきレジスト3を形成し、 オ.次に、電解銅めっきにより、前記層間絶縁層上の全面及びバイアホール形成用穴の内壁の表面においてめっきレジスト3から部分的に露出しているCu薄層L_(2)上に、厚さ3.0μmのCuめっき層L_(3)を析出させ、 カ.さらに、Cuめっき層L_(3)上に、密着層としての厚さ1.0μmのNiめっき層L_(4)を析出させた後、 キ.基板1からめっきレジスト3を剥離し、Cu薄層L_(2)をエッチングし、更に、Cr薄層L_(1)をエッチングすることで、 Cr薄層L_(1),Cu薄層L_(2) ,Cuめっき層L_(3)及びNiめっき層L_(4)の合計4層からなる導体パターンC_(2)を形成し、 これらア.?キ.を繰り返すことで、多層構造のプリント配線板とし、 前記層間絶縁層のうち最も外側に位置する層間絶縁層I_(5)の上には、導体パターンC_(6)を形成すると共に、バイアホール形成用穴に前記導体パターンC_(6)を充填し、 バイアホール形成用穴2直上の導体パターンC_(6)上面が当該導体パターンC_(6)の厚さよりも浅い窪みを有している多層構造のプリント配線板」 に関する発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。 (2)対比・判断 本願発明と刊行物1発明とを対比する。 ア.刊行物1発明の「導体パターン」、「多層構造のプリント配線板」、「感光性エポキシ樹脂からなる層間絶縁層」、「バイアホール形成用穴」及び「Cuめっき層L_(3)」は、本願発明の「導体回路」、「多層プリント配線板」、「層間樹脂絶縁層」、「開口部」及び「電解めっき膜」に相当する。 イ.上記(刊1d)で摘記したように、刊行物1発明の「バイアホール形成用穴」には、その内壁に金属層が被覆形成され、その金属層によって囲まれた開口内部に銅めっき層が充填されていることは明らかであるから、金属層が被覆形成され銅めっき層が充填された「バイアホール形成用穴」は、本願発明の「バイアホール」に相当する。 ウ.刊行物1発明において、「層間絶縁層を形成し」、「前記層間絶縁層上の全面に、下地層ULを形成し」、「チャンネル状のめっきレジスト3を形成し」、「電解銅めっきにより、めっきレジスト3から部分的に露出しているCu薄層L_(2)上に、厚さ3.0μmのCuめっき層L_(3)を析出させ」、「めっきレジスト3を剥離し、Cu薄層L_(2)をエッチングし、更に、Cr薄層L_(1)をエッチングする」ア.?キ.の工程は、刊行物1の摘記事項(刊1c)から「セミアディティブ法」であり、これらを繰り返すことは、導体パターンと層間絶縁層とをセミアディティブ法によって、交互に積層していることになる。 エ.刊行物1発明において、各導体パターン、層間絶縁層及びバイアホール形成用穴は、上記ウ.のようにセミアディティブ法を繰り返して作成されるものであるから、第1層の層間絶縁膜I_(1)の上に形成された導体パターンC_(2)と、最も外側の層間絶縁膜I_(5)の上に形成された導体パターンC_(6)とは、何れも同じ大きさであることは明らかである。 一方、本願発明におけるバイアホール径は、平成23年 2月14日付けの意見書5頁の(2)によれば、 「上記ア.の「請求項1に記載されたバイアホール径の定義」については、一般にバイアホール径は、層間樹脂絶縁層に形成した開口部(穴)の内径で表され、テーパ状の開口部の場合は穴の上部の径で表されています。なお、日刊工業新聞社1999年1月28日発行の「プリント回路技術用語辞典」中の項目「穴径」の説明でも「ブラインドバイアの場合は穴の上部の径で表す」と記載して上記の点を根拠付けています。」 と、即ち、「バイアホール径」は、「テーパ状の開口部の穴の上部の径」である旨説明されている。 そして、刊行物1発明のバイアホール形成用穴の直径は、30μmであり、0.1μmのCr薄層L_(1),0.2μmのCu薄層L_(2) ,3.0μmのCuめっき層L_(3)及1.0μmのNiめっき層L_(4)の合計4層からなる導体パターンは、各層の厚さを合計すると4.3μmとなるから、当該厚さは、バイアホール径の1/2未満でかつ25μm未満となる。 したがって、刊行物1発明のバイアホール形成用穴に充填され、最も外側の層間絶縁層の上に形成された導体パターンの厚さは、本願発明の「上層の導体回路とバイアホールを含む前記導体回路は、その厚さがバイアホール径の1/2未満でかつ25μm未満」であることに相当する。 オ.刊行物1発明の「バイアホール形成用穴」に充填された導体パターンは、「バイアホール形成用穴」の中央上部の表面が窪んでおり、且つ、層間絶縁層の上に形成された導体パターンの厚み4.3μmよりも浅く形成されているから、刊行物1発明の「バイアホール形成用穴2直上の導体パターンC_(6)上面が当該導体パターンC_(6)の厚さよりも浅い窪み」は、本願発明の「バイアホールは、その表面中央部に窪みを有し、その窪みは前記導体回路の厚さ以下で、かつ20μm以下の深さのものである」に相当する。 