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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C03C
管理番号 1244417
審判番号 不服2009-5514  
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-12 
確定日 2011-10-07 
事件の表示 平成11年特許願第125946号「合わせガラス用中間膜及び合わせガラス」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月21日出願公開,特開2000-319044〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成11年5月6日の特許出願であって,平成20年10月8日(起案日)付けで拒絶理由が通知され,同年12月12日付けで意見書及び明細書の記載に係る手続補正書が提出され,平成21年2月3日(起案日)付けで拒絶査定され,同年3月12日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。そして,同年4月14日付けで,手続補足書(実験成績証明書)が提出されている。

2.本願発明
本願発明は,平成20年12月12日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであり,その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。

二種の可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜C及びDからなる少なくとも二層の積層樹脂膜であって,樹脂膜Cは,ポリビニルアルコールを炭素数4?6のアルデヒドでアセタール化して得られ,ビニルアセテート成分が8?30モル%のポリビニルアセタール樹脂(c)と可塑剤とからなり,樹脂膜Dは,ポリビニルアルコールを炭素数3又は4のアルデヒドでアセタール化して得られ,ビニルアセテート成分が4モル%以下のポリビニルアセタール樹脂(d)と可塑剤とからなる合わせガラス用中間膜において,
上記樹脂膜Cのナトリウム濃度は20ppm以下であり,上記樹脂膜Dのナトリウム濃度は15ppm以下であることを特徴とする合わせガラス用中間膜。

3.原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由は,平成20年10月8日付け拒絶理由通知書に記載した理由1であり,本願請求項2,4に係る発明に対して引用文献2,3を引用した特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

4.本願の出願前に頒布された刊行物の記載事項
刊行物1:特開平9-156967号公報(原審で引用された引用文献3)
(1-ア)「【課題を解決するための手段】この発明の遮音性合わせガラス用中間膜は,二種の可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜A及びBからなる少なくとも二層の積層樹脂膜であって,上記樹脂膜Aは,ポリビニルアルコールを炭素数4?6のアルデヒドでアセタール化して得られ,ビニルアセテート成分が8?30モル%のポリビニルアセタール樹脂(a)と可塑剤とからなり,上記樹脂膜Bは,ポリビニルアルコールを炭素数3又は4のアルデヒドでアセタール化して得られ,ビニルアセテート成分が4モル%以下のポリビニルアセタール樹脂(b)と可塑剤とからなり,上記樹脂膜Aの合計膜厚が上記積層樹脂膜の膜厚の25%を越え55%以下で且つ0.10mm以上であることを特徴とする。」(段落【0009】)

刊行物2:特開平10-273345号公報(原審で引用された引用文献2)
(2-ア)「【請求項1】 可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜からなる中間膜において,該中間膜中のナトリウム元素の含有量が0.5ppm以上15ppm以下及び/又は該中間膜中のカリウム元素の含有量が0.5ppm以上100ppm以下であることを特徴とする合わせガラス用中間膜。」(特許請求の範囲)
(2-イ)「【従来の技術】少なくとも二枚のガラス板の間に可塑化ポリビニルブチラールからなる中間膜が挟着されてなる合わせガラスは,透明性や耐候性や接着性がよく,しかも耐貫通性がよく,ガラス破片が飛散しにくい等の合わせガラスに必要な基本性能を有し,例えば,自動車や建築物の窓ガラスに広く使用されている。
この種の合わせガラスは,上記の基本性能が良好で安全性に優れているが,耐湿性が劣る。即ち,上記合わせガラスを湿度の高い雰囲気中に置いた場合,合わせガラスの周縁では中間膜が直接環境空気と接触しているため,周辺部の中間膜が白化してしまう問題が起こる。」(段落【0002】?【0003】)
(2-ウ)「【課題を解決するための手段】本発明者らは,上記のような基本性能に優れた可塑化ポリビニルブチラール樹脂膜等の可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜に着目し,このような樹脂膜の高湿度下における白化を改善するとともに,ガラスとの適正な接着力及び優れた耐熱性を得るために,種々の検討を行った。
その結果,中間膜中のナトリウム元素及び/又はカリウム元素の量が白化に大きく影響していることを見出し,その含有量を特定の範囲に保持すれば,上記のような基本性能を損なうことなく高湿度下における白化を抑制できることを見出した。」(段落【0015】?【0016】)
(2-エ)「本発明1において,中間膜を得るのに使用するアルデヒドとしては,炭素数3?10のアルデヒドが用いられる。
・・・・・・
アルデヒドの炭素数が2以下では十分な樹脂膜の成形性が得られないことがある。逆に,アルデヒドの炭素数が11以上ではアセタール化の反応性が低下し,しかも反応中に樹脂のブロックが発生しやすくなり,樹脂の合成に困難を伴い易くなる。より好ましくは,アルデヒドの炭素数が4?8のn-ブチルアルデヒド,n-ヘキシルアルデヒド,2-エチルブチルアルデヒド,n-オクチルアルデヒドの単独或いは二種以上の組み合わせが用いられる。
特に,炭素数4のn-ブチルアルデヒドでアセタール化して得られたものが好ましい。n-ブチルアルデヒドでアセタール化した樹脂の使用により,各樹脂膜の接着強度が強くなり,また耐候性にも優れ,しかも樹脂の製造も容易となる。
・・・・・・
本発明1において,中間膜は,ビニルアセテート成分が30モル%以下のポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とからなる樹脂膜が用いられる。
上記樹脂ビニルアセテート成分の含有量が30モル%を越えると樹脂の製造時にブロッキングを起こし易くなり,製造に困難を伴う。特に,このビニルアセテート成分の含有量は19モル%以下が好ましい。」(段落【0030】?【0037】)
(2-オ)「上記各方法は,以下の点で利点がある。すなわち,可塑化ポリビニルブチラール樹脂の反応において塩酸(HCl)のような酸触媒を使用することは従来より必要不可欠であったが,この酸触媒が樹脂中に残留すると樹脂自身の劣化を引き起こすため,過剰のアルカリ(水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等)にて中和安定化させていた。このために,樹脂中に多量のアルカリ元素(ナトリウム,カリウム等)が残留する。しかし,白化を抑制するためには前述のようにアルカリ金属含有量を所定量以下に抑えることが必要であり,常法の洗浄法で実現するためには非常に多量の水を必要とするとともに,樹脂中に取り込まれる中和物(アルカリ金属含有物)を除去することが困難である。
・・・・・・
また,本発明4に記載の方法では,スラリー中の樹脂が40℃以上で膨潤することに注目し,洗浄時に用いる水の温度を40℃以上にすることにより洗浄効率を上げ,アルカリ金属の混入や酸触媒の残留による樹脂劣化を防止するものである。すなわち,洗浄時に40℃以上,好ましくは40?60℃の洗浄水を用いることにより,スラリー中の樹脂が膨潤し,樹脂中に取り込まれている酸(HCl)或はその中和物(アルカリ金属含有物)が容易に洗い流され,洗浄効率が上がる。洗浄水が40℃より低いと,樹脂が十分に膨潤せず,効果は期待できない。また,洗浄水が60℃より高い場合には,樹脂の軟化が起こり,粒子同士が合着してブロックの形成が見られ,安定した粒子径のものが得られないことがあるとともに,60℃の水と比較して大幅な効果の向上が期待できず,エネルギー的にも無駄となる。」(段落【0058】?【0060】)
(2-カ)「含有量がナトリウム元素の場合は15ppm,カリウム元素の場合は100ppmを超えると,ナトリウム,カリウム元素の周辺に集合した水分子が可視化される大きさにまで成長するため,白化が顕著になる。逆に,含有量がナトリウム元素及びカリウム元素のいずれの場合も0.5ppmより少ない中間膜を調製することは,樹脂の調製で残存ナトリウム元素又はカリウム元素を洗浄する工程を非常に長くしたり,使用する水や原材料等の精製度を上げたりする処置が必要となり,多大な時間と費用を要することとなり,好ましくない。」(段落【0067】)