そうすると、両者は、 「導体回路と層間樹脂絶縁層とがセミアディティブ法によって交互に積層された多層プリント配線板において、 前記導体回路は、層間樹脂絶縁層上に形成される膜と、その膜上に形成された電解めっき膜とからなり、 前記層間樹脂絶縁層には、開口部が設けられ、その開口部の内壁の表面に被覆された膜と、その膜によって囲まれた開口内部に充填される電解めっき膜とからなるバイアホールが形成され、 前記層間樹脂絶縁層のうち、最も外側に位置する層間樹脂絶縁層上には、上層の導体回路とバイアホールが形成され、 前記上層の導体回路とバイアホールを含む前記導体回路は、その厚さがバイアホール径の1/2未満でかつ25μm未満であり、 前記バイアホールは、その表面中央部に窪みを有し、その窪みは前記導体回路の厚さ以下で、かつ20μm以下の深さのものであることを特徴とする多層プリント配線板。」 の点で一致するものの、次の点で相違する。 相違点1:本願発明では、「前記導体回路は、層間樹脂絶縁層上に形成される無電解めっき膜と、その無電解めっき膜上に形成された電解めっき膜とから」なるのに対して、刊行物1発明では、スパッタリングによる膜と、電解めっき膜とからなる点で相違する。 相違点2:本願発明では、「最も外側に位置する層間樹脂絶縁層上には、半田パッドとして機能する導体パッドとバイアホールを含んだ上層の導体回路とバイアホールが形成され、 前記半田パッドとして機能する導体パッドとバイアホール上には、はんだ体が形成され、」ているのに対して、刊行物1発明には、そのような点が特定されていない点。 上記相違点について検討する。 相違点1について 刊行物1の上記摘記事項(刊1b)には、下地層の形成に際してスパッタリングが好ましいものの、これに限るものではないこと、及びその他の下地層の形成方法として層間絶縁層表面に無電解めっき処理をすることが説明されている。 してみると、刊行物1に接した当業者であれば、刊行物1発明における下地層の形成をスパッタリングに代えて、無電解めっき処理を採用し、無電解めっき膜を形成することで、相違点1に係る構成とすることは、容易に想到し得たものである。 相違点2について、 フリップチップ実装用の配線板において、最も外側に位置する層間樹脂絶縁層上に半田パッドとして機能する導体パッドとバイアホールを導体パターンとして形成し、導体パッドとバイアホール上にはんだ体を設けること自体は、下記の周知文献1、2の摘記事項のように周知の技術手段である。 そして、刊行物1発明は、刊行物1の上記摘記事項(刊1c)にあるように、プリント配線板に複数個のICやLSI等を直接実装する技術であるフリップチップ実装用のプリント配線板の技術に関するものであるから、IC等の直接実装に際して、周知文献1,2に記載されているような周知の技術を採用して、相違点2に係る構成とすることは当業者ならば容易に想到し得たものである。 <周知文献とその摘記事項> (1)周知文献1:上記当審の拒絶理由通知書で周知技術を示すために引用した特開平10-13026号公報 (周1a)「【0002】 【従来の技術】一般に、フリップチップ実装用の多層プリント配線板(例えばパッケージ)は、その実装表面には、はんだバンプを有するパッドが2次元的に配列したはんだパッド群が形成されている。」 (周1b)「【0009】 【発明の実施の形態】本発明にかかる多層プリント配線板の特徴は、多層配線層の最表面に位置するはんだパッド群のうちの外側から1列目乃至5列目までに位置するはんだパッドを、その最表面の導体パターンにそれぞれ接続した平坦なパッドとこのパッド表面に形成したはんだバンプとで構成し、これらのはんだパッドを除くはんだパッド群を、内層に位置する平坦な内層パッド群にそれぞれ接続したバイアホールとこのバイアホールの凹部に形成したはんだバンプとで構成した点にある。」 (周1c)「【0041】・・・さらに上層に、はんだパッド群を形成するために、バイアホール用の開口部・・・を有する層間絶縁材層5を形成する。 【0042】(9)次に、・・・パッド形成用およびバイアホール形成用の開口部・・・を、はんだバンプ11を供給する位置に有するめっきレジスト6を形成する。 【0043】(10) 次に、・・・めっきレジスト6が形成されなかった部分に一次めっきおよび二次めっきを施すことにより、図1の場合は、外周から1列、2列目には平坦なパッド9・・・を、その内側にはバイアホール8・・・を形成する。また、図2,8の場合は、外周から1列,2列,3列目には平坦なパッド9・・・を、その内側にはバイアホール8・・・を形成する。 ・・・ 【0046】(13) そして、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にはんだ箔をラミネートし、バイアホールおよびパッドの位置に相当する場所をはんだパターンとして残してエッチング処理する。次いで、このフィルムを、はんだパターンとパッドおよびバイアホールが接触するように積層し、加熱リフローしてはんだをパッドおよびバイアホールに転写し、はんだバンプを形成する。・・・」 (2)周知文献2:特開平10-56256号公報 (周2a)「【0002】 【従来の技術】従来より、集積回路チップ(以下フリップチップと記す)を配線基板に実装する場合には、配線基板上に半田バンプを設け、この半田バンプを加熱溶融させて、フリップチップと配線基板とを接合している。」 (周2b)「【0033】・・・半田バンプ1を形成する対象となる配線基板3を製造する場合には、図1(b)に拡大及び破断して示すように、まず、BTコア基板5上にエポキシ樹脂による絶縁層7を形成すると共に、BTコア基板5及び絶縁層7にわたって、無電界Cuメッキ及び電解Cuメッキを用いたセミアディティブ法によってCu内部配線9を形成して積層する。・・・ 【0034】次に、配線基板3の最表面では、前記Cu内部配線9と接合されるCu配線11の耐食のため及び半田との密着性を向上させるために、無電解Ni-Pメッキによって約3μmのNi-P層13を形成し、更にその上に、無電解Auメッキによって約0.1μmのAu層15を形成して、Ni-P層13及びAu層15からなる下地導電性パッド(以下単にパッドと称す)17を作成する。・・・ 【0035】・・・次に、図2に示すように、配線基板3の表側のパッド17上に、37Pb-63Snの共晶半田ペースト(融点183℃)を周知の印刷法で塗布し、共晶半田ペースト層21を形成する。 ・・・ 【0039】この状態で、最高温度220℃のリフロー炉に通し、表側にある共晶半田を溶融させて、その後冷却する。これによって、配線基板3の表側に、頂部が平坦になったフリップチップ接合用の半田バンプ1(高さ100μm)を形成する。・・・」 なお、本件審判請求人は、意見書において下記の主張をしている。 (下記の意見書に記載されている刊行物2は、本審決において検討している刊行物1に相当する。) ア.「また、刊行物2は、・・・これについて「無電解めっきの密着性や緻密性(の低さ)を考慮するとスパッタリングが好ましい」と明確に記載されている。 従って、これら刊行物1,2は、無電解めっき膜とその無電解めっき膜によって囲まれた開口内部に充填される電解めっき膜とでバイアホールを形成する本願発明の発想から当業者を遠ざけるものである。」(3頁最終行?4頁9行) イ.「特に、最外層の層間樹脂絶縁層に形成される上層のバイアホールの表面中央部にも窪みが形成されるので、上層のバイアホールの表面積が大きくなってはんだ体との密着性が向上するという効果があり、しかもその窪みの深さを導体回路の厚み以下でかつ20μm以下とするので、本願明細書の段落番号[0011]の(2)に記したように中間層のバイアホール上の層間絶縁層の厚さのばらつきが少なくなるのと同様に、はんだ体の高さのばらつきが少なくなり、実装する電子部品の接続信頼性が向上する。」(3頁23?28行) ウ.「しかもこれら刊行物1,2には、たしかに審判長殿が指摘されるようにバイアホールの中央部に導体パターンの厚さ以下でかつ20μm以下の窪みが形成されていることは記載されているものの、「上層のバイアホールの表面中央部に導体回路の厚さ以下でかつ20μm以下の深さの窪みを形成してその上にはんだ体を形成することで、バイアホールの表面積を大きくしてはんだ体との密着性を向上させると同時にはんだ体の高さのばらつきを少なくして実装する電子部品の接続信頼性を向上させる」という本願発明の技術的思想については記載も示唆も全くない。」(4頁10?16行) エ.「(4)すなわち本願発明は、バイアホール上にはんだ体を形成するとそのはんだ体の高さにばらつきが生じてそこに実装する電子部品の接続信頼性の問題を生ずるという新規な課題を上記構成によって解決している処、これら刊行物1,2を如何に組み合わせても、あるいはそれらにさらに周知文献1,2を組み合わせても、それらから本願発明の上記構成を当業者が容易に想到し得たものとは到底いえないので、本願発明は明らかに進歩性を有している。」(4頁20?25行) 上記ア.の点についてみると、銅めっき層の下地層を形成する方法として、刊行物1の【0016】には、「スパッタリングが好ましい」と、記載されているものの、同段落には、「上記の薄膜法」即ちスパッタリング「のみに限るものではなく」として、無電解めっき処理を、例示しているのであるから、最良の方法ではないとしても、無電解めっきの採用を否定しているものではないから、上記ア.に係る主張を採用することができない。 次に上記イ.?エ.