5.対比・判断
刊行物1には,記載事項(1-ア)から,「二種の可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜A及びBからなる少なくとも二層の積層樹脂膜であって,上記樹脂膜Aは,ポリビニルアルコールを炭素数4?6のアルデヒドでアセタール化して得られ,ビニルアセテート成分が8?30モル%のポリビニルアセタール樹脂(a)と可塑剤とからなり,上記樹脂膜Bは,ポリビニルアルコールを炭素数3又は4のアルデヒドでアセタール化して得られ,ビニルアセテート成分が4モル%以下のポリビニルアセタール樹脂(b)と可塑剤とからなる,遮音性合わせガラス用中間膜」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
そこで,本願発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「ポリビニルアセタール樹脂膜A」,「ポリビニルアセタール樹脂膜B」,「ポリビニルアセタール樹脂(a)」,「ポリビニルアセタール樹脂(b)」は,それぞれ本願発明の「ポリビニルアセタール樹脂膜C」,「ポリビニルアセタール樹脂膜D」,「ポリビニルアセタール樹脂(c)」,「ポリビニルアセタール樹脂(d)」に相当する。
よって,本願発明と引用発明とは,
「二種の可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜C及びDからなる少なくとも二層の積層樹脂膜であって,樹脂膜Cは,ポリビニルアルコールを炭素数4?6のアルデヒドでアセタール化して得られ,ビニルアセテート成分が8?30モル%のポリビニルアセタール樹脂(c)と可塑剤とからなり,樹脂膜Dは,ポリビニルアルコールを炭素数3又は4のアルデヒドでアセタール化して得られ,ビニルアセテート成分が4モル%以下のポリビニルアセタール樹脂(d)と可塑剤とからなる合わせガラス用中間膜」
の点で一致し,以下の点で相違する。

相違点:
本願発明では,「上記樹脂膜Cのナトリウム濃度は20ppm以下であり,上記樹脂膜Dのナトリウム濃度は15ppm以下である」と特定するのに対し,引用発明ではかかる特定がない点

上記相違点について検討する。
刊行物2には,記載事項(2-ア)に,「可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜からなる中間膜において,該中間膜中のナトリウム元素の含有量が0.5ppm以上15ppm以下・・・である・・・合わせガラス用中間膜」が記載されている。そして,記載事項(2-イ)には,従来の技術について,「少なくとも二枚のガラス板の間に可塑化ポリビニルブチラールからなる中間膜が挟着されてなる合わせガラス・・・は,・・・耐湿性が劣る。即ち,上記合わせガラスを湿度の高い雰囲気中に置いた場合,合わせガラスの周縁では中間膜が直接環境空気と接触しているため,周辺部の中間膜が白化してしまう問題が起こる」ことが記載され,記載事項(2-ウ)には,課題を解決するための手段について,「中間膜中のナトリウム元素及び/又はカリウム元素の量が白化に大きく影響していることを見出し,その含有量を特定の範囲に保持すれば,上記のような基本性能を損なうことなく高湿度下における白化を抑制できることを見出した」ことが記載されている。さらに,上記白化の抑制について,記載事項(2-オ)には,「酸触媒が樹脂中に残留すると樹脂自身の劣化を引き起こすため,過剰のアルカリ(水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等)にて中和安定化させていた。このために,樹脂中に多量のアルカリ元素(ナトリウム,カリウム等)が残留する。・・・洗浄時に40℃以上,好ましくは40?60℃の洗浄水を用いることにより,スラリー中の樹脂が膨潤し,樹脂中に取り込まれている酸(HCl)或はその中和物(アルカリ金属含有物)が容易に洗い流され,洗浄効率が上がる。」と記載され,記載事項(2-カ)には,「含有量がナトリウム元素の場合は15ppm・・・を超えると,ナトリウム,カリウム元素の周辺に集合した水分子が可視化される大きさにまで成長するため,白化が顕著になる。逆に,含有量がナトリウム元素及びカリウム元素のいずれの場合も0.5ppmより少ない中間膜を調製することは,樹脂の調製で残存ナトリウム元素又はカリウム元素を洗浄する工程を非常に長くしたり,使用する水や原材料等の精製度を上げたりする処置が必要となり,多大な時間と費用を要することとなり,好ましくない。」と記載されている。また,記載事項(2-エ)には,上記可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜について,「中間膜を得るのに使用するアルデヒドとしては,炭素数3?10のアルデヒドが用いられる。・・・特に,炭素数4のn-ブチルアルデヒドでアセタール化して得られたものが好ましい。・・・中間膜は,ビニルアセテート成分が30モル%以下のポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とからなる樹脂膜が用いられる。」と記載されている。
ここで,引用発明の遮音性合わせガラス用中間膜は可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜からなるものであり,かつ,引用発明で特定される二種の可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜A及びBのアセタール化に用いるアルデヒドの炭素数及びビニルアセテート成分の含有割合は,いずれも上記刊行物2の記載事項(2-エ)に記載された範囲に包含されるものである。さらに,刊行物1の実施例1?3に関する記載をみると(段落【0045】?【0066】),いずれの実施例にも「塩酸触媒を中和し」との記載があることから,上記刊行物2の記載事項(2-オ)に記載されている酸触媒のアルカリ(水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等)による中和を,刊行物1の実施例1?3においても行っているとみるのが自然であり,引用発明において刊行物2で問題とする白化が起きる可能性があることも想起される。そうすると,引用発明の可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜A及びBが湿度の高い雰囲気中に置かれた場合に周辺部が白化してしまう問題を防止するために,刊行物2に記載された技術を適用し,必要に応じて樹脂膜を40?60℃の洗浄水で処理する等により,それぞれの樹脂膜中のナトリウム元素の含有量を0.5ppm以上15ppm以下とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。

また,本願発明の上記相違点に係る特定事項による効果について検討すると,本願明細書の段落【0027】?【0030】には,本願発明において樹脂膜のナトリウム濃度を限定する技術的意義に関して,「高湿度下での合わせガラスの周縁部の白化を改善するために種々検討を行った。その結果,次のような知見を得た。
すなわち,ポリビニルアルコールのアセタール化反応において,粉粒状に析出沈澱するポリビニルアセタール樹脂は,残留する酸触媒を除去するために,水酸化ナトリウムや重炭酸ナトリウムなどのアルカリ中和剤により中和し,水洗,脱水,乾燥などの工程を経てポリビニルアセタール樹脂とされる。この場合,水酸化ナトリウムや重炭酸ナトリウム等のアルカリ中和剤が酸触媒と反応してナトリウム塩が生成するが,これ等のナトリウムや未反応のアルカリ中和剤が,ポリビニルアセタール樹脂の粒子中に取り込まれたり,粒子表面に付着する。また,原料のポリビニルアルコールにも,その合成に使用される水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒に起因するナトリウム塩が含有されている。
このようなナトリウム塩や未反応のアルカリ中和剤は,公知の製造方法において水洗を十分に繰り返すことによりある程度は除去できるが,それでも樹脂の粒子中に取り込まれているナトリウム塩や未反応のアルカリ中和剤は,これを除去するのが難しい。そのため,このようなポリビニルアセタール樹脂を用いて得られる合わせガラス用中間膜は,上記金属成分の影響により,耐湿性が低下することを見出した。
そこで,ポリビニルアセタール樹脂中のナトリウム塩を除去するために,公知の製造方法で得られる粉末状のポリビニルアセタール樹脂を,40℃以上の温度,好ましくは40?60℃の温水を加えて攪拌しながら洗浄する新たな工程を付加することにより,ポリビニルアセタール樹脂中のナトリウム塩が効果的に除去されることを見出した。洗浄時の温度を40℃以上にすると,樹脂粉粒体に残留している水溶解性の金属成分が効率よく除去される。しかし,洗浄時の温度が60℃以上になると,スラリー中の樹脂が軟化して粉粒体同士が合着しやすくなり,安定した粒子径のものが得られないことがあり,しかも温度の上昇に伴ってナトリウム塩の除去が大幅に向上しないので,エネルギー的にも無駄となる。」との記載がある。要するに,酸触媒の中和等により樹脂膜に取り込まれるナトリウムの影響によって白化が起こることから,40?60℃の温水で洗浄してナトリウム濃度を可能な限り低減すれば,ガラス周縁部の白化が改善できるというものであるが,これは,上記刊行物2の記載事項(2-オ),(2-カ)に記載されている事項とほぼ同旨のものである。
したがって,本願発明において上記相違点に係る特定をなすことによる効果は,刊行物2の記載事項から当業者が予測し得るものというべきである。