の点についてみると、はんだ体とバイアホールとの接続に関する課題及び、本件審判請求人が主張するはんだ体と窪みを有するバイアホールとの接続による効果については、本願明細書全体において、具体的な説明は何ら記載されていない。 そして、窪みに関する効果の説明として高さのばらつきに関して、本件審判請求人が意見書で参照している本願明細書の【0011】には、 「【0011】このような本発明の多層プリント配線板において、・・・ (2) バイアホールは、表面中央部に窪みが形成されていることがより望ましい構成である。さらに、この窪みは、導体回路の厚さ以下の大きさで20μm以下であることが望ましい。この理由は、窪みが大きすぎると、この上に形成される層間樹脂絶縁層の厚さが他の導体回路上に形成されるものよりも厚くなり、露光、現像処理やレーザ加工した場合にバイアホールの窪みの上に樹脂が残存しやすく、バイアホールの接続信頼性が低下してしまうからである。」(下線は当審で引いたものであり、以下同様。) と記載されており、バイアホール上部に形成する層間樹脂絶縁層の加工に際しての窪み上での樹脂残りを減らすことを目的としていることが説明されているが、窪みの大きさにより、はんだ体の高さのばらつきをなくすこと自体については何ら説明されていない。 そして、明細書の記載事項から、はんだ体の高さのばらつきをなくすために窪みの大きさを設定することが自明であるとも認められない。 また、バイアホールの窪みによる密着性の効果の点については、 「【0017】さらに、導体回路の厚さを・・・薄くすると、導体回路側面と層間樹脂との接触面積が少なくなり、導体回路が粗化されていても剥離が発生しやすくなる。この点、本発明では、バイアホールの表面中央部に窪みを設け、その表面を粗化することにより、剥離の際に働く力の方向と粗面の方向が角度を持つことになり、剥離の際に働く応力が分散して剥離を抑制することができる。」 「【0057】本実施例では、バイアホールの表面中央部に窪みを設けているので、薄膜化による導体の剥離を引き起こすことなく、L/S=25/25μmの微細パターンを確実に形成することができた。」 との説明があるが、これは、導体回路が薄くなった場合に剥離を生じ易いとの課題のもと、「窪みを設け、その表面を粗化することにより、剥離の際に働く力の方向と粗面の方向が角度を持」たせることで、導体回路の「剥離の際に働く応力が分散して剥離を抑制」させること、即ち、はんだ体とは、厚みも長さもことなる導体回路との密着性を改善させるために、窪みと請求項1には特定されていない粗化との相乗作用を利用したものであり、窪みのみを形成することで、バイアホールの表面積を大きくしてはんだ体との密着性向上を目指したことについては何ら説明されていない。 したがって、窪みによる密着性向上の効果は、その窪みの大小にかかわらず、接触部分の面積を広げれば密着性が向上するであろうという一般的な技術を単に説明しているものであり、刊行物1のように窪みを有しているものであれば、自ずから有している効果にすぎず、格別有意な効果とは認められない。 一方、はんだ体の高さのばらつきに関する効果の説明は明細書全体には記載されていないが、はんだ体の密着性に関する記載としては、 「【0048】(13)次に、前記開口部から露出した前記はんだパッド部上に「ニッケル-金」の金属層を形成する。・・・一方金層は、厚すぎるとコスト増になり、薄すぎるとはんだ体との密着効果が低下するからである。」 と説明されており、これは、本願の請求項1に特定されていない「ニッケル-金」からなる金属層による効果の説明であり、バイアホールの窪みによる効果を説明したものではない。 以上のように、本件審判請求人の主張する上記ア.の点についてはこれを採用することができず、上記イ.?エ.の点については、明細書或いは請求項1係る発明の構成に基づかない主張であるか、或いは格別有意な効果ではないから、これらの主張は、上記当審の判断を変えるものではない。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の請求項2-7については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-07-28 |
結審通知日 | 2011-08-02 |
審決日 | 2011-08-16 |
出願番号 | 特願2002-312632(P2002-312632) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H05K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 黒石 孝志 |
特許庁審判長 |
藤原 敬士 |
特許庁審判官 |
川端 修 鈴木 正紀 |
発明の名称 | フィルビア構造を有する多層プリント配線板 |
代理人 | 小川 順三 |
代理人 | 中村 盛夫 |