なお,請求人は,審判請求書において,平成21年4月14日付け手続補足書の実験成績証明書を参照しつつ,「本願の実施例の耐湿性の評価では,引用文献2の実施例の耐湿性の評価と比べて,合わせガラスがより過酷な条件,すなわち50℃ではなく80℃の高温で保管されている。そして,本願の実施例1?4では白化距離が0?0.5mmであったのに対し,本願よりも穏やかな条件で耐湿性を評価した引用文献2の実施例1?25では白化距離が0.5?1.9mmであったことが記載されている。
従って,本願では,引用文献2と比べて,耐湿性を極めて高めることができ,白化を極めて少なく抑えることができることは実施例により裏付けられている。」(審判請求書の手続補正書第3頁第32?38行),「耐湿性の評価では,上記1週間と2週間との保管期間の差異よりも,80℃と50℃との30℃も異なる保管温度の差異の方が耐湿性に大きく影響するため,本願の方が引用文献2よりも過酷な条件であることは明らかである。このことは,添付の実験成績証明書の記載からも裏付けられ,・・・80℃と50℃との保管温度の差異が白化距離に大きく影響することが示されている。」(審判請求書の手続補正書第4頁第6?13行),「本願発明では,上記特定の炭素数のアルデヒドでアセタール化して得られ,かつビニルアセテート成分が上記特定の値のポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを上記特定の量で配合した特定の樹脂膜A?Dにおいて,ナトリウム濃度が上記特定の値以下であるという特徴的構成を備えることによって,耐湿性を極めて高くすることができ,白化を極めて少なく抑えることができるという顕著な効果が得られ,かつこの本願発明の効果は引用文献1,3及び4だけでなく引用文献2の記載からも予測され得るものではない以上,引用文献1?4に記載の発明から,本願発明に容易に想到し得るものではない。」(審判請求書の手続補正書第4頁第23?29行)と主張する。
しかしながら,上記効果の検討で述べたとおり,刊行物2の記載事項(2-オ),(2-カ)には,本願発明の上記相違点に係る特定事項による技術的意義と同旨の技術的事項が開示されているところ,当業者であれば,引用発明に刊行物2記載の発明を適用する際に,樹脂の違いにより白化のし易さに違いがある可能性を考慮しつつ,所望の白化の抑制が得られるように,樹脂に応じて必要十分なナトリウム濃度の低減を行うことは,適宜なし得ることである。
また,刊行物2の段落【0075】?【0077】の記載によれば,刊行物2に記載された実施例1の樹脂膜は,アルデヒドとしてn-ブチルアルデヒド(炭素数4)を用いて製造した,ビニルアセテート成分が1.1モル%(4モル%以下)の樹脂と可塑剤とを混合して得られるものであって,本願発明の樹脂膜Dの特定事項を全て満足するものである。そうであるのに,本願発明が刊行物2記載の樹脂膜と比べて白化を極めて少なく抑えることができるといい,特定の樹脂膜においてナトリウム濃度が特定の値以下であることによって顕著な効果が得られるという請求人の主張は,本願請求項2に記載された特定事項と整合しておらず,請求項の記載に基づかないものであって,これを採用することはできない。
したがって,上記請求人の主張を検討しても,本願発明の効果が格別顕著なものということはできない。

よって,本願発明は刊行物1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから,本願の請求項2に係る発明は,刊行物1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-27 
結審通知日 2011-08-03 
審決日 2011-08-22 
出願番号 特願平11-125946
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C03C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤代 佳  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 深草 祐一
小川 慶子
発明の名称 合わせガラス用中間膜及び合わせガラス  
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